「回復ポイント目標 (RPO) の定義」で述べているように、DR ソリューションの成功にとって重要な要素の 1 つが、一貫したデータセットを DR ベースラインとして使用できるようにするシステムチェックポイントを確立する機能です。
VSM 環境の場合、有効な DR ベースラインは次のとおりです。
すべてのビジネスクリティカルなデータが、指定された DR の場所でセキュリティー保護されている。
メタデータ (CDS、MVS カタログ、TMC) のセキュアコピーが取得されている。
障害が宣言されている場合 (実際またはテスト)、メタデータコピーが有効であることが保証されている。
VTCS は、次の機能を通じて、DR ベースラインを作成できるようにします。
DRMONitr
ユーティリティーはモニタリングして、重要な DR 用データがその指定された回復の場所に到達することを確認します。これにより、データが送信先に到達するまでジョブストリーム処理が一時停止できるようになります。すべてのデータが把握されたらユーティリティーは終了します。DRMONitr
ユーティリティーをジョブステップとして実行できます。ジョブステップが完了すると、すべてのモニター対象データが、指定された DR の場所で把握され、セキュリティー保護されていると保証されます。
DRCHKPT
ユーティリティーは、CDS メタデータを通じてアクセスされるデータが、設定期間、有効であり続けられるようにするために使用されます。これにより、CDS バックアップが設定期間有効であり続けることが保証され、したがって、DR ベースラインに VSM システムを復元できます。DRCHKPT
ユーティリティーは、MVC の内容を回復できる回復ポイントを確立する、アクティブな CDS での日時スタンプを設定します。データの内容は、この回復ポイントの時点から始まり将来の一定期間保証されます。DRCHKPT
ユーティリティーを使用しない場合は、CDS 内の要素 (MVC 上の VTV の位置) が有効でなくなっている可能性があるため、DR ベースラインへの復元に CDS バックアップを使用できなくなります。
詳細は、ELS のコマンド、制御文、ユーティリティーに関するリファレンスを参照してください。
次の点にも注意してください。
VMVC の場合、MVCDRAIN
で EJECT
パラメータを指定すると、VTV を物理的に削除します。
注意:
DRCHKPT
ユーティリティーや CONFIG GLOBAL PROTECT
パラメータを使用して VMVC の CDS バックアップの内容を保護する場合、MVCDR EJECT
を指定すると CDS バックアップの VMVC に関する内容が無効化されます。VMVC と MVC の両方の場合、MVCDRAIN
で EJECT
パラメータを指定しないと、VTV を削除しませんが、VTV が VMVC/MVC にないことを示すように CDS レコードを更新します。
詳細は、ELS のコマンド、制御文、ユーティリティーに関するリファレンスを参照してください。
次の例を取り上げます。
この例では、次のようになります。
DRMONitr
および DRCHKPT
ユーティリティーは、DR データがその回復の場所に到達し、必要に応じて、関連したメタデータ (CDS バックアップ) が VTV データを取得できるようにします。
ローカルサイトは、VTSS および ACS (ACS 00) であり、リモートサイトは、図8-1 に示すように、ACS (ACS 01) だけです。
この例は、日常的に、重要なデータのコピーがメタデータとともにリモートサイトでセキュリティー保護されている単純な DR 戦略です。リモート VTV コピーは、指定された DR コピーです。
本番ジョブが完了したあとで、次のジョブがスケジュールされます。
リモートコピーの完了をモニターする (DRMONitr
)。
CDS のチェックポイントを設定する (DRCHKPT
)。
メタデータ (CDS、TMC、MVS カタログ) のバックアップを取得し、リモートサイトでセキュリティー保護する。メタデータバックアップは DR にとって重要であり、それらが「よく知られた」場所に送られるか、その場所がセキュアな場所だとわかっていると想定されていることに注意してください。
これにより、毎日の同期された DR チェックポイントが得られます。DR が宣言されている場合、テープ環境はチェックポイントまで復元され、ジョブはこの既知の状態から再実行されます。
図8-1 に示す構成を使用してこの例を実行するには、次の手順に従います。
次のポリシー文を作成します。
MGMT NAME(DR) MIGPOL(LOCAL,REMOTE) IMMDELAY(0) STOR NAME(LOCAL) ACS(00) STOR NAME(REMOTE) ACS(01)
