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Sun ONE Application Server 7, Enterprise Edition インストールガイド

第 3 章
HADB の設定準備

高可用性コンポーネントをクラスタの一部になるサーバー上にインストールしたあと、この章で説明するタスクを実行して高可用性の設定を準備します。Sun ONE Application Server 7, Enterprise Edition 実装に必要なイベントのすべての流れを確認するには、「インストールの概要」を参照してください。

ここでは次の項目について説明します。

ここで説明するタスクを実行したあと、クラスタ、ロードバランサプラグイン、および高可用性データベース (HADB) の設定と管理の詳細な手順について『Sun ONE Application Server 管理者ガイド』を参照してください。

高可用性のトポロジについては、『Sun ONE Application Server システム配備ガイド』を参照してください。


共有メモリーとセマフォの設定

HADB の使用を始める前に、HADB ホストマシンの共有メモリーを設定する必要があります。

  1. root としてログインします。

  2. 必要に応じて、root 以外のユーザーとして HADB を管理するための正しいアクセス権が設定されていることを確認します。「HADB 管理のための RSH の設定」手順 5 を参照してください。


  3. /etc/system ファイルに次のような行がまだ存在していない場合は、ファイルにこれらの行を追加します。
  4. 共有メモリーの場合 :

    set shmsys:shminfo_shmmax=0x80000000
    set shmsys:shminfo_shmseg=20

    この例では、共有メモリー shmmax を 2G バイト (16 進 0x80000000) に設定しています。これは、ほとんどの設定に十分な値です。

    shmsys:shminfo_shmmax の設定は 256M バイトごとに 10,000,0000 として計算され、ホストのメモリーサイズと同じに設定します。ホストのメモリーを決定するには、次のコマンドを実行します。

    prtconf | grep Memory

    そのあと、ホストのメモリー値を次の式に入力します。

    ((<host> M バイト / 256M バイト) * 10,000,000)

    セマフォの場合 :

    /etc/system ファイルには、あらかじめ semmnisemmns、および semmnu エントリが含まれている場合があります。次に例を示します。

    set semsys:seminfo_semmni=10
    set semsys:seminfo_semmns=60
    set semsys:seminfo_semmnu=30


    元の /etc/system ファイルに、これらのエントリすべてが含まれている場合もあれば、一部だけが含まれている場合があります。


    このエントリが存在する場合は、次のように 16、128、および 1000 をそれぞれ追加することで、値を増加させます。

    set semsys:seminfo_semmni=26
    set semsys:seminfo_semmns=188
    set semsys:seminfo_semmnu=1030

    /etc/system ファイルに上述のエントリが含まれていない場合は、ファイルの末尾に次のエントリを追加します。

    set semsys:seminfo_semmni=16
    set semsys:seminfo_semmns=128
    set semsys:seminfo_semmnu=1000

    これは、コンピュータ上の最大 16 個の HADB ノードを起動するために十分な値です。

  5. マシンを再起動して、変更を有効にします。

HADB ノードの説明については、『Sun ONE Application Server 管理者ガイド』の「高可用性データベースの管理」を参照してください。


ホスト通信の設定

HADB の管理用のリモートアクセスを実装するには、HADB サーバーと HADB 管理クライアントを稼働させるために使用するすべてのマシンが、リモートシェル (RSH) またはセキュアシェル (OpenSSH/SSH) 用に設定されている必要があります。

RSH は単純なリモートシェルコマンドであり、セキュリティ機能はありません。SSH 通信チャネルは、HADB ノード間で渡されるデータを暗号化することによって、一定レベルのセキュリティを提供します。


Solaris 9 の場合は、SSH のデフォルトのインストールを使用することをお勧めします。ただし、必要であれば RSH を使用することができます。この場合は、「HADB 管理のための RSH の設定」の手順を実行してから、「clsetup コマンドの実行」の説明に従って、特定の RSH 用に clresource.conf ファイルを編集します。

Solaris 8 では、デフォルトでは SSH はインストールされません。SSH が使用している Solaris 8 システム上にない場合は、「Solaris 8 への SSH のインストール」の手順に従ってください。

SSH を使用したいが設定されていない、または使用できない場合は、hadbm コマンドを使用することはできません。SSH が認識されていることを確認するには、「SSH の要件と制限事項」を参照してください。


