Solaris PC NetLink 管理マニュアル

6.1 SunLink Server の障害追跡ツール

SunLink Server は障害追跡を支援するさまざまなツールを提供しています。これらのツールは以下の 3 つのカテゴリに分類することができます。

以下の節では、各カテゴリのツールをまとめ、障害追跡を行う際の使用方法について簡潔に説明します。

6.1.1 サーバーの状態を評価するツール

SunLink Server プログラムには、指定した任意の時間にサーバーの稼動状態を評価する際に使用できる複数のツールが含まれています。サーバーの状態を頻繁に評価することによって、問題や傾向を迅速に認知でき、サーバー管理者としての能力を向上させることができます。

サーバー状態の定期的な見直しは、正常な問題のないサーバーがどのような状態であるかを理解する上で確固たる基礎を提供します。時間が経過すると、基準から外れた情報は何かに変化があったことを示し、注意する必要のある兆候となります。

以下の節でサーバーの状態を評価するツールについて説明します。

6.1.1.1 イベントログ

サーバーの毎日の動作に関連する数々のイベントは、SunLink Server Manager のイベントログを使用して追跡することができます (第 3 章「SunLink Server ソフトウェアの構成と管理」を参照)。これらのイベントはシステムセキュリティーアプリケーションの 3 つのイベントログのうちの 1 つに保持されます。管理者はイベントログの取り扱い方針を検討し、定期的な障害追跡の作業の一部にイベントログの見直しをする必要があります。

スプレッドシートやワードプロセッサを使用してイベントログデータを処理し、サーバーの通常の使用を記録しておくと非常に役立ちます。この方法でサーバーの標準的な動作プロファイルを生成して、サーバーの使用における傾向を予測することができます。


注 -

elfread コマンドを使用してイベントログを表示することもできます。詳細を参照するには、SunLink Server のコマンドプロンプトで man elfread と入力してください。


6.1.1.2 サーバーの状態

SunLink Server は、現在の使用だけでなく一定期間の累積的な使用に関する詳細な統計も保持しています。サーバーに問題が発生したときだけでなく定期的にこの統計の見直しをしておくと非常に役立ちます。

サーバー情報

現在のサーバーの使用状況に関するデータを表示するには、SunLink Server Manager の情報表示を使用します (詳細は、「SunLink Server の情報の表示方法」 を参照してください)。現在のクライアントやサーバーセッションとこれらのセッションで使用されている資源に関する、以下のような詳細が提供されます。

累積的な統計

サーバーの累積的な使用データを表示するには、SunLink Server コマンドプロンプトで net statistics コマンドを使用することもできます。このコマンドはさまざまなサーバーの動作に関する累積的な統計を提供します。定期的にこのコマンドを使用して提供されるサーバーの統計の見直しをすれば、サーバーの動作の変化に気付いて容易に対処することができます。

以下の統計は SunLink Server システムに関して保持されるもので、net statistics command を使用して取得することができます。

表 6-1 累積的な統計の説明

統計 

説明 

リフレッシュされた時刻 

この統計セットが開始された時刻を示します (最後にサーバーが起動した時刻または最後に統計がクリアされた時刻)。 

受信されたセッション 

ユーザーがサーバーに接続した回数を示します。 

タイムアウトしたセッション 

非活動によってユーザーのセッションがクローズした回数を示します。 

エラーが発生したセッション 

エラーによってユーザーのセッションが終了した回数を示します。 

送信バイト数 

サーバーが転送したデータの K バイト数を示します。 

受信バイト数 

サーバーが受信したデータの K バイト数を示します。 

平均応答時間 (ミリ秒) 

リモートサーバー要求の処理にかかった平均応答時間を示します。これは Solaris システムサーバーでは常に 0 になります。 

システムエラー 

これは Solaris システムサーバーには適用されません。 

アクセス違反 

必要な権限を持たないユーザーが資源にアクセスを試みた時間を示します。 

パスワード違反 

間違ったパスワードが入力された回数です。 

アクセスしたファイル  

使用されたファイルの数です。 

アクセスした COM デバイス 

SunLink Server ではサポートされていません。 

スプールされた印刷ジョブ 

サーバー上の印刷待ち行列にスプールされた印刷ジョブの数です。 

バッファーのオーバーフロー回数 

大きなバッファーおよび要求バッファーが不足した数です。Solaris システムサーバーでは常に 0 に設定されます。 

Windows NT ワークステーションからのセッション情報を表示する方法

管理者はクライアントとサーバーの間のセッションを表示して制御することができます。この情報を使用して特定のサーバー上の作業負荷を測定することができます。

サーバーマネージャを使用して Windows NT ワークステーションコンピュータまたは Windows クライアントコンピュータからのセッション情報を表示する手順は以下のとおりです。

