4 DR ソリューションでの Cross-Tapeplex Replication の使用

物理的なエクスポートとインポートの実行の章では、ソースサイトから持ち運び可能な「エクスポート」MVC を作成し、それらの MVC をターゲットサイトに物理的に移動して、ターゲットサイトで MVC (およびそこに含まれている VTV) をインポートする方法を説明しました。Cross-Tapeplex Replication (CTR) では、MVC のサイト間での移動に PTAM (ピックアップトラックアクセス方式) を使用しません。この代わりに、ソースサイトからターゲットサイト、つまり TapePlex から TapePlex に VTV を電子的に移動し、移動先で VTV を MVC に移行するため、PTAM 手順を省略できます。VTV のコピーがソースからターゲットの TapePlex に移動するときに、VTV のメタデータのコピーがソース TapePlex の CDS からターゲット TapePlex の CDS に移動します。ソース TapePlex が引き続き CTR VTV を所有し、スクラッチを管理します。

注意:

CTR を使用している場合、SMC を停止すると VTCS の CTR TapePlex へのメタデータ送信が停止され、データ転送を効率良く停止できます。そのため CTR など SMC 通信サービスを使用する HSC 機能を使用している場合は、SMC を停止する前に、HSC アクティビティーが休止している、または HSC が終了していることを確認してください。

CTR の機能

図4-1 に CTR を示します。

図4-1 ELS CTR 構成

図4-1 の説明が続きます
説明: 図4-1 ELS CTR 構成

図4-1 に示すとおり:

  • CTR では、2 つの別個の TapePlex 内の 2 つの VTSS (CLINK) 間の接続を使用して、VTSS 間で互いにデータを送受信します。接続は単方向と双方向のどちらでも使用できます。

  • CTR は SMC クライアント/サーバー機能のサービスを使用して、送信側 TapePlex から受信側 TapePlex にメタデータを送信します。CTR を使用する場合に、SMC と HSC 間の通信にクライアント/サーバー機能を使用する必要はありませんが、HTTP コマンドと SERVER コマンドを SMC に定義してメタデータを送信できるようにする必要があります。

  • 各サイトには別個の (別々に管理されている) CDS があるため、1 つのサイトで接続障害が発生したり、ハードウェアが使用できなくなったりしても、ほかのサイトに直接的な影響はありません。

  • 構成と物理接続に関する要件はわかりやすく単純です。

  • 既存の作業に混乱を与えずに、より簡単に並行 DR テストを実行できるようになりました (CDRT ユーティリティーを使用せずに) 。

  • 作業負荷をサイト間で自動切り替えできます。

  • 2 つの TapePlex の VTV ボリュームの範囲は、図4-2 のとおりです。注: 各 TapePlex はそれぞれ専用の書き込み可能ボリュームのセットを所有しており、それらは読み取り専用バージョンの形でほかの TapePlex にミラー化されています。

  • 図に示した構成では、送信側 TapePlex の両方の VTSS を受信側の両 VTSS に接続することで、最大限の回復性を実現しています。

    注記:

    クラスタ VTSS 構成と CTR 構成の両方では、各 VTSS (0-F) 内の最初の 16 個の VTD が、レプリケーション用に予約されていることを確認する必要があります。これらのデバイスは、MVS に対して OFFLINE 状態にし、そのパスを各 HSC サーバーホストに対してオンライン状態にする必要があります。VTCS は、最初の 16 個の VTD を SMC/HSC では登録しませんが、これにより VTD 上に VTV がマウントされるのを防ぎます。

    図4-2 サイト間 VTV ボリュームの関係

    図4-2 の説明が続きます
    説明: 図4-2 サイト間 VTV ボリュームの関係

    CTR VTV 読み取り専用の考慮事項」の内容を確認してから、「CTR の構成」に進んでください。

CTR VTV 読み取り専用の考慮事項

CTR を使用しているとき、あるサイトから別のサイトにレプリケートされた VTV はすべて、リモートサイトで読み取り専用モードになります。実際の障害発生時にこれらの VTV はリモート TapePlex でスクラッチできます (そのあと、対応するボリュームシリアル番号を再利用できます) が、その読み取り専用ステータスはボリュームが SCRATCH ステータスにならないかぎり変更できません。POOLPARM EXTERNAL プール内のボリュームは、SCRATCH ステータスに変更できません。

そのため、ビジネスの継続性または障害回復戦略として CTR を使用する場合、DR テストや実際の障害時にアプリケーションがこれらのボリュームを更新しないことを確認する必要があります。次のようなシナリオについて検討する必要があります。

