28 Oracle Data Miningの管理タスク
Oracle Data Miningに関連する管理タスクの実行方法について説明します。
28.1 データ・マイニング用のデータベースのインストールおよび構成
データ・マイニング用のデータベースのインストールおよび構成する方法を説明します。
28.1.1 インストールについて
Oracle Data Miningは、Oracle Database Enterprise EditionのオプションであるOracle Advanced Analyticsの構成要素です。
Oracle Databaseをインストールするには、ご使用のプラットフォームのインストール手順に従ってください。インストール時に「データ・ウェアハウス」構成を選択します。
Oracle Data Minerは、Oracle Data Miningのグラフィカル・ユーザー・インタフェースで、Oracle SQL Developerの拡張です。SQL DeveloperをダウンロードしてData Minerリポジトリをインストールする手順は、Oracle Technology Networkで参照できます。
例28-7で説明しているように、データ・マイニング操作を実行するには、Oracleデータベースにログオンが可能で、ユーザーIDがデータベース権限を持っている必要があります。
関連項目:
ご使用のプラットフォームに固有のインストール手順については、Oracle Databaseドキュメント・ライブラリ(http://docs.oracle.com/en/database/database.html
)のインストールおよびアップグレードに関するページを参照してください。
28.1.3 データ・マイニング用のデータベース・チューニングに関する考慮事項
データ・マイニング用のデータベース・チューニングに関する考慮事項を理解します。
Oracle Data Miningをサポートしている本番データベースを管理するDBAは、『Oracle Database管理者ガイド』で説明されている標準的な管理方法に従う必要があります。
データ・マイニング・モデルの作成およびマイニング・モデルのバッチ・スコアリングは、システムに対してDSSに似た負荷をかける傾向があります。単一行のスコアリングは、システムに対してOLTPに似た負荷をかける傾向があります。
データベース・メモリーの管理は、データ・マイニングに大きな影響を与える場合があります。モデルの作成、複合問合せおよびバッチ・スコアリングでは、プログラム・グローバル領域(PGA)メモリーのサイズ指定を適切に行うことが非常に重要です。データ・マイニングの観点からは、システム・グローバル領域(SGA)は、一般的に重要度は低いと言えます。ただし、SGAは、SGAの共有カーソルにモデルをロードするリアルタイムのスコアリングに対応できるサイズに設定する必要があります。ほとんどの場合は、自動的にメモリーを管理するようにデータベースを構成できます。これを行うには、チューニング・パラメータMEMORY_TARGET
で最大合計メモリー・サイズを指定します。自動メモリー管理を使用すると、Oracle Databaseは、必要に応じてSGAとインスタンスPGAとの間で動的にメモリーを交換し、処理需要を満たします。
ほとんどのデータ・マイニング・アルゴリズムで、パラレル実行を利用できます(データベースでパラレル実行が有効化されている場合)。INIT.ORA
のパラメータは、パラレル実行の動作を制御します。
28.2 Oracle Data Miningのアップグレードまたはダウングレード
Oracle Data Miningのアップグレードまたはダウングレードの方法を理解します。
28.2.1 アップグレード前の手順
28.2.1.1 Javaで作成されたモデルの削除
10gまたは11gデータベースにJavaで作成されたモデルが含まれている場合は、データベースのアップグレード前に、DBMS_DATA_MINING.DROP_MODEL
ルーチンを使用してモデルを削除します。
28.2.1.2 Oracle Data Miner Classicで作成されたマイニング操作の削除
データベースにOracle Data Miner Classicからのマイニング操作が含まれている場合は、データベースのアップグレード前に、マイニング操作の削除とリポジトリの削除を行います。次の手順を実行します。
-
Data Miner Classicユーザー・インタフェースを使用して、マイニング操作を削除します。
-
SQL*PlusまたはSQL Developerで、次の表を削除します。
DM4J$ACTIVITIES DM4J$RESULTS DM4J$TRANSFORMS
さらに次のビューも削除します。
DM4J$MODEL_RESULTS_V DM4J$RESULTS_STATE_V
これらの手順の完了後は、データベースのスキーマ内に接頭辞DM4J$
を使用する表またはビューは存在しなくなります。
28.2.2 Oracle Data Miningのアップグレード
Oracle Data Miningをアップグレードする方法を説明します。
