この章では既存の Solaris システムのアップグレードについて説明します。
Solaris ソフトウェアの新しいバージョンを既存の Solaris システム上にインストールする場合、次のオプションのどちらかを選択して、Solaris オペレーティング環境をディスクにコピーできます。
アップグレード - このオプションは、Solaris オペレーティング環境の新しいバージョンを、システムディスク上の既存のファイルにマージします。このオプションは、Solaris オペレーティング環境の以前のバージョンで行なった変更をできるだけ保存します。
初期インストール - このオプションは、Solaris オペレーティング環境の新しいバージョンをシステムディスクに上書きします。Solaris オペレーティング環境の以前のバージョンで行なったローカルでの変更は、インストール開始前にバックアップし、インストール完了後に復元してください。
Solaris 2.4 以降が動作している場合、アップグレードオプションを使用できます。
Solaris オペレーティング環境のバージョンを知るには、次のように入力します。
$ uname -a |
パッチを外す必要はありません。
「インストール時の問題解決」の章を参照してください。
Solaris 対話式インストールプログラムのアップグレードオプションでは、現在のファイルシステムがアップグレードに十分な容量を持っていない場合に、ディスク容量を再配置できます。デフォルトでは、アップグレードが成功するように、自動配置機能がディスク容量をどのように再配置するかを決定しようとします。決定できなかった場合は、ユーザーがどのファイルシステムを移動または変更するかを指定して、もう一度自動配置を実行してください。
なお、このディスク容量の再配置によるアップグレードでは、再配置されるファイルシステムのバックアップを一時的に取るため、バックアップ媒体を指定する必要があります。詳しくは 「ディスク容量の再配置のためのバックアップ媒体の指定」 を参照してください。
いいえ、できません。たとえば、システムにエンドユーザーソフトウェアグループをインストールしていた場合、開発者ソフトウェアグループにアップグレードするオプションは使用できません。ただし、現在インストールされているソフトウェアグループには含まれないソフトウェアについては、アップグレード時にパッケージ単位でシステムに追加できます。
システムをリブートする前は、次のファイルです。 /a/var/sadm/system/data/upgrade_cleanup
システムをリブートした後は、次のファイルです。 /var/sadm/system/data/upgrade_cleanup
システムをリブートする前は、次のファイルです。 /a/var/sadm/system/logs/upgrade_log
システムをリブートした後は、次のファイルです。 /var/sadm/system/logs/upgrade_log
既存のシステムを Solaris オペレーティング環境の新しいバージョンにアップグレードする前に、次のことを確認してください。
『Solaris 2.6 ご使用にあたって (SPARC 版)』、『Solaris 2.6 オンラインリリース情報』 (SUNWjrdm または SUNWjprdm) および、ベンダーのリリースノートをチェックして、ユーザーが使用しているソフトウェアの中に、新しいリリースで提供されなくなったソフトウェアがあるかどうかを確認します。
このマニュアルの「新規機能」とベンダーのリリースノートをチェックして、Solaris オペレーティング環境への変更または拡張が、ユーザーが現在行なっている内容に影響を与えるかどうかを確認します。
『Solaris 2.6 ご使用にあたって (SPARC 版)』をチェックして、ユーザーのシステムが新しいリソースでサポートされていることを確認します。
他のソフトウェアマニュアルもチェックします。
アップグレード時にデータが損失しないよう、次の表で既知の問題点をチェックしてください。ただし、このリストは完全ではありません。アップグレードの手順については、必ず付属のソフトウェアマニュアル、ベンダーのソフトウェアマニュアル、およびサードパーティのソフトウェアマニュアルでチェックしてください。
ソフトウェア |
問題の概要 |
Solstice Online: DiskSuite |
メタデバイスはアップグレードできない。アップグレードオプションを開始する前に、/etc/vfstab ファイル内のメタデバイスのエントリ (/dev/md) をコメントにしなければならない。手順については、DiskSuite のマニュアルを参照。 |
Prestoserve |
init 0 を使用してシステムをシャットダウンし、アップグレードプロセスを開始する場合、データを失う可能性がある。シャットダウンの手順については、Prestoserve のマニュアルを参照。 |
必要となる利用可能なすべてのパッチをチェックします。最新のパッチリストが SunSolve によってインターネットで提供されています (http://sunsolve.sun.co.jp/sunsolve/jp/)。
ユーザーのシステムをバックアップします。詳細は「システムをバックアップする方法」を参照してください。
アップグレードオプションで Solaris オペレーティング環境の新しいバージョンをインストールする前に、必ず既存のファイルシステムをバックアップしてください。ファイルシステムのバックアップとは、データを削除、破損、または破壊から保護するために、ファイルシステムを取り外し可能な媒体 (テープなど) にコピーすることです。バックアップの手段が身近にない場合は、次の手順に従ってファイルシステムの完全バックアップを実行してください。自動バックアップの設定と他のバックアップコマンドの使用については、『Solaris のシステム管理』を参照してください。
Solaris CD を CD-ROM ドライブに挿入します。
Solaris CD からシステムをブートします。
ok プロンプトが表示されたら、boot cdrom と入力します。
古い SPARC ベースのシステムの場合、次のブートコマンドを使用してください。 boot sd(0,6,2)
この時点で何らかの問題がある場合、「インストール時の問題解決」の章に進んでください。
ブートが完了するのを待ちます。
ブートコマンドを入力した後、システムは、さまざまなハードウェアとシステムの構成要素がチェックされるブート段階に入ります。この段階は数分かかります。次に、システムがブートするときに表示される例を示します。
