この章では、Oracle Real-Time Decisions(Oracle RTD)におけるシステム管理の概要を示し、コンポーネント、標準のシステム管理タスクおよび使用可能なシステム管理ツールについて説明します。また、他のマニュアルで取り上げている関連トピックをリストするとともに、システム要件と動作保証に関する情報を提供します。
注意: このガイドでは、Oracle RTDをOracle WebLogic Server上で管理するための手順について説明します。 IBM WebSphereでのOracle RTDのインストール、構成および管理の詳細は、Oracle Fusion Middlewareサードパーティ・アプリケーション・サーバー・ガイドの「IBM WebSphereでのOracle Business Intelligenceの管理」の章を参照してください。 |
この章には次のトピックが含まれます:
Oracle Real-Time Decisionsは、リアルタイムのデシジョン・エンジン・ソフトウェア・プラットフォームであり、次のコンポーネントで構成されています。
Real-Timeデシジョン・サーバー
デシジョン・スタジオ
デシジョン・センター
ロード・ジェネレータ
Administration(JMX)
図1-1に、Oracle Real-Time Decisionsの主要サービスおよびデータベース・コンポーネントと、実行時におけるコンポーネント間の主な相互作用を示します。Oracle Real-Time Decisionsアーキテクチャの基本概念について明らかにするために、単一のOracle Real-Time Decisionsインスタンス内に各主要サービスを1つずつ含む、Oracle Real-Time Decisionsアーキテクチャの基本トポロジをダイアグラムに示します。
Oracle Real-Time Decisionsの主要サービスは次のとおりです。
デシジョン・サービス
デシジョン・サービスは、インライン・サービス(ILS)セッションによる顧客のトラッキングと、デシジョン・リクエストへの応答を担当します。デシジョン・ロジックを実装し、予測とスコアを計算して、ソート済の結果をコール元の操作システムに返します。また、モデルの更新用に学習レコードを作成します。
学習レコードには、セッション・データおよびセッション中に発生したイベント(たとえば、3つのオファーが提示され、うち1つが受け入れられたという事実など)に関する情報が格納されます。
学習サービス
学習サービスはモデルの更新を担当します。デシジョン・サービスによって作成された学習レコードを読み取り、モデルを更新して、最適化された新しい予測モデルを定期的に生成します。生成されたモデルはデシジョン・サービスによって使用されます。また、デシジョン・センター・レポートの背後でデータを提供します。
デシジョン・センター
デシジョン・センターは、デシジョン・センター・レポートの作成を担当するWebベースのアプリケーションです。
Oracle RTDデータベースは、Oracle Real-Time Decisions環境に必要な制御および構成データに加えて、モデル・データおよびILSメタデータの格納に使用されます。通常、ILSはデシジョン・スタジオを介してデータベースにデプロイされます(図1-1では示していません)。
次に、Oracle Real-Time Decisionsコンポーネントとインライン・サービス間の実行時の主な相互作用の概要を示します。ここでは、図1-1で注釈を付けているプロセスについて言及します。
実行時に、ILSメタデータがデシジョン・サービス・メモリーにロードされます - (A)。エンタープライズ・データとデシジョン・リクエスト結果がILSセッション・データに格納されます(ダイアグラムではエンティティ・データのみ強調表示していますが、選択肢イベント・データもモデルの更新には重要です) - (B)、(C)。
ILSセッション中またはセッションの終わりに、デシジョン・サービスによって学習レコードがデータベースに書き出されます - (D)。
学習サービスは学習レコードを読み取り、学習モデルを作成します - (E) - このモデルは定期的にデータベースに書き出されます(永続化) - (F)。また学習サービスは、予測モデルの作成も定期的に行います - (G) - これはOracle Real-Time Decisionsの多くのデシジョンのベースになります。
詳細は次のとおりです。
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Oracle RTDでの必要性に応じて、予測モデルがデシジョン・サービスによって使用さます。新しい予測モデルがないかどうかがデシジョン・サービスによって定期的にチェックされ、ある場合はそのメモリーにロードされます - (H)。そして、後続のデシジョンを処理するために、デシジョン・サービス・メモリーに保持されます。
