8 VSM 環境でのシステム回復ポイントの作成

回復ポイント目標 (RPO) の定義」で述べているように、DR ソリューションの成功にとって重要な要素の 1 つが、一貫したデータセットを DR ベースラインとして使用できるようにするシステムチェックポイントを確立する機能です。

VSM 環境の場合、有効な DR ベースラインは次のとおりです。

  • すべてのビジネスクリティカルなデータが、指定された DR の場所でセキュリティー保護されている。

  • メタデータ (CDS、MVS カタログ、TMC) のセキュアコピーが取得されている。

  • 障害が宣言されている場合 (実際またはテスト)、メタデータコピーが有効であることが保証されている。

VTCS は、次の機能を通じて、DR ベースラインを作成できるようにします。

  • DRMONitr ユーティリティーはモニタリングして、重要な DR 用データがその指定された回復の場所に到達することを確認します。これにより、データが送信先に到達するまでジョブストリーム処理が一時停止できるようになります。すべてのデータが把握されたらユーティリティーは終了します。DRMONitr ユーティリティーをジョブステップとして実行できます。ジョブステップが完了すると、すべてのモニター対象データが、指定された DR の場所で把握され、セキュリティー保護されていると保証されます。

  • DRCHKPT ユーティリティーは、CDS メタデータを通じてアクセスされるデータが、設定期間、有効であり続けられるようにするために使用されます。これにより、CDS バックアップが設定期間有効であり続けることが保証され、したがって、DR ベースラインに VSM システムを復元できます。DRCHKPT ユーティリティーは、MVC の内容を回復できる回復ポイントを確立する、アクティブな CDS での日時スタンプを設定します。データの内容は、この回復ポイントの時点から始まり将来の一定期間保証されます。DRCHKPT ユーティリティーを使用しない場合は、CDS 内の要素 (MVC 上の VTV の位置) が有効でなくなっている可能性があるため、DR ベースラインへの復元に CDS バックアップを使用できなくなります。

詳細は、ELS のコマンド、制御文、ユーティリティーに関するリファレンスを参照してください。

次の点にも注意してください。

  • VMVC の場合、MVCDRAINEJECT パラメータを指定すると、VTV を物理的に削除します。

    注意:

    DRCHKPT ユーティリティーや CONFIG GLOBAL PROTECT パラメータを使用して VMVC の CDS バックアップの内容を保護する場合、MVCDR EJECT を指定すると CDS バックアップの VMVC に関する内容が無効化されます。
  • VMVC と MVC の両方の場合、MVCDRAINEJECT パラメータを指定しないと、VTV を削除しませんが、VTV が VMVC/MVC にないことを示すように CDS レコードを更新します。

詳細は、ELS のコマンド、制御文、ユーティリティーに関するリファレンスを参照してください。

チェックポイント例

次の例を取り上げます。

例 1: ローカル MVC コピーとリモート MVC コピー

この例では、次のようになります。

  • DRMONitr および DRCHKPT ユーティリティーは、DR データがその回復の場所に到達し、必要に応じて、関連したメタデータ (CDS バックアップ) が VTV データを取得できるようにします。

  • ローカルサイトは、VTSS および ACS (ACS 00) であり、リモートサイトは、図8-1 に示すように、ACS (ACS 01) だけです。

この例は、日常的に、重要なデータのコピーがメタデータとともにリモートサイトでセキュリティー保護されている単純な DR 戦略です。リモート VTV コピーは、指定された DR コピーです。

本番ジョブが完了したあとで、次のジョブがスケジュールされます。

  • リモートコピーの完了をモニターする (DRMONitr)。

  • CDS のチェックポイントを設定する (DRCHKPT)。

  • メタデータ (CDS、TMC、MVS カタログ) のバックアップを取得し、リモートサイトでセキュリティー保護する。メタデータバックアップは DR にとって重要であり、それらが「よく知られた」場所に送られるか、その場所がセキュアな場所だとわかっていると想定されていることに注意してください

これにより、毎日の同期された DR チェックポイントが得られます。DR が宣言されている場合、テープ環境はチェックポイントまで復元され、ジョブはこの既知の状態から再実行されます。

図8-1 VSM システム回復ポイント例 (ローカルおよびリモート)

図8-1 の説明が続きます
説明: 図8-1 VSM システム回復ポイント例 (ローカルおよびリモート)

図8-1 に示す構成を使用してこの例を実行するには、次の手順に従います。

  1. 次のポリシー文を作成します。

    MGMT NAME(DR)  MIGPOL(LOCAL,REMOTE) IMMDELAY(0)
    STOR NAME(LOCAL) ACS(00)
    STOR NAME(REMOTE) ACS(01)
    

