既存の Solaris システム上に新バージョンの Solaris ソフトウェアをインストールするときは、Solaris ソフトウェアをディスクにコピーするための次のいずれかのオプションがインストールプログラムで選択できます。
アップグレード - このオプションを選択すると、システムのディスク上にある既存のファイルに新バージョンの Solaris ソフトウェアがマージされます。旧バージョンの Solaris ソフトウェアに加えた変更は、できるだけそのまま維持されます。システムをアップグレードするには、これが好ましい方法です。
初期インストール - このオプションを選択すると、システムのディスクが新バージョンの Solaris ソフトウェアによって上書きされます。このインストールを始める前には、旧バージョンの Solaris ソフトウェアに加えたローカルのすべての変更のバックアップをあらかじめとっておき、インストールが完了したらこのローカルの変更を復元する必要があります。
この章では、アップグレードオプションによる方法を中心に解説します。
4.1.x システムの場合は、アップグレードオプションは使用できません。初期インストールオプションを使用しなければならないため、データのバックアップをとる必要があります。詳細は、『Solaris 移行ガイド』を参照してください。
Solaris 対話式インストール (Interactive Installation) プログラムのアップグレードオプションには、アップグレードに十分なディスクスペースが現在のファイルシステムにない場合に、ディスクスペースを再配置する機能があります。デフォルトでは自動配置機能が、アップグレードが成功するようにディスクスペースを再配置します。自動配置機能がディスクの再配置を決定できない場合は、どのファイルシステムを削除または変更するかを指定して、再度再配置機能を実行してください。
アップグレードプロファイルを作成する際に、現在のファイルシステムにアップグレード用に十分なスペースがない場合、backup_media キーワードと layout_constraint キーワードを使用してディスクスペースを再配置できます。プロファイルで backup_media キーワードと layout_constraint キーワードを使用する例については、「アップグレードのためにディスク領域を割り当てし直す」を参照してください。
すべてのシステムでアップグレードオプションが使用できますか
Solaris 2.5、2.5.1、または 2.6 がインストールされていれば、すべてのシステムでアップグレードオプションがサポートされています。システムに搭載されている Solaris ソフトウェアのバージョンを調べるには、次のコマンドを入力します。
$ uname -a |
アップグレードオプションを使用する前にパッチを元に戻す必要がありますか
その必要はありません。
カスタム JumpStart でアップグレードオプションを使用するにはどうすればいいですか
プロファイル内で install_type upgrade を指定する必要があります。
Solaris 対話式インストールプログラムでアップグレードオプションが提供されていないのに、システムをアップグレードしなければならない場合はどうすればいいですか
詳細は、第 5 章「問題発生時の解決方法」を参照してください。
アップグレードオプションを使用するように作成したプロファイルをテストするには、どうすればいいですか
pfinstall -D コマンドを使用すると、実際にアップグレードする前に、アップグレードオプションを使用するプロファイルをテストできます。特に、ディスク領域の再割り当て機能を使って新規のアップグレードを行うときには、このテストが役立ちます。
アップグレードプロファイルをテストするには、アップグレードしようとするシステム上で pfinstall -D コマンドを実行する必要があります。そのシステム上のディスク構成情報や現在インストールされているソフトウェアを用いて、プロファイルをテストしなくてはならないからです。ディスク構成ファイルを使ってアップグレードプロファイルをテストできません。詳細は、「プロファイルのテスト」を参照してください。
別のソフトウェアグループに自動的にアップグレードできますか
できません。たとえば、システム上にエンドユーザーソフトウェアグループをすでにインストールしている場合、アップグレードオプションを使って開発者ソフトウェアグループにアップグレードできません。ただし、アップグレード作業中に、現在インストールされているソフトウェアグループの一部ではないソフトウェアをシステムに追加することはいつでも可能です。
インストールプログラムは、アップグレードによって維持できなかったローカル変更の記録をどこに保存しますか
次のいずれかのファイルに保存します。
システムをリブートする前: /a/var/sadm/system/data/upgrade_cleanup
システムをリブートした後: /var/sadm/system/data/upgrade_cleanup
インストールプログラムは、アップグレード作業中の記録をどこに保存しますか
次のいずれかのファイルに保存します。
システムをリブートする前: /a/var/sadm/system/logs/upgrade_log
システムをリブートした後: /var/sadm/system/logs/upgrade_log
既存のシステムを新しい Solaris リリースにアップグレードする前に、次のことに留意してください。
『Solaris 7 ご使用にあたって』を参照して、次のことを調べてください。
使用している既存の Solaris ソフトウェアのうち、新リリースでは提供されていないものがあるか調べます。
Solaris ソフトウェアに加えられた変更のうち、現在の作業に何らかの影響を与えるものがあるか調べます。
使用可能なパッチのうち、必要なものがあるか調べます。最新のパッチ一覧がインターネットの SunSolveTM のホームページ http://sunsolve.sun.com/ で提供されています。
システムが新しい Solaris リリースでサポートされていることを確認してください。
現在使用中の Sun 以外のソフトウェアまたは同梱のソフトウェア製品が、新しい Solaris リリースでも実行できることを確認してください。
アップグレード時の問題やデータの喪失を防止するために、システムのアップグレードを行う前に、現在使用中の Sun 以外のソフトウェアまたは同梱のソフトウェア製品のマニュアルで確認してください。