ユーザーがログインしてILSを選択すると、デシジョン・センターがILSメタデータをデシジョン・サービス・メモリーにロードします - (I)。デシジョン・センター・ユーザーは、必要に応じて、ILSを編集し、データベースに再デプロイできます。通常デシジョン・センターは、レポート・ツールとして、学習サービスと直接相互作用を行い、学習モデルの内容に関する問合せを実行します - (J)。
注意: 別のOracle RTDコンポーネントであるバッチ・サービスは、図1-1に含まれていません。バッチ・サービスの詳細は、『Oracle Fusion Middleware Oracle Real-Time Decisionsプラットフォーム開発者ガイド』のバッチ・フレームワーク・アーキテクチャに関する項を参照してください。現在のところ、バッチ・サービスはデシジョン・サービスと同じ場所に配置されます。 |
時間ウィンドウ
モデルの処理および使用方法には、「時間ウィンドウ」パラメータも影響します。「時間ウィンドウ」では、「週」、「月」、「四半期」、「年」などの期間が定義されます。この期間はモデル・レベルで定義されます(また、変更可能です)。
この項で説明する、時間ウィンドウとは無関係の標準のモデリング処理に加えて、「時間ウィンドウ」の各期間の終わりには学習モデルがアーカイブされます。このモデル・アーカイブは、1つの期間内および複数の期間をまたがるデータを表示するデシジョン・センター分析レポートのベースになります。
予測は常に最新のデータを基に作成されます。通常は、前の時間ウィンドウのすべての学習レコードと、現在の時間ウィンドウでこれまでに受信した学習レコードから導出されます。最初の時間ウィンドウでは、現在使用可能なデータを基に予測が作成されます。
図1-2は、モデルの初期時間ウィンドウで発生するモデル・プロセスについて示すとともに、時間が経過するにつれて、オーバーラップする新規モデル・インスタンスがOracle RTDによってどのように作成されるかを示しています。
各モデル・インスタンスは時間ウィンドウの最初に開始され、2つの時間ウィンドウにまたがって存在します。また、最初のモデル・インスタンス以外のモデル・インスタンスは、前のモデル・インスタンスとオーバーラップします。
各モデル・インスタンスでは、最初の時間ウィンドウ中に学習情報が蓄積され、最初の時間ウィンドウの終わりになると、レポート用にコピーがアーカイブとして保存されます。その時点で次のことが発生します。
モデル・インスタンスはプライマリ・モデル・インスタンスとなり、2番目の時間ウィンドウ中、予測用に使用されますが、この期間でも学習は継続されます。
次のモデル・インスタンスが作成され、セカンダリ・モデル・インスタンスとして機能します。このインスタンスは、次の時間ウィンドウの境界でプライマリ・モデルとなるまでは学習目的でのみ使用されます。
まとめ:
予測は、前の時間ウィンドウのすべての学習レコードと、現在の時間ウィンドウでこれまでに受信した学習レコードから導出されます。
最初の時間ウィンドウを除いて、予測は、プライマリ・モデル・インスタンスからのみ導出され、この導出はこのインスタンスの存在中の2番目の時間ウィンドウの間に行われます。
クラスタリング
多くの本番システムで、Oracle RTDはOracle RTDクラスタにインストールおよびデプロイされます。Oracle RTDクラスタには次の考慮事項が適用されます。
学習サービスはクラスタ・シングルトンです。つまり、一度にアクティブになる学習サービス・インスタンスは1つのみです。ただし、複数のOracle RTDインスタンスにデプロイすることによって、可用性を高めることができます。使用可能な構成を次に示します。
クラスタ内では、デシジョン・センターは通常、学習サービスと同じOracle RTDインスタンスにデプロイされます。これは、デシジョン・センターが学習サービスと通信する必要があるためです。ただし、デシジョン・センターはシングルトンではないため、アクティブな学習サービスと同じ場所に配置されていないインスタンスでもアクティブな学習サービスとの通信は可能です。
クラスタ内では、デシジョン・センターは通常、デシジョン・サービスとは異なるOracle RTDインスタンスにデプロイされます。それによって、デシジョン・センターがパフォーマンスとメモリーの面でデシジョン・サービスに与える影響が最小限に抑えられます。
Oracle RTDコンポーネントのクラスタ構成の詳細は、『Oracle Fusion Middleware高可用性ガイド』のOracle Real-Time Decisionsの高可用性に関する項を参照してください。
次の各項では、Oracle Real-Time Decisionsのシステム管理について説明します。
表1-1に、管理者が実行するOracle RTDの標準のシステム管理タスクと、各タスクの関連情報の場所を示します。
表1-1 Oracle Real-Time Decisionsシステム管理タスク
システム管理タスク | 詳細 |
