Oracle ACFSシステムを管理するための基本手順

このトピックでは、コマンドライン・ユーティリティを使用してOracle ACFSファイルシステムを管理するときの基本手順の概要について説明します。

この項の例では、Linux環境システムで実行されるオペレーティング・システム・コマンドを示します。ASMCMDコマンドはOracle ADVMボリュームを管理しますが、SQL*PLusおよびOracle ASMコンフィギュレーション・アシスタント(ASMCA)もボリュームの管理に使用できます。

この項の内容は次のとおりです。

Oracle ACFSコマンドライン・ツールの使用について

この項では、Oracle ACFS acfsutilコマンドの使用について概要を説明します。

内容は次のとおりです。

  • Oracle ACFS acfsutilコマンドを実行する権限

  • Oracle ACFS acfsutilコマンドのヘルプの表示

  • WindowsでのOracle ACFS acfsutilコマンドの実行

  • Oracle ACFSバージョン情報の表示

  • acfsutilコマンド用のトレース・ファイル領域の管理

Oracle ACFS acfsutilコマンドを実行する権限

様々なOracle ACFS acfsutilコマンドを実行するには、コマンドを実行できるようになっているシステム管理者またはOracle ASM管理者ユーザーである必要があります。次に、これらの権限を示します。

Windows以外のシステム:

  • システム管理者権限の場合、rootユーザーである必要があります。

  • Oracle ASM管理者ユーザー権限の場合、OSASMグループおよびoinstallグループ(OINSTALL権限)に属する必要があります。

Windowsシステム:

  • システム管理者権限の場合、Administratorsグループに属する必要があります。

  • Oracle ASM管理者ユーザー権限の場合、ORA_ASMADMINグループおよびORA_CRS_USERSグループに属する必要があります。

Oracle ACFS acfsutilコマンドのヘルプの表示

hオプションでOracle ACFS acfsutilコマンドのヘルプおよび使用方法のテキストを表示できます。コマンドまたはコマンドとともにサブコマンドを含めると、ヘルプおよび使用方法の表示は、入力したコマンドおよびサブコマンドに固有のものです。

次の例に、最も一般的なものからより特殊なものまで、ヘルプおよび使用方法のテキストを表示する様々な方法を示します。この例では、Windows以外のプラットフォームでヘルプを表示する—hの形式を示します。Windowsでは、—hではなく、/hを使用します。

例16-1 Oracle ACFS acfsutilコマンドのヘルプの表示

$ /sbin/acfsutil -h

$ /sbin/acfsutil -h compress
$ /sbin/acfsutil compress -h

$ /sbin/acfsutil -h repl info 
$ /sbin/acfsutil repl info -h

$ /sbin/acfsutil -h sec admin info
$ /sbin/acfsutil sec admin info -h

WindowsでのOracle ACFS acfsutilコマンドの実行

WindowsプラットフォームでOracle ACFS acfsutilコマンドとともにオプションを指定する際には、-ではなく/をオプションとともに使用します。たとえば、acfsutil -hを使用してLinuxプラットフォームでacfsutilコマンドのヘルプを表示できます。Windowsプラットフォームでは、acfsutil /hを使用します。

Windowsオペレーティング・システムでのマウント・ポイントには、ドライブ文字のみ(M:)またはドライブ文字を含むディレクトリ(M:\my_mount_point)のどちらでも指定できます。

Windowsでacfsutilコマンドのターゲットがドライブ文字にマウントされるファイルシステムのルートである場合は、指定したドライブで最後にアクセスしたパスへのWindowsパス置換がトリガーされる可能性を回避するために、バックスラッシュとピリオド(\.)をドライブ文字とともに含めます(P:\.)。次に例を示します。

C:\oracle> acfsutil info fs P:\.