  1. JCL で属性 DISP=MOD を使用して、または動的割り当てを使用して既存のデータセットにデータを追加するアプリケーションの場合、チェックポイント/再開メカニズムを実装し、DISP=MOD ボリュームの作成前にチェックポイントを記録させる必要があります。これらのアプリケーションはチェックポイントで再開することで回復され、再開時にアプリケーションは必要であれば DISP=MOD ボリュームを再作成する必要があります。Cross-Tapeplex Replication で DISP=MOD を使用すること自体は問題ではありません。部分的な更新を破棄できるチェックポイントがアプリケーションに含まれている場合や、新しいデータの出力を新しいボリュームから始める設計のアプリケーションであれば、それらは読み取り専用 VTV で問題なく動作します。

  2. 別の TapePlex にレプリケートされた VTV が HSM によって所有される場合、次の手順を実行して、データの収集が新しいボリュームから開始されるようにし、既存の HSM VTV が更新されるのを回避できます。

    1. 既存のボリュームにフルのマークを付けます。

    2. 必要であれば、USERUNITTABLEMIGRATIONBACKUP、および RECYCLEARCCMD を変更します。

    3. RECYCLEDALLOCFREQ が 1 に設定されていることを確認します。これにより必要に応じて、HSM 割り当てで新しいボリュームおよびデバイスへの割り当てが可能になります。

    4. MGMTCLAS VTVSIZE に応じて、PERCENTFULL を次のように設定します。

      800M バイトの VTV の場合、HSM PERCENTFULL を 97 に設定します。

      4G バイトの VTV の場合、HSM PERCENTFULL を 450 に設定します。

      32G バイトの VTV の場合、HSC PERCENTFULL を 3600 に設定します。

    前述の DISP=MOD 制約は、既存のボリュームにデータセットをスタックするアプリケーションにも適用されます。

CTR の構成

図4-3 は CTR の構成例を示しています。このシステムでは、VTSS VTSSA が TapePlex TAPEPLXA にあり、TapePlex TAPEPLXB の VTSS VTSSB との「パートナ」CLINK が設定されています。VTSSB にレプリケートされた VTV は現在 TAPEPLXB の CDS 内にあり、後ほど VTV が移行される MVC も、ここにあります。つまり、VTV は TapePlex 間でレプリケートされ、そのあとローカルで移行が行われます。送信側 TapePlex 内の VTSS は、受信側 TapePlex 内の RTD に接続できません。

注記:

次の例は単方向 CTR を示しています。双方向 CTR を行う場合は、両方の TapePlex で、構成を定義し、SMC クライアント/サーバー制御文を両方の TapePlex で同じように定義します。1 つの TapePlex が複数のほかの TapePlex から VTV を受信することもできます。1 つの TapePlex が複数のほかの TapePlex からデータを受信する構成を定義するには、CONFIG of TAPEPLXB に TapePlex の名前を追加します。

図4-3 CTR 構成

図4-3 の説明が続きます
説明: 図4-3 CTR 構成

設定: CTR の構成と開始

CTR の構成の例の CTR システムを構成して開始するには、次を実行します。

  1. システムに、「ELS のインストール」で説明されている、クラスタ VTSS 要件が存在することを確認します。

  2. ホスト LPARB で実行している SMC の下で HTTP サーバーを起動します。

    これは SMC CMDS ファイルでも実行できます。次に例を示します。

    HTTP START PORT(999) 
    
  3. ホスト LPARB で TAPEPLEX コマンドと SERVER コマンドを定義します。

    これも SMC CMDS ファイルで実行できます。次に例を示します。

    TAPEPLEX NAME(TAPEPLXA) LOCSUB(HSCA)
    TAPEPLEX NAME(TAPEPLXB)
    SERVER NAME(REMB)TAPEPLEX(TAPEPLXB) HOSTNAME(LPARB) PORT(999)
    

    注記:

    例の構成で、TapePlex TAPEPLXB の存在目的は (TapePlex TAPEPLXA の観点から)、TAPEPLXA からレプリケートされた VTV に関するメタデータを格納する CDS を保持する以外ありません。しかし、TapePlex TAPEPLXA と TAPEPLXB の HSC または VTCS 定義で、同じデバイスアドレスを使用してそれぞれ別の物理デバイスを参照している場合、SMC UNITATTR コマンドを定義して、ホスト上のデバイスを定義しているのはどちらの TapePlex であるかを SMC に知らせる必要があります。UNITATTRMODEL を指定している必要がありますが、指定したモデルが TapePlex で報告されるものと異なる場合、実際のモデルで UNITATTR MODEL がオーバーライドされます。次は、TapePlex TAPEPLXA と TAPEPLXB の両方が 9000-90FF のアドレス範囲を定義している場合に使用する、SMC UNITATTR 文の例です。
    UNITATTR ADDR(9000-90FF)  TAPEPLEX(TAPEPLXA) MODEL(VIRTUAL) 
    