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Oracle Real-Time Decisionsのステータスの表示 |
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Oracle Real-Time Decisionsの起動と停止 |
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Oracle Real-Time Decisionsの構成 |
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システムの保護 |
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問題の診断および解決 |
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Oracle Real-Time Decisions管理者に役立つ可能性がある、管理関連のその他のトピックを他のOracleマニュアルで取り上げています。詳細は、第1.3項「その他のガイド内の関連トピック」を参照してください。
図1-3に、共通管理フレームワークを共有するOracle Business Intelligenceコンポーネント(Oracle Real-Time Decisionsを含む)の標準構成を示します。Oracle Real-Time Decisions(ダイアグラム内ではRTDとして強調表示)は、1つ以上のJava EEアプリケーションおよびリソース・セットとしてデプロイされるOracle Fusion Middleware Javaコンポーネントです。
詳細は、第1.2.3項「WebLogicドメインでのOracle Real-Time Decisionsの構成」と『Oracle Fusion Middleware管理者ガイド』を参照してください。
Oracle Real-Time Decisionsは、Oracle Real-Time Decisionsを実行および管理するために必要なJavaコンポーネントを含んでいるWebLogicドメイン内で構成されます。
この項の残りの部分では、WebLogicドメインの主要コンポーネントについて簡単に説明します。詳細は、『Oracle Fusion Middleware管理者ガイド』の「Oracle Fusion Middlewareの概念の概要」の章を参照してください。
管理サーバー
管理サーバーは、Oracle RTDがデプロイされているドメインのローカルおよび集中管理機能を提供する標準のJMX MBeanコンテナです。
管理サーバーは、WebLogicドメインの一部であるミドルウェア・ホームにホストされます。管理サーバーには、Oracle WebLogic Server管理コンソールが含まれています。
管理サーバーは、リモートの物理マシン上の管理対象サーバー内に含まれている機能にアクセスして、Oracle RTDがデプロイされているドメイン内のすべてのコンポーネントの集中構成およびプロビジョニングを実行できます。
管理サーバーと相互作用する主なツールは次のとおりです。
Oracle WebLogic Server管理コンソール
Oracle WebLogic Scripting Tool(WLST)
詳細は、第1.2.4項「Oracle RTDの管理ができるシステム管理ツール」を参照してください。
管理対象サーバー
管理対象サーバーは、各WebLogicインスタンス内にホストされている個々のJEEアプリケーション・コンテナです。これは、ローカルのミドルウェア・ホーム内に含まれているJavaおよびシステム・コンポーネントに対するローカル管理機能を個々のマシン上で提供します。管理対象サーバーは、そのすべての構成およびデプロイメント情報について管理サーバーを参照します。
ノード・マネージャ
Oracle WebLogic Serverには、ノード・マネージャが含まれています。ノード・マネージャは、プロセスが応答しなくなったり、予期せず終了した場合にリモート・サーバーの起動、停止および再起動機能を提供するデーモン・プロセスです。
詳細は、『Oracle Fusion Middleware Oracle WebLogic Serverノード・マネージャ管理者ガイド』を参照してください。
注意: 図1-3は、Oracle Business Intelligenceのエンタープライズ・インストールを実行した後の標準的なコンポーネント構成を示しています。ここでは、Oracle RTDが管理対象サーバーに構成されています。 別のコンポーネント構成では、ノード・マネージャを除くすべての個別Javaコンポーネントが管理サーバーに配置されます。Oracle Business Intelligenceを簡易インストールした場合は、この構成になります。詳細は、『Oracle Fusion Middleware Oracle Business Intelligenceインストレーション・ガイド』を参照してください。 |