ここでは、次のタスクの手順を示します。

HADB 管理のための RSH の設定

SSH ではなく RSH を使用する場合は、set managementProtocol オプションを使って RSH を明示的に指定する必要があります。clresource.conf ファイルでこのパラメータを設定する方法については、表 3-3 を参照してください。


SSH は RSH よりも安全であるため、hadbm create コマンドのデフォルトとして強くお勧めします。


RSH を実装するには、次の手順を実行します。

  1. root としてログインします。
  2. /etc/hosts ファイルを編集して、ローカルホストのホスト名など、選択したすべての HADB ホストのエントリを組み込みます。localhost の形式を使用します。次に例を示します。
  3. computer1.xbay.company.com
    computer99.zmtn.company.com

  4. このファイルを、選択したすべてのインストールホストの /etc/hosts ファイルに追加します。
  5. HADB ユーザーの $HOME ディレクトリに .rhosts ファイルが存在していない場合は、このファイルを作成します。
  6. vi .rhosts

  7. グループやその他に対して読み取り専用のアクセス権が設定されていることを確認します。次に例を示します。
  8. rw-r--r--

  9. 各 HADB ホストのホスト名を追加します。このホスト名にはローカルホストの名前が含まれ、そのあとにデータベースユーザーの名前が続きます。たとえば、データベースユーザーが Jon の場合は次のようになります。
  10. computer1.xbay.company.com    Jon
    computer99.zmtn.company.com   Jon
    mine456.red.mycompany.com  Jon

  11. このファイルを各 HADB ホストの .rhosts に追加します。
  12. 各ホストのホスト通信をチェックします。次に例を示します。
  13. rsh computer99.zmtn.company.com uname -a

    すべて正常に完了すると、その他のホストから ID が戻されます。

HADB 管理のための SSH の設定

SSH は RSH よりも安全であるため、hadbm create コマンドを使用する場合に強くお勧めします。


セキュリティの観点から、RSA ベースのバージョン 1 のプロトコルではなく、DSA ベースのバージョン 2 のプロトコルをお勧めします。選択するバージョンは、サイトで使用している SSH クライアントソフトウェアによって異なります。


この節では、次のトピックを取り上げます。

SSH の要件と制限事項


SSH は、Solaris 9 システムにはデフォルトでインストールされますが、Solaris 8 にはデフォルトでインストールされません。Solaris 8 向けの SSH のインストール手順については、「Solaris 8 への SSH のインストール」を参照してください。


SSH を設定するときは、次の要件の一部またはすべてを考慮する必要があります。

Solaris 8 への SSH のインストール

Solaris 8 システムでは、ssh バイナリおよび scp バイナリはデフォルトではインストールされません。これらのバイナリが Solaris 8 システム上にない場合は、次の手順を実行します。

  1. 次のサイトに移動します。
  2. http://www.sunfreeware.com/openssh8.html

    このサイトでは、次のようなメッセージが表示されることがあります。

    ===PLEASE NOTE!!!............ make a note of some of the mirror sites so that if the servers are down, you can still download from a mirror site.

    このようなメッセージが表示された場合は、「FTP/Mirror Sites」のリンクのリストにあるミラーサイトのいずれかにアクセスしてみてください。次に例を示します。

    http://sunfreeware.secsup.org/

  3. このサイトで、「Installation Steps」の手順に従って、必要な OpenSSH のパッケージとパッチのすべてをダウンロードしてインストールします。
  4. OpenSSH をインストールしたあと、「SSH の設定」の次の節に進みます。

SSH の設定

ssh バイナリおよび scp バイナリがすでにインストールされているシステム上に SSH を設定するには、次の節で説明する手順のどちらかを実行します。

マウントされていないホームディレクトリの SSH

ホームディレクトリがマウントされていないシステムに SSH を実装するには、次の手順を実行します。

  1. SSH 要件が理解されていて、「SSH の要件と制限事項」に示す要件が満たされていることを確認します。
  2. HADB ユーザーとしてホストにログインします。
  3. 次のコマンドを実行して、キーを生成します。
  4. ssh-keygen -t dsa