  4. 例4-1 のように、TapePlex A に CONFIG デックをコーディングします。

    この例では、次に留意してください。

    • TAPEPLEX 文は、この TapePlex を定義しています。

    • CLINK 文は、CTR が使用する、VTSSA から VTSSB への CLINK を定義します。

    • CONFIG GLOBAL 文の条件付きレプリケーション設定は、TAPEPLXA の場合は CHANGED です。

  5. 例4-2 のように、TapePlex B に CONFIG デックをコーディングします。

    この例では、次に留意してください。

    • TAPEPLEX 文には RECVPLEX=TAPEPLXA パラメータが含まれており、TAPEPLXB が TAPEPLXA から VTV を受信できることを指定しています。

    • TAPEPLXA の CONFIG デックで CLINK が定義されているため、CLINK 文はありません。

      例4-1 TapePlex A の CONFIG デック

      
      //CREATCFG EXEC PGM=SLUADMIN,PARM='MIXED'
      //STEPLIB  DD DSN=hlq.SEALINK,DISP=SHR
      //SLSCNTL  DD DSN=hlq.TAPEPLXA.DBASEPRM,DISP=SHR
      //SLSCNTL2 DD DSN=hlq.TAPEPLXA.DBASESEC,DISP=SHR
      //SLSSTBY  DD DSN=hlq.TAPEPLXA.DBASESBY,DISP=SHR
      //SLSPRINT DD   SYSOUT=*
      //SLSIN DD   *
       CONFIG RESET CDSLEVEL(V62ABOVE)
       GLOBAL MAXVTV=65000 MVCFREE=60 VTVATTR=SCRATCH RECALWER=YES
       LOCKSTR=STK_VTCS_LOCKS VTVPAGE=LARGE REPLICAT=CHANGED
       RECLAIM THRESHLD=70 MAXMVC=30 START=98 CONMVC=1
      TAPEPLEX THISPLEX=TAPEPLXA
      VTSS NAME=VTSSA LOW=71 HIGH=80 MAXMIG=8 MINMIG=1 RETAIN=10
       RTD  NAME=VSMA1A00 DEVNO=1A00 CHANIF=0C
       RTD  NAME=VSMA1A01 DEVNO=1A01 CHANIF=0D
       RTD  NAME=VSMA1A02 DEVNO=1A02 CHANIF=0K
       RTD  NAME=VSMA1A03 DEVNO=1A03 CHANIF=0L
       RTD  NAME=VSMA2A08 DEVNO=2A08 CHANIF=1C
       RTD  NAME=VSMA2A09 DEVNO=2A09 CHANIF=1D
       RTD  NAME=VSMA2A0A DEVNO=2A0A CHANIF=1K
       RTD  NAME=VSMA2A0B DEVNO=2A0B CHANIF=1L
       VTD LOW=7900 HIGH=79FF
       VTD LOW=8900 HIGH=89FF
       CLINK VTSS=VTSSA CHANIF=0G REMPLEX=TAPEPLXB PARTNER=VTSSB 
       CLINK VTSS=VTSSA CHANIF=0O REMPLEX=TAPEPLXB PARTNER=VTSSB
      

      例4-2 TapePlex B の CONFIG デック

      //CREATCFG EXEC PGM=SLUADMIN,PARM='MIXED'
      //STEPLIB  DD DSN=hlq.SEALINK,DISP=SHR
      //SLSCNTL  DD DSN=hlq.TAPEPLXB.DBASEPRM,DISP=SHR
      //SLSCNTL2 DD DSN=hlq.TAPEPLXB.DBASESEC,DISP=SHR
      //SLSSTBY  DD DSN=hlq.TAPEPLXB.DBASESBY,DISP=SHR
      //SLSPRINT DD   SYSOUT=*
      //SLSIN DD   *
       CONFIG RESET CDSLEVEL(V62ABOVE)
       GLOBAL MAXVTV=65000 MVCFREE=60 VTVATTR=SCRATCH RECALWER=YES
       LOCKSTR=STK_VTCS_LOCKS VTVPAGE=LARGE
       RECLAIM THRESHLD=70 MAXMVC=30 START=98 CONMVC=1
      TAPEPLEX THISPLEX=TAPEPLXB RECVPLEX=TAPEPLXA
      VTSS NAME=VTSSB LOW=75 HIGH=80 MAXMIG=8 MINMIG=1 RETAIN=10
       RTD  NAME=VSMB3A00 DEVNO=3A00 CHANIF=0C
       RTD  NAME=VSMB3A01 DEVNO=3A01 CHANIF=0D
       RTD  NAME=VSMB3A02 DEVNO=3A02 CHANIF=0K
       RTD  NAME=VSMB3A03 DEVNO=3A03 CHANIF=0L
       RTD  NAME=VSMB4A08 DEVNO=4A08 CHANIF=1C
       RTD  NAME=VSMB4A09 DEVNO=4A09 CHANIF=1D
       RTD  NAME=VSMB4A0A DEVNO=4A0A CHANIF=1K
       RTD  NAME=VSMB4A0B DEVNO=4A0B CHANIF=1L
      