  1. サーバーマネージャを起動します。

  2. セッション情報を表示したい SunLink Server システムを選択します。

  3. [ユーザー] ボタンをクリックします。

SunLink Server のコマンドプロンプトで net session コマンドを使用してセッション情報を表示することもできます。


注 -

ユーザー名を表示していないセッションが表示される場合もあります。セッションは管理活動の結果なので、削除しないようにしてください。


Microsoft Windows コンピュータからセッションをクローズする方法

管理者はいつでもサーバーからユーザーを切断することができます。ユーザーセッションのクローズによってユーザーが再接続できなくなることはありません。

サーバーマネージャを使用して Windows NT コンピュータまたは Windows クライアントコンピュータからユーザーセッションを切断する手順は以下のとおりです。

  1. サーバーマネージャを起動します。

  2. セッション情報を表示する SunLink Server システムを選択します。

  3. [ユーザー] ボタンをクリックします。

  4. ユーザーを強調表示して [切断] ボタンを選択します。

SunLink Server のコマンドプロンプトで net session コマンドを使用してユーザーセッションを切断することもできます。

Microsoft Windows コンピュータから開いている資源を閉じる方法

ユーザーが共有ファイルを使用しているとき、ファイルは開いています。アプリケーションプログラムのエラーやその他の問題のために、そのファイルがロックされているにも関わらず開いている状態になっていることもあります。このような開いた状態のファイルは他のユーザーが使用できません。管理者はこうしたファイルを閉じることができます。

サーバーマネージャを使用して Windows NT コンピュータまたは Windows クライアントコンピュータから開いている資源を閉じる手順は以下のとおりです。

  1. サーバーマネージャを起動します。

  2. データを表示する SunLink Server を選択します。

  3. [使用] ボタンをクリックします。

  4. 開いている資源を強調表示して [資源を閉じる] ボタンを選択します。

SunLink Server のコマンドプロンプトで net file コマンドを使用して開いている資源を閉じることもできます。

6.1.1.3 印刷サブシステムイベントログ

SunLink Server は各共有プリンタおよびサーバーが使用する各 Solaris システムプリンタについて個別の印刷ログを保持しています。これらのログファイルはプリンタの障害や印刷ジョブのエラーによって生成されるメッセージをすべて記録します。

管理者はこれらのログファイルを確認してこのようなエラーが発生していないかを調べる必要があります。PRINTLOG 共有資源にリンクすることによってクライアントコンピュータからこのログにアクセスできます。

サーバーからログにアクセスすることもできます。次のディレクトリにあります。 /opt/lanman/shares/printlog

6.1.2 サーバーの通常の状態を提供するツール

迅速な対処はサーバーの問題を取り扱う際に非常に重要です。問題が発生したときにすぐ認識することによって、その問題がサーバーユーザーのコミュニティーに与える影響を大幅に削減することができます。

問題が発生したときに指定したユーザーに通知するように SunLink Server ソフトウェアを構成することができます。また、問題が発生したときに通知を行うように Solaris システムを構成することもできます。以下の節でこれらの機能について説明します。

6.1.2.1 Alerter サービス

SunLink Server ソフトウェアには、特定のイベントが発生したことを指定したユーザーに知らせる際に使用できる Alerter サービスがあります。管理者はこのサービスを使用してただちにサーバーの問題を知らせる必要があります。サーバーの問題を解決するための迅速な行動によって、影響を最小限に抑えることができます。警告が生成される状況例を以下に示します。

6.1.2.2 Solaris システムと SunLink Server の機能

SunLink Server ソフトウェアの利点の 1 つは、Solaris オペレーティングシステムが提供する独自のスクリプト機能が利用できることです。管理者はこれらの機能と SunLink Server ソフトウェアが提供するデータ収集ツールを組み合わせて強力なツールを作成し、いつでも指定した時間に SunLink Server システムの状態を評価することができます。

たとえば、Solaris システムジョブスケジュール作成機能 (CRON)、SunLink Server が提供するさまざまなデータ収集ツール、およびファイルシステムの完全性や空き領域を確認するための標準的な Solaris システムコマンドのうちのいくつかを使用して、一定の間隔でさまざまなシステムやサーバーの確認を行い、Solaris システム管理者に結果を送信するスクリプトを書くことができます。

6.1.3 サーバー問題のデバッグを行うツール

SunLink Server ソフトウェアには、サーバー問題の障害追跡に使用できる Solaris システムコマンドがあります。これらのコマンドは SunLink Server コマンドプロンプトで実行できます。この節では、これらのコマンドについてまとめ、サーバーの障害追跡においてそのコマンドが果たす役割について説明します。

