多通貨について

どの複数国対応システムでも重要な点となるのは通貨のサポートです。グローバル ペイロールを使うと、多通貨処理を効率的に行うことができます。金額の入力および支払いには、どの通貨でも使うことができます。定義されたパラメータを使って必要な換算が自動的に行われます。

このトピックでは、次について説明します。

  • 通貨の使い方と定義。

  • 支給元レベルでの通貨。

  • エレメント レベルでの通貨。

  • 為替レート タイプと換算日。

  • 累計と通貨。

  • 多通貨にまたがった支給額の表示。

  • オンライン通貨デフォルト。

  • バッチ処理の通貨。

注: グローバル ペイロールは、欧州通貨統合 (EMU) の通貨変更要件に対応できるように設計されています。また、それ以外の全ての通貨にも対応しており、複数の通貨間で換算ができます。

グローバル ペイロールで多通貨を使用するには、以下のテーブルを設定および管理します。

  • 通貨コード テーブル (CURRENCY_CD_TBL。通貨コード データを格納)。

  • 通貨建値テーブル (CURR_QUOTE_TBL。通貨建値方法データを格納)。

  • 市場レート インデックス テーブル (RT_INDEX_TABLE。市場レート インデックス データを格納)。

  • 市場レート タイプ テーブル (RT_TYPE_TBL。市場レート タイプを格納)。

  • 市場レート データ テーブル (RT_RATE_TABLE。市場レート データを格納)。

これらの PeopleSoft コンポーネントのテーブルは、PeopleSoft HR 全体で使用されます。

『PeopleSoft 9.1 product documentation: Enterprise Components』を参照してください。

システムで使用する通貨コード、タイプ、為替レート、および基本通貨を定義したら、多通貨を使って給与計算を実行するために、これらの情報がグローバル ペイロールでどのように使われるのかを知っておく必要があります。

このセクションに出てくるページについてはこのドキュメントの他の箇所で詳しく説明されているので、ここでは、通貨処理でこれらのページのフィールドがどのように使われるかについてだけ説明します。

通貨レート コード、レート タイプ、および為替レートを一度設定しておけば、これらを使って入力および出力する金額を制御できます。

以下の表は、グローバル ペイロールにおける、2 つのレベルの通貨コードの扱い方を表しています。

レベル

通貨コードの用途

支給元

この支給元に属する全ての受給者の処理通貨が決定されます。下位レベルで通貨コードの上書きが指定されていない場合、金額はこの処理通貨で処理されます。

データベース フィールドまたはエレメントの定義

職務テーブルまたは受給者データのコンポーネントで、受給者の基本報酬をデータベース フィールドとして入力する際に通貨コードを入力できます。また、支給や控除など他のエレメントを定義するときも、その定義に通貨コードを割り当てることができます。こうすることにより、このエレメントに値が入力されると、そこで定義された通貨が適用されます。その後、この通貨は純支給額処理で処理通貨として指定されている通貨に換算されます。

グローバル ペイロールでは、ページ上で金額を入力するたびに通貨コードを指定する必要があります。通貨コードを使って、入力する通貨の単位を指定します。

給与計算処理では、支給元は組織の最上位レベルになります。全ての受給者は支給グループに割り当てられます。各支給グループは、1 つの支給元にのみ割り当てられます。支給元ページで入力された通貨は、その支給元に割り当てられている全ての支給グループ、およびそれらの支給グループに割り当てられている全ての受給者に適用されます。この支給元通貨を処理通貨といいます。

支給元に関連付けられた受給者の計算は全て、その支給元通貨で行われます。処理の前に、全ての入力アイテムがこの通貨に換算されます。処理が終わると、受給者ごとに全ての出力値が純支給額配分情報と共に保存されます。最終的に、この情報は銀行支給ファイルに渡されます。出力金額から別の通貨への換算は全て、この情報を受け取る団体 (銀行など) によって処理されます。