ok boot cdrom Booting from: sd(0,6,2) SunOS Release x.x Version [UNIX(R) System V Release] Copyright (c), Sun Microsystems, Inc. WARNING: clock gained 35 days -- CHECK AND RESET THE DATE! Configuring devices Starting OpenWindows... |
画面の指示に従って、Solaris オペレーティング環境をインストールします。
Solaris インストールプログラムでは、対話式プログラムの手順に従って Solaris オペレーティング環境をインストールできます。また、オンラインヘルプも使用できます。
Solaris オペレーティング環境がシステムにインストールされるのを待ちます。
インストールのログ (システムがどのようにインストールされたか) は、次のファイルに保存されます。
システムをリブートする前は、次のファイルです。 /a/var/sadm/system/logs/upgrade_log
システムをリブートした後は、次のファイルです。 /var/sadm/system/logs/upgrade_log
スーパーユーザーになります。
システムをシャットダウンします。
# init 0 |
レベル S (シングルユーザーモード) にシステムをブートします。
ok boot -s |
[オプション] fsck コマンドで、ファイルシステムの整合性をチェックします。
-m オプションを使用して fsck コマンドを実行すると、ファイルシステムの整合性がチェックされます。たとえば、電源に障害があると、ファイルの整合性がなくなる可能性があります。
# fsck -m /dev/rdsk/device-name |
リモートのテープドライブにファイルシステムをバックアップする場合、次の手順に従います。
テープドライブのデバイス名を指定します。
デフォルトのテープドライブは /dev/rmt/0 です。
書き込み保護をしていないテープをテープドライブに挿入します。
表 5-2 の ufsdump コマンドのいずれかを使用して、ファイルシステムをバックアップします。
表 5-2 完全バックアップコマンド
完全バックアップの保存先 |
使用するコマンド |
---|---|
ローカルのフロッピーディスク |
ufsdump9ucf /vol/dev/ files_to_backup |
ローカルのカートリッジテープドライブ |
ufsdump9ucf /dev/rmt files_to_backup |
リモートのカートリッジテープドライブ |
ufsdump0ucf remote_host:/ files_to_backup |
プロンプトが表示されたら、テープを取り出して、次のボリュームに交換します。
各テープには、ボリューム番号、レベル、日付、システム名、およびファイルシステムを記したラベルを付けておきます。
Control-d を押して、レベル 3 にシステムをブートします。
ufsrestore コマンドを使用してテープの内容を表示することによって、バックアップが成功していることを確認します。
システムのアップグレードが終了した後、インストールプログラムは、システムをシングルユーザモードで、root プロンプトのままにしておきます。
必要であれば、システムをクリーンアップします。
アップグレードオプションを使用すると、Solaris インストールプログラムは既存のシステムのローカルでのソフトウェア変更を新しいソフトウェアにマージします。ただし、マージできない場合もあります。次のファイルを参照して、アップグレードが保存できなかったローカルの変更を修正する必要があるかどうかを確認してください。
/a/var/sadm/system/data/upgrade_cleanup
必ず upgrade_cleanup ファイル内の情報を確認してください。保存されなかったローカルの変更を修正しないと、ユーザーのシステムをブートできない場合があります。
システムをリブートします。
# reboot |
アップグレード用のバックアップ媒体が必要な場合、その準備ができているかを確認します。
既存の Solaris ファイルシステムの一部 (たとえば、ルート (/)、/usr など) にアップグレードのための十分な空き容量がない場合、ディスク容量を再配置する必要があります。この場合、再配置するファイルシステムを一時的にバックアップするためのバックアップ媒体を指定するように、Solaris 対話式インストールプログラムがプロンプトを表示します。
バックアップ媒体には、次のいずれかを使用できます。
ローカルファイルシステム - アップグレードするシステム上のローカルファイルシステムをバックアップ媒体として使用できます。ただし、再配置の対象となるローカルファイルシステムを使用することはできません。パスには、そのファイルシステムのブロックデバイスパス、またはそのファイルシステムのマウントポイント名を指定します。
ローカルテープ - アップグレードするシステムにテープドライブが接続されていること、およびシステムがテープドライブを認識することを確認してください。パスには、テープドライブのキャラクタ型 (raw) デバイスのパスを指定します。
ローカルフロッピーディスク - アップグレードするシステムがフロッピーディスクドライブを持っていることを確認してください。パスには、フロッピーディスクドライブへのキャラクタ型 (raw) デバイスのパスを指定します。
リモートファイルシステム (NFS) - リモートファイルシステム上の NFS ファイルシステムを使用する場合、アップグレードするシステムは NFS ファイルシステムと同じネットワーク上になければなりません。また、NFS ファイルシステムは適切に共有されていなければなりません。パスには、NFS サーバーの名前または IP アドレス、および NFS ファイルシステムへの絶対パスを指定します。
リモートシステム (rsh) - リモートシェル (rsh) によりアクセスできるリモートシステム上のディレクトリを使用する場合、アップグレードするシステムはリモートシステムと同じネットワーク上になければなりません。また、リモートシステムの .rhosts ファイルによってリモートシステムにアクセスできるようになっていなければなりません。パスには、リモートシステム名、ユーザーログイン名、およびディレクトリへの絶対パスを指定します。