Oracle ACFSバージョン情報の表示

acfsutil versionを実行して、Oracle ACFSのバージョンを表示できます。次に例を示します。

$ /sbin/acfsutil version
acfsutil version: 12.2.0.0.3

Oracle ACFSバージョン詳細の表示の詳細は、「acfsutil version」を参照してください。

acfsutilコマンド用のトレース・ファイルの管理

自動診断リポジトリ(ADR)により、コマンドの動作をトレースするためにacfsutilコマンドを起動するたびに別個の内部ファイルが生成されます。このようなトレース・ファイルによって消費される領域は著しく増加する可能性があり、スナップショットベースのレプリケーションなどの一部の機能では、相当数のトレース・ファイルが生成されることもあります。

トレース・ファイルの数と、それらによって消費される領域を制限するには、自動診断リポジトリ・コマンド・インタプリタ(ADRCI)ユーティリティを使用してポリシー属性を設定し、指定した保存期間を過ぎたらトレース・ファイルをパージすることができます。ADRCIでは、トレース・ファイルを存続期間が短いファイルと見なし、保存期間はSHORTP_POLICY属性の設定によって制御されます。ADRCI show controlコマンドで、このようなトレース・ファイルの現在の保存期間を表示できます。

デフォルトでは、存続期間が短いファイルは720時間(30日)保存されます。値(時間単位)は、指定のファイルが作成後からパージ対象となるまでの時間数を指定します。このようなファイルの数と、それらによって消費される領域を制限するには、240時間(10日)など、SHORTP_POLICY保存期間に設定された時間数を更新できます。

次の手順に、存続期間が短いトレース・ファイルの保存期間を更新する方法をまとめます。

  • 自動診断リポジトリ・コマンド・インタプリタ(ADRCI)ユーティリティを起動します。

    $ adcri

  • ADRホーム・ディレクトリ・パス(ADRのホーム)を表示します。

    ADRCI> show homes

  • 複数のホームが表示された場合は、管理するトレース・ファイルの該当するホームを設定します。

    ADRCI> set homepath my_specified_homepath

  • 現在の構成値を表示します。

    ADRCI> show control

  • 特定のADRCI構成値を更新します。たとえば、SHORTP_POLICY240時間(10日)に設定します。

    表示されたshow controlの出力で、存続期間が短いファイルの保存期間(時間単位)であるSHORTP_POLICY属性の値を確認します。必要な場合は、次のようにして、存続期間が短いトレース・ファイルの新しい保存期間を設定します。

    ADRCI> set control (SHORTP_POLICY=240)

現在のADRホーム・パスでトレース・ファイルの即時パージを開始する場合は、次のコマンドを使用できます。

ADRCI> purge -type TRACE -age number_of_minutes

number_of_minutesにより、ファイルの有効期間に基づいてパージするファイルを制御します。指定した分数を経過したファイルがパージ操作の対象となります。

関連項目:

Oracle ACFSファイルシステムの作成

この項で説明する手順で、Oracle ACFSファイルシステムを作成できます。

ファイルシステムを作成し、検証するには、次の手順を実行します。

  1. ASMCMD volcreateコマンドを使用してOracle ADVMボリュームをマウントされているディスク・グループに作成します。

    Oracle ADVMボリュームを含むディスク・グループの互換性パラメータCOMPATIBLE.ASMおよびCOMPATIBLE.ADVMは、11.2以上に設定する必要があります。Oracle ACFSの暗号化、レプリケーション、セキュリティおよびタグ付けを使用するには、ファイルシステムに作成したボリューム上のディスク・グループのASMおよびADVMの互換性属性が11.2.0.2以上に設定されていることが必要です。

    ASMCMDを起動してOracle ASMインスタンスに接続します。実行するには、OSASMオペレーティング・システム・グループのユーザーである必要があります。

    ディスク・グループ内でOracle ADVMボリューム・デバイスを構成する場合、Oracle Grid Infrastructureユーザー・ロールおよびOracle ASM管理者ロールをroot権限を持つユーザーに割り当てることをお薦めします。

    ボリュームを作成するには、次のようにします。

    ASMCMD [+] > volcreate -G data -s 10G volume1
    

    Oracle ADVMボリュームの作成時に、一意のOracle ADVM永続ディスク・グループ番号を含むボリューム・デバイス名が作成されます。ボリューム・デバイス・ファイルは、他のディスクまたは論理ボリュームと同じ方法で、ファイルシステムをマウントするために、またはアプリケーションで直接使用するために機能します。

    ボリューム名の形式は、プラットフォーム固有です。

  2. 作成したボリュームのデバイス名を確認します。

    ボリューム・デバイス名は、ASMCMD volinfoコマンドで、またはV$ASM_VOLUMEビューのVOLUME_DEVICE列から確認できます。

    次に例を示します。

    ASMCMD [+] > volinfo -G data volume1
    Diskgroup Name: DATA
    
             Volume Name: VOLUME1
             Volume Device: /dev/asm/volume1-123
             State: ENABLED
         ... 
    
