1 WebCenter Portalを使用したポータルの構築の概要

この章では、このガイドOracle WebCenter Portalでのポータルの構築で取り上げるコンセプトおよびタスクの概要を説明します。

この章の内容は、次のとおりです。

第1.1項「このガイドについて」
第1.2項「はじめに」
第1.3項「概念」
第1.4項「タスク」

1.1 このガイドについて

このガイドは、WebCenter Portalでポータル・ビルダーを使用してポータルを作成、編集および管理するアプリケーション・スペシャリストと上級ナレッジ・ワーカーを対象としています。ここで説明するタスクには、ポータルとサブポータルの作成、カスタマイズおよび管理、ポータル・テンプレートの管理と開発、ポータル・ページとそこで公開するコンテンツの作成と編集、ポータルで提供するアセットとツールの定義、メンバーシップ、ロールおよび権限を使用したポータルとページのセキュリティ設定などがあります。

1.2 はじめに

ポータルの外観およびポータルに含めるコンテンツについてすでになんらかのコンセプトがある場合は、背景となる概念上の情報を完全には把握していなくても、ポータルを開始して作成できます。即座に開始できるように、この章では、最初に必要になる知識としてポータル・ビルダーの基本的な概念の概要について簡単に説明します。

次に、新しくポータルを作成する際の効率的な手法を示します。

WebCenter Portalでのポータルのプランニングというガイドを参照します。

このプランニング・ガイドは、ポータル・プロジェクトの全体的な管理と実装について説明しており、WebCenter Portal Frameworkを使用したJDeveloper中心の手法(Oracle WebCenter PortalおよびOracle JDeveloperでのポータルの開発を参照)、またはポータル・ビルダーを使用したブラウザ中心の手法(このガイドを参照)を選択する場合に役に立ちます。さらに、ポータルの一般的なユースケースについて理解し、ポータルを構築する際の方針を策定するのにも有効です。
ポータルを構築する際にポータル・ビルダーが適切であると判断した場合は、第1.3項「概念」を参照してください。
ポータルの開発で使用できるタスクの範囲の概要は、第1.4項「タスク」を参照してください。

これで、基本的な概念を身に付けることができ、実際の作業を開始する準備が完了しました。
第2章「「新規ポータルの作成と構築」に進み、新しくポータルを作成するためにポータル作成ウィザードを使用する手順に従ってください。

初期ポータルを作成する際には、計画しているポータルを構築するために次に行う作業について疑問点が出てくるはずです。このガイドは必要な情報についてすべて説明されており、この場合は第2.4項「次に行う作業」のサマリーが役に立ちます。

1.3 概念

この項では、ポータルの構築を開始する前に一般的な概要を示すために、ポータル・ビルダーでのポータルの構築に関する概念を紹介します。これらの基本的なコンセプトの詳細は、このガイドの次の章で説明します。

第1.3.1項「ポータルとは」
第1.3.2項「ホーム・ポータルとは」
第1.3.3項「ポータル・ビルダーとは」
第1.3.4項「ポータル・テンプレートとは」
第1.3.5項「ポータル・サーバーとは」
第1.3.6項「サブポータルとは」
第1.3.7項「ページとは」
第1.3.8項「ポータル・コンポーネントとは」
第1.3.9項「ポータル・アセットとは」
第1.3.10項「ポータル・ツールおよびポータル・サービスとは」

1.3.1 ポータルとは

ポータルとは、様々な目的に使用できるオンライン・ゲートウェイです。ポータルは、組織内の従業員同士を結び付け、チーム間でプロファイルおよびプロジェクトの情報を活発に共有するツールとして使用できます。また、製品の調査や購入に使用できるように、別のポータルを顧客用に設定することもできます。小規模なチーム向けに焦点を絞ったポータルがある一方、何千人ものメンバーが使用する機能を搭載したポータルもあります。例:

