Solaris のシステム管理 (デバイスとファイルシステム)

第 3 章 リムーバブルメディアへのアクセス (手順)

この章では、Solaris OS でコマンド行からリムーバブルメディアにアクセスする方法について説明します。

リムーバブルメディアへのアクセスに関連する手順については、次の節を参照してください。

リムーバブルメディアの概要については、第 1 章リムーバブルメディアの管理 (概要)を参照してください。

リムーバブルメディアへのアクセス (作業マップ)

次の作業マップでは、リムーバブルメディアにアクセスするための作業について説明します。

作業 

説明 

参照先 

1. (省略可能) リムーバブルメディアドライブを追加します。 

必要に応じて、リムーバブルメディアドライブをシステムに追加します。  

「新しいリムーバブルメディアドライブを追加する方法」

2. (省略可能) リムーバブルメディアにアクセスするときにボリューム管理 (vold) を使用するかどうかを決めます。

デフォルトでは、ボリューム管理 (vold) は実行されます。リムーバブルメディアにアクセスするときにボリューム管理を使用するかどうかを決めます。

「リムーバブルメディアサービスを無効または有効にする方法」

3. リムーバブルメディアにアクセスします。 

ボリューム管理を使用して/使用しないで、各種のリムーバブルメディアにアクセスします。 

「リムーバブルメディア上の情報にアクセスする方法」

4. (省略可能) ファイルまたはディレクトリをコピーします。 

ファイルまたはディレクトリを、ファイルシステムの別の場所からコピーするように、リムーバブルメディアからコピーします。 

「リムーバブルメディア上の情報をコピーする方法」

5. メディアが使用中であるかどうかを調べます。 

メディアを取り出す前に、それが使用中であるかどうかを調べます。 

「リムーバブルメディアが使用中かどうかを調べる方法」

6. メディアを取り出します。 

作業が終了したら、ドライブからメディアを取り出します。 

「リムーバブルメディアを取り出す方法」

リムーバブルメディアへのアクセス

リムーバブルメディア上の情報にアクセスするには、ボリューム管理を使用する方法と使用しない方法があります。GNOME のファイルマネージャーを使用してリムーバブルメディア上の情報にアクセスする方法については、GNOME デスクトップのマニュアルを参照してください。

ボリューム管理 (vold) を使用すると、すべてのリムーバブルメディアデバイスを動的に管理できます。このため、/dev/rdsk/cntndnsn/dev/dsk/cntndnsn などのデバイス名でのリムーバブルメディアへのアクセスはできません。

リムーバブルメディア名の使用

リムーバブルメディアには、さまざまな名前でアクセスできます。次の表に、ボリューム管理を使用して/使用しないでアクセスできるさまざまなメディア名を示します。

表 3–1 リムーバブルメディア名

メディア 

ボリューム管理デバイスの名前 

ボリューム管理デバイスの別名 

デバイス名 

最初のフロッピーディスクドライブ 

/floppy

/vol/dev/aliases/floppy0

/dev/rdiskette

/vol/dev/rdiskette0/

volume-name

最初、2 番目、3 番目の CD-ROM または DVD-ROM ドライブ 

/cdrom0

/cdrom1

/cdrom2

/vol/dev/aliases/cdrom0

/vol/dev/aliases/cdrom1

/vol/dev/aliases/cdrom2

/vol/dev/rdsk/cnt n[dn] /

volume-name

USB メモリースティック 

/rmdisk/noname

/vol/dev/aliases/rmdisk0

/vol/dev/dsk/cnt ndn/volume-name :c

リムーバブルメディア上のデータにアクセスするためのガイドライン

ほとんどの CD と DVD は、ISO 9660 標準でフォーマットされています。このフォーマットには移植性があります。そのため、ほとんどの CD と DVD をボリューム管理によってマウントできます。ただし、UFS ファイルシステムを持つ CD と DVD にはアーキテクチャー間の移植性がありません。そのため、設計されたときのアーキテクチャーで使用する必要があります。

