4通貨および通貨レート
この章の内容は次のとおりです。
通貨の管理
通貨の定義に関する考慮事項
通貨を作成または編集する場合は、通貨コード、通貨の日付範囲または通貨記号の入力に関係する次の点を考慮します。
通貨コード
通貨を使用可能にした後は、その通貨を後で使用不可にした場合でも、通貨コードを変更できません。
日付範囲
その通貨建てのトランザクションを、指定範囲内の日付にのみ入力できます。開始日を入力しないと、通貨は即時に有効になります。終了日を入力しないと、通貨は無期限に有効になります。
記号
一部のアプリケーションでは、通貨記号の表示がサポートされます。通貨に関連付ける記号を入力して、金額とともに表示できます。
ユーロ通貨の導出
「導出タイプ」、「導出ファクタ」および「導出有効日付」の各フィールドを使用して、欧州通貨統合(EMU)の正式通貨(ユーロ)とEMU加盟国の自国通貨との関係を定義します。各EMU通貨について、ユーロ対EMUの固定換算レートおよび有効開始日を定義します。ユーロに対して異なる通貨を使用する必要がある場合は、事前定義済通貨を使用不可にして新しい通貨を作成できます。
導出タイプ
「ユーロ通貨」導出タイプはユーロにのみ使用され、「ユーロ導出」導出タイプはEMU加盟国の自国通貨を識別します。その他すべての通貨には導出タイプはありません。
導出ファクタ
導出ファクタは、1ユーロに乗算して等価のEMU通貨の金額を導出するための固定換算レートです。ユーロ通貨自体には導出ファクタを指定しないでください。
導出有効日付
導出有効日付は、EMU通貨とユーロ間の関係が開始する日付です。
通貨の管理に関するFAQ
通貨はいつ作成または有効化すればいいですか。
金額を表示する場合、元帳に通貨を割り当てる場合、トランザクションを入力する場合、残高を記録する場合またはレポート目的で通貨を作成または使用可能にします。国際標準化機構(ISO) 4217標準で規定されているすべての通貨がサポートされます。
デフォルト通貨は米国ドル(USD)に設定されています。
通貨の精度、拡張精度および最小計上可能ユニットの違いは何ですか。
精度は、通常の通貨トランザクションに使用される小数点以下の桁数を指します。たとえば、USDでは、$1.00などのトランザクション金額の精度値として2が設定されます。
拡張精度は、小数点以下の桁数で、この精度値以上である必要があります。より高い精度が必要となる計算では、3や4などの拡張精度値を入力できます。この場合、$1.279または$1.2793として通貨が表示されます。
最小計上可能ユニットは、通貨の最小単位です。たとえば、USDではセントの.01になります。
「設定および保守」作業領域の「アプリケーション拡張」機能領域の「通貨の管理」タスクを使用して、通貨のこれらの値を設定できます。
統計単位通貨タイプとは何ですか。
統計単位通貨タイプは、財務レポート、配賦算式およびその他の計算で財務統計の記録に使用される統計(STAT)通貨を示します。
換算レート・タイプの管理
換算レート・タイプの作成に関するガイドライン
換算レート・タイプを使用して、同じ期間の複数の通貨間で異なる換算レートを保守します。次の換算レート・タイプが事前定義されています。
ビジネス・ニーズごとに異なるレート・タイプを使用できます。レート・タイプが「ユーザー」でないかぎり、仕訳中に、選択した換算レート・タイプおよび通貨に基づいて、換算レートが自動的に指定されます。「ユーザー」レート・タイプの場合、換算レートを入力する必要があります。必要に応じて、追加のレート・タイプを定義できます。最も頻繁に使用されるレート・タイプをデフォルトとして設定します。換算レート・タイプは削除できません。
元帳の期間平均レートと期間終了レートに対して関連付けられたレートを自動的に移入するには、換算レート・タイプを割り当てます。たとえば、「直物」の換算レート・タイプを割り当てて期間平均レートを移入することも、会社の換算レート・タイプを割り当てて期間終了レートを移入することもできます。期間平均レートと期間終了レートは、勘定科目残高の換算に使用されます。
次の会計機能の実行時に、換算レート・タイプが使用されてレートが自動的に割り当てられます。
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外貨の仕訳金額を同等の元帳通貨に換算する。
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ソース元帳から仕訳金額をレポート通貨またはセカンダリ元帳に換算する。
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再評価プロセスまたは換算プロセスを実行する。
換算レートの作成時に、次を実行するかどうかを決定します。
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関係逆レートの強制
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ピボット通貨の選択
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相手通貨の選択
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クロス・レート使用可能およびクロス・レート上書きの許可
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クロス・レート・ルールの保守
関係逆レートの強制
「関係逆レートの強制」オプションは、日次レートを定義するときに、逆換算レートの自動計算を強制するかどうかを示します。次の表は、オプションを選択した場合または選択しなかった場合の影響を示しています。
処理 | 結果 |
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選択 |
通貨Aを通貨Bに換算する日次レートを入力すると、通貨Bから通貨Aへの逆数レートが自動的に計算され、隣接する列に入力されます。一方のレートが変更されると、他方のレートも自動的に再計算されます。 アプリケーションで計算された逆数レートは更新できますが、その場合は関連するレートが更新されます。このオプションによって、関係逆レートは保守されますが、レートの更新は防止されません。 |
選択を解除 |
逆数レートが計算されますが、レートは変更可能で、対応するレートを更新せずに日次レート表を更新できます。 |
ピボット通貨の選択
通貨換算で一般に使用されるピボット通貨を選択します。ピボット通貨は、相手通貨と相互に影響しあう中心的な通貨です。たとえば、米国ドル(USD)とユーロ通貨(EUR)との日次レート、およびUSDとカナダ・ドル(CAD)との別の日次レートを設定します。USDは、EURとCADとのレートを作成する場合のピボット通貨となります。EURとCADは相手通貨です。使用可能で有効な、統計(STAT)通貨でない通貨の値リストからピボット通貨を選択します。ピボット通貨の摘要は、通貨定義に基づいて自動的に移入されます。