    SSH1 と OpenSSH/1 の場合、通常は ssh-keygen コマンドにパラメータを付ける必要はありません。

  5. 次の 3 つのプロンプトに対して、Enter を押してデフォルトのオプションを受け入れます。
  6. クラスタ内のすべてのマシンに対して手順 1、2、および 3 を繰り返します。

~/.ssh ディレクトリ内にある identity.pub または id_dsa.pub というファイル (SSH のバージョン 1 とバージョン 2 のどちらを使うかによって異なる) に公開鍵が格納されます。マシンに接続する際のパスワード入力を不要にするには、このファイルの内容を、すべてのマシン上の authorized_keys というファイルに追加する必要があります。

  1. ログイン ID を設定するには、ユーザーディレクトリに移動します。
  2. ~/.ssh.

    SSH1、OpenSSH/1 の場合、次の手順を行います。

    1. identity.pub ファイルをコピーして、 authorized_keys という名前を付けます。
    2. クラスタ内のその他のマシンでそれぞれ、identity.pub ファイルの内容をコピーし、それをローカルの authorized_keys ファイルに追加します。
    3. OpenSSH/2の場合、次の手順を行います。

    4. id_dsa.pub ファイルをコピーして、 authorized_keys2 という名前を付けます。
    5. クラスタ内のその他のマシンでそれぞれ、id_dsa.pub ファイルの内容をコピーし、それをローカルの authorized_keys2 ファイルに追加します。
  3. uthorized_keys ファイルを、すべての HADB マシンの ~/.ssh ディレクトリにコピーします。
  4. .ssh ディレクトリ、HADB ユーザーのホームディレクトリ、および .ssh/authorized_keys ファイルに対して、グループとその他の書き込み権がないことを確認します。
  5. 必要に応じて、これらのグループやその他の書き込み権を、次のようにして無効にします。

    chmod og-w ~/.ssh
    chmod og-w ~/.ssh/authorized_keys
    chmod og-w $HOME

    $HOME を HADB ユーザーのホームディスクと置き換えます。たとえば、次のようにします。

    chmod og-w ~/johnsmith


    ~/.ssh ディレクトリの下のファイルに対してグループやその他に読み取り権が与えられている場合でも、自動 SSH ログイン ID を設定することはできません。この場合、ssh machine_name を実行しようとすると、システムによりアクセス権が正しくないことが示され、パスワードの入力が求められます。このため、自動ログインを有効にする場合は、グループとその他にアクセス権を与えないことをお勧めします。


  6. ユーザーが入力しなくてもログインできるようにするには、はじめて SSH を使用するときに (SSH 環境を設定したあと)、/.ssh ディレクトリの下の known_hosts ファイルに、次のようにノードマシン名を追加する必要があります。
    1. 次のように入力します。
    2. ssh machine_name

      machine_nameknown_hosts ファイルに追加するかどうかを確認する「Yes/No」の質問が表示されます。

    3. 「Yes」と答えます。
    4. これで、入力しなくてもログインできるようになります。

  7. SSH が正しく設定されたことを確認するには、HADB の管理ツールを実行する前に、クラスタ内の各ホストに SSH します。
  8. パスワードの要求なしで自動ログインします。

マウントされているホームディレクトリの SSH

ホームディレクトリがマウントされているシステムに SSH を実装するには、次の手順を実行します。

  1. SSH 要件が理解されていて、「SSH の要件と制限事項」に従って要件が満たされていることを確認します。
  2. HADB ユーザーとしてホストにログインします。
  3. 次のコマンドを実行して、キーを生成します。
  4. ssh-keygen -t dsa

    SSH1 と OpenSSH/1 の場合、通常は ssh-keygen コマンドにパラメータを付ける必要はありません。

  5. 次の 3 つのプロンプトに対して、Enter を押してデフォルトのオプションを受け入れます。
  6. ~/.ssh ディレクトリ内にある identity.pub または id_dsa.pub というファイル (SSH のバージョン 1 とバージョン 2 のどちらを使うかによって異なる) に公開鍵が格納されます。マシンに接続する際にパスワードの入力が求められないようにするには、このファイルの内容を、すべてのマシン上の authorized_keys2 というファイルに追加する必要があります。これは次のようにして行います。

  7. ログイン ID を設定するには、ユーザーディレクトリに移動します。
  8. ~/.ssh.