注記:
効果的な DR 環境の場合、MIGRSEL
および MIGRVTV
文を使用することも検討できます。これを使用すれば、できるだけ早期に DR コピーをセキュリティー保護できます。リモートの場所で重要なデータを確実にセキュリティー保護するために、次の例では DRMONitr
ジョブステップが実行されます。
//MONITOR EXEC PGM=SLUADMIN,PARM='MIXED' //STEPLIB DD DSN=hlq.SEALINK,DISP=SHR //SYSIN DD UNIT=SYSDA,SPACE=(TRK,1) //* //SYSPRINT DD SYSOUT=* //SLSPRINT DD SYSOUT=* //SLSIN DD * DRMON MGMT(DR) STOR(REMOTE) MAXAGE(24) TIMEOUT(30)
この例では、DRMONitr
ユーティリティーは、24 時間未満のマネージメントクラス DR のすべての VTV コピーがリモート ACS に配信されるまで待機します。このユーティリティーは、実行時間 (または待機時間) が 30 分を超えた場合に中止するように設定されています。
すべての VTV コピーがリモート ACS に配信され、RC ゼロで示されたら、次の例に示すように、DRCHKPT
が実行して回復ポイントを設定します。
//CHKPT EXEC PGM=SLUADMIN,PARM='MIXED' //STEPLIB DD DSN=hlq.SEALINK,DISP=SHR //SYSPRINT DD SYSOUT=* //SLSPRINT DD SYSOUT=* //SLSIN DD * DRCHKPT SET
この例では、DRCHKPT
ユーティリティーは、アクティブ CDS でタイムスタンプ、つまり回復ポイントを設定します。この回復ポイントの時点から将来の一定期間 (たとえば、別の CHKPT
ユーティリティーが実行するまで)、MVC コピーの内容は保証されます。
回復ポイントがアクティブ CDS で設定されたら、次の例に示すように、即座に CDS バックアップを取得する必要があります。
//CHKPT EXEC PGM=SLUADMIN,PARM='MIXED' //STEPLIB DD DSN=hlq.SEALINK,DISP=SHR //SYSIN DD UNIT=SYSDA,SPACE=(TRK,1) //* //SLSCNTL DD DSN=hlq.DBSEPRM,DISP=SHR //SLSBKUP DD DSN=hlq.DBSEPRM.BKUP,DISP=SHR //SYSPRINT DD SYSOUT=* //SLSPRINT DD SYSOUT=* //SLSIN DD * BACKUP OPTION(COPY)
バックアップが取得されたあと、MVC の内容、つまりメタデータは、(そのあとの回復またはチェックポイントが設定されるまで) 将来の一定期間有効であると保証されます。
これでこの手順は完了します。DR 宣言 (ローカル本番サイトが利用できない) の場合、どちらかを実行します。
MVC およびほかのすべての重要なデータ (たとえばメタデータコピー) は、本番ローカルサイトのミラーが利用できる別の装置に移送されます。
または
本番ローカルサイトのレプリカが、リモートの場所で構成されます。
メタデータが復元されます (CDS、TMC、MVS カタログ)。テープ環境を再起動すると、DR 同期ポイントからすべてが進行 (ロールフォワード) できます。
この例では、CDS は、24 時間ごとにバックアップされます。CDS バックアップ内の MVC の内容、つまり CDS メタデータは、以降の CDS バックアップが取得されるまで有効なままである必要があります。
この例は、28 時間に設定された MVC 保護を示します。CONFIG RECLAIM PROTECT
パラメータの詳細は、『ELS コマンド、制御文、およびユーティリティーリファレンス』を参照してください。
CONFIG GLOBAL PROTECT
= 28 に設定します。
第 1 日、CDS をバックアップします。
このバックアップ後、ドレイン/リクレイムされた MVC は 28 時間上書きできません。
第 1 日の CDS バックアップが、次の CDS バックアップまで回復ポイントになります。
第 2 日、CDS をバックアップします。
このバックアップ後、ドレイン/リクレイムされた MVC は 28 時間上書きできません。
第 2 日の CDS バックアップが、次の CDS バックアップまで回復ポイントになります。