仮想化の中心的な目的は、コンピューティング環境で複数の独立したシステムを同時に実行できるようにすることです。仮想化は、大規模配備の管理を簡素化し、ワークロード密度を最大化して、システムのコンピューティング容量をさらに活用するための効率的な方法を提供します。
仮想化すると、ハードウェア、インフラストラクチャー、および管理を共有することにより、コストを削減できます。次のような利点があります。
ハードウェアの利用率を高めます
より柔軟なリソース割り当てを可能にします
電力要件の削減
管理コストを最小化します
保有コストを低減します
システムのアプリケーション間に管理上およびリソース上の境界を設けます
テンプレートとクローンから仮想計算環境を迅速にプロビジョニングします
階層化されたセキュリティーと隔離を実現します
Oracle Solaris 11.3 では、コンピューティングの要件に適したいくつかの仮想化テクノロジモデルを利用できます。
仮想化モデルは、次に示す競合する特性によって説明されます。
実行環境の隔離の程度
リソースの柔軟性の程度
モデルが提供する隔離の程度が大きくなる程、リソースの柔軟性は小さくなります。モデルが提供するリソースの柔軟性が大きくなる程、隔離の程度は小さくなります。これらの特性は競合するため、単一モデルによって最大化することはできません。
Oracle Solaris 11.3 OS は、実行の分離が向上し、リソースの柔軟性が低下する順番に示されている次の仮想化テクノロジの 1 つまたは複数とともに使用できます。
オペレーティングシステム (OS) 仮想化は、単一の OS インスタンス内に 1 つ以上の隔離された実行環境を提供します。各環境では、OS の専用コピーのようなものがコンテナ内に格納されます。OS 仮想化モデルはネイティブに近いパフォーマンスと柔軟性を提供し、仮想マシンまたは物理ドメインに比べてディスク、RAM、および CPU フットプリントがずっと小さくなります。ただし、OS 仮想化モデルが提供する実行環境の隔離の程度は最小となります。
Oracle Solaris 11.3 は、Oracle Solaris ゾーン製品によってこの仮想化モデルを提供します。
仮想マシンは単一のハードウェアリソースセットで複数の OS インスタンスを実行するために使用できます。作成する各仮想マシンは独自の OS を実行します。この方法で、さまざまな種類のオペレーティングシステムを実行できます。ソフトウェアまたはファームウェアハイパーバイザによって、各ゲスト OS インスタンスがあたかも専用の個別システム上で実行しているような錯覚が作り出されます。仮想マシンは、OS 仮想化を使用する物理マシンに比べて提供するリソースの柔軟性は小さいですが、隔離の程度は大きくなります。
Oracle Solaris 11.3 は、Oracle VM Server for SPARC、Oracle VM Server for x86、および Oracle VM VirtualBox によってこの仮想化モデルを提供します。Oracle Solaris x86 システム上で Oracle VM VirtualBox と Oracle Solaris カーネルゾーンを同時に実行することはサポートされていません。
Oracle VM VirtualBox の使用についての詳細は、Oracle VM VirtualBox のドキュメント (https://www.virtualbox.org/wiki/Documentation)を参照してください。
ハードウェアパーティションは物理ドメインとも呼ばれ、実行中の OS と、それと別個のリソースおよび電源のセットとの間に物理的な分離を設けます。このモデルではハイパーバイザを使用しないため、ベアメタルパフォーマンスが提供されます。この仮想化モデルは隔離の程度が最大となりますが、仮想マシンまたは OS 仮想化モデルに比べてリソース構成の柔軟性がずっと小さくなります。
Oracle は、Oracle の SPARC M シリーズサーバー上でこの種類の仮想化を提供します。詳細は、Oracle SPARC サーバー: システムドキュメント (http://www.oracle.com/technetwork/server-storage/sun-sparc-enterprise/documentation/index.html) を参照してください。
次のセクションでは、考慮する必要のある 2 つのタイプの仮想化について説明します。
計算の仮想化 - オペレーティングシステムと物理ドメインレベルでの仮想化
ネットワークの仮想化 - ネットワークサブシステムレベルでの仮想化