    SSH1、OpenSSH/1 - identity.pub ファイルをコピーし、それに authorized_keys という名前を付けます。

    OpenSSH/2 - id_dsa.pub ファイルをコピーし、それに authorized_keys という名前を付けます。

  9. .ssh ディレクトリと .ssh/authorized_keys ファイルに、グループとその他に対する書き込み権がないことを確認します。
  10. 必要に応じて、これらのグループやその他の書き込み権を、次のようにして無効にします。

    chmod og-w ~/.ssh
    chmod og-w ~/.ssh/authorized_keys
    chmod og-w /$HOME

    HOME を HADB ユーザーのホームディスクと置き換えます。次に例を示します。

    chmod og-w ~/johnsmith.


    ~/.ssh ディレクトリの下のファイルに対してグループやその他に読み取り権が与えられている場合でも、自動 SSH ログイン ID を設定することはできません。この場合、ssh machine_name を実行しようとすると、システムによりアクセス権が正しくないことが示され、パスワードの入力が求められます。このため、自動ログインを有効にする場合は、グループとその他にアクセス権を与えないことをお勧めします。


  11. ユーザーが入力しなくてもログインできるようにするには、はじめて SSH を使用するときに (SSH 環境を設定したあと)、/.ssh ディレクトリの下の known_hosts ファイルに、ノードマシン名を追加する必要があります。
    1. 次のように入力します。
    2. ssh machine_name

      machine_nameknown_hosts ファイルに追加するかどうかを問い合わせるメッセージが表示されます。

    3. 「Yes」と答えます。
    4. これで、入力しなくてもログインできるようになります。

  12. SSH が正しく設定されたことを確認するには、HADB の管理ツールを実行する前に、クラスタ内の各ホストに SSH します。
  13. パスワードの要求なしで自動ログインします。


ユーザー環境の設定

ホスト通信を設定すると、次のようにして、hadbm コマンドを install_dir/SUNWhadb/4/bin ディレクトリから実行できます。

ただし、高可用性の管理クライアントのコマンドをどこからでも使用できるようにローカル環境を設定すると、より便利です。これを設定するには、次の手順を実行します。


この節の例では、csh を使用します。別のシェルを使用する場合は、使用するシェルのマニュアルページで変数の設定手順を参照してください。


  1. PATH 変数を次のように設定します。
  2. setenv PATH ${PATH}:install_dir/bin:install_dir/SUNWhadb/4/bin

  3. 次のコマンドを実行して、PATH 設定が正しいことを確認します。
  4. which asadmin
    which hadbm

  5. システムに Java の複数のバージョンがインストールされている場合は、JAVA_HOME 環境変数が正しい Java バージョン (Enterprise Edition の場合は 1.4.1_03) を指していることを必ず確認してください。
  6. setenv JAVA_HOME java_install_dir
    setenv PATH ${PATH}:${JAVA_HOME}/bin


root 以外の特権に対する管理の設定

デフォルトでは、Sun ONE Application Server の初期インストールまたは設定時、Sun ONE Application Server 用に作成されたファイルとパスの書き込み権はルートのみに与えられます。ルート以外のユーザーが Sun ONE Application Server を作成したり管理したりする場合、関連するファイルの書き込み権を、その特定のユーザー、またはそのユーザーが属するグループに与える必要があります。影響を受けるファイルとそのデフォルトの場所は次のとおりです。

次の手順で説明するように、Sun ONE Application Server を管理するためのユーザーグループを作成できます。(もう 1 つの方法は、特定のユーザーにアクセス権と所有権を設定することです。)

Sun ONE Application Server のユーザーグループを作成し、インストールルートディレクトリのアクセス権を設定するには、影響を受けるファイルのそれぞれに対して次の手順を繰り返します。

  1. root としてログインします。
  2. コマンドプロンプトから、Sun ONE Application Server ユーザーグループを作成します。次に例を示します。
  3. # groupadd s1asuser

    コマンド行で groupadd と入力して、適切な使用法を表示します。

  4. 影響を受けるファイルのそれぞれのグループ所有権を、新たに作成したグループに変更します。次に例を示します。
  5. chgrp -R s1asuser install_config_dir/cl*.conf