アップグレード前の手順を完了すると、11gまたは10gのどちらのリリースからのアップグレードの場合でも、すべてのモデルとマイニング・メタデータはOracle Databaseのアップグレード・プロセスに完全に統合されます。
アップグレードされたモデルは、引き続き以前のリリースの場合と同様に機能します。アップグレードされたモデルおよびアップグレードされた環境で作成した新しいモデルの両方が、新しいリリースで導入された新しいマイニング機能を利用できます。
データベースのアップグレードには、Database Upgrade Assistant (DBUA)を使用することも、エクスポートおよびインポート・ユーティリティを使用して手動アップグレードを実行することもできます。
28.2.2.1 Database Upgrade Assistantを使用したOracle Data Miningのアップグレード
Oracle Database Upgrade Assistantには、アップグレード・プロセスをインタラクティブに順を追って説明するグラフィカル・ユーザー・インタフェースが用意されています。
Windowsプラットフォームでは、次の手順に従ってUpgrade Assistantを起動します。
-
Windowsの「スタート」メニューに移動し、Oracleホーム・ディレクトリを選択します。
-
「コンフィグレーションおよび移行ツール」メニューを選択します。
-
Upgrade Assistantを起動します。
Linuxプラットフォームでは、DBUA
ユーティリティを使用してOracle Databaseをアップグレードします。
28.2.2.1.1 リリース10gからのアップグレード
Oracle Data Mining 10gでは、データ・マイニング・メタデータおよびPL/SQLパッケージはDMSYS
スキーマに格納されます。Oracle Data Mining 11gおよび12cにはDMSYS
が存在せず、データ・マイニング・メタデータ・オブジェクトはSYS
に格納されます。
Oracle Database 10gを12cにアップグレードする場合、すべてのデータ・マイニング・メタデータ・オブジェクトおよびPL/SQLパッケージは、DMSYS
からSYS
に移行されます。DMSYS
スキーマとその関連オブジェクトは、移行が成功すると削除されます。DMSYS
が削除されると、SYS.DBA_REGISTRY
ビューには、コンポーネントとしてOracle Data Miningがリストされなくなります。
Oracle Database 12cへのアップグレード後は、Data Mining Scoring Engine (DMSE
)に切り替えられなくなります。スコアリング・エンジンは、Oracle Database 11gまたは12cには存在しません。
28.2.2.2 エクスポートとインポートを使用したデータ・マイニング・モデルのアップグレード
28.2.2.2.1 リリース10gのデータ・マイニング・モデルのエクスポートとインポート
データ・マイニング・モデルをエクスポートおよびインポートするには、次の手順に従います。
モデルをOracle Database 10gのインスタンスからダンプ・ファイルへエクスポートするには、「マイニング・モデルのエクスポートおよびインポート」の手順に従いますダンプ・ファイルからモデルをインポートする前に、DMEIDMSYS
スクリプトを実行して、Oracle Database 12cにDMSYS
スキーマを作成します。
SQL>CONNECT / as sysdba;
SQL>@ORACLE_HOME
\RDBMS\admin\dmeidmsys.sql
SQL>EXIT;
注意:
TEMP
表領域がすでにOracle Database 12gデータベースに存在している必要があります。DMEIDMSYS
スクリプトは、TEMP
表領域およびSYSAUX
表領域を使用してDMSYS
スキーマを作成します。
Oracle Database 12cデータベースにダンプ・ファイルをインポートするには、次のようにします。
%ORACLE_HOME
\bin\impdp system\<password
> dumpfile=<dumpfile_name> directory=<directory_name> logfile=<logfile_name> ..... SQL>CONNECT / as sysdba; SQL>EXECUTE dmp_sys.upgrade_models(); SQL>ALTER SYSTEM FLUSH SHARED_POOL; SQL>ALTER SYSTEM FLUSH BUFFER_CACHE; SQL>EXIT;
upgrade_models
スクリプトは、すべてのデータ・マイニング・メタデータ・オブジェクトおよびPL/SQLパッケージをDMSYS
からSYS
へ移行し、モデルのアップグレード前にDMSYS
を削除します。
ALTER SYSTEM文
データベース・スマート・フラッシュ・キャッシュをフラッシュするには、ALTER SYSTEM FLUSH FLASH_CACHE