次のシステム管理ツールを使用してOracle RTDを管理できます。
Oracle Enterprise Manager Fusion Middleware Controlは、Oracle Fusion Middlewareコンポーネントの監視と構成ができるブラウザベースのツールです。アプリケーションのデプロイ、セキュリティの管理およびOracle Fusion Middlewareクラスタの作成が可能です。詳細は、第2.1項「Fusion Middleware Controlを使用したOracle Real-Time Decisionsの管理」を参照してください。
Oracle WebLogic Serverは、安全性、高可用性およびスケーラビリティに優れた環境へのJEE JavaコンポーネントのデプロイメントをサポートするJava EEアプリケーション・サーバーです。
Oracle WebLogic Server管理コンソールは、WebLogic Serverドメインの管理と監視に使用します。詳細は、第2.2項「Oracle WebLogic Server管理コンソールを使用したOracle RTDの管理」を参照してください。
Oracle WebLogic Serverの詳細は、Oracle Technology Network(http://www.oracle.com/technology/index.html
)を参照してください。
Oracle WebLogic Scripting Tool(WLST)は、Oracle Real-Time Decisionsの管理に使用できるコマンドライン・スクリプト環境です。WLSTスクリプト環境は、Javaのスクリプト・インタプリタであるJythonに基づいています。このツールは、コマンドラインで対話的に使用するか、ファイルによるバッチ・スクリプト(管理者の入力を必要とすることなく、スクリプトによってWLSTコマンド・シーケンスが起動されるスクリプト・モード)で使用するか、またはJavaコードに組み込むことができます。Jython言語構文に従って、WebLogicスクリプト言語を拡張できます。
手順は、Oracle Fusion Middleware WebLogicスクリプト・ツール・コマンド・リファレンスを参照してください。
システム管理者が関心を持つ可能性があるトピックを、他のガイドでもいくつか取り上げています。表1-2に、これらのトピックとその詳細の参照先を示します。
表1-2 他のガイドで取り上げられているトピック
トピック | 詳細の参照先 |
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インストール |
Oracle Fusion Middleware Oracle Business Intelligenceインストレーション・ガイド |
テスト・システムから本番システムへの移行 |
Oracle Fusion Middleware管理者ガイド |
Oracle Fusion Middlewareでの一般的な管理 |
Oracle Fusion Middleware管理者ガイド |
Oracle RTDバージョン3.0.0.1からのアップグレード |
付録B「Oracle Real-Time Decisionsのアップグレードとパッチ適用」および『Oracle Fusion Middleware Oracle Business Intelligenceアップグレード・ガイド』 |
高可用性 |
Oracle Fusion Middleware高可用性ガイド |
バックアップとリカバリ |
Oracle Fusion Middleware管理者ガイド |
サード・パーティ・ツールとリレーショナル・データ・ソース・アダプタ |
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ハードウェアとソフトウェアの要件、プラットフォーム、データベースおよびその他の情報の詳細は、システム要件と動作要件のドキュメントを参照してください。いずれのドキュメントもOracle Technology Network (OTN)から入手できます。
システム要件に関するドキュメントには、ハードウェア要件およびソフトウェア要件、ディスク領域とメモリーの最小要件、必要なシステム・ライブラリ、パッケージ、パッチなどの情報が記載されています。
http://www.oracle.com/technetwork/middleware/ias/downloads/fusion-requirements-100147.html
動作保証のドキュメントには、サポートされているインストール・タイプ、プラットフォーム、オペレーティング・システム、データベース、JDKおよびサードパーティ製品が記載されています。
http://www.oracle.com/technetwork/middleware/ias/downloads/fusion-certification-100350.html