コラボレーション、従業員によるセルフサービスおよび社内のコミュニケーションに使用するイントラネット・ポータルには、次のものがあります。
- 会社全体のポータル: データには、パブリック、プライベートおよびセキュアが混在しています。
- 部門のポータル: データは指定したチーム内で表示可能で、編集または公開できるのは数人のマネージャのみです。
- プライベートのポータル: データは非常に機密性が高く、たとえば合併や買収に関するデータなどです。ダウンロード、出力または表示できる担当者に関して十分な注意を払うことが重要になります。
- HRポータル: ログインに基づいた高度にセキュアな情報が表示されます。
顧客とパートナがセルフサービスとサポートに使用するエクストラネット・ポータル
ユーザーによるドキュメントとコンテンツの共有、アクティビティの追跡およびディスカッションへの参加が可能なチーム・コラボレーション・ポータル

ポータルのユースケースの詳細は、『WebCenter Portalでのポータルのプランニング』のポータルとは何かに関する項を参照してください。

WebCenter Portalには、直観的なユーザー・インタフェースおよびすぐに使用できるポータル・テンプレート(第1.3.4項「ポータル・テンプレートとは」を参照)を使用して、堅牢なポータルを迅速に作成するために必要なすべてのツールが用意されているため、作成するポータルに適した組込み機能から始めるのに便利です。ポータルを作成したら、ページやコンポーネントなどを追加することにより、そのポータルを簡単に開発できます。ポータルのルック・アンド・フィールのカスタマイズ、ポータルのセキュリティおよびメンバーシップの定義が可能なほか、ポータルのニーズや需要の変化に応じて新しい機能を継続的に追加できます。

ポータルを公開すると、他のユーザーがURLを介してポータルにアクセスし、権限に応じてポータルでアクションを実行できるようになります。ユーザーは、定義された権限を持つポータルのビューア、参加者またはモデレータとなるか、あるいはポータルの特定のページでの権限の編集など、ポータルの特定のエリアに対するアドホック権限を付与される場合があります。

1.3.2 ホーム・ポータルとは

ホーム・ポータルとは、ユーザーが自分のプロファイル、使用可能なポータル、ポータル・テンプレートおよびドキュメントへのアクセス権を持つエリアであり、ホーム・ポータルの独自のビューの特定の要素をカスタマイズできます。ユーザーはホーム・ポータルに独自の個人用ページを作成でき、システム管理者はシステム・ページおよびビジネス・ロール・ページを選択された対象者に公開できます。システム管理者は、ユーザー・ロールに関するセキュリティ設定を変更することにより、ホーム・ポータルをビューから非表示にすることもできます。

詳細は、Oracle WebCenter Portalの使用の「WebCenter Portalについて」を参照してください。

1.3.3 ポータル・ビルダーとは

ポータル・ビルダーは、WebCenter Portalのポータルの作成、編集および管理エリアで構成されます。ポータル・ビルダーを使用すると、ポータルを作成し、ページ・エディタ(コンポーザ)でポータルのページを追加および編集し、ポータル作成者として1つのポータルを管理できます。システム管理者は、ポータル・ビルダーの管理エリアにアクセスし、すべてのポータルを管理できます。

ポータル・ビルダーを使用したポータルの構築、編集および管理に関する側面はすべて、このガイドOracle WebCenter Portalでのポータルの構築に記載されています。ポータル・ビルダーですべてのポータルに設定を適用するためにシステム管理者が実行するアプリケーション・レベルの管理タスクについては、Oracle WebCenter Portalの管理の「ポータル・ビルダー管理でのポータルの管理」を参照してください。

1.3.4 ポータル・テンプレートとは

ポータル・テンプレートは、新規ポータルを構築する際の開始点です。新規ポータルを作成するときは、まず新規ポータルのベースとなるポータル・テンプレートを選択します。ポータル・テンプレートは、WebCenter Portalに用意されているすぐに使用できるテンプレートのいずれか、または特定の使用目的のために作成されるカスタム・テンプレートを使用します。その後、ポータルを変更およびカスタマイズして、テンプレートに当初用意されていた機能に別の機能を追加できます。

詳細は、第3章「ポータル・テンプレートの使用」を参照してください。

1.3.5 ポータル・サーバーとは

ポータルの開発において、ポータル・サーバーを使用すると、ポータル作成者は他のユーザーが使用できるようにポータルを公開できます。

詳細は、第4章「ポータルの公開」を参照してください。

1.3.6 サブポータルとは

どのポータルも、1つまたは複数の子ポータルまたはサブポータルの親になることができます。サブポータルを使用してポータル階層を作成するかどうかは、エンド・ユーザー用に実現する必要があるデザインに応じて任意で決定します。