文を発行します。データベース・スマート・フラッシュ・キャッシュのフラッシュは、リライトされた問合せ、または同一の開始点からの一連の問合せのパフォーマンスを測定する必要がある場合に有効です。
28.2.2.2.2 リリース11gのデータ・マイニング・モデルのエクスポートとインポート
モデルをOracle Database 11gのインスタンスからダンプ・ファイルへエクスポートするには、「マイニング・モデルのエクスポートおよびインポート」の手順に従います
注意:
Javaで作成されたデータ・マイニング・モデルはインポートしないでください。これらはOracle Database 12cでサポートされていません。
Oracle Database 12cデータベースにダンプ・ファイルをインポートするには、次のようにします。
%ORACLE_HOME
\bin\impdp system\<password
> dumpfile=<dumpfile_name> directory=<directory_name> logfile=<logfile_name> ..... SQL>CONNECT / as sysdba; SQL>EXECUTE dmp_sys.upgrade_models(); SQL>ALTER SYSTEM flush shared_pool; SQL>ALTER SYSTEM flush buffer_cache; SQL>EXIT;
ALTER SYSTEM文
データベース・スマート・フラッシュ・キャッシュをフラッシュするには、ALTER SYSTEM FLUSH FLASH_CACHE
文を発行します。データベース・スマート・フラッシュ・キャッシュのフラッシュは、リライトされた問合せ、または同一の開始点からの一連の問合せのパフォーマンスを測定する必要がある場合に有効です。
28.2.4 Oracle Data Miningのダウングレード
Oracle Database 12cデータベースを以前のリリースにダウングレードする前に、特異値分解モデルまたは期待値最大化モデルが存在しないことを確認します。これらのアルゴリズムは、Oracle Database 12cでのみ使用できます。ダウングレードする前に、DBMS_DATA_MINING.DROP_MODEL
ルーチンを使用して、これらのモデルを削除します。削除しないと、データベースのダウングレード・プロセスは終了します。
SYS
で次のSQL文を発行して、ダウングレードを検証します。
SQL>SELECT o.name FROM sys.model$ m, sys.obj$ o WHERE m.obj#=o.obj# AND m.version=2;
28.3 マイニング・モデルのエクスポートおよびインポート
データ・マイニング・モデルをフラット・ファイルにエクスポートして作業途中の操作をバックアップしたり、Oracle Database Enterprise Editionの別のインスタンスに(たとえば、開発データベースからテスト・データベースに)モデルを移動したりできます。
関連項目
28.3.1 Oracle Data Pumpについて
Oracle Data Pumpは、2つのコマンドライン・クライアントと2つのPL/SQLパッケージで構成されています。コマンドライン・クライアント(expdp
およびimpdp
)により、データ・ポンプ・エクスポートおよびインポート・ユーティリティに対する使いやすいインタフェースが提供されます。expdp
とimpdp
を使用して、スキーマ全体またはデータベース全体のエクスポートとインポートを行うことができます。
データ・ポンプ・エクスポート・ユーティリティは、マイニング・モデルを構成する表およびメタデータを含むスキーマ・オブジェクトを、ダンプ・ファイル・セットに書き出します。データ・ポンプ・インポート・ユーティリティは、ダンプ・ファイル・セットからモデル表およびメタデータを含むスキーマ・オブジェクトを取得し、それらをターゲット・データベースにリストアします。
expdp
およびimpdp
は、個々のマイニング・モデルのエクスポートおよびインポートには使用できません。
関連項目:
Oracle Data Pumpと、expdp
およびimpdp
ユーティリティの詳細は、『Oracle Databaseユーティリティ』を参照してください
28.3.2 マイニング・モデルのエクスポートおよびインポート用オプション
マイニング・モデルのエクスポートおよびインポート用のオプションをリストします。
マイニング・モデルのエクスポートおよびインポート用オプションについて、次の表で説明します。
表28-1 Oracle Data Miningのエクスポートおよびインポート・オプション
28.3.3 EXPORT_MODELおよびIMPORT_MODELのディレクトリ・オブジェクト
ディレクトリ・オブジェクトを使用して、ダンプ・ファイル・セットの場所を識別する方法について説明します。
EXPORT_MODEL
およびIMPORT_MODEL
