Oracle R Enterpriseでは、サーバーに複数のコンポーネントが組み込まれます。これらのコンポーネントによって、Oracle R EnterpriseクライアントとOracle R Enterprise Serverとの相互作用が可能になります。
Oracle Database Enterprise Edition
Oracle R Distributionまたはオープン・ソースR
Oracle R Enterprise Server
rqsysスキーマ(「RQSYSスキーマについて」を参照)
sys内のメタデータおよび実行可能コード
Oracle R Enterprise Serverライブラリ(LinuxおよびUNIXの場合は$ORACLE_HOME/lib内、Windowsの場合は%ORACLE_HOME%\bin内)
$ORACLE_HOME/R/library (Windowsの場合は%ORACLE_HOME%\R\library)内のOracle R Enterprise Rパッケージ
サーバーのOracle R EnterpriseパッケージおよびSupporting Packagesでは、埋込みRの実行がサポートされています。これと同じパッケージを各クライアント・コンピュータに個別にインストールする必要があります(「Oracle R Enterpriseパッケージについて」を参照)。
関連項目:
Oracle R Enterpriseのサーバー・コンポーネントとクライアント・コンポーネントについては、図1-2を参照してください。
serverという名前の1つのスクリプトによって、Oracle R Enterprise Serverのインストールおよび管理が管理されます。Oracle R Enterpriseのサーバー側コンポーネントのインストール、アンインストール、アップグレードまたは構成が必要になったときにはいつでも、serverスクリプトを再実行できます。
serverスクリプトでは、次の操作がサポートされています。
Oracle R Enterprise Serverのインストール
Oracle R Enterpriseサーバーのアンインストール
Oracle R Enterprise Serverのアップグレードおよび旧インストールからのデータの移行
Supporting Packagesのインストール(使用可能な場合)
注意:
serverスクリプトを使用して、Supporting Packagesをインストールし、ユーザーを作成できます。また、次の各項で説明するように、これらのタスクを個別に実行することもできます。
serverスクリプトでは、そのアクティビティを指示する一連のコマンドライン引数がサポートされています。スクリプトは、インタラクティブ・モード、バッチ・モードまたはハイブリッド・モードで実行できます。引数なしでスクリプトを実行すると、Oracle R Enterprise Serverがインタラクティブ・モードでインストールまたはアップグレードされ、Supporting Packagesのインストールが試行されて、データベース・ユーザーが作成または構成されます。
serverスクリプトのコマンドライン引数については、次の表で説明しています。スクリプトの引数は、Linux、UNIXおよびWindowsで同じです。LinuxまたはUNIXシステムで次のコマンドを実行すると、引数のリストおよび短い説明が表示されます。
./server.sh -h
or
./server.sh --help
Windowsシステムで次のコマンドを実行すると、引数のリストおよび短い説明が表示されます。
server.bat -h
or
server.bat --help
表4-1 SERVERスクリプトのコマンドライン引数
| 引数 | 説明 |
|---|---|
|
プロンプトを表示しません。 |
|
Oracle R Enterprise Serverをインストールまたはアップグレードします。 インストールまたはアップグレードでは、デフォルトで次の処理が行われます。
|
|
Oracle R Enterpriseサーバーをアンインストールします。
「Oracle R Enterpriseのアンインストール」を参照してください。 |
|
Oracle R Enterpriseのデータベース・ユーザーを作成または構成します(デフォルト)。 |
|
Oracle R Enterprise Serverをアンインストールするときに、OracleホームのRパッケージおよびライブラリは保持しますが、データベース・オブジェクトは削除します。Oracleホーム内の他のデータベースに影響を与ることなく、単一データベース・インスタンスまたはプラガブル・データベース(PDB)からOracle R Enterpriseのサポートを削除できます。 「部分アンインストールの実行」を参照してください。 |
|
Oracle R Enterprise Serverをアンインストールするときに、OracleホームのRパッケージおよびライブラリも、データベース・オブジェクトも削除します。 「完全アンインストールの実行」を参照してください。 |
|
|
|
|
|
Oracle R Enterpriseユーザーに 「RQADMINロールについて」を参照してください。 |
|