CTR のポリシーの定義

CTR のポリシーを定義するには、次の手順を実行します。

送信側 TapePlex のポリシー

図4-3 に示した例の CTR システムの送信側 TapePlex (TAPEPLXA) のポリシーを定義するには、次を実行します。

  1. TAPEPLXA に MVC POOLPARM/VOLPARM 定義を作成します。

    POOLPARM TYPE(MVC) NAME(MVCPLA) INITMVC(YES) MVCFREE(25) -
     MAXMVC(98) THRESH(85) START(98)
    VOLPARM VOLSER(AM1000-AM1299) MEDIA(STK1R)
    
  2. TAPEPLXA に VTV POOLPARM/VOLPARM スクラッチプール定義を作成します。

    POOLPARM TYPE(SCRATCH) NAME(ASCRPL)
    VOLPARM VOLSER(AV1000-AV1999) MEDIA(VIRTUAL) REC(VIRTUAL)
    
  3. TAPEPLXA に、ローカルで移行した VTV が格納される MVC のストレージクラスと、CTR ストレージクラスのストレージクラスを作成します。

    STOR NAME(LOCAL1) ACS(00) MEDIA(STK1R)
    STOR NAME(EEPA1) TAPEPLEX(TAPEPLXB)
    

    この例で、STORclas 文は次を定義しています。

    • ストレージクラス LOCAL1 は、各 VTSS からローカルで移行した VTV のストレージクラスです。

    • ストレージクラス EEPA1 は、CTR 用のストレージクラスで、受信側 TapePlex (TAPEPLXB) を指定しています。

  4. 手順 3 のストレージクラスを指すマネージメントクラスを作成します。

    MGMT NAME(LOCEEX1) MIGPOL(LOCAL1) EEXPOL(EEPA1)
    
  5. 仮想メディアを指定する SMC ポリシーを作成し、手順 4 で作成したマネージメントクラスを割り当てます。

    POLICY NAME(PPAY) MEDIA(VIRTUAL) MGMT(LOCEEX1)
    
  6. TAPEREQ 文を作成し、重要なデータを VSM にルーティングし、対応するポリシーをデータに割り当てます。

    TAPEREQ DSN(*.PAYROLL.**) POLICY(PPAY)
    

    この例の TAPEREQ 文は、HLQ マスク「*.PAYROLL.**」を指定してデータセットを VSM にルーティングし、ポリシー PPAY を割り当てています。

    注記:

    • SMC ポリシーを使用してデータを特定のエソテリックに送信できますが、StorageTek では、SMC/VTCS の割り当ての影響で MGMTCLAS 要件をサポートする VTSS を使用できるように MGMTCLAS のみの使用をお勧めします。

    • EEXPORT コマンドを使用して手動で CTR を実行できます。詳細は、ELS のコマンド、制御文、ユーティリティーに関するリファレンスを参照してください。

  7. SYS1.PARMLIB SMFPRMxx メンバーを確認し、サブタイプ 28 レコードが有効であることを確認します。

    有効の場合、VTSS は各 CTR イベントのターゲット VTSS 名が含まれたサブタイプ 28 レコードを書き込みます。受信側サイトの VTSS に VTV が正常に到着すると、CTR は成功です。これを確認する方法はあるでしょうか。これを確認するには、ステップ 8 で説明する DRMONitr ユーティリティーを使用します。

  8. CTR をモニターする JCL を作成します。

    この場合、DRMONitr ユーティリティーを使用して、CTR をモニターします。DRMONitr により、CTR が正常に完了するまで、関連する MVS ジョブが一時停止します。次に例を示します。