たとえば、SPARC システム用にフォーマットされた UFS ファイルシステムを持つ CD と DVD は x86 システムでは認識されません。同様に、x86 システム用にフォーマットされた UFS CD は、ボリューム管理によって SPARC システム上にマウントすることはできません。一般に、フロッピーディスクにも同じ制限があてはまります。ただし、同じビット構造を共有するアーキテクチャーもあります。このため、場合によっては、あるアーキテクチャーに固有の UFS フォーマットが別のアーキテクチャーによって認識されることもあります。しかし、UFS ファイルシステム構造はこのような互換性を保証するように設計されたものではありません。

さまざまなフォーマットに対応するために、CD や DVD はスライスに分割されます。スライスはハードディスクのパーティションに似ています。9660 部分は移植可能ですが、UFS 部分はアーキテクチャーに固有です。CD または DVD のマウントで問題が生じた場合、特にそれがインストール用 CD または DVD の場合は、その UFS ファイルシステムが、使用しているシステムのアーキテクチャーに適しているかどうかを確認してください。たとえば、CD または DVD 上のラベルを確認できます。

Procedure新しいリムーバブルメディアドライブを追加する方法

一般に、最近のバスタイプのほとんどで、ホットプラグ機能がサポートされています。システムのバスタイプでホットプラグ機能がサポートされている場合は、次の手順 5 だけを行う必要があります。システムのバスタイプでホットプラグ機能がサポートされていない場合は、次の作業を手順 1 - 6 に従って行う必要があります。

ホットプラグ対応デバイスの詳細は、第 6 章デバイスの動的構成 (手順)を参照してください。

  1. スーパーユーザーになります。

  2. /reconfigure ファイルを作成します。


    # touch /reconfigure
    
  3. システムを実行レベル 0 にします。


    # init 0
    
  4. システムの電源を切ります。

  5. 新しいリムーバブルメディアドライブを接続します。

    詳細な手順については、該当するハードウェアのマニュアルを参照してください。

  6. システムの電源を入れます。

    システムが自動的にマルチユーザーモードになります。

Procedureリムーバブルメディアサービスを無効または有効にする方法

場合によっては、リムーバブルメディアサービスを使用しないで、メディアを管理した方がよいことがあります。この節では、リムーバブルメディアサービスを無効または有効にする方法について説明します。

これらのサービスを無効にした場合は、mount コマンドを使ってすべてのメディアを手動でマウントする必要があります。

  1. メディアが使用中でないことを確認します。

    メディアを使用中のすべてのユーザーを確認できた保証がない場合は、「リムーバブルメディアが使用中かどうかを調べる方法」の手順に従って fuser コマンドを使用してください。

  2. スーパーユーザーになります。

  3. 次のいずれかの手順に従います。

    • リムーバブルメディアサービスを無効にします。


      # svcadm disable volfs
      
    • リムーバブルメディアサービスを有効にします。


      # svcadm enable volfs
      volume management starting.

Procedureリムーバブルメディア上の情報にアクセスする方法

  1. メディアを挿入します。

    数秒後にメディアがマウントされます。

  2. メディアの内容をリスト表示します。


    % ls /media
    

    コマンド行インタフェースを使用し、適切なデバイス名を指定して情報にアクセスします。デバイス名については、表 3–1 を参照してください。


例 3–1 リムーバブルメディア上の情報にアクセスする

次の例は、フロッピーディスク上の情報にアクセスする方法を示しています。


$ ls /floppy
myfile

次の例は、USB メモリースティック上の情報にアクセスする方法を示しています。


$ ls /rmdisk
rmdisk0/		rmdisk1/

次の例は、DVD 上の情報にアクセスする方法を示しています。


$ ls /cdrom
cdrom0             sol_10_910_sparc

Procedureリムーバブルメディア上の情報をコピーする方法

リムーバブルメディア上のファイルやディレクトリへのアクセスは、ほかのファイルシステムの場合とまったく同じように行えます。ただし、所有権とアクセス権については重大な制限があります。