は、ディレクトリ・オブジェクトを使用してダンプ・ファイル・セットの場所を特定します。ディレクトリ・オブジェクトとは、ホスト・コンピュータ上の物理ディレクトリのデータベース内での論理名です。
データ・マイニング・モデルをエクスポートするには、ディレクトリ・オブジェクトおよびそれが表すファイル・システム・ディレクトリに対する書込みアクセス権を持っている必要があります。データ・マイニング・モデルをインポートするには、ディレクトリ・オブジェクトおよびファイル・システム・ディレクトリに対する読取りアクセス権を持っている必要があります。また、データベース自体にはファイル・システムのディレクトリに対するアクセス権が必要です。ディレクトリ・オブジェクトを作成するにはCREATE ANY DIRECTORY
権限が必要です。
次のSQLコマンドを実行すると、dmuser_dir
という名前のディレクトリ・オブジェクトが作成されます。このディレクトリ・オブジェクトが表すファイル・システム・ディレクトリは、すでに存在している必要があり、さらにオペレーティング・システムによって付与される共有の読取りおよび書込みアクセス権を所有している必要があります。
CREATE OR REPLACE DIRECTORY dmuser_dir AS '/dm_path/dm_mining';
次のSQLコマンドを実行すると、dmuser_dir
への読取りおよび書込みアクセス権の両方がユーザーdmuser
に付与されます。
GRANT READ,WRITE ON DIRECTORY dmuser_dir TO dmuser;
28.3.4 EXPORT_MODELおよびIMPORT_MODELの使用
この例は、EXPORT_MODEL
とIMPORT_MODEL
を使用した様々なエクスポートおよびインポート・シナリオを示しています。
各例では、例28-1に示すディレクトリ・オブジェクトdmdir
と、2つのスキーマdm1
およびdm2
を使用します。どちらのスキーマもデータ・マイニング権限を持っています。dm1
には2つのモデルがあります。dm2
には1つのモデルがあります。
SELECT owner, model_name, mining_function, algorithm FROM all_mining_models; OWNER MODEL_NAME MINING_FUNCTION ALGORITHM ---------- -------------------- -------------------- -------------------------- DM1 EM_SH_CLUS_SAMPLE CLUSTERING EXPECTATION_MAXIMIZATION DM1 DT_SH_CLAS_SAMPLE CLASSIFICATION DECISION_TREE DM2 SVD_SH_SAMPLE FEATURE_EXTRACTION SINGULAR_VALUE_DECOMP
例28-1 ディレクトリ・オブジェクトの作成
-- connect as system user CREATE OR REPLACE DIRECTORY dmdir AS '/scratch/dmuser/expimp'; GRANT READ,WRITE ON DIRECTORY dmdir TO dm1; GRANT READ,WRITE ON DIRECTORY dmdir TO dm2; SELECT * FROM all_directories WHERE directory_name IN 'DMDIR'; OWNER DIRECTORY_NAME DIRECTORY_PATH ---------- -------------------------- ---------------------------------------- SYS DMDIR /scratch/dmuser/expimp
例28-2 DM1からのすべてのモデルのエクスポート
-- connect as dm1 BEGIN dbms_data_mining.export_model ( filename => 'all_dm1', directory => 'dmdir'); END; /
ログ・ファイルとダンプ・ファイルは、dmdir
に関連付けられている物理ディレクトリ/scratch/dmuser/expimp
で作成されます。ログ・ファイルの名前はdm1_exp_11.log
です。ダンプ・ファイルの名前はall_dm101.dmp
です。
例28-3 元のDM1へのモデルのインポート
例28-2でエクスポートされたモデルが、まだdm1
に存在しています。インポートにより同じ名前のモデルが上書きされることはないため、モデルを同じスキーマに戻す前に、同じ名前のモデルを削除する必要があります。
BEGIN dbms_data_mining.drop_model('EM_SH_CLUS_SAMPLE'); dbms_data_mining.drop_model('DT_SH_CLAS_SAMPLE'); dbms_data_mining.import_model( filename => 'all_dm101.dmp', directory => 'DMDIR'); END; / SELECT model_name FROM user_mining_models; MODEL_NAME ------------------------------ DT_SH_CLAS_SAMPLE EM_SH_CLUS_SAMPLE