    //MONITOR EXEC PGM=SLUADMIN,PARM='MIXED'
    //STEPLIB  DD DSN=hlq.SEALINK,DISP=SHR
    //* If HSC IS NOT OR MAY NOT BE ACTIVE, INCLUDE THE 
    //* FOLLOWING:
    //SLSCNTL  DD DSN=primary.cds.name,DISP=SHR
    //SLSCNTL2 DD DSN=secondary.cds.name,DISP=SHR
    //SLSSTBY  DD DSN=standby.cds.name,DISP=SHR
    //SLSPARMP DD DSN=hlq.PARMLIB(BKPCNTL),DISP=SHR
    //SLSPARMS DD DSN=hlq.PARMLIB(BKPCNTL2),DISP=SHR
    //SLSPARMB DD DSN=hlq.PARMLIB(BKPSTBY),DISP=SHR
    //SYSIN DD UNIT=SYSDA,SPACE=(TRK,1)
    //* THE FOLLOWING IS USED BY THE SNAPSHOT UTILITY:
    //SYSPRINT  DD  SYSOUT=* 
    //SLSPRINT  DD SYSOUT=* 
    //SLSPRINT  DD SYSOUT=* 
    DRMON MGMT(LOCEEX1) STOR(EEPA1) MAXAGE(24) TIMEOUT(120)
    

    この例の DRMON ユーティリティーはストレージクラス EEPA1 の移行をモニターしています。これは、ステップ 4 でマネージメントクラス LOCEEX1 で指定した CTR ストレージクラスです。さらに、最近の 24 時間以内に更新された VTV のみをモニターし、120 分後に DRMON をタイムアウトします。

受信側 TapePlex のポリシー

CTR の構成」に示した例の CTR システムの受信側 TapePlex (TAPEPLXB) のポリシーを定義するには、次を実行します。

  1. TAPEPLXA からの CTR VTV を保管する MVC プールを TapePlex TAPEPLXB に定義するため、MVC POOLPARM/VOLPARM 定義を作成します。

    POOLPARM TYPE(MVC) NAME(AMVCCTR) INITMVC(YES) MVCFREE(25) -
    MAXMVC(98) THRESH(85) START(98)
    VOLPARM VOLSER(BM1000-BM1099) MEDIA(STK1R)
    

    注記:

    CTR でレプリケートされたボリュームについて、リモートサイトでボリューム範囲が確実に予約されるようにするため、POOLPARM/VOLPARM 機能を使用することを強くお勧めします。
  2. TAPEPLXA がエクスポートした VTV 用として外部 VTV プールを作成します。

    POOLPARM TYPE(EXTERNAL) NAME(AEXTBPL) OWNRPLEX(TAPEPLXA)
    VOLPARM VOLSER(AV1000-AV1999) MEDIA(VIRTUAL) REC(VIRTUAL)
    

    注記:

    この例では TAPEPLXB の本番作業用のプールは定義せず、TAPEPLXA が使用するプールのみを定義します。TAPEPLXB で本番作業が実行される予定である場合、TAPEPLXB 作業で使用するスクラッチプールと MVC プール用として POOLPARM 定義と VOLPARM 定義を新たに追加する必要があります。
  3. TAPEPLXA 作業に使用する TapePlex TAPEPLXB 用の VTV スクラッチプールを作成します。

    POOLPARM TYPE(SCRATCH) NAME(ASCRPL)
    VOLPARM VOLSER(BV1000-BV1999) MEDIA(VIRTUAL) REC(VIRTUAL)
    
  4. TAPEPLXA の DR テストまたは本番 (障害時) からの VTV を保持する TapePlex TAPEPLXB 用の MVC プールを作成します。

    POOLPARM TYPE(MVC) NAME(AMVCDR) INITMVC(YES) MVCFREE(25) -
    MAXMVC(98) THRESH(85) START(98)
    VOLPARM VOLSER(BM2000-BM2099) MEDIA(STK1R)
    
  5. TAPEPLXB には、ローカル移行に使用するストレージクラスを作成します。

    STOR NAME(TPEPLXA1) MVCPOOL(AMVCCTR)
    STOR NAME(TPEPLXA2) MVCPOOL(AMVCDR)
    

    この例の STORclas 文は、ストレージクラス TPEPLXA1 と TPEPLXA2 をローカル移行用に定義しています。このストレージクラス名によって、この作業を TAPEPLXB のローカル作業から分離できます。

  6. 手順 5 のストレージクラスを指すマネージメントクラスを作成します。

    MGMT NAME(LOCEEX1) MIGPOL(TPEPLXA1) 
    MGMT NAME(LOCPLXA) MIGPOL(TPEPLXA2)
    

    LOCEEX1 という名前は TAPEPLXA で使用されたマネージメントクラス名と一致していますが (このマネージメントクラス名は、TAPEPLXA の VTSS から送られた VTV メタデータで指定されています)、この例ではローカル移行用のストレージクラスを指し示してることに注目してください。TAPEPLXB ではマネージメントクラスとストレージクラスの定義に EEXPOL など任意のパラメータを使用できるため、3 番目の TapePlex へのレプリケートが可能です。また、別の MGMTCLAS や LOCPLXA を作成し、TAPEPLXA の作業負荷の DR テスト中の移行に使用できます。

