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Sun Java System Identity Synchronization for Windows 1 2004Q3 インストールおよび設定ガイド |
第 6 章
既存ユーザーの同期Identity Synchronization for Windows のコマンド行ユーティリティには、配備に既存のユーザーを取り込むための idsync resync サブコマンドが用意されています。このコマンドは、管理者が指定した一致規則を使用して既存エントリにリンクを設定し、空のディレクトリにリモートディレクトリの内容を取り込みます。また、既存の 2 つのユーザー集合間で、パスワードも含む属性値を一括同期させることもできます。
この章では、idsync resync サブコマンドを使用して、Identity Synchronization for Windows の新規インストール用に既存のユーザーにリンクを設定し、同期させる方法について説明します。また、同期とサービスを開始、終了する方法についても説明します。この章で説明する内容は、次のとおりです。
注
既存ユーザーをリンクおよび同期させるには、コアとコネクタのインストールが事前に完了している必要があります。
idsync resync サブコマンドについては、付録 A 「Identity Synchronization for Windows のコマンド行ユーティリティの使用」を参照してください。
表 6-1 は、インストール後の操作手順を既存ユーザーのタイプ別に示しています。
idsync resync の使用次に、リンク設定と同期の手順について、idsync resync サブコマンドの正しい構文と、手順が正しく完了したことを検証する方法について説明します。ここで説明する内容は、次とおりです。
ユーザーの再同期
idsync resync コマンドを使用して、既存エントリのリンク、ユーザーの作成、2 つのディレクトリソース間のユーザー属性の同期を行うことができます。具体的には、idsync resync コマンドを使用して次の操作を行えます。
- 空の Directory Server に Active Directory または Windows NT SAM ドメインの既存ユーザーを取り込む
- 既存の 2 つのディレクトリソースの間ですべてのユーザーをリンクさせ、次にパスワード以外のすべてのユーザーエントリ属性値を同期させる
- 2 つのディレクトリソースの間で同期がずれた場合に、ユーザーエントリを同期させる
- Active Directory および Windows NT SAM コネクタのオブジェクトキャッシュデータベースを事前準備できる。このデータベースでは、Active Directory または Windows NT SAM ユーザーエントリのシャドウコピーが維持される
idsync resync コマンドを使用してパスワードを同期させることはできません。ただし、Directory Server パスワードを無効化し、Active Directory 環境でオンデマンドパスワード同期を強制する場合は例外です。
ユーザーのリンク
Active Directory と Directory Server にユーザーを取り込み、Active Directory と Directory Server のコネクタのインストールが完了したら (同期を開始する前)、idsync resync コマンドを使用して、2 つのディレクトリソース内のすべての既存ユーザーがリンクされていることを確認する必要があります。
リンク設定とは、次の一意で不変の識別子を格納することで、Identity Synchronization for Windows が Directory Server 側と Windows 側の同一ユーザーを関連付けることです。
この不変の識別子を格納することで、Identity Synchronization for Windows は uid や cn のような、その他の主要識別子も同期させることができます。dspswuserlink 属性は、次の場合に取り込まれます。
- Identity Synchronization for Windows が Directory Server に新規ユーザーを作成する (Windows からの新規ユーザーを同期させる、または idsync resync -c を実行する)
- Identity Synchronization for Windows が Windows に新規ユーザーを作成する (Directory Server からの新規ユーザーを同期させる、または idsync resync -c -o Sun を実行する)
- この章ですでに説明したように、idsync resync -c -f を実行して Directory Server と Windows の既存のエントリをリンクさせる
既存のユーザーをリンクさせるには、2 つのディレクトリの間でユーザーを一致させるための規則を指定する必要があります。たとえば、2 つのディレクトリのユーザーエントリをリンクさせるには、両方のディレクトリで姓と名が一致する必要がある、などの規則を指定します。
ユーザーエントリのリンクとデータ衝突の解決は、純粋に技術的な観点から説明できます。対応する 2 つのディレクトリソース間で idsync resync サブコマンドがユーザーのリンクに失敗する原因は数多くありますが、その多くはリンク対象ディレクトリ内のデータの不整合によるものです。
idsync resync を使用する際の戦略の 1 つとして、引数 -n の使用があげられます。この引数を指定した場合、コマンドの処理は「安全モード」で行われ、実際に変更を加えることなく実行結果を確認できます。安全モードで実行することで、最適なユーザー一致条件の組み合わせが見つかるまで、リンク条件を詳細に調整できます。
試行を繰り返すうちに、リンクの精度とリンク対象範囲のバランスが浮かび上がってきます。