たとえば、あるユーザーが、DVD 上のファイルを自分のファイルシステムにコピーした場合、そのユーザーはファイルの所有者になります。ただし、書き込み権は与えられません。DVD 上のファイルには書き込み権がないためです。アクセス権は各自で変更しなければなりません。

  1. メディアがマウントされていることを確認します。


    $ ls /media
    

    ls コマンドは、マウントされたメディアの内容を表示します。内容が表示されない場合は、「リムーバブルメディア上の情報にアクセスする方法」を参照してください。

  2. (省略可能) ファイルまたはディレクトリをコピーします。

    たとえば、DVD の場合は次のように入力します。


    $ cp /cdrom/sol_10_910_sparc/Solaris_10/Tools/add_install_client .
    $ ls -l
    -rwxr-xr-x   1 pmorph	  gelfs   64065 Jul 12  2010 add_install_client

Procedureリムーバブルメディアが使用中かどうかを調べる方法

  1. スーパーユーザーになります。

  2. メディアにアクセスしているプロセスを特定します。


    # fuser -u /media
    

    -u は、メディアを使用しているユーザーなどを表示します。

    詳細は、fuser(1M) のマニュアルページを参照してください。

  3. (省略可能) メディアにアクセスしているプロセスを強制終了します。


    # fuser -u -k /media
    

    -k は、メディアにアクセスしているプロセスを強制終了します。


    注意 – 注意 –

    メディアにアクセスしているプロセスの強制終了は、緊急の場合にのみ行います。


  4. プロセスが終了していることを確認します。


    # pgrep process-ID
    

例 3–2 メディアが使用中かどうかを調べる

次の例は、ユーザー pmorph/cdrom/sol_10_910_sparc/Solaris_10/Tools ディレクトリにアクセスしていることを示しています。


# fuser -u /cdrom/sol_10_910_sparc/Solaris_10/Tools
/cdrom/sol_910_sparc/Solaris_10/Tools:      902c(pmorph)     339c(pmorph)

Procedureリムーバブルメディアを取り出す方法

  1. メディアが使用中でないことを確認します。

    シェルまたはアプリケーションがメディア上のファイルまたはディレクトリのいずれかにアクセスしている場合、メディアは「使用中」であることを忘れないでください。DVD を使用しているシェルやアプリケーションなどをすべて検出したかどうかわからない (デスクトップツールの背後に隠れているシェルがアクセスしている可能性がある) 場合は、fuser コマンドを使用してください。「リムーバブルメディアが使用中かどうかを調べる方法」を参照してください。

  2. メディアを取り出します。


    # eject media
    

    たとえば、DVD の場合は次のように入力します。


    # eject cdrom
    

    たとえば、USB メモリースティックの場合は次のように入力します。


    # eject rmdisk0
    

    ヒント –

    リムーバブルデバイスの名前は eject -l コマンドで表示できます。


リモートシステム上のリムーバブルメディアへのアクセス (作業マップ)

次の作業マップでは、リモートシステム上のリムーバブルメディアにアクセスするための作業について説明します。

作業 

説明 

参照先 

1. ローカルのメディアをリモートシステムで使用できるようにします。 

システムのメディアドライブを共有するようにシステムを設定して、そのドライブ内のメディアをほかのシステムでも使用できるようにします。 

「ローカルのメディアをほかのシステムで使用可能にする方法」

2. リモートシステム上のリムーバブルメディアにアクセスします。 

ローカルシステムでリモートメディアにアクセスします。 

「リムーバブルメディア上の情報にアクセスする方法」

Procedureローカルのメディアをほかのシステムで使用可能にする方法

システムのメディアドライブを共有するようにシステムを設定すると、そのドライブに読み込まれているメディアがほかのシステムでも使用できるようになります。ただし、音楽用 CD は例外です。メディアドライブを共有すると、そのドライブをマウントするだけで、ドライブにロードされているメディアをほかのシステムでも使用できます。手順については、「リモートシステム上のリムーバブルメディアにアクセスする方法」を参照してください。

