注意:
このドキュメントは、すべてのDatabase 12.x、Enterprise Manager 12c/13c、Fusion Middleware 12.xリリースに適用されます。
OPatchは、Oracleソフトウェアを最新の状態に維持して保護する、パッチ適用ユーティリティから構成されます。ユーティリティには、次のものがあります。
OPatch: Javaベースのユーティリティで、Oracleソフトウェアへのパッチの適用とロールバックを行います。
OPatchauto: パッチ適用オーケストレーション・ツールで、ターゲット構成固有のパッチ適用手順を生成し、OPatchを使用してユーザーの操作なしにパッチ適用操作を実行します。具体的に、OPatchAutoでは次の操作を実行できます。
パッチ適用前のチェックを実行します。
パッチを適用します。
実行中のサーバーを起動および停止します。
パッチ適用後のチェックを実行します。
パッチの削除が必要になった際のパッチのロールバック
OPatchauto -binary: 選択したOracleホームに単一のパッチまたは複数のパッチを適用するツールです。OPatchauto -binaryは、セッションごとに1つのOracleホームにのみパッチを適用します。
これらのユーティリティにより、個別のGI (Grid Infrastructure)/RAC (Real Application Cluster)ホーム環境の分析、トラブルシューティングおよびパッチ適用を柔軟に実行できます。
大規模なIT環境の場合、大量のターゲットに手動でパッチを適用することは単調で間違いが発生しやすい作業です。そのため、製品(Fusion Middlewareなど)ホームに個別にパッチを適用するのは現実的ではありません。組織内の多数のターゲットでOracleパッチを維持してデプロイするために、Enterprise Manager Cloud Controlのパッチ適用自動化機能を使用できます。Enterprise Managerのパッチ管理ソリューションの詳細は、Oracle® Enterprise Managerライフサイクル管理の管理者ガイドのパッチ適用ソフトウェアのデプロイメントに関する説明を参照してください。
この章では、紹介と概要に関する次のトピックについて説明します。
必要なソフトウェア・パッチおよびこれらのパッチの適用方法を決定する要因は多数存在するため、パッチ適用プロセスは必ずしも単純なものではありません。たとえば、各ターゲットにインストールされているOracleソフトウェアのタイプ、ソフトウェアのバージョンまたはソフトウェアが実行されているプラットフォームなどはその要因のほんの一部です。
パッチが適用される環境ごとの要件には関係なく、基本的なパッチ適用の方法はすべて同じです。一般的なパッチ適用のワークフローは、次の図に示す9つのステップに分割できます。
図1-1 パッチ適用プロセスの概要 - プロセス・フロー
図1-1に示すように、最初のステップは必要なパッチを判別することです。必要なパッチに関する情報は、様々なブログ、Oracle Technology Network (OTN)、サービス・リクエスト、ナレッジ記事、Oracleドキュメントまたはその他多数のソースから取得できる場合があります。ただし、パッチ適用に関して信頼できる唯一のソースはOracleサポートのWebサイト—My Oracle Support (MOS)です。
ここから、ユーザーのOracle環境に必要なパッチの検索および取得を簡単にするインタラクティブなサポート・ツールおよび情報にアクセスできます。次の場所に、MOSに関する完全なドキュメントがあります。
http://docs.oracle.com/cd/E25290_01/index.htm
My Oracle Supportには多数の機能が含まれており、これらの機能はアプリケーションの上部に表示されるタブでグループ化されています。最も興味深いのは、次の図に示す「パッチと更新版」タブです。
このページから、特定の構成ごとに必要なパッチを検索できます。特に便利な検索機能の1つに推奨パッチ・アドバイザがあります。推奨パッチ・アドバイザを使用すると、スタンドアロン製品、製品の組合せ、または製品スタック用の製品に対する推奨パッチおよび必須パッチを簡単に検索できます。たとえば、推奨パッチ・アドバイザを使用すると、次の製品用のパッチを検索できます。
製品: Oracle Database
リリース: 11.2.0.2.0
プラットフォーム: Linux x86-64
この検索では、次の結果が返されます。
パッチ14727315 (PSU)をクリックするとそのパッチ・ページに移動し、ナレッジ記事に関連付けられた、このパッチによって解決される不具合を表示することや、一般的なパッチのREADMEを表示することができます。
このページから、パッチ適用ワークフローのステップ2—ローカル・システムへのパッチのダウンロードも実行できます。次のリストでは、パッチを取得できるソースの概要について説明します。
Oracleサポート: Oracleサポートのエンジニアと直接やりとりをしている場合は、診断パッチまたは個別パッチを取得できる場合があります。
My Oracle Support: 定期的なパッチ・メンテナンス・スケジュールの一環として、次のMy Oracle Supportからすべてのパッチを取得できます。