処理に使用する通貨がそれぞれの国や地域で規定されていない場合、入出力で最もよく使用する通貨を処理通貨として必ず定義してください。

注: 処理通貨は上書きできません。これは、他の通貨で金額の入力や出力ができないということではなく、実際の処理がこの通貨で行われていることを意味します。デフォルト通貨が上書きされた場合でも、支給額は処理通貨に換算されてから処理されます。

グローバル ペイロールには、多様な種類の金額エレメントがあります。通貨は、基本報酬およびその他のエレメントに使用できます。

基本報酬で通貨を使用する場合

職務データ コンポーネントで受給者の基本支給額を入力するときは、金額に通貨コードを指定します。この通貨が処理通貨と異なる場合、入力された金額は、受給者の支給が処理される前に処理通貨に換算されます。通貨コードを入力しない場合、これらの金額は処理通貨の値と見なされ、換算は行われません。

注: 職務データ コンポーネントの通貨コードには、デフォルトとして支給元テーブルではなくインストール テーブルの基本通貨が表示されます。基本通貨は必ずしも支給元通貨と同じである必要はありません。基本通貨はグローバル ペイロールに影響しません。ただし、デフォルトの通貨コードを使って問題がないかを確認してください。正しくない場合は変更してください。

その他のエレメントで通貨を使用する場合

エレメントの例として支給および控除があります。支給エレメントや控除エレメントを定義する場合、支給エレメントまたは控除エレメントのコンポーネント フィールドに、変数などの他のサポート エレメントを入力します。ベースやレートなどのコンポーネント フィールドには、通貨フォーマットを指定できます。通貨コードは、通貨フォーマットが指定されている全てのフィールドで指定する必要があります。バッチ システムへの入力時に、金額の通貨が処理通貨に変換されます。金額が変数で定義される場合、変数プログラムで金額が処理通貨に変換されます。その時点から、変換された値が計算で使用されます。変数が支給計算で使用される場合は、変換された値が使用されます。

グローバル ペイロールの計算では、支給元レベルで定義された処理通貨でない通貨の値があると、給与計算システムによる通貨換算が必要となります。通貨換算を行うには、使用する為替レート タイプと適用する換算日が認識される必要があります。為替レート タイプと換算日については以下で説明します。為替レート タイプと換算日が計算に使用されるのは、グローバル ペイロール内で行われる処理に対してだけです。オンラインの通貨換算など、他の機能には適用されません。

受給者レベルでの為替レート タイプと換算日

支給グループ コンポーネントの受給者職務データのデフォルトで定義した為替レート タイプと換算日を、受給者レベルで上書きすることができます。たとえば、イギリスの 10 人の受給者がドイツで勤務しているとします。このうちの 9 人には銀行の公定レート、残りの 1 人には特別のレートを使用するとします。これらの受給者が含まれる支給グループには、為替レート タイプに銀行の公定レートを定義します。しかし、10 人目の受給者についてはこの値を上書きする必要があります。職務データ コンポーネントで為替レート タイプを上書きすることができます。

受給者のデフォルトの値は、その受給者が含まれる支給グループに定義されている値です。この値を上書きした場合だけ、受給者レベルの値がシステムに保存されます。

為替レートの換算日は、支給期間終了日、支給日、または支給期間開始日とカレンダー期間の日付とを比較して決定されます。その結果、バッチ処理中に行う必要のある通貨換算に使われる為替レートが、適切な有効日に基づいて決められます。

累計の値は単一の通貨で管理されます。処理通貨を変更すると、累計の値は新しい処理通貨に自動的に換算されます。つまり、7 月 1 日に処理通貨をフラン (FRA) からユーロ (EUR) に切り替えると、6 月 30 日時点の累計の値がユーロに換算されます。6 月 30 日より後に累計に加算、または累計から差し引かれる金額は、ユーロで管理されます。

受給者が、異なる通貨で複数の国から給与を受け取る場合は、各通貨ごとに個別の累計を定義しておく必要があります。たとえば、ある受給者が 1 つの国で勤務しており、その国の通貨で給与を受け取っているとします。累計には、その受給者の年間累計支給額が保存されます。この受給者の職務が変更され、異なる通貨を使用する国がもう 1 つの勤務先として定義されたとします。この場合、この受給者の支給額を 1 つの累計に保存することができなくなります。したがって、2 つ目の国での年間累計支給額を保存するために、新しい累計をもう 1 つ定義する必要があります。