基準通貨に対するクロス・レートをアプリケーションで作成する必要がある場合は、基準通貨をピボット通貨として定義します。選択したピボット通貨は「レート・タイプ」ページで変更できます。
相手通貨の選択
値リストで使用可能な通貨を相手通貨として選択します。選択可能な通貨は、使用可能かつ有効で、STAT通貨でなく、これまでにピボット通貨として選択されていない通貨です。相手通貨の摘要は、通貨定義に基づいて自動的に移入されます。相手通貨は、「レート・タイプ」ページの「相手通貨」領域で追加または削除します。
クロス・レート使用可能およびクロス・レート上書きの許可
定義した通貨レートの関係に基づいて換算レートを計算するには、「クロス・レート使用可能」チェック・ボックスを選択します。定義したクロス・レート・ルールに基づいて、一般会計でクロス・レートが計算されます。クロス・レート・ルールを換算レート・タイプ、ピボット通貨および相手通貨に関連付けます。クロス・レートにより、ピボット通貨との関連に基づいて複数の相手通貨間のレートを自動的に作成することで、日次レートの作成が容易になります。相手通貨を入力した後で「クロス・レート使用可能」オプションの選択が解除されると、その特定のレート・タイプの進行中のクロス・レートの計算が停止します。そのレート・タイプに対して以前に計算されたすべてのクロス・レートは、手動で削除しないかぎりデータベースに存在し続けます。
たとえば、ピボット通貨、USDから相手通貨(EUR)、およびUSDから別の相手通貨(CAD)に対して日次レートを定義した場合は、EURからCADおよびCADからEURへのレートが自動的に作成されます。EURからCADおよびCADからEURへのレートを手動で定義する必要はありません。
アプリケーションで生成されたクロス・レートの上書きをユーザーに許可するには、「クロス・レート上書きの許可」チェック・ボックスを選択します。デフォルトである選択解除を受け入れると、アプリケーションで生成されたクロス・レートは上書きできません。
クロス・レート・ルールの保守
クロス・レート・ルールは、相手通貨の割当てを追加または削除することで、いつでも定義または更新できます。新しいレートを生成するには、相手通貨をクロス・レート・ルールに追加して、日次レートのインポートおよび計算プロセスを実行します。ルールからクロス・レート・ルールまたは相手通貨を削除した場合、その相手通貨に対して以前に生成されたクロス・レートは、手動で削除しないかぎり存在し続けます。ルールに対する変更は遡及されず、以前に保存されたクロス・レートへの影響はありません。クロス・レート・プロセスでは、可能なかぎり多くのレートが生成され、セットのコンポーネントの1つが欠落している通貨はスキップされます。
仕訳での換算レート・タイプの使用例
4つの事前定義済の換算レート・タイプは、次のとおりです。
シナリオ
Vision US Inc.の一般会計担当として、3つの異なる外貨で処理された3つのトランザクションを取得するために仕訳を入力します。
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カナダ・ドルCAD: 安定した通貨
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メキシコ・ペソMXP: 変動がある通貨
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香港ドルHKD: 使用頻度の低い通貨
各外貨トランザクションについて勘定科目と金額で2件の仕訳明細を入力します。会社の手順に基づき、日次レート表から会社および「直物」の各レート・タイプのレートを移入するために、レート・タイプを選択します。「ユーザー」レート・タイプには、現在のレートを手動で入力します。
次の表は、通貨、選択したレート・タイプおよびレート・タイプを選択する理由を示しています。
選択した通貨 | 選択したレート・タイプ | 理由 |
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CAD |
企業 |
定期タイプのトランザクションを入力しました。会社では、ディビジョン全体のすべてのトランザクションに対して1か月間にわたって使用する日次レートを、1か月間にわずかな変動のみの安定した通貨であるカナダ・ドルに設定しました。 |
MXP |
直物 |
定期タイプのトランザクションを入力しました。メキシコ・ペソは不安定で変動があるため、会社ではこの通貨の日次レートを毎日入力します。 |
HKD |
ユーザー |
1回かぎりのトランザクションを入力しました。会社では、香港ドルの日次レートを保守していません。 |
会社では、「固定」レート・タイプは現在使用していません。1999年1月1日から、ユーロEURに対するフランス・フランFRFの換算レートは、1 EURに対して6.55957 FRFの固定レートになりました。フランスでの運営は2007年に開始されたことから、フランスでのビジネスの記録はすべてユーロで保守されます。
換算レート・タイプの管理に関するFAQ
「直物」、会社、「ユーザー」および「固定」レート・タイプの違いは何ですか。
直物、会社、ユーザーおよび固定の各換算レート・タイプは、入力した外貨の変動と日次レートを保守する会社の手順に応じて異なります。
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直物: 換算レートに変動がある通貨用、または正確な通貨換算が必要な場合。
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会社: 安定した通貨での組織全体の標準レート設定用。
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ユーザー: 入力された外貨の日次レートが未設定の低頻度の入力用。
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固定: 2つの通貨間で換算が一定のレート用。
外貨トランザクションの頻度が低い場合は、ユーザー・レート・タイプによって、通貨の保守が簡略化されます。また、ユーザー・レート・タイプによって、トランザクション日時点の正確な換算レートが提供されます。
日次レートの管理
「日次レート」スプレッドシートを使用した日次レートの入力
5日間、イギリス・ポンド(GBP)から米国ドル(USD)への通貨換算に使用する日次レートを入力する必要があります。