「オペレーティング・システム認証について」で説明するように、オペレーティング・システム認証に基づいてスクリプトが実行されている場合、 |
|
マルチテナントのコンテナ・データベース(CDB)内のプラガブル・データベース(PDB)の名前。 マルチテナント・アーキテクチャを使用すると、Oracle Databaseを、0、1または多数のプラガブル・データベース(PDB)を含むプラガブル・データベースを含むコンテナ・データベースとして機能させることができます。マルチテナント・アーキテクチャの詳細は、『Oracle Database概要』を参照してください。 |
|
|
|
|
|
「RQSYSスキーマについて」を参照してください。 |
|
Oracle R Enterpriseユーザーの永続表領域。 |
|
Oracle R Enterpriseユーザーの一時表領域。 |
|
Oracle R Enterpriseユーザーのパスワード。 |
|
Oracle R Enterpriseのデータベース・ユーザー名。 |
関連項目:
出力付きの例については、例A-1
Linux、UNIXまたはWindowsシステムがシステム要件で指定されている要件を満たす場合、このコマンドによりOracle R Enterprise Serverのデフォルトの初回インストールが実行されます。
LinuxまたはUNIXの場合:
./server.sh
Windowsの場合:
server.bat
例A-1に示すとおり、デフォルトのインタラクティブ・インストールでは次の処理が実行されます。
環境の情報が出力されます。
パスワードとrqsysの永続表領域および一時表領域の入力を求めるプロンプトが表示されます。
Supporting Packagesをインストールするかどうか確認するプロンプトが表示されます。(デフォルトでは、Supporting Packagesが使用可能な場合はインストールされます。)
Oracle R Enterpriseのユーザー・アカウントを作成するかどうか確認するプロンプトが表示されます。(デフォルトでは、ユーザーが存在しない場合は作成されます。)ユーザーの作成時に、永続表領域および一時表領域の入力を求めるプロンプトが表示されます。
この例では、バッチ・モードで実行するよう指定された、デフォルトのインタラクティブ・インストールで示されているようなインストールを示します。
LinuxまたはUNIXの場合:
./server.sh -y --install --setup-user --sys ORASYSPSWD,
--perm SYSAUX --temp TEMP --rqsys RQSYSPSWD
--user-perm USERS --user-temp TEMP --pass RQUSERPSWD --user RQUSER
Windowsの場合:
server.bat -y --install --setup-user --sys ORASYSPSWD,
--perm SYSAUX --temp TEMP --rqsys RQSYSPSWD
--user-perm USERS --user-temp TEMP --pass RQUSERPSWD --user RQUSER
serverスクリプトにより、ユーザーが存在しない場合は自動的に作成または構成されます。既存のユーザーの名前を指定すると、Oracle R Enterpriseをサポートするようにそのユーザーが構成されます。
例7-2を参照してください。
この例では、serverスクリプトの実行で、デフォルトのバッチ・インストールで作成されたユーザーにrqadminロールを付与する方法を示します。--admin引数は、バッチ・モードでのみ使用可能です。
LinuxまたはUNIXの場合:
./server.sh -y --setup-user --admin --sys ORASYSPSWD -
-pass RQUSERPSWD --user RQUSER
Windowsの場合:
server.bat -y --setup-user --admin --sys ORASYSPSWD -
-pass RQUSERPSWD --user RQUSER
「RQADMINロールについて」を参照してください。
Oracle R Enterprise Serverをインストールする前に、システム環境を確認し、ユーザーIDに正しい権限があることを確認してください。
オペレーティング・システムは、Oracle R Enterpriseのシステム要件で指定されている要件に準拠している必要があります。
Oracle Databaseは、Oracle R Enterprise向けデータベースのインストールおよび構成の説明に従ってインストールおよび構成される必要があります。
注意:
Oracle R Enterprise Serverは、マルチテナント環境のプラガブル・データベース(PDB)にインストールできます。『Oracle Database管理者ガイド』を参照してください。
Rは、Oracle R Enterprise向けのRのインストールの説明に従ってインストールする必要があります。
表4-2 Oracle R Enterprise Server用の環境変数要件
| プラットフォーム | 環境変数要件 |
|---|---|
すべて |