  6. 新しく作成したグループの書き込み権を設定します。
  7. chmod -R g+rw install_config_dir/cl*.conf

  8. 影響を受けるファイルのそれぞれで、手順 3 と 4 を繰り返します。
  9. clsetup コマンドと cladmin コマンドを、新しく作成したグループで作成できるようにします。次に例を示します。
  10. chmod -R g+x install_dir/bin/cl*

  11. --sysuser オプションを使って、デフォルトのドメインである domain 1 を削除してから再度作成します。sysuser も新たに作成したグループに属する必要があります。次に例を示します。
  12. asadmin delete-domain domain1

    asadmin create-domain --sysuser bleonard --adminport 4848 --adminuser admin --adminpassword password domain1


clsetup コマンドの使用

clsetup コマンドの目的は、一般的な設定で基本クラスタを設定するプロセスを自動化することです。clsetup コマンドは install_dir/bin にあります。install_dir は、Sun ONE Application Server ソフトウェアがインストールされているディレクトリです。

clsetup コマンドは、cladmin コマンドと一緒に Sun ONE Application Server ソフトウェアにバンドルされています。


cladmin コマンドは、インストールと設定のすべてのタスクが完了したあとで、クラスタの設定と管理のプロセスを効率化するために使用します。ただし、ここでは説明しません。

『インストールガイド』で説明しているタスクが完了したら、HADB の作成と cladmin コマンドの使用の手順について、『Sun ONE Application Server 管理者ガイド』を参照してください。


この節では次の項目について説明します。

clsetup コマンドの動作

clsetup コマンドは、スクリプト内に集められた Sun ONE Application Server コマンドのセットです。スクリプトを使えば、事前に内容が設定されている入力ファイルに基づいて、自動的にクラスタを設定できます。HADB はクラスタの設定の一環として作成されますが、その場合でも、『Sun ONE Application Server 管理者ガイド』に記載されているように、hadbm コマンドを使って作業用クラスタを設定する必要があります。


clsetup コマンドインタフェースは不確定です。不確定なインタフェースは試験的または一時的なインタフェースであるため、次のリリースで互換性がなくなったり、削除されたり、または安定したインタフェースに置き換えられたりする場合があります。


この節では次の項目について説明します。

入力ファイルの機能

clsetup コマンドでは、次の 3 つの入力ファイルを使ってクラスタを設定します。

一般的なクラスタの設定をするようあらかじめ設定されている、clsetup 設定パラメータを使用できます。別の設定をサポートするには、設定ファイルの一部かすべてを編集することができます。

clsetup コマンドが実行する内容

clsetup 入力ファイルに事前に設定されている値を使って、clsetup コマンドは次のことを行います。

clsetup コマンドで使用するコマンド

clsetup コマンドは、多数の hadbm コマンドと asadmin コマンドを使ってクラスタ設定手順を実行します。表 3-1 では、左側の列に clsetup のタスクを示し、右側の列にタスクの実施に使われるコマンドを示しています。

表 3-1 clsetup コマンドが使用する hadbm および asadmin コマンド 

clsetup で実行するタスク

コマンド

データベースが存在するかどうかをチェックします

hadbm status

HADB を作成して起動します

hadbm create

JDBC URL を取得します

hadbm get jdbcURL

セッションストアを作成します

asadmin create-session-store

インスタンスの状態をチェックします

asadmin show-instance-status

インスタンスを作成します

asadmin create-instance

JDBC 接続プールを作成します

asadmin create-jdbc-connection-pool

データソースを登録します

asadmin create-jdbc-resource

持続タイプを設定します

asadmin configure-session-persistence

インスタンスを再設定します

asadmin reconfig -u admin

clsetup の要件と制限事項

clsetup コマンドには、次の要件と制限が適用されます。

clsetup 入力ファイルの編集

clsetup コマンドに必要な入力ファイルは、インストール処理の中で設定インストールディレクトリ (デフォルトは /etc/opt/SUNWappserver7) の下にインストールされます。インストールプログラムでは一般的な設定を行うための値がこれらのファイルに事前に設定されますが、テキストエディタを使ってそれらの一部またはすべてを必要に応じて編集できます。

