この章では、Sun Cluster サーバー上で Sun Cluster HA for NetBackup データサービスを設定し、管理する方法について説明します。
この章で説明する手順は次のとおりです。
Sun Cluster HA for NetBackup 製品は VERITAS NetBackup マスターサーバー、VERITAS NetBackup スレーブサーバー、VERITAS NetBackup クライアント、および Sun Cluster HA for NetBackup データサービスから構成されます。
NetBackup マスターサーバーとは、集中管理スケジューリングサーバーのことです。各クラスタは NetBackup マスターサーバーを 1 つだけ持つことができます。
通常、非クラスタ化システムでは、バックアップを作成し、格納するデバイスは、マスターサーバーが動作しているノードに接続されます。しかし、Sun Cluster 環境では、バックアップデバイスは、マスターサーバーではなく、スレーブサーバーに接続される必要があります。さらに、バックアップデバイスもスレーブサーバーもクラスタ内に入れることはできません。マスターサーバーはパブリックネットワーク経由でスレーブサーバーと通信します。
NetBackup スレーブサーバーとは、バックアップを実際に実行するマシンのことです。各クラスタはゼロまたは 1 つ以上のスレーブサーバーを持つことができます。複数のスレーブサーバーを使用すると、作業負荷を分散できます。
NetBackup クライアントとは、クラスタの内側または外側のノード上で動作するプロセスのことです。NetBackup クライアントはバックアップするマシンのデータを、マスタースレーブとスレーブサーバーに転送します。
Sun Cluster HA for NetBackup 製品には NetBackup メディアマネージャもあります。NetBackup メディアマネージャはバックアップデバイスと対話するためのデーモンから構成されます。このようなデーモンは Sun Cluster の制御下に置かれません。
VERITAS NetBackup と Sun Cluster HA for NetBackup をインストールする前に、次の注意事項を考慮してください。図 14-1 に、構成の制限を示します。
VERITAS NetBackup は単一インスタンスのデータサービスです。1 つのクラスタでは VERITAS NetBackup の複数のインスタンスを実行できません。
NetBackup マスターサーバーはクラスタ内にインストールする必要があります。
NetBackup クライアントはクラスタの内側にも外側にも存在できます。
NetBackup スレーブサーバーとバックアップデバイス (テープライブラリや光学スキャナなど) はクラスタ内に入れることはできません。
NetBackup マスターサーバーに関連する共有ディスクは、日々増大していく NetBackup の管理ファイルとログを格納できる容量でなければなりません。管理ファイルとログの大きさは、各自の構成に必要なバックアップ活動量によって異なります。
NetBackup の起動スクリプトとシャットダウンスクリプト (S77netbackup と K77netbackup) のエントリは、クラスタノード上の rc sスクリプトに追加してはなりません。NetBackup の起動スクリプトとシャットダウンスクリプトは、クラスタノードの起動とシャットダウンから隔離する必要があります。
図 14-1 に、Sun Cluster HA for NetBackup のサポートされる構成を示します。
NetBackup マスターサーバーはクラスタ内に存在する必要があります。NetBackup クライアントはクラスタの内側にも外側にも構成できます。バックアップデバイスを接続できるのはスレーブサーバーだけです。また、バックアップデバイスもスレーブサーバーもクラスタ内に入れることはできません。
NetBackup 構成要素間の通信はパブリックネットワーク接続経由だけで行われます。ファイルオーバーやスイッチオーバーの場合、クラスタの制御下にある構成要素はバックアップノードにファイルオーバーまたはスイッチオーバーされます。
Sun Cluster 製品をインストールし、構成した後、VERITAS NetBackup 製品をインストールし、構成するには、次の手順を使用します。また、VERITAS のマニュアルも参照してください。
Sun Cluster を起動します。
すべてのノード上で、VERITAS 製品 CD-ROM から VERITAS NetBackup パッケージを /opt/openv ディレクトリにインストールします。
VERITAS NetBackup 製品は 2 つのパッケージ (SUNWmmgr と SUNWnetbp) から構成されます。どちらも VERITAS 製品の CD-ROM から入手できます。
すべてのノード上で、SUNWmmgr パッケージを最初にインストールし、SUNWnetbp パッケージを次にインストールします。この順番はパッケージの依存関係のために必要です。
パッケージのインストール中、/usr/openv と /opt/openv 間にリンクが自動的に作成されます。
# pkgadd -d . SUNWmmgr SUNWnetbp |
NetBackup マスターサーバーになる論理ホストを選択します。
この手順の例では、nb-master という名前は NetBackup マスターサーバーになる論理ホストを指し、slave-1 はスレーブサーバーを指します。