例28-4 別のスキーマへのモデルのインポート
この例では、例28-2でdm1
からエクスポートされたモデルが、dm2
にインポートされます。dm1
スキーマではexample
表領域を使用し、dm2
スキーマではsysaux
表領域を使用します。
-- CONNECT as sysdba BEGIN dbms_data_mining.import_model ( filename => 'all_d101.dmp', directory => 'DMDIR', schema_remap => 'DM1:DM2', tablespace_remap => 'EXAMPLE:SYSAUX'); END; / -- CONNECT as dm2 SELECT model_name from user_mining_models; MODEL_NAME -------------------------------------------------------------------------------- SVD_SH_SAMPLE EM_SH_CLUS_SAMPLE DT_SH_CLAS_SAMPLE
例28-5 特定のモデルのエクスポート
単一のモデル、モデルのリストまたは特定の特性を共有するモデルのグループをエクスポートできます。
-- Export the model named dt_sh_clas_sample EXECUTE dbms_data_mining.export_model ( filename => 'one_model', directory =>'DMDIR', model_filter => 'name in (''DT_SH_CLAS_SAMPLE'')'); -- one_model01.dmp and dm1_exp_37.log are created in /scratch/dmuser/expimp -- Export Decision Tree models EXECUTE dbms_data_mining.export_model( filename => 'algo_models', directory => 'DMDIR', model_filter => 'ALGORITHM_NAME IN (''DECISION_TREE'')'); -- algo_model01.dmp and dm1_exp_410.log are created in /scratch/dmuser/expimp -- Export clustering models EXECUTE dbms_data_mining.export_model( filename =>'func_models', directory => 'DMDIR', model_filter => 'FUNCTION_NAME = ''CLUSTERING'''); -- func_model01.dmp and dm1_exp_513.log are created in /scratch/dmuser/expimp
28.3.5 PMMLからのインポート
Predictive Model Markup Language (PMML)で表現された回帰モデルをインポートできます。
PMMLは、Data Mining Group(http://www.dmg.org
)によって策定されたXMLベースの規格です。PMMLに準拠しているアプリケーションは、任意のベンダーによって作成されたPMML準拠のモデルを配置できます。Oracle Data Miningでは、回帰モデルに対応するPMML 3.1のコア機能をサポートしています。
PMMLで表現された回帰モデルをインポートできます。モデルのタイプは、RegressionModel
(線形回帰またはバイナリ・ロジスティック回帰)である必要があります。
28.4 マイニング・モデルおよびデータへのアクセスの制御
データ・マイニング・ユーザーの作成方法および必要な権限の付与方法について理解します。
28.4.1 データ・マイニング・ユーザーの作成
データ・マイニング・ユーザーの作成方法について説明します。
データ・マイニング・ユーザーとは、データ・マイニング操作を実行するための権限を持つデータベース・ユーザー・アカウントです。例28-6では、データベース・ユーザーの作成方法を示しています。例28-7では、ユーザーにデータ・マイニング権限を割り当てる方法を示しています。
例28-6 SQL*Plusでのデータベース・ユーザーの作成
-
Enter user-name: sys as sysdba Enter password: password
-
dmuser