1 つ以上の仮想化テクノロジを使用して、ワークロード密度を最大化できます。たとえば、SPARC M5-32 システムの 1 つ以上の物理ドメインにある Oracle VM Server for SPARC 論理ドメイン内で実行するよう複数のゾーンを構成して、さまざまな仮想化テクノロジの利点を活用できます。
図 1 環境内での Oracle Solaris 仮想化テクノロジの使用
次に、Oracle Solaris 11.3 の各仮想化テクノロジを環境内で使用する方法について説明します。
Oracle Solaris ゾーンを使用して、ワークロードの効率とスケーラビリティーを最大化し、Solaris 8、Solaris 9、Oracle Solaris 10、および Oracle Solaris 11 のワークロードを新しいハードウェアシステムに移行します。x86 システム上で Oracle VM VirtualBox と Oracle Solaris カーネルゾーンを同時に実行することはサポートされていません。
Oracle Solaris カーネルゾーン を使用して、大域ゾーンとホストシステム自体からのカーネルゾーンの独立性を強化します。この構成は、オペレーティングシステムのインスタンスとそのアプリケーションのセキュリティーを強化します。
Oracle VM Server for SPARC を使用して、サポートされている SPARC T シリーズシステムと SPARC M シリーズシステムに別の Oracle Solaris 10 と Oracle Solaris 11 環境を配備します。
Oracle VM Server for x86 を使用して、異種のオペレーティングシステム (Oracle Solaris 10 OS および Oracle Solaris 11 OS をゲストとして含む) を持つシステムを配備します。
ソフトウェアを異機種環境で開発およびテストするには、Oracle VM VirtualBox を使用します。
Oracle VM VirtualBox は、既存のオペレーティングシステム上で、変更されていない 32 ビットおよび 64 ビットのオペレーティングシステムを、Intel および AMD プロセッサ上の仮想マシンとして直接実行できます。
Oracle SPARC M シリーズサーバーで物理ドメインを使用して、電気的に隔離されたドメインに異なる種類の Oracle Solaris 10 および Oracle Solaris 11 オペレーティングシステムを配備します。各ドメインは、他のドメインからの分離および隔離を M シリーズサーバーのソケットレベルで提供するか、電気的な隔離を提供するためにボードレベルで提供します。各ドメインでは、バージョンの異なる Oracle Solaris 10 または Oracle Solaris 11 OS を実行できます。
Oracle Solaris 11.3 OS では、次のネットワーク仮想化の機能のいずれかをサポートし、そのうちのいくつかは新しい IEEE 標準を実装します。
アグリゲーション、エッジ仮想ブリッジング、データセンターブリッジング、フロー、トンネル、VXLAN などの OSI スタック機能を使用します。Oracle Solaris 11.3 でのネットワーク管理の計画 の 第 1 章, Oracle Solaris ネットワーク管理のサマリーを参照してください。
仮想 NIC をデータリンク層のネットワークデバイスとして使用して、管理の効率性、抽象化、および複数のゾーンと論理ドメイン間でネットワーク接続されたオブジェクトのパフォーマンスを改善します。Oracle Solaris 11.3 での仮想ネットワークとネットワークリソースの管理 の 仮想ネットワークのコンポーネントの構成を参照してください。
シングルルート I/O 仮想化 (SR-IOV) 機能をサポートするネットワークデバイスを管理します。Oracle Solaris 11.3 での仮想ネットワークとネットワークリソースの管理 の VNIC でのシングルルート I/O 仮想化の使用を参照してください。
エラスティック仮想スイッチを分散仮想スイッチとして使用して、複数のシステム間で仮想スイッチを管理できるようにすることで、ネットワークの仮想化機能を拡張します。エラスティック仮想スイッチを使用すると、マルチテナントクラウド環境またはデータセンター内で複数システムに渡って仮想ネットワークを配備できます。Oracle Solaris 11.3 での仮想ネットワークとネットワークリソースの管理 の 第 6 章, エラスティック仮想スイッチの管理を参照してください。