すべてのクラスタノード上で、VERITAS NetBackup インストール後実行スクリプトを実行します。
手順 3 で選択した NetBackup 論理ホストをデフォルトのマスターに切り替えて、デフォルトのマスター上で VERITAS NetBackup インストール後実行スクリプトを実行します。
phys-hahost1# haswitch phys-hahost1 nb-master phys-hahost1# /usr/openv/netbackup/bin/install_bp ... Would you like to use "phys-hahost1.somedomain.com" as the configured name of the NetBackup server? (y/n) [y] n ... Enter the name of the NetBackup server: nb-master ... Is nb-master the master server? (y/n) [y] y ... |
NetBackup 論理ホストを別のノードに切り替えて、そのノード上でインストール後実行スクリプトを実行します。すべてのノード上でインストール後実行スクリプトを実行するまで、この手順を繰り返します。
このスクリプトからマスターサーバー名を尋ねられたときは、デフォルトではなく、論理ホスト名を指定する必要があります。スレーブサーバーにはクラスタ固有な条件は存在しないため、各自の構成に従って設定してください。
phys-hahost2# haswitch phys-hahost2 nb-master phys-hahost2# /usr/openv/netbackup/bin/install_bp ... Would you like to use "phys-hahost1.somedomain.com" as the configured name of the NetBackup server? (y/n) [y] n ... Enter the name of the NetBackup server: nb-master ... Is nb-master the master server? (y/n) [y] y ... |
もう一度、NetBackup 論理ホストをデフォルトのマスターに切り替えます。
phys-hahost1# haswitch phys-hahost1 nb-master |
デフォルトのマスター上でのみ、/usr/openv/netbackup/bp.conf ファイルを編集して、バックアップサーバーへのすべての要求が論理ホストから送信されるように設定します。
/usr/openv/netbackup/bp.conf ファイルを編集して、CLIENT_NAME に論理ホストを指定します。さらに、REQUIRED_INTERFACE に論理ホストを指定する新しい行も追加します。結果のファイルは次のようになります。nb-master は論理ホスト名です。
SERVER = nb-master SERVER = slave-1 CLIENT_NAME = nb-master REQUIRED_INTERFACE = nb-master |
NetBackup 構成ファイルを共有ディスクに移動します。
次の例において、diska は論理ホスト nb-master の共有ディスクのマウントポイントです。論理ホスト nb-master のデフォルトのマスター上で、次のコマンドを実行します。
# /usr/openv/netbackup/bin/goodies/K77netbackup # mkdir /diska/netbackup # mv /usr/openv/netbackup/bp.conf /diska/netbackup # mv /usr/openv/netbackup/db /diska/netbackup # mv /usr/openv/volmgr/database /diska/netbackup # ln -s /diska/netbackup/bp.conf /usr/openv/netbackup/bp.conf # ln -s /diska/netbackup/db /usr/openv/netbackup/db # ln -s /diska/netbackup/database /usr/openv/volmgr/database |
次に、他のすべてのノード上で、次のコマンドを実行します。
# /usr/openv/netbackup/bin/goodies/K77netbackup # rm -rf /usr/openv/netbackup/bp.conf # rm -rf /usr/openv/netbackup/db # rm -rf /usr/openv/volmgr/database # ln -s /diska/netbackup/bp.conf /usr/openv/netbackup/bp.conf # ln -s /diska/netbackup/db /usr/openv/netbackup/db # ln -s /diska/netbackup/database /usr/openv/volmgr/database |
これで、VERITAS NetBackup はインストールされました。次は、「Sun Cluster HA for NetBackup のインストールと構成」に進んでください
この節では、Sun Cluster HA for NetBackup をインストールして、構成、登録、起動する手順を説明します。Sun Cluster HA for NetBackup を構成する前に、Sun Cluster と VERITAS NetBackup 製品をインストールし、設定しておく必要があります。
