ディスク上に格納されたファイルは、ファイルシステム中で管理されます。ディスク上の各ファイルシステムは「スライス」、つまり、そのファイルシステム用に確保されたシリンダのグループに割り当てられます。オペレーティングシステム (および、システム管理者) からは、各ディスクスライスは別個のディスクドライブであるかのように見えます。
ファイルシステムについての詳細は、パート VIII「ファイルシステムの管理」を参照してください。
スライスをパーティションと呼ぶこともあります。このマニュアルでは「スライス」と呼びますが、format ユーティリティなど、特定のインタフェースではスライスをパーティションと呼びます。
スライスを設定するときには、次の規則に注意してください。
各ディスクスライスは、ファイルシステムを 1 つしか持てない。
ファイルシステムを複数のスライスにまたがって割り当てることはできない。
SPARC プラットフォームと x86 プラットフォームでは、スライスの設定が少し異なります。表 21-1 に、両者の違いを示します。
表 21-1 プラットフォームによるスライスの違い
SPARC |
x86 |
---|---|
ディスク全体が Solaris 専用になる。 |
ディスクはオペレーティングシステムごとに 1 つの fdisk パーティションに分割される。 |
ディスクは 0 から 7 までの番号が付いた 8 つのスライスに分割される。 |
Solaris の fdisk パーティションは 0 から 9 までの番号が付いた 10 のスライスに分割される。 |
SPARC システム上では、Solaris は 8 つのディスクスライスを定義して、それぞれにある程度決まった役割を割り当てます。これらのスライスには、0 から 7 までの番号が付いています。表 21-2 に、SPARC システム上の 8 つの Solaris スライスの内容を示します。
表 21-2 SPARC : ディスクスライス
スライス |
ファイルシステム |
通常クライアントまたはサーバーのどちらにあるか |
用途 |
---|---|---|---|
0 |
ルート |
両方 |
オペレーティングシステムを構成するファイルとディレクトリを含む。 |
1 |
スワップ |
両方 |
仮想メモリー、つまり「スワップ空間」を提供する。スワップ空間は、実行中のプログラムが大きすぎてコンピュータのメモリーに入りきらないときに使用される。その場合、Solaris 環境では、プログラムがメモリーからディスクに「スワップ」され、必要に応じて戻される。 |
2 |
- |
両方 |
慣習により、このスライスはディスク全体を表す。このスライスは、Sun の format と Solaris インストールプログラムによって自動的に定義される。このスライスのサイズは変更しないこと。 |
3 |
/export |
サーバーのみ |
オペレーティングシステムの代替バージョンを含む。これらの代替バージョンは、サーバーとはアーキテクチャが異なるクライアントシステムに必要である。アーキテクチャのタイプがサーバーと同じクライアントは、/usr ファイルシステム (通常はスライス 6) にある実行可能プログラムを利用する。 |
4 |
/export/swap |
サーバーのみ |
クライアントシステムに仮想メモリー領域を提供する。 |
5 |
/opt |
両方 |
システムに追加されるアプリケーションソフトウェアを含む。インストール時に、このファイルシステムにスライスが割り当てられていなければ、/opt ディレクトリがスライス 0 に入る。 |
6 |
/usr |
両方 |
ユーザーが実行するオペレーティングシステムコマンド (「実行可能」コマンドとも呼ぶ) を含む。また、このスライスには、オンラインマニュアル、システムプログラム (init や syslogd など)、ライブラリルーチンも含まれる。 |
7 |
/home または /export/home |
両方 |
ユーザーによって作成されるファイルを含む。 |
x86 システム上では、ディスクは fdisk パーティションに分割されます。fdisk パーティションは、Solaris など、特定のオペレーティングシステムで使用するように確保されたディスクの一部です。
表 21-3 のように、Solaris は x86 システムのディスク上の Solaris fdisk パーティション上に、0 から 9 までの番号が付いた 10 のスライスを配置します。
表 21-3 x86 : ディスクスライス
スライス |
ファイルシステム |
通常クライアントまたはサーバーのどちらにあるか |
用途 |
---|---|---|---|
0 |
ルート |
両方 |
オペレーティングシステムを構成するファイルとディレクトリを含む。 |
1 |
スワップ |
両方 |
仮想メモリー、つまり「スワップ空間」を提供する。スワップ空間は、実行中のプログラムが大きすぎてコンピュータのメモリーに入りきらないときに使用される。その場合、Solaris 環境では、プログラムがメモリーからディスクに「スワップ」され、必要に応じて戻される。 |
2 |
- |
両方 |
慣習により、このスライスは Solaris fdisk パーティション全体を表す。このスライスは、Sun の format ユーティリティと Solaris インストールプログラムによって自動的に定義される。このスライスのサイズは変更しないこと。 |