というユーザーを作成するには、次のコマンドを入力します。選択したパスワードを指定します。CREATE USER dmuser IDENTIFIED BY password DEFAULT TABLESPACE USERS TEMPORARY TABLESPACE TEMP QUOTA UNLIMITED ON USERS; Commit;
USERS
表領域およびTEMP
表領域は、データベース・メディアに付属の事前構成済データベースに含まれています。USERS
は通常、デモ・ユーザーによって使用され、「データ・マイニングのサンプル・プログラム」で説明されているサンプル・プログラムの実行に適しています。TEMP
は、ほとんどのデータベース・ユーザーによって共有される一時表領域です。注意:
データ・マイニング・ユーザー用の表領域は、システム・ロードとシステム・リソースに応じて、標準的なDBAの手順に従って割り当てる必要があります。
-
dmuser
としてログインするには、次を入力します。CONNECT dmuser Enter password:
password
関連項目
関連項目:
CREATE USER
文の完全な構文については、『Oracle Database SQL言語リファレンス』を参照してください。
28.4.1.1 データ・マイニングの権限の付与
独自のスキーマにモデルを作成するには、CREATE MINING MODEL
権限を所有している必要があります。所有しているモデルに対しては、どのような操作も実行できます。これには、モデルの適用、コスト・マトリックスの追加、モデルの名前の変更、およびモデルの削除が含まれます。
次の例のGRANT
文では、基本的なデータ・マイニング権限のセットをdmuser
アカウントに割り当てます。これらの権限のうち一部はどのマイニング操作にも必要ありませんが、これらすべてをグループとして付与することをお薦めします。
特定のマイニング操作の有効化または制限を行うには、追加のシステム権限およびオブジェクト権限が必要です。
例28-7 データ・マイニングに必要な権限
GRANT CREATE MINING MODEL TO dmuser; GRANT CREATE SESSION TO dmuser; GRANT CREATE TABLE TO dmuser; GRANT CREATE VIEW TO dmuser; GRANT EXECUTE ON CTXSYS.CTX_DDL TO dmuser;
自分のスキーマ内にないデータに対してはREAD
またはSELECT
権限が必要です。たとえば、次の文は、sh.customers
表にSELECT
アクセス権を付与します。
GRANT SELECT ON sh.customers TO dmuser;
28.4.2 データ・マイニングのシステム権限
マイニング・モデルに対する操作を制御する様々な権限について説明します。
システム権限は、データベース内の特定のアクションを実行する権限または1つのタイプのスキーマ・オブジェクトに対してアクションを実行する権限を付与します。たとえば、表領域を作成する権限や、データベース内の任意の表から行を削除する権限などがシステム権限です。
適切なシステム権限を所有している場合、他のスキーマのマイニング・モデルに対しても特定の操作を実行できます。たとえば、CREATE ANY MINING MODEL
を所有している場合、他のスキーマにモデルを作成できます。SELECT ANY MINING MODEL
を所有している場合、他のスキーマにあるモデルを適用できます。モデルにコメントを追加するには、COMMENT ANY MINING MODEL
権限を所有している必要があります。
システム権限を付与するには、ADMIN OPTION
を指定したシステム権限またはGRANT ANY PRIVILEGE
システム権限が付与されている必要があります。
次の表に示されているシステム権限は、マイニング・モデルに対する操作を制御します。
表28-2 データ・マイニングのシステム権限
例28-8 データ・マイニングのシステム権限の付与
次の文は、dmuser
による任意のスキーマ内のデータのスコアリングおよびモデルの詳細の表示を許可します(SELECT
アクセス権がデータに付与されている場合)。ただし、dmuser
がモデルを作成できるのはdmuser
スキーマ内のみです。
GRANT CREATE MINING MODEL TO dmuser; GRANT SELECT ANY MINING MODEL TO dmuser;
次の文は、他のスキーマ内のスコアリングまたはモデルの詳細の表示の権限を取り消します。この文が実行されると、dmuser
がデータ・マイニング操作を実行できるのはdmuser
スキーマ内のみになります。
REVOKE SELECT ANY MINING MODEL FROM dmuser;
28.4.3 マイニング・モデルのオブジェクト権限
オブジェクト権限は、特定のスキーマ・オブジェクトに対して特定のアクションを実行する権限を付与します。たとえば、SH.PRODUCTS
表から行を削除する権限は、オブジェクト権限の例です。
