Sun Directory Services 3.1 で提供されている RADIUS サーバーは、リモートユーザーに認証サービスを提供します。RADIUS サーバーについての詳細は、Sun Directory Services 3.1 に付属のマニュアルを参照してください。
Sun Directory Services 3.1 で提供されている RADIUS サーバーは、NAS (Netowork Access Server) のための認証承認情報サーバーです。 NAS は、SLIP や PPP などのリモートアクセスプロトコルを使用して接続しようとしているリモートユーザーに、ネットワークへのアクセスポイントを提供するデバイスです。NAS は、リモートユーザーからの接続要求で提供される情報を RADIUS サーバーに転送します。RADIUS サーバーはその情報を、ディレクトリ内にあるそのリモートユーザーのエントリと照合します。そして、リモートユーザーの接続についての承認または拒否を NAS に戻します。また、リモートユーザー接続に適切な接続パラメータも提供します。
NAS は RAS (Remote Access Server) または RADIUS クライアントとも呼ばれます。.
図 6-4 に、RADIUS が Solaris Bandwidth と共に機能する様子をまとめます。

ユーザーは、ネットワーク資源へのアクセスを要求するエンティティです。ディレクトリデータベースでは、ユーザーは一意の uid 属性で識別されます。この例を含めてリモートユーザーを記述する属性はすべて、remoteUser オブジェクトクラスで定義されます。
NAS は、リモートユーザーが接続するデバイスです。NAS は RADIUS サーバーに認証状態、ユーザープロファイル、および承認について照会します。ディレクトリデータベースでは、NAS は一意の ipHostNumber 属性で識別されます。この例を含めて RADIUS クライアントを記述する属性はすべて nas オブジェクトクラスで定義されます。
RADIUS サーバーは NAS を認証して、ディレクトリデータベース内で、リモートユーザーの同一性と承認を確認します。そして、ユーザーの状態と設定情報を NAS に戻します。RADIUS サーバーが NAS を認証できなかった場合、要求は無視されます。つまり、接続の拒否はありません。
認証プロセスが完了すると、NAS はリモート接続に関するアカウンティング情報を RADIUS サーバーに送信します。この情報は動的に、ユーザーのディレクトリエントリに記録されます。記録された情報は、dynamicIPaddress、dynamicSessionID、dynamicSessionCounter、および dynamicAddressBinding の属性に格納されます。
次に、この情報は複製イベントを使って Solaris Bandwidth Manager の設定内容に複製されます。
次に、Solaris Bandwidth Manager と Sun Directory Services との間で情報の交換が発生します。このとき、Solaris Bandwidth Manager の設定内容は動的な情報で更新されます。作成されたフィルタやクラスには、関連する uid や sessionID 名で名前が付けられます。LSaction アクションが queueName 属性を持っている場合、クラスは作成されません。
Solaris Bandwidth Manager と相互運用するときは、動的なアカウンティングが使用されます。他の方法については、Sun Directory Services に付属のマニュアルを参照してください。
RADIUS プロトコルを使用可能にするには、Solaris Bandwidth Manager と Sun Directory Services の両方を設定する必要があります。設定手順とスキーマ情報については、Sun Directory Services に付属のマニュアルを参照してください。
Solaris Bandwidth Manager では、次のようにします。
/opt/SUNWconn/ba/html/beans/QRasPolicy.html ファイルを編集して、Solaris Bandwidth Manager が複製イベントに応答できるようにします。
Sun Directory Services では、次のようにします。
RADIUS サーバーに対する動的なアカウンティングを有効にします。
データベースで、NAS デバイスとリモートユーザーに必要なエントリを作成します。ユーザーごとに、remoteUser タイプのオブジェクトクラスに加えて、policyAux タイプのオブジェクトクラスを作成する必要があります。policyAux オブジェクトクラスは、remoteUser オブジェクトクラスと同じ識別名 (DN) を持っている必要があります。これは、remoteUser オブジェクトクラスが policyRef 属性を含むことができないためです。policyRef 属性は有効なポリシーを指す必要があります。
ディレクトリとポリシーエージェント間の情報の複製について、複製スケジュールを設定します。replication は immediate に設定します。つまり、複製の範囲内にあるエントリが変更されたとき、それらのエントリは適切なポリシーエージェントに自動的にプッシュされます。
リモートユーザーのエントリを含むサブツリーを複製します。リモートユーザーのエントリ内にある一部の属性だけを複製する場合、少なくとも dynamicIPaddress、dynamicSessionID、および dynamicSessionCounter の属性が含まれていることを確認する必要があります。
複製イベントに複製パスワードが含まれることを確認します。これは、Solaris Bandwidth Manager パッケージをインストールしたときに設定したパスワードで、/etc/opt/SUNWconn/ba/agent.properties ファイルに定義されています。リモートシステムの管理者の DN を設定するときに、このパスワードを入力するように求められます。DN 自身は無視されます。
ユーザーの policyAux オブジェクトクラスに含まれている policyRef 属性は、Policy タイプのエントリを指す必要があります。このためには、次のどちらかを行います。
新しく接続されたユーザーの IP アドレスを含むフィルタを作成します。
新しく接続されたユーザーの IP アドレスを含むクラスとフィルタを作成します。
サービスプロバイダは、Standard、StandardPlus、および Premium の 3 つのクラスのサービスを提供します。各クラスには、異なるレベルの保障帯域幅が割り振られています。管理トラフィックなどの副次的なトラフィックは root クラスによって処理されます。
|
クラス名 |
保障帯域幅 |
|---|---|
|
Premium |
50% |
|
StandardPlus |
30% |
|
Standard |
10% |
Fred Smith というユーザーは Premium クラスに加入しています。
Fred Smith からトラフィックを受信したとき、policyAux クラスの policyRef 属性がチェックされます。この属性は「Premium」ポリシーを指しています。「Premium」ポリシーは、queueName 属性「Premium」を持つ LSaction アクション「ActionPremiumClass」を含みます。
Fred Smith の IP アドレスを持つフィルタが作成されて、Premium クラスに追加されます。すると、Fred Smith からのトラフィックは Premium クラスにフィルタされます。このフィルタ名は、ディレクトリ内にある Fred Smith のユーザーエントリの UID に sessionID を加えたものです。
また、ポリシーに条件が追加される可能性もあります。たとえば、サービスの指定などです。
サービスプロバイダは、Standard、StandardPlus、および Premium の 3 つのクラスのサービスを提供します。各クラスには、異なる保障帯域幅が割り振られています。管理トラフィックなどの副次的なトラフィックは root クラスによって処理されます。ただし、サービスの管理者が互いに優先度が高いメッセージを送信する必要がある場合もあります。そのためには、admin-urgent というアカウントから電子メールを送信します。こうすると、優先度が 1 で、保障帯域幅が 10% のクラスが作成され、このようなメッセージは即座に処理されます。
Jane Brown というユーザーは、他の管理者たちに緊急のメッセージを送信する必要があります。そのために、Jane Brown は admin-urgent としてログインします。admin-urgent からトラフィックを受信すると、policyAux クラスの policyRef 属性がチェックされます。この属性は「Urgent」ポリシーを指しています。「Urgent」ポリシーは、ceilingRate、guaranteedRate、および queuePriority という属性を持つ LSaction を含みます。queueName 属性が存在しないため、指定された最大帯域幅、保障帯域幅、および優先度を持つ urgent というクラスが Solaris Bandwidth Manager ソフトウェアによって作成されます。次に、admin-urgent のメッセージの送信元である IP アドレスを含むフィルタが作成されます。このフィルタ名は、UID と sessionID から構成されます。