  1. スーパーユーザーになります。

  2. メディアがロードされていることを確認します。

  3. 次のエントリを /etc/dfs/dfstab ファイルに追加します。

    次に例を示します。


    share -F nfs -o ro /cdrom/sol_10_910_sparc
  4. NFS サーバーサービスが実行中かどうかを確認します。


    # svcs *nfs*
    

    NFS サーバーサービスが実行中であれば、svcs コマンドの出力は次のようになります。


    online         14:28:43 svc:/network/nfs/server:default
  5. NFS サーバーの状態を確認し、次のいずれかの手順を選択します。

    • NFS サーバーサービスが実行されている場合は、手順 7 に進みます。

    • NFS サーバーサービスが実行されていない場合は、次の手順に進みます。

  6. NFS サーバーサービスを起動します。


    # svcadm enable network/nfs/server
    

    NFS デーモンが実行されていることを確認します。

    次に例を示します。


    # svcs -p svc:/network/nfs/server:default
    STATE          STIME    FMRI
    online         Aug_30   svc:/network/nfs/server:default
                   Aug_30        319 mountd
                   Aug_30        323 nfsd
  7. メディアが実際にほかのシステムで使用できるかどうかを確認します。

    メディアが使用可能な場合は、その共有設定が表示されます。


    # share
    -               /cdrom/sol_10_910_sparc   ro   ""  

例 3–3 ローカルの DVD または CD をほかのシステムで使用可能にする

次の例は、ローカル DVD をネットワーク上のほかのシステムでも使用できるようにする方法を示しています。


# vi /etc/dfs/dfstab
(Add the following line:)
# share -F nfs -o ro /media
# svcs *nfs*
# svcadm enable network/nfs/server
# svcs -p svc:/network/nfs/server:default
# share
-               /cdrom/sol_10_910_sparc   ro   ""


例 3–4 ローカルのフロッピーディスクをほかのシステムで使用可能にする

次の例は、ローカルのフロッピーディスクをネットワーク上のほかのシステムでも使用できるようにする方法を示しています。


# vi /etc/dfs/dfstab
(Add the following line, for example)
share -F nfs -o ro /floppy/myfiles
# svcs *nfs*
# svcadm enable network/nfs/server
# svcs -p svc:/network/nfs/server:default
# volcheck -v
media was found
# share
-               /floppy/myfiles   rw   ""  

Procedureリモートシステム上のリムーバブルメディアにアクセスする方法

リモートシステム上のメディアを手動でファイルシステムにマウントすることにより、そのメディアにアクセスできるようになります。ただし、リモートシステムが「ローカルのメディアをほかのシステムで使用可能にする方法」の手順に従って、そのメディアを共有していることが必要です。

  1. マウントポイントとして使用する既存のディレクトリを指定します。または、マウントポイントを作成します。


    $ mkdir /directory
    

    ここで /directory は、リモートシステムの DVD のマウントポイントとして作成するディレクトリの名前です。

  2. マウントするメディアの名前を確認します。


    $ showmount -e system-name
    
  3. スーパーユーザー権限で、メディアをマウントします。


    # mount -F nfs -o ro system-name:/media/media-name local-mount-point
    
    system-name:

    マウントするメディアを持つシステムの名前です。

    media-name

    マウントするメディアの名前です。

    local-mount-point

    リモートメディアのマウント先となるローカルディレクトリです。

  4. スーパーユーザーをログアウトします。

  5. メディアがマウントされていることを確認します。


    $ ls /media
    

例 3–5 リモートシステム上の DVD または CD にアクセスする

次の例は、リモートシステム starbugsol_10_910_sparc という名前のリモート DVD に、autofs を使って自動的にアクセスする方法を示しています。


% showmount -e starbug
export list for starbug:
/cdrom/sol_10_910_sparc (everyone)
$ /net/starbug/cdrom/sol_10_910_sparc


例 3–6 ほかのシステム上のフロッピーディスクにアクセスする

次の例は、リモートシステム mars にある myfiles というフロッピーディスクに、autofs を使用して自動的にアクセスする方法を示しています。


$ showmount -e mars
$ cd /net/mars
$ ls /floppy
floppy0     myfiles