「日次レートの作成」スプレッドシートを使用してレートをロードするには、まず、Oracle ADF Desktop Integrationクライアント・ソフトウェアをインストールする必要があります。Oracle ADF Desktop Integrationは、Microsoft Excelワークブックとのデスクトップ統合を可能にするExcelアドインです。「ツール」作業領域で「デスクトップ統合インストーラのダウンロード」を選択することにより、インストール・ファイルをダウンロードできます。
日次レートの入力
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「一般会計」作業領域で、「期間クローズ」リンクを選択します。
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「タスク」パネルで、「通貨レートの管理」リンクをクリックします。
「通貨レート・マネージャ」ページを使用して、通貨レートのタイプ、日次レート、および取得時レートを作成、編集、レビューします。
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「日次レート」タブをクリックします。
通貨レートのレビューと入力には、「日次レート」タブを使用します。
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「スプレッドシートで作成」ボタンをクリックします。
「日次レートの作成」スプレッドシートを使用して、テンプレートに日次レートを入力します。このテンプレートを保存して、後で再利用できます。
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「通貨: 自」フィールドをクリックします。「GBP - 英国ポンド」リスト項目を選択します。
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「通貨: 至」フィールドをクリックします。「USD - 米国ドル」リスト項目を選択します。
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「換算レート」フィールドをクリックします。「スポット」リスト項目を選択します。
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「換算日: 自」フィールドをクリックします。有効な値として10/2/2017と入力します。
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「換算日: 至」フィールドをクリックします。有効な値として10/6/2017と入力します。
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「換算レート」フィールドをクリックします。有効な値として1.6を入力します。
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「送信」をクリックし、「OK」を2回クリックします。
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「レコード・ステータス」列をレビューして、すべての行が正常に挿入されたことを検証します。
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テンプレートを保存して、日次レートの入力に使用します。このスプレッドシートは、ローカル・ドライブまたは共有のネットワーク・ドライブに保存できます。
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必要に応じて、「日次レート」ユーザー・インタフェースでレートを編集したり、スプレッドシートを再送信したりすることができます。
通貨レートの更新
すでに入力されている今日の日次レートを変更する必要があります。変更するレートは、InFusion Americaで、イギリス・ポンド(GBP)から米国ドル(USD)への通貨換算に使用されるものです。
通貨換算レートは、自動ロードにより、日次レート表に入力されたものです。このレートは、スプレッドシートから入力することもできます。
通貨レートの更新
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「期間クローズ」作業領域に移動します。
「期間クローズ」作業領域を使用して、クローズ・プロセスと通貨プロセスにリンクします。
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「通貨レートの管理」リンクをクリックします。
「通貨レート・マネージャ」ページを使用して、通貨レートのタイプ、日次レート、および取得時レートを作成、編集、レビューします。
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「日次レート」タブをクリックします。
通貨レートのレビューと入力には、「日次レート」タブを使用します。
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「換算元通貨」リストをクリックします。「GBP - 英国ポンド」リスト項目を選択します。
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「換算元通貨」リストをクリックします。「USD - 米国ドル」リスト項目を選択します。
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変更している日次レートの日付を入力します。今日の日付を入力します。
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「レート・タイプ」リストをクリックします。「スポット」リスト項目を選択します。
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「検索」ボタンをクリックします。
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「レート」フィールドをクリックします。「レート」フィールドに変更後のレート「1.7」を入力します。
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「逆数レート」フィールドをクリックします。「逆数レート」フィールドに変更後の逆数レート「0.58822」を入力します。
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「保存」ボタンをクリックします。