ユーザーには、自身のスキーマに含まれるスキーマ・オブジェクトに対するオブジェクト権限がすべて自動的に付与されています。ユーザーは、自身のスキーマのオブジェクトに対するオブジェクト権限を、他のユーザーまたはロールに付与できます。
次の表に示されているオブジェクト権限は、特定のマイニング・モデルに対する操作を制御します。
表28-3 マイニング・モデルのオブジェクト権限
オブジェクト権限 | 許可される操作 |
---|---|
|
|
|
例28-9 マイニング・モデルに対するオブジェクト権限の付与
次の文は、dmuser
によるsales
表へのモデルtestmodel
の適用を許可し、適用ごとに異なるコスト・マトリックスを指定します。ユーザーdmuser
は、モデルtestmodel
の名前を変更することもできます。testmodel
モデルおよびsales
表は、dmuser
スキーマ内ではなく、sh
スキーマ内にあります。
GRANT SELECT ON MINING MODEL sh.testmodel TO dmuser; GRANT ALTER ON MINING MODEL sh.testmodel TO dmuser; GRANT SELECT ON sh.sales TO dmuser;
次の文は、dmuser
がtestmodel
のコスト・マトリックスの名前の変更またはコスト・マトリックスの変更を行うのを防ぎます。ただし、dmuser
は引き続きtestmodel
をsales
表に適用できます。
REVOKE ALTER ON MINING MODEL sh.testmodel FROM dmuser;
28.5 マイニング・モデルに対する監査およびコメントの追加
28.5.1 マイニング・モデルへのコメントの追加
コメントは、記述情報をデータベース・オブジェクトに関連付けるために使用できます。SQL COMMENT
文を使用して、コメントをマイニング・モデルに関連付けることができます。
COMMENT ON MINING MODEL schema_name.model_name IS string;
注意:
別のスキーマのモデルにコメントを追加するには、COMMENT ANY MINING MODEL
システム権限を所有している必要があります。
コメントを削除するには、コメントを空の文字列''
に設定します。
次の文は、ユーザー自身のスキーマに含まれるモデルDT_SH_CLAS_SAMPLE
にコメントを追加します。
COMMENT ON MINING MODEL dt_sh_clas_sample IS 'Decision Tree model predicts promotion response';
コメントは、カタログ・ビューUSER_MINING_MODELS
を問い合せることによって表示できます。
SELECT model_name, mining_function, algorithm, comments FROM user_mining_models; MODEL_NAME MINING_FUNCTION ALGORITHM COMMENTS ----------------- ---------------- -------------- ----------------------------------------------- DT_SH_CLAS_SAMPLE CLASSIFICATION DECISION_TREE Decision Tree model predicts promotion response
次の文は、データベースからこのコメントを削除します。
COMMENT ON MINING MODEL dt_sh_clas_sample '';
関連項目:
-
SQL
COMMENT
文に関する詳細は、『Oracle Database SQL言語リファレンス』を参照してください。
28.5.2 マイニング・モデルの監査
Oracle Database監査システムは、本番環境のスキーマ・オブジェクトに対する操作を追跡するための、強力で高度に構成可能なツールです。監査システムは、データ・マイニング・モデルに対する操作の追跡に使用できます。
注意:
マイニング・モデルの監査を行うには、AUDIT_ADMIN
ロールを所有している必要があります。
統合監査については、『Oracle Databaseセキュリティ・ガイド』を参照してください。ただし、完全に統合された監査システムは、デフォルトでは有効になっていません。統合監査への移行手順については、『Oracle Databaseアップグレード・ガイド』を参照してください。
関連項目:
-
マイニング・モデルの監査の詳細は、『Oracle Databaseセキュリティ・ガイド』のOracle Data Miningのイベントの監査に関する説明を参照してください。
-
Oracle Databaseの統合監査の包括的な説明は、『Oracle Databaseセキュリティ・ガイド』の監査を使用したデータベース・アクティビティの監視に関する説明を参照してください。
-
統合監査への移行の詳細は、『Oracle Databaseアップグレード・ガイド』のOracle Databaseの統合監査移行プロセスに関する説明を参照してください。