リモートサイトに LPAR が存在しないときの CTR の使用

テープ操作を行なっている LPAR が 1 つのサイトにしかなく、2 つ目のサイトにあるのはライブラリと VTSS ハードウェアのみで MVS LPAR がないという環境も存在します。このような環境を設定して、DR および DR テストのメカニズムとして CTR を使用できます。

これを行うには、次を実行する必要があります。

  1. 本番環境で SMC クライアント/サーバー機能を実行し、HSC/VTCS を実行していない本番 LPAR を少なくとも 1 つ用意します。

    別の方法として、MULT モード機能を使用して本番 TapePlex と同じ LPAR で DR TapePlex を実行できます。この機能の使用方法は、『HSC および VTCS の構成』を参照してください。

    この例の本番 TapePlex は TAPEPLXA です。

  2. リモートサイトのハードウェア (ライブラリと VTSS) を定義する新しい CDS を作成します。

  3. 現在本番 HSC/VTCS を実行していない LPAR (MVSX) で、または、MULT モード機能を使用して HSC/VTCS の複数のコピーを実行することにした LPAR で、新しい CDS を使用して HSC/VTCS を開始します。

    注記:

    信頼性を確保するため、TAPEPLXB を指す 2 つの HSC/VTCS インスタンスは異なる LPAR 上で実行することをお勧めします。これにより、1 つのインスタンスが使用不可になった場合に、Cross-Tapeplex で作成された VTV のメタデータをもう一方のインスタンスに送信できます。

    このシステムは TapePlex TAPEPLXB です。

  4. MVSX で SMC システムのパラメータを定義し、TAPEPLXA と TAPEPLXB の両 TapePlex を定義します。

    コンプレックス内の各 SMC システムで、TapePlex TAPEPLXA (本番 TapePlex) と TAPEPLXB (DR TapePlex) の両方を定義している必要があります。DR テスト中に VTV のレプリケートが継続されるように、リモートサイトにあるホストを指すサーバーを TapePlex TAPEPLXB に定義する必要があります。次に例を示します。

    TAPEPLEX NAME(TAPEPLXA) LOCSUB(HSCA)
    TAPEPLEX NAME(TAPEPLXB)
    SERVER NAME(TPLXBPR) TAPEPLEX(TAPEPLXB) HOST(MVSX) PORT(999)
    SERVER NAME(TPLXBDR) TAPEPLEX(TAPEPLXB) HOST(MVSXDR) PORT(1234)
    

    注記:

    この例では、LPAR 名 (MVSX) が本番サイトと DR サイトで同じですが、2 つのサイトの TCP/IP ホスト名がそれぞれ一意であると仮定しています。
  5. TAPEPLXA で VTCS ポリシーを定義し、TAPEPLXB への CTR を許可します。

    CTR のポリシーの定義」を参照してください。

  6. ディスクレプリケーションソリューションを使用して、リモートの場所で TAPEPLXB の CDS のコンテンツのコピーを保持します。

    または、信頼できる接続がある場合は、本番サイトから CDS にアクセスする FICON 接続を使用して、HSC CDS のプライマリ (または別の) コピーを DR サイトで保持します。

    図4-4 は、リモートサイトに LPAR がない CDS コピーを示しています。

    図4-4 CDS コピー - リモートサイトに LPAR なし

    図4-4 の説明が続きます
    説明: 図4-4 CDS コピー - リモートサイトに LPAR なし

DR ソリューションとしての CTR の使用

DR ソリューションでは常に次の 3 つを実行できます。

ビジネスの継続性のための CTR の使用

サイト TAPEPLXA でサービスが停止した場合は、TAPEPLXB の TapePlex を使用して作業負荷を処理するだけで、TAPEPLXB サイトでビジネスを継続できます。データ保護のため、TAPEPLXA からレプリケートされた VTV は読み取り専用の状態を続けます (CTR VTV 読み取り専用の考慮事項を参照)。しかし、TAPEPLXA の作業負荷を正常に回復できたら、TAPEPLXA からレプリケートされた VTV をスクラッチすることをお勧めします。この手順は、TAPEPLXA と TAPEPLXB の本番作業が安定的に実行されていることを確認してから実施してください。また将来のいずれかの時点で、別個の TAPEPLXA 環境を再作成し、元の構成に戻せるように準備する場合もあるかもしれません。

ビジネスの継続性のために CTR を使用するには:

  1. TAPEPLXB TapePlex の CDS で POOLPARM/VOLPARM 定義を変更し、(AEXTBPL) という名前のプールを TYPE(EXTERNAL) から TYPE(SCRATCH) に変更します。

    POOLPARM TYPE(SCRATCH) NAME(AEXTBPL)
    VOLPARM VOLSER(AV1000-AV1999) MEDIA(VIRTUAL)
    