システムをアップグレードする前に特別な処理を必要とするソフトウェアを表 4-1 に示します。この一覧は最終版ではありません。システムのアップグレードを行う前に、現在使用している Sun 以外のソフトウェアまたは同梱ソフトウェア製品のマニュアルで必ず確認してください。
ソフトウェア |
問題の概要 |
Solstice: DiskSuiteTM |
メタデバイスを自動的にアップグレードできない。手順については、『Solstice DiskSuite 4.2 リファレンス』を参照 |
Prestoserve |
init 0 を使って、システムをシャットダウンしてアップグレード処理を開始すると、データを失う可能性がある。シャットダウンの手順については、Prestoserve のマニュアルを参照 |
システムのバックアップをとります。
システムをアップグレードする前に、常に既存システムのバックアップをとるようにしてください。最も安全なバックアップは、アップグレードするシステムに接続されているすべてのファイルシステムのレベル 0 のダンプをとることです。バックアップ手順がまだ決まっていない場合は、『Solaris のシステム管理 (第 1 巻)』を参照してください。
使用するシステムの構成情報をまだ設定していない場合は (第 6 章「システム構成情報の事前設定」を参照)、次の表を参考に現在のシステム構成情報を調べます。後でこれらの情報を指定するように要求されます。
システム構成 |
例 |
情報を探すためのコマンド |
---|---|---|
システム名 (ホスト名) |
crater |
uname -u |
一次ネットワークインタフェース |
le0 |
ifconfig -a |
IP アドレス |
129.221.2.1 |
ypmatch host-name host または nismatch host-name hosts.org_dir |
ドメイン名 |
chandy.West.Arp.COM |
domainname |
システムがサブネットの一部かどうか |
|
/etc/netmasks 内の既存のサブネットをチェック |
ネットマスク |
255.255.255.0 |
more /etc/netmasks |
アップグレード用のバックアップ媒体が必要な場合、その準備ができているか確認します。
既存の Solaris ファイルシステムの一部 (たとえば、ルート (/)、/usr など) にアップグレードのための十分な空き容量がない場合は、ディスク領域を再配置する必要があります。この場合、再配置するファイルシステムを一時的にバックアップするためのバックアップ媒体を指定するように、Solaris 対話式インストールプログラムがプロンプトを表示します。
バックアップ媒体には、次のいずれかを使用できます。
ローカルファイルシステム - アップグレードするシステム上のローカルファイルシステムを使用できます。ただし、再配置の対象となるローカルファイルシステムは使用できません。パスには、そのファイルシステムのブロックデバイスパス、またはそのファイルシステムのマウントポイント名を指定します。
ローカルテープ - アップグレードするシステムにテープドライブが接続されていること、およびシステムがテープドライブを認識することを確認してください。パスには、テープドライブへのキャラクタ型 (raw) デバイスのパスを指定します。
ローカルフロッピーディスク - アップグレードするシステムがフロッピーディスクドライブを持っていることを確認してください。パスには、フロッピーディスクドライブへのキャラクタ型 (raw) デバイスのパスを指定します。
リモートファイルシステム (NFS) - リモートファイルシステム上の NFS ファイルシステムを使用する場合、アップグレードするシステムは NFS ファイルシステムと同じネットワーク上になければなりません。また、NFS ファイルシステムは適切に共有されていなければなりません。パスには、NFS サーバーの名前または IP アドレス、および NFS ファイルシステムへの絶対パスを指定します。
リモートシステム (rsh) - リモートシェル (rsh) によりアクセスできるリモートシステム上のディレクトリを使用する場合、アップグレードするシステムはリモートシステムと同じネットワーク上になければなりません。また、リモートシステムの .rhosts ファイルによって、リモートシステムにアクセスできるようになっていなければなりません。パスには、リモートシステム名、ユーザーログイン名、およびディレクトリへの絶対パスを指定します。
システムがアップグレード作業を終了すると、システムはシングルユーザーモードで root プロンプトが表示された状態になります。
必要に応じてシステムをクリーンアップします。
アップグレードオプションを使用したときは、Solaris インストールプログラムは、新しいソフトウェアに既存システムのローカルソフトウェア変更をマージします。場合によっては、マージできないことがあります。下記のファイルを参照して、アップグレードによって維持できなかったローカル変更を修復する必要があるかどうかを調べてください。
/a/var/sadm/system/data/upgrade_cleanup
upgrade_cleanup ファイルのすべての情報を必ず確認してください。ローカルの変更についての修復ができなかった場合に、システムがブートしないことがあります。
システムをリブートします。
# reboot |
OS サーバーをアップグレードした場合は、それぞれのプラットフォームとプラットフォームグループでクライアントをアップグレードします。
異機種 OS サーバーをアップグレードした場合、クライアントのプラットフォーム (SPARC または x86) およびプラットフォームグループ (sun4m または i386 など) が Solaris CD でサポートされている場合だけ、そのサーバーのクライアントは自動的にアップグレードされます。たとえば、Solaris CD を使って SPARC サーバーをアップグレードする場合は、その CD 上のプラットフォームグループを共有する SPARC クライアントだけがアップグレードされます。
別のプラットフォームとプラットフォームグループのクライアントをアップグレードするには、server_upgrade コマンドを使用しなければなりません。詳細は、server_upgrade(1M) のマニュアルページを参照してください。