この節では次の項目について説明します。

clinstance.conf ファイル

clsetup コマンドを正しく動作させるため、クラスタの一部であるすべてのアプリケーションサーバーのインスタンスが clinstance.conf ファイルに定義されている必要があります。インストール時にインストールプログラムにより、2 つのインスタンス用のエントリを含む clinstance.conf ファイルが作成されます。クラスタにインスタンスを追加する場合は、そのインスタンスに関する情報を追加する必要があります。

clinstance.conf ファイルの形式は次のとおりです。

クラスタの一部であるインスタンスごとに 1 組のエントリが必要です。ハッシュマーク (#) で始まる行はコメントとして扱われます。


これらのエントリの clinstance.conf ファイルでの順序は重要であるため、ここで示す順序は変更しないでください。

その他のアプリケーションサーバーインスタンスに関する情報を追加する場合、これらのインスタンスのエントリはこの順序で表示される必要があります。

コメントはファイルの任意の場所に追加できます。


表 3-2 では、clinstance.conf ファイル内のエントリに関する情報を説明しています。左側の列にはパラメータ名、中央の列にはパラメータの定義、右側の列にはインストールプログラムにより指定されるデフォルト値を示しています。

表 3-2 clinstance.conf ファイルのエントリ 

パラメータ

定義

デフォルト値

instancename

Application Server のインスタンス名

server1、server2

user

Admin Server のユーザー名

admin

host

ホスト名

localhost

port

管理サーバーのポート番号

4848

domain

管理ドメイン名

domain1

instanceport

Application Server インスタンスポート

80, 81

clinstance.conf ファイルの例

この clinstance.conf ファイルには、2 つのインスタンスに関する情報が含まれています。

#Instance 1

instancename server1
user admin
host localhost
port 4848
domain domain1
instanceport 80

#Instance 2

instancename server2
user admin
host localhost
port 4848
domain domain1
instanceport 81

clpassword.conf ファイル

clsetup コマンドを実行するとき、asadmin コマンドには管理サーバーのパスワードが必要です。このパスワードは、インストール時に clpassword.conf ファイルに指定されます。

clpassword.conf ファイルの形式は次のとおりです。

password は管理サーバーのパスワードです。

アクセス権 0600 が clpassword.conf ファイルに事前設定されています。このファイルにアクセスできるのは root ユーザーのみです。

clresource.conf ファイル

インストール時にインストールプログラムにより、一般的な設定を行うための clresource.conf ファイルが作成されます。clresource.conf ファイルには、クラスタの一部である次のリソースに関する情報が含まれています。

アクセス権 0600 が clresource.conf ファイルに事前設定されています。これにアクセスできるのはルートユーザーのみです。


clsetup コマンドを実行する前に、最適化や別の設定のために、clresource.conf ファイルに指定した値を変更することができます。値を編集する場合は、ファイルの順序と形式を変更しないでください。

ハッシュマーク (#) で始まる行はコメントとして扱われます。


次の表では、clresource.conf ファイルのパラメータについて説明しています。左側の列にはパラメータ名、中央の列にはパラメータの定義、右側の列にはインストールプログラムにより指定されるデフォルト値を示しています。

表 3-3 では、clresource.conf ファイルの HADB パラメータについて説明しています。

表 3-3 clresource.conf ファイルの HADB パラメータ 

パラメータ

定義

デフォルト値

historypath

履歴ファイルのパス

/var/tmp

devicepath

データおよびログデバイスのパス

/opt/SUNWappserver7/SUNWhadb/4

datadevices

各ノード上のデータデバイスの数

1

portbase

ノード 0 に使われるポートベース番号。別のノードには、ここで示す番号から 20 ずつ増分されたポート番号 (10000 〜 63000 の範囲のランダムな番号) が割り当てられます