3 |
/export |
サーバーのみ |
オペレーティングシステムの代替バージョンを含む。これらの代替バージョンは、サーバーとはアーキテクチャが異なるクライアントシステムに必要である。 |
4 |
/export/swap |
サーバーのみ |
クライアントシステムに仮想メモリーを提供する。 |
5 |
/opt |
両方 |
システムに追加されるアプリケーションソフトウェアを含む。インストール時に、このファイルシステムにスライスが割り当てられていなければ、/opt ディレクトリがスライス 0 に入る。 |
6 |
/usr |
両方 |
ユーザーが実行するオペレーティングシステムコマンド (「実行可能」コマンドとも呼ぶ) を含む。また、このスライスには、マニュアル、システムプログラム (init や syslogd など)、ライブラリルーチンも含まれる。 |
7 |
/home または /export/home |
両方 |
ユーザーによって作成されるファイルを含む。 |
8 |
- |
両方 |
Solaris がハードディスクからブートするために必要な情報を含む。スライス番号は 8 であるが、この情報は、Solaris パーティションの先頭にあり、ブートスライスと呼ばれる。 |
9 |
- |
両方 |
代替ディスクブロック用に予約された領域であり、代替セクタースライスと呼ばれる。 |
SunOS オペレーティングシステムは、各ディスクのブロック 0、シリンダ 0 に、ディスクラベルを格納します。これは、raw データスライスを作成する、Sun 以外のデータベースアプリケーションを使用するときは、ブロック 0、シリンダ 0 から開始してはならないことを意味します。この領域に raw データスライスを作成すると、ディスクラベルが上書きされて、ディスク上のデータにアクセスできなくなります。
ディスク上の次の領域は、raw データスライス用に使用しないでください。raw データスライスは Sun 以外のデータベースアプリケーションによって作成されることがあります。
ブロック 0、シリンダ 0 (ディスクラベルが格納される領域)
シリンダ 0 全体 (性能の向上のため)
スライス 2 (ディスク全体を表す)
十分な大きさのディスクであれば、1 台ですべてのスライスとそれに対応するファイルシステムを確保できますが、通常はシステムのスライスとファイルシステムを確保するために複数のディスクが使用されます。
1 つのスライスを複数のディスクに分割することはできません。ただし、複数のスワップスライスを別々のディスクに配置することはできます。
たとえば、1 台のディスクにルート (/) ファイルシステム、スワップ領域、/usr ファイルシステムを入れ、別のディスクは /export/home ファイルシステムやユーザーデータが入っている他のファイルシステムに使用できます。
複数のディスクを使用する場合、オペレーティングシステムソフトウェアとスワップ領域が入っているディスク (つまり、ルート (/)、/usr ファイルシステム、またはスワップ領域用のスライスが入っているディスク) を、「システムディスク」と呼びます。システムディスク以外のディスクを、「二次ディスク 」または「非システムディスク」と呼びます。
システムのファイルシステムを複数のディスクに入れると、システムをシャットダウンしたりオペレーティングシステムソフトウェアをロードし直したりしなくても、二次ディスクのファイルシステムとスライスを変更できます。
また、複数のディスクを使用すると、入出力 (I/O) の性能が改善されます。ディスク負荷を複数のディスクに分散すると、I/O のボトルネックを回避できます。
ディスクのファイルシステムを設定するときには、各スライスのサイズだけでなく、どのスライスを使用するかも決定します。どのように決定するかは、ディスクを接続するシステムの構成と、ディスクにインストールしたいソフトウェアによって異なります。
次の 4 つのシステム構成があります。
サーバー
ディスクレスクライアント
スタンドアロンシステム
AutoClient システム
システム構成ごとに、使用すべきスライスが異なります。表 21-4は、これらの要件を示しています。
表 21-4 システム構成とスライスの要件
スライス |
サーバー |
ディスクレス クライアント |
スタンドアロン システム |
AutoClient システム |
---|---|---|---|---|
0 |
ルート |
(サーバー上) |
ルート |
ルート |
1 |
スワップ |
(サーバー上) |
スワップ |
スワップ |
2 |
- |
- |
- |
- |
3 |
/export |
- |
- |
- |
4 |
/export/swap |
- |
- |
- |
5 |
/opt |
(サーバー上) |
/opt |
(サーバー上) |
6 |
/usr |
(サーバー上) |
/usr |
(サーバー上) |
7 |
/export/home |
(サーバー上) |
/home |
(サーバー上) |
システム構成についての詳細は、第 4 章「サーバーとクライアントサポートの管理の手順」を参照してください。
Solaris インストールプログラムは、インストール用に選択したソフトウェアに基づいて推奨スライスサイズを表示します。