たとえば、両方のディレクトリソースに従業員 ID 番号または社会保障番号の属性が含まれている場合は、まず、この番号だけを対象としたリンク条件を指定します。リンクの精度を向上させるには、条件に姓の属性も追加したほうがよいかもしれません。しかし、データに記録されている姓に不整合があれば、最初に番号だけで一致させた場合に特定できたエントリのリンクを失う可能性もあります。リンクに失敗するエントリについては、データクレンジングを行う必要があります。
idsync resync の引数
idsync resync コマンドは、次の引数を受け付けます。
表 6-2 idsync resync の使用方法
引数
意味
-f <filename>
Identity Synchronization for Windows に用意されているいずれかの XML 設定ファイルを使用して、リンクが設定されていないユーザーエントリの間にリンクを作成する (付録 B 「LinkUsers XML ドキュメントのサンプル」を参照)
-k
ユーザーの作成、既存ユーザーの変更は行わずに、リンクが設定されていないユーザーの間だけにリンクを作成する。この引数は、引数 -f と組み合わせて使用する必要がある
-a <ldap-filter>
同期の対象となるエントリを制限する LDAP フィルタを指定する
このフィルタは、同期処理のソース側に適用される
たとえば、idsync resync -o Sun -a "usid=*" と指定した場合、uid 属性を持つすべての Directory Server ユーザーが Active Directory 側で同期される-l <sul-to-sync>
再同期対象の同期ユーザーリスト (SUL) を個別に指定する
注意 : 複数の SUL ID を指定して複数の SUL を再同期させることも、SUL ID を指定せずにすべての SUL を再同期させることもできる
-o (Sun | Windows)
再同期処理のソースを指定する
デフォルトは Windows
-c
ターゲット側に対応するユーザーが見つからなかった場合に自動的にユーザーエントリを作成する
注意 : その方向の作成を設定していない場合でも、Identity Synchronization for Windows はユーザーの作成を試みる。たとえば、Windows から Sun (またはその反対) への同期を Identity Synchronization for Windows に設定しなかった場合でも、-c 引数を指定すると、Identity Synchronization for Windows は見つからなかったユーザーの作成を試みる
-i (ALL_USERS | NEW_USERS | NEW_LINKED_USERS)
Sun ディレクトリソースで同期されるユーザーエントリのパスワードをリセットし、次にユーザーパスワードの入力が求められるときに、これらのユーザーに現在のドメイン内でパスワードの同期を強制する
これらのオプションがパスワードの検証に与える影響については、表 6-3 を参照
-u
オブジェクトキャッシュを更新する
この引数は、Windows ディレクトリソースのユーザーエントリのローカルキャッシュだけを更新する。これにより、Windows の既存ユーザーは Directory Server 側に作成されない。この引数を指定した場合、Windows ユーザーエントリは Directory Server ユーザーエントリと同期されない。この引数は、再同期のソースが Windows の場合にだけ有効である
-x
ソースエントリと一致しないターゲット側ユーザーエントリをすべて削除する
-n
実際の変更なしでコマンドの実行結果を確認できるように、安全モードで実行する
表 6-4 は、異なる引数を組み合わせた結果の例を示しています。表記を簡略化するため、-h、-p、-D、-w、-s の各引数にについてはデフォルトの動作を適用し、指定を省略しています。
セントラルログによる結果の確認idsync resync のすべての動作の結果は resync.log という特別なセントラルログに記録されます。このログには、正しくリンクおよび同期されたユーザー、リンクできなかったユーザー、すでにリンクされているユーザーがすべて記録されます。
同期の開始と終了同期を開始または終了しても、個々の Java プロセス、デーモン、サービスは開始または停止されません。同期の開始後、同期を終了しても処理が一時停止されるだけです。同期を再開すると、プログラムは直前の終了時から同期を再開するため、変更が失われることはありません。
同期を開始または終了するには、次の手順を実行します。
- Sun Java System サーバーコンソールのナビゲーションパネルで Identity Synchronization for Windows インスタンスを選択します。
- Identity Synchronization for Windows のパネルが表示されるので、右上端の「開く」ボタンをクリックします。
- 入力が求められたら、設定パスワードを入力します。
- 「タスク」タブ (図 6-1) を選択します。
図 6-1 同期の開始と終了
- 同期を開始するには、「同期を開始します」をクリックする
- 同期を終了するには、「同期を停止します」をクリックする
注
コマンド行ユーティリティ idsync startsync、idsync stopsync を使用して同期を開始、終了することもできます。詳細な方法については、「startsync の使用」および「stopsync の使用」を参照してください。
サービスの開始と停止Identity Synchronization for Windows と Message Queue は、Solaris 環境ではデーモンとして、Windows 環境ではサービスとしてインストールされます。これらのプロセスは、システムの起動時に自動的に開始されますが、次に示すように、これを手動で開始および停止することもできます。
注
停止した Identity Synchronization for Windows デーモンまたはサービスを再開するときは、30 秒以上が経過してから行ってください。コネクタは、すべての接続を終了してシャットダウンするまでに数秒を要することがあります。