15200

spares

スペアノードの数

0

set

カンマで区切られた、データベース設定属性のリスト

有効なデータベース設定属性の説明については、『Sun ONE Application Server 管理者ガイド』を参照してください。

たとえば、SSH (デフォルト) ではなく RSH を使用するよう指定するには、次の行のコメント指定を外します。

#set managementProtocol=rsh

inetd

HADB が inet デーモンを使って実行されているかどうかを示します

false

inetdsetupdir

inet デーモンの設定ファイルがあるディレクトリ

/tmp

devicesize

デバイスのサイズ (M バイト)。このサイズはすべてのデバイスに適用されます

512

dbpassword

HADB ユーザーのパスワード

password

hosts

すべてのデータノードに使用されるすべてのホスト

値は、インストール時に指定したホストに基づいて自動的に設定されます


データベース名は、clresource.conf ファイルの [HADBINFO] セクションの末尾に指定されます。


表 3-4 では、clresource.conf ファイルのセッションストアパラメータについて説明しています。

表 3-4 clresource.conf ファイルのセッションストアパラメータ 

パラメータ

定義

デフォルト値

storeurl

HADB ストアの URL

REPLACEURL

注 : 値は実行時の実際の URL と置き換えられます

storeuser

セッションストアへのアクセス権を持つユーザー

appservusr

注 : 表 3-5 の username プロパティと一致する必要があります

storepassword

storeuser のパスワード

password

注 : 表 3-5 の password プロパティと一致する必要があります

dbsystempassword

HADB システムユーザーのパスワード

password

表 3-5 では、clresource.conf ファイルの JDBC 接続プールパラメータについて説明しています。

表 3-5 clresource.conf ファイルの JDBC 接続プールパラメータ 

パラメータ

定義

デフォルト値

steadypoolsize

プールに保持される接続の最小数および初期数

8

maxpoolsize

作成できる接続の最大数

32

datasourceclassname

ベンダーから提供される JDBC データソースの名前

ベンダーから提供される JDBC データソースに対応するデータソースクラスの名前は、 javax.sql.XADatasource インタフェースを実装する

XA に対応していない、またはローカルトランザクション専用のデータソースでは、javax.sql.Datasource インタフェースが実装される

com.sun.hadb.jdbc.ds.HadbDataSource

isolationlevel

プールされているデータベース接続のトランザクション分離レベルを指定する

repeatable-read

validationmethod

検証方法の種類を指定する

meta-data

property

ユーザー名、パスワード、およびリソース設定の指定に使われるプロパティ

username=appservusr:password=password:cacheDataBaseMetaData=false:eliminateRedundantEndTransaction=true:serverList=REPLACEURL

注: ユーザー名とパスワードのプロパティでは、必ず、セッションストアパラメータの表に示されている値と同じ値を使用してください。REPLACEURL は、実行時の実際の URL と置き換えらます)


接続プール名は、clresource.conf ファイルの [JDBC_CONNECTION_POOL] セクションの末尾に指定されます。


表 3-6 では、clresource.conf ファイルの JDBC パラメータについて説明しています。

表 3-6 clresource.conf ファイルの JDBC リソースパラメータ 

パラメータ

定義

デフォルト値

connectionpoolid

接続プールの名前

appservCPL

注 : 接続プール名は表 3-5 に指定されています。


JDBC リソース名は、clresource.conf ファイルの [JDBC_RESOURCE] セクションの末尾に定義されています。


表 3-7 では、clresource.conf ファイルのセッションの持続性パラメータについて説明しています。

表 3-7 clresource.conf ファイルのセッション持続性パラメータ 

パラメータ

定義

デフォルト値

type

セッション持続性タイプ

ha

frequency

セッション頻度

web-method

scope

セッションの範囲

セッション

store

セッションストア

jdbc/hastore

注 : ストア名は、[JDBC_RESOURCE] セクションの末尾に定義されています

clresource.conf ファイルの例

[HADBINFO]
historypath /var/tmp
devicepath /opt/SUNWappserver7/SUNWhadb/4
datadevices 1
portbase 15200
spares 0
#set    managementProtocol=rsh
inetd false
inetdsetupdir /tmp
devicesize 512
dbpassword password
hosts machine1,machine1
hadb

[SESSION_STORE]
storeurl                 REPLACEURL
storeuser              appservusr
storepassword             password
dbsystempassword        password

