GRUB ベースのブート

Oracle Solaris では、オープンソースの GRUB (GRand Unified Bootloader) が x86 ベースシステム上のデフォルトのブートローダーです。GRUB は、ブートアーカイブをシステムのメモリーにロードするソフトウェアです。ブートアーカイブは、システムの起動中にルートファイルシステムがマウントされる前に必要な、重要なファイルの集まりです。ブートアーカイブとは、Oracle Solaris のブートに使用されるインタフェースのことです。GRUB の詳細は、http://www.gnu.org/software/grub/grub.html を参照してください。grub(5) のマニュアルページも参照してください。

GRUB は、menu.lst ファイルと呼ばれる構成ファイルに定義済みのブートオプションが含まれているメニューインタフェースを実装します。また、デフォルトのブートパラメータの変更など、さまざまなブート機能の実行に使用できる GUI メニューインタフェースからアクセス可能なコマンド行インタフェースも備えています。

Oracle Solaris カーネルは、マルチブート仕様に完全に準拠しています。GRUB を使用すると、1 つのシステムにインストールされる可能性のある異なるオペレーティングシステムをブートできます。たとえば、システムのブート時に GRUB メニューで適切なブートエントリを選択することによって、Oracle Solaris、Linux、または Windows を個別にブートできます。または、デフォルトで特定の OS インスタンスをブートするように menu.lst ファイルをカスタマイズできます。

GRUB では、ファイルシステムとカーネル実行可能ファイルの形式が認識されるため、ディスク上のカーネルの物理的な位置を記録しておかなくても、オペレーティングシステムを読み込むことができます。GRUB ベースのブートでは、カーネルはそのファイル名だけでなく、カーネルが存在するドライブとパーティションを指定することによって読み込まれます。

GRUB のコンポーネント

GRUB ブートローダーのコンポーネントは次のとおりです。

• stage1 – fdisk パーティションの最初のセクターにインストールされるイメージです。installgrub コマンドに -m オプションを指定して、stage1 をマスターブートセクターにインストールすることもできます。詳細は、installgrub(1M) のマニュアルページおよび『Oracle Solaris の管理: デバイスとファイルシステム』の「GRUB ブート環境でのディスク管理」を参照してください。

• stage2 – fdisk パーティションの予約済み領域にインストールされるイメージです。stage2 イメージは GRUB のコアイメージです。

• menu.lst ファイル – 通常は、ZFS ルートファイルシステムを含むシステム上の /pool-name/boot/grub ディレクトリにあります。ここで、/pool-name/boot/grub は ZFS ストレージプールの名前です。このファイルは、GRUB stage2 ファイルによって読み取られます。詳細は、「menu.lst ファイルの編集によるブートエントリとパラメータの変更」のセクションを参照してください。

dd コマンドを使用して、stage1 および stage2 のイメージをディスクに書き込むことはできません。stage1 イメージは、ディスク上にある stage2 イメージの場所に関する情報を受け取れる必要があります。installgrub コマンドを使用してください。このコマンドは、GRUB ブートブロックをインストールするためにサポートされている方法です。

GRUB メニューの目的と機能

x86 ベースのシステムをブートするときに表示されるメニューは GRUB メニューです。このメニューは、GRUB の menu.lst ファイル内の構成情報に基づいています。ブートシーケンスが始まると、GRUB メニューが表示されます。ブートシーケンスに割り込まない場合、デフォルトエントリ (通常は menu.lst ファイルの最初のエントリ) がデフォルトでブートされます。

ブート時に GRUB メニューを編集して、別のオペレーティングシステムのブート、またはデフォルトブートエントリのパラメータの変更を実行できます。そのためには、GRUB メニューが表示されたらすぐに e を入力します。e を入力すると、ブートプロセスに割り込んで、GRUB 編集メニューが表示されます。ここでは、ブートする別の OS の選択、またはデフォルトブートエントリのデフォルトブートパラメータの変更を行うことができます。変更されたブート動作は、システムの次回ブート時までしか持続しないことに注意してください。手順については、「ブート時のブートパラメータの変更」を参照してください。

GRUB デバイス命名規則

GRUB では、以前のリリースで使用されていたものとは若干異なるデバイス命名規則が使用されます。GRUB で使用されるデバイス命名規則を理解しておくと、システム上で GRUB を構成するときにドライブやパーティションの情報を正しく指定するのに役立ちます。

次の表で、GRUB で使用されるデバイス命名規則について説明します。

表 1-5 GRUB デバイスの規則

Solaris 10 10/08 リリース以降では、GRUB で以前使用されていた root コマンドが findroot コマンドに置き換わりました。findroot コマンドは、ブートデバイスには関係なく、対象のディスクを検出するための拡張機能を提供します。

x86 および GRUB ブートの用語

x86 ベースシステムのブートおよびシャットダウンには、次の基本的な用語が使用されます。

BIOS (Basic Input/Output System)

x86 ベースシステムでは、BIOS は、電源投入時に PC によって最初に実行されるコードになるように設計されたブートファームウェアです。BIOS の最初の機能は、ビデオディスプレイカード、ハードディスク、フロッピーディスク、その他のハードウェアなどのシステムデバイスを識別、テスト、および初期化することです。

ブートアーカイブ

Oracle Solaris OS のブートに使用されるクリティカルなファイルの集まり。これらのファイルは、ルートファイルシステムがマウントされる前、システムの起動中に必要です。

ブートローダー

システムの電源を投入したあとに最初に実行されるソフトウェアプログラム。このプログラムがブートプロセスを開始します。

GRUB (GRand Unified Bootloader)

GRUB は、x86 ベースシステム上で使用されるマルチブートブートローダーです。ブートローダーは、システムの起動時に最初に実行されるソフトウェアプログラムです。オペレーティングシステムのカーネルソフトウェア (Oracle Solaris、Linux、および Windows) を読み込み、そのカーネルソフトウェアに制御を移す役割を果たします。

GRUB 編集メニュー

GRUB メインメニューのサブメニュー。このサブメニューには、GRUB コマンドが表示されます。これらのコマンドを編集して、ブート動作を変更できます。

GRUB メインメニュー

システムにインストールされているオペレーティングシステムがリストされたブートメニュー。このメニューから、BIOS または fdisk パーティションの設定を変更することなく、簡単にオペレーティングシステムをブートできます。

menu.lst ファイル

システムにインストールされているすべてのオペレーティングシステムがリストされた構成ファイル。このファイルの内容は、GRUB メニューに表示されるオペレーティングシステムの一覧を記述したものです。GRUB のメニューから、BIOS または fdisk パーティションの設定を変更することなく、簡単にオペレーティングシステムをブートできます。