    SQL> SELECT volume_name, volume_device FROM V$ASM_VOLUME 
         WHERE volume_name ='VOLUME1';
    
    VOLUME_NAME        VOLUME_DEVICE
    -----------------  --------------------------------------
    VOLUME1            /dev/asm/volume1-123
    
  3. Oracle ACFS mkfsコマンドを使用してファイルシステムを作成します。

    ファイルシステムは、既存のボリューム・デバイスを使用して作成します。

    次に例を示します。

    $ /sbin/mkfs -t acfs /dev/asm/volume1-123
    
    mkfs.acfs: version                   = 11.2.0.1.0.0
    mkfs.acfs: on-disk version           = 39.0
    mkfs.acfs: volume                    = /dev/asm/volume1-123
    mkfs.acfs: volume size               = 10737418240
    mkfs.acfs: Format complete.
    

    mkfsの実行に、root権限は必要ありません。ボリューム・デバイス・ファイルの所有者が、このコマンドを実行できます。

  4. オプションで、acfsutil registryコマンドを使用してファイルシステムを登録します。

    次に例を示します。

    $ /sbin/acfsutil registry -a /dev/asm/volume1-123 /acfsmounts/acfs1
    
    acfsutil registry: mount point /acfsmounts/acfs1 successfully added 
      to Oracle Registry
    

    レジストリを変更するには、root権限またはasmadmin権限が必要です。WindowsのAdministrator権限は、Linuxのroot権限と同等です。

    ファイルシステムの登録は任意です。クラスタ・マウント・レジストリにOracle ACFSファイルシステムを登録すると、ファイルシステムは、次のレジストリのチェック・アクション時に、レジストリ・エントリにリストされている各クラスタ・メンバーに自動的にマウントされます。この自動プロセスは30秒ごとに実行されるため、クラスタの各メンバーでファイルシステムを手動でマウントする必要はありません。

    また、Oracle ACFSファイルシステムを登録すると、Oracle Clusterwareまたはシステムが再起動されるたびに、ファイルシステムは自動的にマウントされます。

    注意:

    Oracle Grid Infrastructureのクラスタウェア構成では、srvctl add filesystemを実行してファイルシステムを自動マウントできます。この方法は、Oracle DatabaseホームをOracle ACFSファイルシステム上にインストールした場合に必須です。ただし、このファイルシステムは、レジストリに追加しないでください。

    注意:

    Oracle ACFS登録(acfsutil registry)は、Oracle Restart (スタンドアロン)構成、すなわち単一インスタンス(非クラスタ)環境では、サポートされません。

  5. Oracle ACFS mountコマンドを使用してファイルシステムをマウントします。ファイルシステムは、登録前または登録後にマウントできます。ファイルシステムが登録されている場合は、ファイルシステムが自動的にマウントされるまで待つことができます。

    次に例を示します。

    # /bin/mount -t acfs /dev/asm/volume1-123 /acfsmounts/acfs1
    

    mountコマンドを実行するにはroot権限が、acfsmountvolコマンドを実行するにはWindowsのAdministrator権限が必要です。

    ファイルシステムをマウントしたら、適切なユーザーに権限を設定してファイルシステムにアクセスできるようします。次に例を示します。

    # chown -R oracle:dba /acfsmounts/acfs1
    
  6. ファイルシステムにテスト・ファイルを作成します。

    テスト・ファイルを作成するユーザーは、ファイルシステムにアクセスするユーザーです。このテストでは、適切なユーザーがファイルシステムへの書込みを実行できることを確認します。