詳細は、第5章「サブポータルの使用」を参照してください。

1.3.7 ページとは

WebCenter Portalには、いくつかのタイプのページが用意されています。WebCenter Portalのページには、すぐに使用できるものとユーザーが作成するものがあります。

WebCenter Portalですぐに使用できるページは次のとおりです。

システム・ページ: 「ログイン」ページや「自己登録」ページなど、カスタマイズ可能で実用的な、すぐに使用できるページのセットです。また、WebCenter Portalで提供される各ツールには、「ドキュメント」ページなど、ツール(ツール・コンソール)にユーザー・インタフェースを提供する、関連付けられたシステム・ページがあります。システム・ページには、関連する入力フィールドおよびボイラープレート・テキストから事前に移入されています。システム・ページは、ポータル・レベルおよびアプリケーション・レベルでカスタマイズできます。詳細は、次を参照してください:
- ポータル・レベルのシステム・ページ: 第8章「ポータルのシステム・ページのカスタマイズ」
- アプリケーション・レベルのシステム・ページ: Oracle WebCenter Portalの管理の「システム・ページのカスタマイズ」
ビジネス・ロール・ページ: 販売担当者、経理担当者、マーケティング・アソシエイトなど、特定のビジネス・ロールに関連する情報が移入され、そのロールに割り当てられているすべてのユーザーのホーム・ポータル・ビューにプッシュされます。「ビジネス・ロール・ページ」は、Oracle WebCenter Portalの管理の「ビジネス・ロール・ページの管理」に記載されているように、アプリケーション・レベルでシステム管理者によってのみカスタマイズできます。

ポータルの構成方法にかかわらず、デフォルトで使用可能なページに加えて新しいページが常に必要になります。ポータルのニーズに合せて、次のような新規ページを作成できます:

カスタムのビジネス・ロール・ページ: システム管理者によって作成され、デフォルトで提供されるページに追加されます。新規ビジネス・ロール・ページの作成の詳細は、Oracle WebCenter Portalの管理の「ビジネス・ロール・ページの管理」を参照してください。
個人用ページ: 独自の排他的な使用のためにユーザー自身がホーム・ポータルに作成できます。デフォルトでは、個人用ページは作成したユーザーのみがホーム・ポータルに表示できますが、他のユーザーにも個人用ページが表示されるようにユーザーが設定することもできます。個人用ページの詳細は、Oracle WebCenter Portalの使用の「個人用ページの作成と管理」を参照してください。個人用ページのコンテンツの管理は主にユーザー個人が責任を持ちますが、Oracle WebCenter Portalの管理の「個人用ページの管理」に記載されているように、システム管理者にはWebCenter Portal管理ですべての個人用ページを管理する権限があります。
ポータル・ページ: ポータルでページを作成する権限を持つすべてのユーザーが作成し、様々な目的に使用できます。
- ポータル・モデレータが作成するページは、ポータルのナレッジ・ベースにコントリビュートすることが目的で、一般的にポータルのすべてのメンバーが使用できます。
- ポータル・メンバーが作成するページは、メンバー自身の使用のため、または選択されたその他のポータル・メンバーと共有するために、ポータルに選択的に公開されます。このようなポータル・ページはすべてのポータル・メンバーに公開されるわけではありませんが、ポータル・モデレータにはすべてのポータル・ページを管理する権限があります。
ポータルのすべてのページが一貫性のある表示と動作をするように、それらすべては同じページ・テンプレートを使用し、ポータル・モデレータによってデフォルトとして設定されます(第7.3.2項「ポータルのページ・テンプレートの変更」を参照)。ポータル・ページを作成する場合、最初のコンテンツのページ・スタイルとページのレイアウトを選択します。ページ・テンプレートおよびページ・スタイルはポータル・アセットです(第1.3.9項「ポータル・アセットとは」を参照)。

ユーザーは、アイテムの再配置、タスク・フローの拡張または縮小、および自分のみに表示されるエリアのサイズ変更を行うことにより、独自の個人ビュー用にページをカスタマイズできます。

ポータル・ページには、任意の数のサブページ、およびタブレットや携帯電話など、他のデバイスで表示するように最適化された「ページ・バリアント」を含めることができます。