    VOLPARM VOLSER 範囲は変更しません。

  2. チェックポイントに戻すため、または通常のスクラッチ更新処理を実行するため、TAPEPLXB でスクラッチ同期ジョブを実行し、TMS のスクラッチステータスに基づいて AV1000-AV1999 の範囲のスクラッチ VTV をスクラッチできます。

    本番処理を開始してから VTV ボリュームシリアル番号 (範囲 AV1000-AV1999) がスクラッチボリュームとして再利用できるようになるまで、少し待つことをお勧めします。POOLPARM/VOLPARM 機能の使用により、ポリシーで SUBPOOL(AEXTBPL) を具体的に要求していないかぎり、これらのボリュームはスクラッチとして選択できません。

    この間、TAPEPLXA の本番作業に TAPEPLXB のスクラッチサブプール ASCRPL (volser 範囲 BV1000-BV1999) を使用します。

    障害回復環境の動作が安定したら、POOLPARM/VOLPARM 定義をふたたび変更し、AV1000-AV1999 からスクラッチボリュームが選択されるようにします。

    POOLPARM TYPE(SCRATCH) NAME(ASCRPL)
    VOLPARM VOLSER(AV1000-AV1999) MEDIA(VIRTUAL)
    VOLPARM VOLSER(BV1000-BV1999) MEDIA(VIRTUAL)
    

    図4-5 は、ビジネスの継続性を使用する CTR を示しています。

    図4-5 ビジネス継続中のシステム

    図4-5 の説明が続きます
    説明: 図4-5 ビジネス継続中のシステム

ビジネス再開のための CTR の使用

ローカルサイトでサービスが停止し、ビジネスをリモートサイトで継続しました。そのあと、ローカルサイトがふたたび稼働を始めたときに、ローカルサイトでビジネスをどのように再開したらよいでしょうか。基本的に、ビジネスの再開方法はサービス停止中および停止後に何が起こったかによって異なります。オリジナルのローカルデータをすべて失い、まったく新しい空の VTSS がローカルサイトにあると仮定します。

ローカルサイトのデータをすべて失ったあとにビジネスを再開するには:

  1. 新しい CDS を作成し HSC 監査を実行して、物理ライブラリのコンテンツを確認します。

    次に、データとメタデータをリモートサイトからローカルサイトに「リバースレプリケート」します。

  2. リモートサイトの CONFIG デックを設定し、データをローカルサイトに送信できるようにします。

  3. EEXPORT を使用してリバースレプリケートします。

    次に例を示します。

    EEXPORT MGMTCLAS(LOCEEX1,LOCEEX2) TOPLEX(TAPEPLXA)
    

Cross-Tapeplex Replication を使用した障害回復テスト

引き続き同じ例を使用します。TAPEPLXA と TAPEPLXB という 2 つのサイトがあり、それぞれが専用の TapePlex (HSC CDS) として定義されています。Cross-TapePlex Replication 機能を使用して重要な VTV を TAPEPLXA から TAPEPLXB にレプリケートしています。図4-6 は CTR を使用した DR テストを示しています。

図4-6 Cross-Tapeplex Replication を使用した障害回復テスト

図4-6 の説明が続きます
説明: 図4-6 Cross-Tapeplex Replication を使用した障害回復テスト

TAPEPLXA の作業の DR テストを TAPEPLXB で実行する場合は、次の手順を実行することをお勧めします。

  1. TAPEPLXB の作業で使用するスクラッチサブプールとは別のスクラッチサブプールが TAPEPLXA の出力データ用として TAPEPLXB CDS に 1 つ以上含まれていることを確認します。

    例については、「受信側 TapePlex のポリシー」を参照してください。

  2. TAPEPLXA からのカタログとメタデータデータが使用可能であることを確認します。

  3. TAPEPLXA テスト LPAR で SMC を起動し、TapePlex を TAPEPLXB として定義し、TAPEPLXB の 1 つ以上の HSC ホストについて SERVER コマンドを指定します。

  4. テストの作業負荷の実行を開始します。

    テストの開始前または開始後に存在した VTV は TAPEPLXA からレプリケートされ続けるため、SMC はこれらの VTV に自動的にアクセスします。DR テストで使用する VTV が TAPEPLXA TapePlex によってスクラッチまたは変更されないことを確認します。

  5. テストが完了したら、テストで使用した DR テストサブプール内のすべての VTV をスクラッチします。

    この手法では特別な CDS を用意する必要がなく、2 つの別個の HSC システムがハードウェアリソースを共有できるようにするための特別なルールも必要ありません。ただし、この方法では DR テストを現在のデータ、または少なくとも現在使用可能なデータを使用して実行する必要があります。DR テストの出力と TAPEPLXA がレプリケートした VTV には TAPEPLXB VTSS バッファースペースが使用されます。