Sun Cluster HA for NetBackup の構成には、hadsconfig(1M) コマンドを使用します。詳細は、hadsconfig(1M) のマニュアルページを参照してください。
このリリースの Sun Cluster で NetBackup を使用するには、scinstall(1M) コマンドと hadsconfig(1M) コマンドが Sun Cluster HA for NetBackup を認識できるようにするパッチをインストールしておく必要があります。これらのパッチは、ご購入先または SunSolve の Web サイト (http://sunsolve.sun.com から入手してください。これらのパッチをインストールするのは、Sun Cluster をインストールして構成した後で、Sun Cluster HA for NetBackup をインストールする前です。
各 Sun Cluster サーバー上で、Sun Cluster HA for NetBackup パッケージ (SUNWscnb) をインストールします (まだインストールしていない場合)。
すべてのクラスタノード上で、このパッケージはデフォルトの場所にインストールします。scinstall(1M) を実行する方法については、第 3 章「Sun Cluster ソフトウェアのインストールと構成」を参照してください。
hareg(1M) コマンドを実行して、Sun Cluster HA for NetBackup データサービスを登録します。
このコマンドを実行するのは、1 つのノード上だけです。
phys-hahost1# hareg -s -r netbackup |
hadsconfig(1M) コマンドを実行して、Sun Cluster HA for NetBackup を構成します。
hadsconfig(1M) で指定する情報については、「Sun Cluster HA for NetBackup に対する構成パラメータ」を参照してください。このコマンドを実行するのは、1 つのノード上だけです。
phys-hahost1# hadsconfig |
hareg(1M) コマンドを使用して、Sun Cluster HA for NetBackup を起動します。
このコマンドを実行するのは、1 つのノード上だけです。
phys-hahost1# hareg -y netbackup |
これで、構成は完了です。
この節では、Sun Cluster HA for NetBackup 用の構成ファイルを作成するときに hadsconfig(1M) コマンドで指定する情報について説明します。hadsconfig(1M) コマンドはテンプレートを使用して、構成ファイルを作成します。このテンプレートには、デフォルト値を持つパラメータ、値が明示的に指定されているパラメータ、値が指定されていないパラメータが含まれています。値が指定されていないパラメータに対しては、必ず値を指定する必要があります。
Sun Cluster HA for NetBackup を構成するには、表 14-1 に示すパラメータを hadsconfig(1M) で指定する必要があります。
表 14-1 Sun Cluster HA for NetBackup に対する構成パラメータ
パラメータ |
説明 |
---|---|
インスタンス名 |
インスタンスの識別子として使用される名前タグ。Sun Cluster HA for NetBackup が生成するログメッセージでは、この名前タグが参照される。hadsconfig(1M) コマンドは、ここで指定された値の前にパッケージ名を付ける。たとえば「netbackup」を指定すると、「SUNWscnb_netbackup」が生成される。 |
論理ホスト |
Sun Cluster HA for NetBackup の当該インスタンス (この節の例では、nb-master) にサービスを提供する論理ホスト名。 |
ベースインストールディレクトリ |
S77netbackup スクリプトと K77netbackup スクリプトが入っているディレクトリ。通常、このディレクトリは /usr/openv/netbackup/bin/goodies。 |
ローカル検証フラグ |
クラスタの再構成時、あるいは、NetBackup サービスが起動したときに、ローカル検証が自動的に起動するかどうかを示すフラグ。この検証は NetBackup インスタンスと同じノード上で動作する。このサービスにはリモート検証は存在しない。指定できる値は y または n。デフォルト値は y (自動的に起動)。 |
検証間隔 |
検証が終わってから次の検証が始まるまでの時間間隔 (秒単位)。デフォルト値は 60 秒。 |
再試行回数 |
ローカルノード上で NetBackup のインスタンスに障害が発生した場合に、何回再起動を試行するかを示す数。この回数だけ再起動を試行しても正常に動作しない場合、フェイルオーバーやスイッチオーバーなどの処置が行われる。デフォルト値は 3。 |
テイクオーバーフラグ |
ローカルノード上で NetBackup のインスタンスに障害が発生した場合に、関連付けられている論理ホストのテイクオーバーまたはフェイルオーバーが発生するかどうかを示すフラグ。実際にテイクオーバーまたはフェイルオーバーが発生するのは、ローカルノード上でサービスを復活させる試行が失敗したときだけである。指定できる値は y または n。デフォルト値は y。 |