ログインしたら、「パッチと更新版」タブをクリックして、パッチの検索を開始します。My Oracle Supportでは、パッチを最新状態にしておくためのパッチ・ダウンロード・オプションおよび自動化ツールを提供しています。詳細は、パッチと更新版に関するWebベースのヘルプを参照してください。
http://docs.oracle.com/cd/E25290_01/doc.60/e25224/patchesupdates.htm#CJAGJJGI
Oracle Technology Network: Oracleソフトウェアの中には、次のOracle Technology Networkを通じて配布されるものがあります。
http://www.oracle.com/technetwork/indexes/downloads/index.html
Oracleパッチのタイプ
オラクル社では、機能のアップグレード、セキュリティの拡張またはサポートされるソフトウェアによる問題の修正に使用できるパッチを定期的に提供しています。主なタイプのパッチを次に示します。
個別パッチ - 必要に応じて提供される単一のバグ修正、またはバグ修正のコレクションが含まれます。
セキュリティ・バグ修正用の個別パッチ - ユーザー固有のセキュリティ・バグ修正が含まれます。
診断パッチ - 診断の支援、または修正あるいは不具合修正のコレクションの検証を目的とします。
バンドル・パッチ更新(BPU) - 特定の製品またはコンポーネント用の修正の累積コレクションです。
パッチ・セット更新(PSU) - 特定の製品またはコンポーネントを対象とする、効果が高く低リスクの証明済修正の累積コレクションおよびセキュリティ・パッチ更新。
セキュリティ・パッチ更新(SPU) - セキュリティ・バグ修正の累積コレクション。SPUは、以前はクリティカル・パッチ・アップデート(CPU)と呼ばれていました。
システム・パッチ - OPatchAutoで使用できる形式のサブパッチが含まれます。
マージ・ラベル・リクエスト(MLR) - 2つ以上の修正をマージしたもの。MLR作成の際には、マージされた新しいセットのコード用のラベルとパッチ・セット例外が必要です。
必要なパッチを取得して、環境内でパッチを適用する必要があるターゲットを判別し(パッチ適用ワークフローのステップ3)、各ターゲットにパッチを適用します(ステップ4)。ステップ4で、OPatchユーティリティが効果を発揮します。完全なパッチ適用のワークフローを確認するには、図1-1を参照してください。
注意:
最新バージョンのOPatchがあることを確認します。詳細は、「最新のOPatchユーティリティの取得」を参照してください。
OPatchを使用して、パッチのREADMEの一般的な手順に従います。対象となるパッチについて、パッチにバンドルされているパッチのREADMEを表示するか、またはMOSページで直接表示します。
いずれかのコマンドを実装するかまたはコマンドをカスタム・インストール・スクリプトに追加する前に、リンク先のサポート・ドキュメントを確認して、特定の構成に関する詳細を入力する必要があります。これは手間のかかる方法ですが、パッチの競合が発生した際の診断機能と制御は強力になります。「OPatchを使用したバイナリ・パッチ適用」を参照してください。
OPatchAutoはエンドツーエンドの構成パッチ適用を実行します。構成パッチ適用は、構成に基づいてターゲットにパッチを適用するプロセスです。構成情報をパッチ適用プロセスに組み込むことで、OPatchAutoは手順のほとんどを自動化し、パッチ適用タスクの単純化を可能にしています。
詳細は、「OPatchAutoを使用した複数ノードのパッチ適用オーケストレーションの概念」を参照してください。
OPatchユーティリティは非常に便利ですが、一度に1つのGI/RACホームにしかパッチを適用できないため、大量のターゲットにパッチを適用する場合には機能に制限があります。このため、大規模な異機種IT環境への対応が困難で長時間を要する場合があります。
大規模なパッチ適用を処理するために、オラクル社では、OPatchをEnterprise Manager Cloud Control 12cと統合した新しいパッチ適用管理ソリューションを提供しています。Enterprise ManagerをMy Oracle Support (MOS)と緊密に統合することにより、単一のユーザー・インタフェースによるパッチ適用推奨事項の表示、パッチの検索およびパッチのロールアウトを行うことができます。さらに、Enterprise Managerの高度なパッチ計画機能により、パッチ適用ワークフローに関する完全でエンドツーエンドのオーケストレーションを提供します。デプロイメント手順の選択およびパッチの競合の分析を自動化することにより、複雑なIT環境にパッチを適用する際に必要な手動による作業が大幅に削減されます。
Enterprise Managerは、OPatchとMy Oracle Supportを統合してパッチのダウンロードと適用を行います。詳細は、次のドキュメントを参照してください。
Oracle® Enterprise Managerライフサイクル管理の管理者ガイドの「第VII部: パッチ管理」を参照してください。
http://docs.oracle.com/cd/E24628_01/em.121/e27046/part_patching.htm#BGBJFJBG
『Oracle® Enterprise Manager Cloud Control管理者ガイド』の「Enterprise Managerへのパッチ適用」の章を参照してください。