各コマンドの詳細を参照するには、SunLink Server コマンドプロンプトで man コマンドを入力してください。

6.1.3.1 lmshell

lmshell コマンドは、実際に MS-DOS クライアントにアクセスしていないときに MS-DOS クライアントセッションをエミュレートする際に役立ちます。このコマンドは、クライアントとサーバー間の接続問題の障害追跡を行う際に特に便利です。lmshell コマンドを使用して、SunLink Server のコマンドプロンプトの lmshellnet logonnet use コマンドを実行することで、クライアントログオンや資源のリンクを模倣することができます。

6.1.3.2 lmstat

lmstat コマンドは、サーバーの共有メモリーイメージに問い合せて、サーバーの現在の状態に関するさまざまなデータを収集します。このコマンドは、どのサーバープロセスでクライアントセッションがオンになっているかを調べるときに特に便利です。

SunLink Server ソフトウェアは、一連の協調的なプロセスで構成されています。サーバーが稼動しているときに次のコマンドを入力します。

ps -ef | grep lmx

このコマンドを実行すると以下のような表示が生成されます。

root 17726 1 0 12:03:36 0:00 lmx.alerter

root 17713 17461 0 12:03:32 0:00 lmx.srv -s 1

root 17722 17874 0 12:03:35 0:00 lmx.srv -s 2

root 17726 1 0 12:03:36 0:01 lmx.dmn

root 17728 1 0 12:03:36 0:01 lmx.browser

root 17744 1 0 12:03:28 0:00 lmx.ctrl

この例では、2 つの lmx.srv サーバープロセス (17713 と 17722) があります。サーバーには現在 9 つのクライアントとセッションを持っています。

どの lmx.srv プロセスにクライアントが接続しているかを知るためには、サーバープロンプトで lmstat -c を実行します。システムは以下のような出力を表示します。

Clients:

BANANA.SERVE‾X (nwnum=0, vcnum=0) on 17713

ORANGE (nwnum=0, vcnum=0) on 17713

PEAR (nwnum=0, vcnum=0) on 17722

各クライアント名に対応するプロセス ID 番号が付いているのがわかります。これは現在そのクライアントを管理している lmx.srv プロセスのプロセス ID です。vcnum の値はこれがクライアントコンピュータの最初の VC か追加の VC かを指定するものです。

クライアントを管理している lmx.srv プロセスのプロセス ID を調べることは、lmstat -w または Solaris システムの truss( ) コマンドを使用するときに特に便利です。このコマンドは共に起動引数の一部としてプロセス ID を必要とします。(-w オプションはすべてのオペレーションシステム上で有効ではありません。)

6.1.3.3 regconfig

regconfig コマンドは、SunLink Server レジストリのキー情報の照会や変更を行う際に使用します。このコマンドを使用して、レジストリにある任意の値を変更することができます。(Windows NT レジストリエディタを使用してキーの値を変更することもできます。)

regconfig コマンドを使用して、SunLink Server のレジストリをシステムのデフォルトに再初期化することもできます。

レジストリの詳細については、付録 A 「SunLink Server のレジストリ」 を参照してください。

6.1.3.4 regcheck

regcheck コマンドは、SunLink Server のレジストリファイルの確認や修正を行う際に使用します。このコマンドは SunLink Server レジストリファイルの内部構造のみを確認し、そこに保存されているデータの有効性については確認しません。

レジストリファイルの内部構造が無効なことが判明した場合は、regcheck コマンドを使用して必要な修正を行います。

6.1.3.5 samcheck

samcheck コマンドは、SAM データベースの確認、ダンプ、および修正を行う際に使用します。このコマンドを使用して、ユーザーアカウントデータベースが破壊されていないかを確認し、必要に応じて修正を行います。

samcheck コマンドを使用して、ユーザーアカウントデータベースのコンテンツを人間が読める形式で stdout に出力することもできます。

6.1.3.6 srvconfig

srvconfig コマンドは、lanman.ini ファイルにあるすべてのサーバーパラメタの現在のデフォルト設定を表示する際に使用します。(修正したいパラメタの場所やスペリングを確認するにも良い方法です。)

lanman.ini ファイルには、修正可能な構成パラメタがいくつか含まれています。これらのパラメタの多くにはデフォルト設定が使用されていますが、そのうちのいくつかは変更してサーバーのインストール時に設定されたデフォルト値を上書きすることができます。

lanman.ini ファイルのデフォルト設定を表示するには、次のコマンドを使用します。

srvconfig -p | more

このコマンドは lanman.ini ファイルにあるすべてのパラメタとそのデフォルト設定のリストを生成します。

6.1.3.7 acladm

acladm コマンドは、アクセス制御リストで発見された問題の確認と修正に使用します。

実行する前に、このコマンドで使用できるオプションを調べてください。SunLink Server のコマンドプロンプトで man acladm コマンドを入力します。