    TAPEPLXA TapePlex からレプリケートされたデータは読み取り専用であるため、DR テストでデータを変更しようとすると、メッセージ SMC0247「Mount failed for write-protected VTV vvvvvv on drive dddd from SMC indicating that the VTV cannot be mounted.」が表示されます。このメッセージは、DR プロセスにアプリケーションチェックポイントが明確に定義されていない可能性を示唆しています (CTR VTV 読み取り専用の考慮事項を参照)。この場合、DR 戦略としての CTR の使用は必ずしも適切な選択であるとはいえません。

    注記:

    Cross-Tapeplex Replication を使用してリモートサイトに VTV のコピーを作成する場合、DR テストとして CDRT を使用しないことをお勧めします。CDRT を使用した場合、たとえ別の CDRT 環境にある読み取り専用 VTV でも更新ができないためです。

LPAR のない DR サイトでの DR テスト

本番サイトで実行している TapePlex を使用して DR サイトの CTR ハードウェアを管理するときには、DR テストに関してさらに別の考慮事項があります。この例では、本番 TapePlex として TAPEPLXA を使用し、通常は本番サイトで実行し DR テスト中は本番サイトで実行する TapePlex として TAPEPLXB を使用します。

  1. テストを開始する前に、本番サイトで DR TapePlex TAPEPLXB を停止する必要があります。

    DR テスト中、TAPEPLXB は DR サイトで TAPEPLXB CDS のコピーで実行されます。

  2. 本番 VTV は TAPEPLXB に送信され続け、DR サイトの CDS に反映されます。

    この間に本番サイトの TAPEPLXB CDS は、DR テスト中にレプリケートされた VTV を反映しなくなるため、情報が古くなります。本番 LPAR で TAPEPLEX 文と SERVER 文を定義すると、DR テスト中もデータレプリケーションが継続されます。

    TAPEPLEX NAME(TAPEPLXB)
    SERVER NAME(TPLXBPR) TAPEPLEX(TAPEPLXB) HOSTNAME(MVSX) PORT(999)
    SERVER NAME(TPLXBDR) TAPEPLEX(TAPEPLXB) HOST(MVSXDR) PORT(1234)
    
  3. DR サイトで TapePlex TAPEPLXB の HSC/VTCS を起動するときには、SMC で HTTP サーバーを起動する必要があります。

    HTTP START PORT(1234)
    

    ポート番号 (1234) には TAPEPLXBDR SERVER 文で定義したものと同じ番号を使用します。

  4. テストの最後に、テストで作成されたすべての VTV をスクラッチします。

    テスト中にどの VTV が作成されたのかを確認する必要はなく、サブプール内のすべてのボリュームをスクラッチするだけです。次に例を示します。

    SCRATCH VOL(BV1000-BV2999)
    
  5. DR サイトの TAPEPLXB の HSC/VTCS を停止します。

  6. DR サイトの TAPEPLXB CDS が本番サイトに戻されたことを確認します。

    この方法として、DR テスト中に TAPEPLXB CDS を本番サイトにミラー化できれば理想的です。これができない場合は、FTP など任意のメカニズムを使用して、DR サイトの現在のバージョンから CDS をコピーして、本番サイトに戻します。

  7. 本番サイトの LPAR で TAPEPLXB を再開します。

    TAPEPLXB のアクティブのコピーがない間、TAPEPLXB への CTR がスケジュールされている VTV は VTSS バッファーに残ります。本番サイトで TAPEPLXB が再度アクティブになったときに、これらの VTV は DR サイトの VTSS にレプリケートされます。

Cross-TapePlex Replication (CTR) を使用してレプリケートされた VTV の管理

VTVMAINT を使用すると、CTR によってレプリケートされた VTV のステータスを次のように変更できます。

  • VTV を参照する TapePlex の名前を削除するには、VTVMAINT DELEXpot を使用します。たとえば、TAPEPLXA から TAPEPLXB に VTV をレプリケートしてから、TAPEPLXA 上のコピーを削除する場合は、VTVMAINT DELEXpot を使用して、TAPEPLXA の VTV への参照を削除します。

  • VTV を参照する TapePlex の名前を追加するには、「ビジネスの継続性のための CTR の使用」の説明のとおり、VTVMAINT ADDEXpot を使用します。

  • VTVMAINT ユーティリティーは CTR をとおして受信した VTV の所有権を変更しますが、その VTV は現在スクラッチステータスである必要があります。たとえば、VTVMAINT OWNRPLEX(TAPEPLXB) は TAPEPLXA から受信した VTV の所有権を、現在 VTV が置かれている TapePlex の所有に変更します。