http://docs.oracle.com/cd/E24628_01/doc.121/e24473/patching.htm#CHDEBABC
EM 12cによるパッチの競合解決およびデプロイメントの自動化(Webキャスト)
https://support.oracle.com/epmos/faces/DocumentDisplay?_afrLoop=441420602917&id=1533881.1&_afrWindowMode=0&_adf.ctrl-state=9b136mq35_4
OPatchは多数のOracle製品インストールと統合されていますが、OPatchを直接使用する必要が生じる場合もあります。コアのOPatchツールは、手動パッチ適用の一環として管理者が直接使用します。OPatchAutoはOPatchを起動するため、コアのOPatchについて理解しておくと役立ちます。OPatchは、競合の検出と解決、およびトラブルシューティングにも役に立ちます。
注意:
パッチ適用タスクを実行する前に、必ず特別なパッチ適用手順について記載された、パッチのREADMEファイルに目を通しておいてください。
管理タスクで次のような作業が必要な場合は、OPatchユーティリティを使用できます。
インストールされている製品およびパッチのレポート。
1つ以上のパッチの適用。
1つ以上のパッチの適用のロールバック。
入力パッチ間の競合、および入力パッチと以前に適用されたパッチ間の競合の検出。OPatchでは、競合を解決するための最適なオプションも提示されます。
このドキュメントでは、パッチ適用ユーティリティの使用方法および次のトピックについて説明します。
注意:
パッチを使用する状況に関する推奨事項が、該当するパッチのREADMEに記載されています。最初に必ずREADMEに目を通してください。
「OPatchを使用したバイナリ・パッチ適用」 - Oracleホームにパッチを適用する、コアのOPatchツールの基本的な機能について説明します。
「OPatchAutoを使用した複数ノードのパッチ適用オーケストレーションの概念」 - オーケストレーション・ツールを使用してGIノードに1回でGI-RACまたはExadataパッチを適用する必要がある管理者にお薦めします。
これらのパッチ適用ツールを使用すると、Oracle製品の構成に応じて、パッチ計画を設計して実装できます。
注意:
Oracle製品にパッチを適用する前には、必ずパッチ適用手順について記載された製品ドキュメントに目を通してください。
Enterprise Managerの他にも、多数のOracleソフトウェア製品がOPatchユーティリティを統合することにより、シームレスで効率的なパッチ適用タスクを提供しています。アプリケーションによっては、OPatchユーティリティの呼出しが透過的になる場合があり、すべてのパッチ適用アクティビティがそれぞれのアプリケーション内で維持されます。
下に示すアプリケーションは、OPatchをそれぞれの環境内に統合しています。パッチを適用する前には、必ずパッチ適用手順について記載されたユーザー・ドキュメントに目を通してください。
Fusion Middleware/Fusion Applications
Fusion MiddlewareやFusion Applicationsなどの他のOracle製品でもOPatchが統合されていますが、特定のパッチを適用するために別の相互作用が必要になる場合があります。次のドキュメントを参照してください。
Fusion Middlewareにパッチを適用する場合:
『Oracle® Fusion Middlewareパッチ適用ガイド』の2.3項のFusion Middleware環境でのOPatchに関する説明
http://docs.oracle.com/cd/E23943_01/doc.1111/e16793/opatch.htm#PATCH159
『Oracle Fusion Middlewareパッチ適用ガイド』の3項の最新のOracle Fusion Middlewareパッチ・セットの適用に関する説明
http://docs.oracle.com/cd/E23943_01/doc.1111/e16793/patch_set_installer.htm
Fusion Applicationsにパッチを適用する場合:
Oracle® Fusion Applicationsパッチ適用ガイドの3項のOracle Fusion Applicationsパッチ・マネージャの使用に関する説明
http://docs.oracle.com/cd/E29505_01/fusionapps.1111/e16602/applypatches.htm#CIHBDCBE
OPatchは多数のOracle製品に統合されており、それぞれの製品(たとえば、Enterprise Manager)をインストールする際に、ユーティリティも自動的にインストールされます。パッチ適用ツールは、次のディレクトリにインストールされます。
OPatch - $ORACLE_HOME/OPatch/opatch
OPatchAuto - $ORACLE_HOME/opatch/opatchauto
OPatchユーティリティサポートされているコマンドとオプションの完全なリストは、「OPatchの構文およびコマンド」および「OPatchautoの構文およびコマンド」を参照してください。