[JDBC_CONNECTION_POOL]
steadypoolsize         8
maxpoolsize         32
datasourceclassname     com.sun.hadb.jdbc.ds.HadbDataSource
isolationlevel          repeatable-read
validationmethod        meta-data
property username=appservusr:password=password:cacheDataBaseMetaData=false:e liminateRedundantEndTransaction=true:serverList=REPLACEURL

appservCPL

[JDBC_RESOURCE]
connectionpoolid      appservCPL
jdbc/hastore

[SESSION_PERSISTENCE]
type            ha
frequency        web-method
scope            session
store              jdbc/hastore

clsetup コマンドの実行

clsetup コマンドの実行の構文は次のとおりです。

引数が指定されていない場合、clsetup コマンドは次のデフォルトを使用します。

カスタムの入力ファイルの場所を指定することで、これらの引数を無効にできます。次に例を示します。

clsetup コマンドを実行するには、次の手順を実行します。

  1. 「clsetup の要件と制限事項」に記載されている要件が満たされていることを確認します。

  2. clsetup コマンドを root 以外のユーザーとして実行する場合は、「root 以外の特権に対する管理の設定」の手順に従って設定してください。


  3. 入力ファイルにクラスタの設定に必要な情報があることを確認します。必要に応じて、「clsetup 入力ファイルの編集」のガイドラインに従って入力ファイルを編集します。
  4. RSH を使用する場合は、clresource.conf ファイルを編集して次の行のコメント指定を外します (# 記号を削除します)。
  5. #set managementProtocol

  6. Sun ONE Application Server インストールディレクトリ下にある install_dir/bin ディレクトリに移動します。
  7. cd install_dir/bin

  8. 適切な構文を使って clsetup コマンドを起動します。たとえば、デフォルトでコマンドを実行するには次のようにします。
  9. ./clsetup

    clsetup コマンドにより、Welcome メッセージ、クラスタ設定の必要条件、および次のメッセージが表示されます。

    Do you want to start configuring your cluster? [Yes/No]

  10. 設定を開始するには、Yes と入力して Enter を押します。
  11. clsetup コマンドにより詳細モードで実行されます。さまざまなコマンドが実行中に画面に表示され、出力はログファイル /var/tmp/clsetup.log にリダイレクトされます。

    非常に重要なエラー (たとえば、存在しない HADB の作成の失敗など) が発生すると、設定が停止してログファイルにエラーが記録されます。ログファイルがすでに存在している場合は、出力が既存のログファイルに追加されます。


    処理するエントリ (HADB ノードと Application Server インスタンス) がすでに存在する場合、clsetup コマンドはそれらを削除したり再設定したりしないで、各設定手順は省略されます。この種のイベントは、ログファイルに記録されます。


  12. clsetup コマンドで設定が完了すると、ログファイルの場所を示すメッセージが表示されます。実行後に毎回ログファイルをスキャンすることをお勧めします。
  13. 完了すると、clsetup コマンドにより、表 3-8 に記載されている終了コードが返されます。
  14. 表 3-8 clsetup コマンドの終了コード 

    終了コード

    説明

    0

    正常に終了

    2

    使用法のエラー

    3

    インスタンスファイルが見つからない

    4

    インスタンスファイルを読み取れない

    5

    リソースファイルが見つからない

    6

    リソースファイルを読み取れない

    7

    パスワードファイルが見つからない

    8

    パスワードファイルを読み取れない

    10

    スクリプトで asadmin を検索できない

    11

    スクリプトで hadbm を検索できない

    12

    一時ファイルを作成できない

    13

    セッションストアの設定に失敗した

    14

    HADB の作成に失敗した

    15

    HADB get jdbcURL が失敗した

    16

    ユーザーが Welcome メッセージに存在する

clsetup コマンドを実行した直後にコマンド行から次のコマンドを実行することによって、終了コードのリストを取得できます。

clsetup コマンドのクリーンナップ手順

clsetup コマンドを実行したあと、発生したエラーがログファイル /var/tmp/clsetup.log に記録されます。clsetup コマンドの実行後に毎回ログファイルを調べ、報告される重大なエラー (たとえば、存在しないインスタンスの作成に失敗) を修正してください。

設定のすべてまたは一部は、次のようにして元に戻すことができます。

この章のタスク(および必要に応じて次の章のインストール後のタスク)を終了したら、『Sun ONE Application Server 管理者ガイド』を参照して、HADB の設定とクラスタ、ロードバランサプラグイン、および HADB の管理の手順に進んでください。



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