Windowsでは、OracleホームおよびOracleインスタンス識別子の値はWindowsレジストリで確認できます。このコンピュータ上に2つ以上のOracleホームまたはOracleインスタンスが存在する場合は、環境変数で必要な値を指定できます。Windowsでの環境変数の作成および変更を参照してください。 |
Linux |
|
|
|
|
|
Microsoft Windows |
Rホーム・ディレクトリの値はWindowsレジストリで確認できます。このコンピュータ上に2つ以上のRホームが存在する場合は、環境変数で必要な値を指定できます。Windowsでの環境変数の作成および変更を参照してください。 |
Oracle R Enterprise Serverをインストールするオペレーティング・システム・ユーザーは、この項で示した要件を満たす必要があります。
表4-3 Oracle R Enterprise Serverのインストール実行者のユーザー要件
| プラットフォーム | ユーザー要件 |
|---|---|
LinuxおよびUNIX |
|
Microsoft Windows |
|
Oracle R Enterprise Serverのインストール・スクリプトでは、ORACLE_HOMEおよびORACLE_SIDによって識別されるデータベースへの接続にシステム認証が使用されます。システム認証は、データベース資格証明書ではなくユーザーのオペレーティング・システム資格証明書に基づいています。
たとえば、Linuxシステムでは、Oracle R Enterpriseのインストール・スクリプトで、次の文を使用してパスワードなしでSQL*Plusが起動されます。
$ORACLE_HOME/bin/sqlplus / as sysdba
特別なオペレーティング・システム・グループのメンバーシップによって、Oracle Databaseのシステム認証が行われます。このオペレーティング・システム・グループは、データベースのインストール時に作成され、インストール実行者のIDがグループに自動的に割り当てられます。グループの一般的な名前はOSDBAです。LinuxおよびUNIXでは、OSDBAの名称はdbaです。Windowsでは、OSDBAの名称はora_dbaです。
Oracle R Enterprise ServerをインストールするユーザーはOSDBAに属している必要があります。
関連項目:
『Oracle Database管理者ガイド』のオペレーティング・システム認証の使用に関する説明を参照してください。
『Oracle Databaseプラットフォーム・ガイドfor Microsoft Windows』のインストール時に使用可能になるオペレーティング・システム認証の概要に関する説明を参照してください。
「オペレーティング・システム認証について」に記載されているとおり、Oracle R Enterprise Serverインストール・スクリプトを実行するLinuxまたはUNIXのユーザーIDはdbaグループに属している必要があります。サーバー上でその他のOracle R Enterpriseスクリプトを実行するには、dbaグループのメンバーシップも必要です。Windowsでは、dbaグループはora_dbaと呼ばれます。
ご使用のLinuxまたはUNIXのユーザーIDのグループ・メンバーシップを確認するには、次のコマンドを入力します。
% groups
dba othergroup
ご使用のWindowsのユーザーIDのグループ・メンバーシップを確認するには、次の手順を実行します。
ora_dbaに属していることを確認します。 注意:
表示されるプロンプトに応答する必要なくOracle R Enterprise Serverをインストールするには、「デフォルトのバッチ・インストール」および「バッチ・モードでのユーザー構成」で説明されているようなバッチ・モード・インストールを使用します。
Oracle R Enterprise Serverをインストールするには次の手順を実行します。
システムが「Oracle R Enterprise Serverの要件」で指定されている要件を満たしていることを確認します。
Oracle R Enterprise Serverコンポーネントのインストール・ディレクトリを作成します。ディレクトリには任意の名前を使用できます。例:
/oreserver_install_dir
Oracle Technology NetworkのOracle R Enterpriseのダウンロード・ページから、Oracle R Enterprise Serverインストール・ファイルおよびSupporting Packagesをダウンロードします。
ライセンス契約に同意して、ご使用のプラットフォーム用のOracle R Enterprise Serverファイルをインストール・ディレクトリにダウンロードします。
ライセンス契約に同意して、ご使用のプラットフォーム用のOracle R Enterprise Supporting Packagesをインストール・ディレクトリにダウンロードします。
インストール・ディレクトリに2つのzipファイルが配置されます。
ore-server-platform-arch-version.zip ore-supporting-platform-arch-version.zip
AIX 7の場合、インストーラの名前は次のとおりです。
ore-server-aix7-ppc64-1.5.zip ore-client-aix7-ppc64-1.5.zip