多くのオンライン ページでは、1 つの通貨で表示された支給額や金額を別の通貨で表示できるため、システムでサポートされている全ての通貨で換算を管理できます。

グローバル ペイロールでは、データ入力用および情報表示用のページで、金額を多通貨で表示できます。

金額を入力するときには、通貨コードも入力する必要があります。デフォルトの通貨コードは変更可能です。

通貨のデフォルトには、プライマリ権限リスト基本設定、エレメント定義、または支給元の値が使用されます。プライマリ権限リスト基本設定では、プライマリ権限リスト基本設定レコード (OPR_DEF_TBL_HR) の EXCHNG_TO_CUR フィールドが参照されます。これは、デフォルトページで設定します。このレコードには有効日がありません。支給元レコードおよびエレメント定義レコードには、有効日があります。

以下の表は、デフォルトの通貨コードと有効日の一覧です。

ページ

デフォルト通貨コードのソース

有効日

支給

プライマリ権限リスト基本設定

非適用。

控除

プライマリ権限リスト基本設定

非適用。

変数

プライマリ権限リスト基本設定

非適用。

ブラケット

プライマリ権限リスト基本設定

非適用。

過去のルール

プライマリ権限リスト基本設定

非適用。

ポジティブ入力

エレメント定義に通貨がある場合はエレメント定義、そうでない場合はカレンダー ID の支給元

エレメント定義がソースの場合は、"定義の指定日" 時点の定義を使用します。支給元がソースの場合は、支給期間終了日を使用します。

サポート エレメント上書き

エレメント定義に通貨がある場合は支給元定義、そうでない場合は支給元

現在の日付。

 

エレメント定義に通貨がある場合は支給グループ定義、そうでない場合はその支給グループの支給元

現在の日付。

 

エレメント定義に通貨がある場合は支給カレンダー定義、そうでない場合はカレンダーの支給グループの支給元

支給期間終了日。

 

エレメント定義に通貨がある場合は受給者定義 、そうでない場合はプライマリ権限リスト基本設定

現在の日付。

上書き

エレメント定義に通貨がある場合は受給者定義 、そうでない場合はプライマリ権限リスト基本設定

現在の日付。

以下は、バッチ処理の間に行われる通貨換算のステップです。

  1. ユーザーは、自分が選択した通貨タイプを使って金額を入力します。

  2. 為替レートが計算され、単一の処理通貨、つまり支給元レベルで定義されている処理通貨に換算されます。

    金額に通貨コードが関連付けられていない場合、エレメントは変換されず、その支給はエラーになります。

    バッチ処理では標準の PeopleSoft 通貨換算アプリケーションが使われます。このアプリケーションによって換算が行われ、入力された通貨に対応する分子および分母が返されます。この処理では、3 つの通貨を使った換算処理も行えます。

    計算では、前の期間から取得されて別の通貨で保存されている累計値などの値は、現在の期間の為替レート タイプと有効日に基づいて、現在の処理通貨に換算されます。

  3. 計算は処理通貨で行われ、その結果は処理通貨で PINV アレイに保存されます。

  4. 計算結果は適切なテーブルに処理通貨で保存されます。通貨換算に使われた為替レート、通貨換算バッチ プログラムで使われた分子と分母、または最初に入力された金額と通貨コードは保存されません。

    バッチ処理で、金額フィールドに関連付けられた通貨コードが見つからなかった場合、つまりフィールドが空白または通貨コードが無効な場合は、エレメントの変換ができないため、その支給はエラーになります。

注: 計算に使われた元の金額および通貨コードを確認するには、入力ソース テーブルを参照してください。

画像: バッチ処理で使用される通貨

以下のフローチャートは、バッチ処理で通貨がどのように処理されるかを表しています。

バッチ処理で使用される通貨