複素数ライブラリでは、クラス complex が 1 つだけ定義されています。クラス complex のオブジェクトは、1 つの複素数を持つことができます。複素数は次の 2 つの部分で構成されています。
実部
虚部
class complex { double re, im; };
クラス complex のオブジェクトの値は、1 組の double 型の値です。最初の値が実部を表し、2 番目の値が虚部を表します。
complex には 2 つのコンストラクタがあります。それぞれの定義を次に示します。
complex::complex() {re=0.0; im=0.0;} complex::complex(double r, double i = 0.0) {re=r; im=i;}
複素数の変数を引数なしで宣言すると、最初のコンストラクタが使用され、実部も虚部もゼロで初期化されます。次の例では、実部も虚部もゼロの複素数の変数が生成されます。
complex aComp;
1 つまたは 2 つのパラメータを指定できます。いずれの場合にも、2 番目のコンストラクタが使用されます。引数を 1 つだけ指定した場合は、その値は実部の値とみなされ虚部はゼロに設定されます。次に例を示します。
complex aComp(4.533);
複素数の値は次のようになります。
4.533 + 0i
引数を 2 つ指定した場合は、最初の値が実部、2 番目の値が虚部となります。次に例を示します。
complex aComp(8.999, 2.333);
複素数の値は次のようになります。
8.999 + 2.333i
また、複素数ライブラリが提供する polar 関数を使用して複素数を生成することもできます。「14.3 数学関数」を参照してください。polar 関数は、指定した 1 組の極座標値 (絶対値と偏角) を使用して複素数を作成します。
complex 型にはデストラクタはありません。
複素数ライブラリでは、すべての基本算術演算子が定義されています。特に、次の 5 つの演算子は通常の型の演算と同様に使用することができ、優先順序も同じです。
+ - / * =
演算子 - は、通常の型の場合と同様に 2 項演算子としても単項演算子としても使用できます。
このほか、次の演算子の使用方法も通常の型で使用する演算子と同様です。
加算代入演算子 (+=)
減算代入演算子 (-=)
乗算代入演算子 (*=)
除算代入演算子 (/=)
ただし、この 4 つの演算子については、式の中で使用可能な値は生成されません。したがって、次のコードは機能しません。
complex a, b; ... if ((a+=2)==0) {...}; // illegal b = a *= b; // illegal
また、等しいか否かを判定する 2 つの演算子 (==、!=) は、通常の型で使用する演算子と同様に使用することができます。
算術式で実数と複素数が混在しているときは、C++ では複素数のための演算子関数が使用され、実数は複素数に変換されます。