ファイルを解凍します。
unzip ore-server-platform-arch-version.zip unzip ore-supporting-platform-arch-version.zip
両方のファイルを解凍した後のインストール・ディレクトリは次のようになります。
LinuxまたはUNIXの場合:
/oreserver_install_dir ore-server-platform-arch-version.zip ore-supporting-platform-arch-version.zip server.sh /server /supporting
Windowsの場合:
\oreserver_install_dir ore-server-platform-arch-version.zip ore-supporting-platform-arch-version.zip server.bat \server \supporting
LinuxまたはUNIXの場合は、server.shを実行します。Windowsの場合は、server.batを実行します。デフォルトのインタラクティブ・インストールで説明したように、スクリプトによってOracle R Enterprise Serverのデフォルトの初回インストールが実行されます。
LinuxまたはUNIXの場合:
./server.sh
Windowsの場合:
server.bat
関連項目:
出力付きの例については、例A-1
Oracle R Enterprise Serverインストール・スクリプトによって、インストール・ディレクトリのserverサブディレクトリにログ・ファイルが作成されます。ログ・ファイルを調べて、インストール・プロセスが正常に終了していることを確認します。
LinuxまたはUNIXシステムでは、次のコマンドでログ・ファイルがリストされます。
cd ./oreserver_install_dir/server
ls *.log
outcdb.log rqconfig.log rqdrop.log rqgrant.log rqinst.log rqpdrp.log rqproc.log rquser.log
インストールに問題があり、解決できない場合は、My Oracle Supportまたはthe Oracle R Enterpriseのディスカッション・フォーラムで助力を求めることができます。
My Oracle Support — https://support.oracle.com
Oracle R Enterpriseのフォーラム -
https://forums.oracle.com/community/developer/english/business_intelligence/data_warehousing/r
Oracle R Enterprise ClientのOracle R Enterprise Serverへの接続の説明に従って接続した後、次のコマンドを使用して、Oracle R Enterpriseの基本的な機能の一部をテストできます。
## Is the ORE client connected to the ORE server?
## The output of this command should be TRUE.
ore.is.connected()
## List the available database tables
ore.ls()
## Push an R dataframe to a database table
CARS <- ore.push(cars)
head(CARS)
## Run embedded R
ore.doEval(function() { 123 })
Oracle R Enterpriseのデモ・スクリプトを実行することにより、インストールが正常に完了したことをさらに確認できます。エラーが発生せずスクリプトが完了した場合、スクリプト例は正常に実行されています。
スクリプト例は、$ORACLE_HOME/R/library/ORE/demoにあります。
次のコマンドで、使用可能なスクリプト例のリストが表示されます。
demo(package="ORE")
次のコマンドで、例のうちの2つを実行します。aggregateスクリプトでは、データベース・メモリーに存在するデータへのR関数の使用がテストされ、row_applyスクリプトでは、埋込みRの実行がテストされます。
demo("aggregate", package="ORE")
demo("row_apply", package="ORE")
次のコマンドはRを終了します。
q()
Oracle R Enterprise Serverは、マルチテナント環境内の1つ以上のプラガブル・データベース(PDB)にインストールできます。Oracle R Enterprise Serverは、ルート・データベースではなくプラガブル・データベースにインストールする必要があります。
Oracle R Enterprise Serverの複数のインスタンスをマルチテナント・コンテナ・データベース(CDB)にインストールした場合に、1つのインスタンスをアンインストールしてその他を保持するには、「部分アンインストールの実行」で説明する部分アンインストールを実行できます。