詳細は、第I部「ポータル・ページの使用」を参照してください。

1.3.8 ポータル・コンポーネントとは

ポータルを開発する場合、ポータルのページに要素を追加します。これらの要素は数が多くて変化に富んでおり、ポータル・コンポーネントとしてまとめて参照されます。ポータル・コンポーネントには、タスク・フロー、ポートレット、コンテンツ・コンテナおよびその他のタイプのリソース(イメージ、リンクなど)があります。

詳細は、次を参照してください:

1.3.9 ポータル・アセットとは

アセットとは、ポータルの構造、ルック・アンド・フィールおよびコンテンツを定義するオブジェクトのことです。WebCenter Portalでは、すぐに使用できるか、またはカスタマイズ可能な次のアセットが提供されます: 「ページ・テンプレート」、「ナビゲーション・モデル」、「リソース・カタログ」、「スキン」、「ページ・スタイル」、「コンテンツ・プレゼンタ」表示テンプレート、「タスク・フロー・スタイル」、「ページレット」、「タスク・フロー」および「データ・コントロール」。

ポータル・モデレータまたは適切な権限を持つポータル・メンバーが個別のポータルで使用可能なアセットを管理し、アプリケーション・スペシャリストがすべてのポータルで使用可能な共有アセットを管理します。

個別のポータルで使用可能なアセットの詳細は、第20章「ポータル・アセットの作成、編集および管理」を参照してください。共有アセットに固有の情報は、第59章「共有アセットの使用」を参照してください。

1.3.10 ポータル・ツールおよびポータル・サービスとは

WebCenter Portalでは、ポータル・メンバーがコラボレーションおよびコミュニケーションに使用できる多くのツールおよびサービスが提供されます。WebCenter Portalが正しくインストールおよび構成され、必要な外部バックエンド・サーバーへの有効な接続がシステム管理者によって設定されると、ツールおよびサービスがポータルで使用できるようになります。

ツールおよびサービスは、個別アドレス可能なURLを使用するポータルの自分のページ(「コンソール」)に、またはページ上の多くのコンポーネントの1つとして、公開できます。ポータルで使用可能なツールおよびサービスには次のようなものがあります: 「お知らせ」、「ディスカッション」、「ドキュメント」、「ポータル・イベント」、「リスト」、「検索」、「タグ」、「インスタント・メッセージおよびプレゼンス」、「リンク」、「メール」、「投票」、「アクティビティ・グラフ」、「ノート」および「通知」。

詳細は、第39章「ポータル・ツールとポータル・サービスの概要」を参照してください。

1.4 タスク

この項では、ポータルの構築を開始する前に一般的な概要を示すために、ポータルの構築に関するタスクを紹介します。これらのタスクは、このガイドの次の章で順を追って説明します。

第1.4.1項「新規ポータルの作成と公開」
第1.4.2項「ポータルの編集、管理およびカスタマイズ」
第1.4.3項「ポータル・ページの作成、編集および管理」
第1.4.4項「ポータル・アセットの作成、編集および管理」
第1.4.5項「ポータル・セキュリティとポータル・メンバーシップの管理」
第1.4.6項「ポータル・コンテンツの追加と管理」
第1.4.7項「ポータル・ツールとポータル・サービスの追加と管理」
第1.4.8項「すべてのポータルのポータル・テンプレートと共有アセットの管理」
第1.4.9項「ポータルの外観と言語の変更」

1.4.1 新規ポータルの作成と公開

新しくポータルを開発する際に最初の基本となるのは、初期デザインとレイアウトにポータル・テンプレートを使用してポータルを作成し、使用するその他の項目にポータルを公開することです。ポータル・デザインでサブポータルがサポートされている場合は、サブポータルを既存のポータルに追加できます。

詳細は、第I部「概要」を参照してください。

1.4.2 ポータルの編集、管理およびカスタマイズ

ポータルを作成したら、そのポータルの構築と維持に関連するタスクとして、コンテンツを追加するためのポータルの編集、ポータルの設定とセキュリティの管理、ポータルで使用されるシステム・ページのカスタマイズ、様々なデバイスでポータルを表示するためのデバイス・グループの管理、ポータルのタスク・フローのカスタマイズなどがあります。

詳細は、第I部「ポータルの使用」を参照してください。