    注記:

    効果的な DR 環境の場合、MIGRSEL および MIGRVTV 文を使用することも検討できます。これを使用すれば、できるだけ早期に DR コピーをセキュリティー保護できます。
  2. リモートの場所で重要なデータを確実にセキュリティー保護するために、次の例では DRMONitr ジョブステップが実行されます。

    //MONITOR EXEC PGM=SLUADMIN,PARM='MIXED'
    //STEPLIB  DD DSN=hlq.SEALINK,DISP=SHR
    //SYSIN          DD UNIT=SYSDA,SPACE=(TRK,1)
    //* 
    //SYSPRINT  DD  SYSOUT=*
    //SLSPRINT   DD SYSOUT=*
    //SLSIN         DD *
    DRMON MGMT(DR) STOR(REMOTE) MAXAGE(24) TIMEOUT(30)
    

    この例では、DRMONitr ユーティリティーは、24 時間未満のマネージメントクラス DR のすべての VTV コピーがリモート ACS に配信されるまで待機します。このユーティリティーは、実行時間 (または待機時間) が 30 分を超えた場合に中止するように設定されています。

  3. すべての VTV コピーがリモート ACS に配信され、RC ゼロで示されたら、次の例に示すように、DRCHKPT が実行して回復ポイントを設定します。

    //CHKPT EXEC PGM=SLUADMIN,PARM='MIXED' 
    //STEPLIB  DD DSN=hlq.SEALINK,DISP=SHR
    //SYSPRINT  DD  SYSOUT=*
    //SLSPRINT   DD SYSOUT=* 
    //SLSIN         DD *
    DRCHKPT SET 
    

    この例では、DRCHKPT ユーティリティーは、アクティブ CDS でタイムスタンプ、つまり回復ポイントを設定します。この回復ポイントの時点から将来の一定期間 (たとえば、別の CHKPT ユーティリティーが実行するまで)、MVC コピーの内容は保証されます。

  4. 回復ポイントがアクティブ CDS で設定されたら、次の例に示すように、即座に CDS バックアップを取得する必要があります。

    //CHKPT EXEC PGM=SLUADMIN,PARM='MIXED' 
    //STEPLIB  DD DSN=hlq.SEALINK,DISP=SHR
    //SYSIN          DD UNIT=SYSDA,SPACE=(TRK,1)
    //*
    //SLSCNTL DD DSN=hlq.DBSEPRM,DISP=SHR
    //SLSBKUP DD DSN=hlq.DBSEPRM.BKUP,DISP=SHR 
    //SYSPRINT  DD  SYSOUT=* 
    //SLSPRINT   DD SYSOUT=*
    //SLSIN         DD *
    BACKUP OPTION(COPY) 
    

バックアップが取得されたあと、MVC の内容、つまりメタデータは、(そのあとの回復またはチェックポイントが設定されるまで) 将来の一定期間有効であると保証されます。

これでこの手順は完了します。DR 宣言 (ローカル本番サイトが利用できない) の場合、どちらかを実行します。

  • MVC およびほかのすべての重要なデータ (たとえばメタデータコピー) は、本番ローカルサイトのミラーが利用できる別の装置に移送されます。

    または

  • 本番ローカルサイトのレプリカが、リモートの場所で構成されます。

メタデータが復元されます (CDS、TMC、MVS カタログ)。テープ環境を再起動すると、DR 同期ポイントからすべてが進行 (ロールフォワード) できます。

例 2: CONFIG RECLAIM PROTECT の使用

この例では、CDS は、24 時間ごとにバックアップされます。CDS バックアップ内の MVC の内容、つまり CDS メタデータは、以降の CDS バックアップが取得されるまで有効なままである必要があります。

この例は、28 時間に設定された MVC 保護を示します。CONFIG RECLAIM PROTECT パラメータの詳細は、『ELS コマンド、制御文、およびユーティリティーリファレンス』を参照してください。

  1. CONFIG GLOBAL PROTECT = 28 に設定します。

  2. 第 1 日、CDS をバックアップします。

    • このバックアップ後、ドレイン/リクレイムされた MVC は 28 時間上書きできません。

    • 第 1 日の CDS バックアップが、次の CDS バックアップまで回復ポイントになります。

  3. 第 2 日、CDS をバックアップします。

    • このバックアップ後、ドレイン/リクレイムされた MVC は 28 時間上書きできません。

    • 第 2 日の CDS バックアップが、次の CDS バックアップまで回復ポイントになります。