    次に例を示します。

    $ echo "Oracle ACFS File System" > /acfsmounts/acfs1/myfile
    
  7. ファイルシステムで作成したテスト・ファイルの内容をリストします。

    次に例を示します。

    $ cat /acfsmounts/acfs1/myfile
    Oracle ACFS File System

関連項目:

クラスタ内の異なるノード上にあるOracle ACFSファイルシステムへのアクセス

ノードがクラスタの一部である場合、ノード2で次の手順を実行して、ノード1で作成したテスト・ファイルを表示します。

注意:

ファイルシステムがOracle ACFSマウント・レジストリに登録されている場合、手順1から3を省略できます。

  1. ノード1で以前に作成して有効にしたボリュームを有効にします。

    ASMCMDを起動してOracle ASMインスタンスに接続します。実行するには、OSASMオペレーティング・システム・グループのユーザーである必要があります。

    次に例を示します。

    ASMCMD [+] > volenable -G data volume1
    
  2. ノード1で作成したボリュームに関する情報を表示します。

    次に例を示します。

    ASMCMD [+] > volinfo -G data volume1
    
  3. Oracle ACFS mountコマンドを使用してファイルシステムをマウントします。

    次に例を示します。

    # /bin/mount -t acfs /dev/asm/volume1-123 /acfsmounts/acfs1
    

    mountコマンドを実行するにはroot権限が、acfsmountvolコマンドを実行するにはWindowsのAdministrator権限が必要です。

    ファイルシステムをマウントしたら、適切なユーザーに権限を設定してアクセスできるようにします。

  4. ファイルシステムで以前に作成したテスト・ファイルの内容をリストします。

    次に例を示します。

    $ cat /acfsmounts/acfs1/myfile
    Oracle ACFS File System
    

    内容は、以前にノード1で作成したファイルと一致する必要があります。

関連項目:

Oracle ACFSスナップショットの管理

ノード1でスナップショットを作成し、検証するには、次のようにします。

  1. ノード1で作成した新しいファイルシステムのスナップショットを作成します。

    次に例を示します。

    $ /sbin/acfsutil snap create mysnapshot_20090725 /acfsmounts/acfs1
    

    acfsutil snap createを参照してください。

  2. ファイルシステム内のテスト・ファイルを更新し、スナップショットと異なるものにします。

    次に例を示します。

    $ echo "Modifying a file in Oracle ACFS File System" > /acfsmounts/acfs1/myfile
    
  3. テスト・ファイルの内容と、テスト・ファイルのスナップショット・ビューをリストします。

    次に例を示します。

    $ cat /acfsmounts/acfs1/myfile
    
    $ cat /acfsmounts/acfs1/.ACFS/snaps/mysnapshot_20090725/myfile
    

    テスト・ファイルの内容とスナップショットは異なります。ノード1がクラスタ内にある場合は、ノード2で同じリスト操作を実行できます。

Oracle ACFSファイルシステムのセキュリティ保護

この項では、LinuxでOracle ACFSファイルシステムのセキュリティを管理するための基本操作について説明します。

この項のシナリオでは、Oracle ACFSセキュリティを使用して、メンテナンス期間中にメンテナンス・ユーザーだけが診療履歴ファイルにアクセスできるようにする方法を示します。Oracle ACFS暗号化も同じファイルシステムで有効になっています。

このシナリオでは、ファイルシステム用に作成したボリューム上のディスク・グループのASMおよびADVMの互換性属性は11.2.0.3以上に設定されています。

この項の例では、様々なオペレーティング・システム・ユーザー、オペレーティング・システム・グループおよびディレクトリが存在する必要があります。

セキュリティを管理するための基本手順は次のとおりです。

  1. Oracle ACFSのセキュリティを初期化します。

    acfsutil sec initコマンドを実行して、セキュリティ資格証明用のストレージを構成し、オペレーティング・システム・ユーザーを最初のセキュリティ管理者およびオペレーティング・システム・セキュリティ・グループとして識別します。セキュリティ管理者はオペレーティング・システム・グループに属する必要があります。このコマンドは、他のセキュリティ・コマンドの前に実行する必要があり、実行するにはrootまたはWindowsのAdministrator権限が必要です。

    acfsutil sec initコマンドは、1度実行して各クラスタのOracle ACFSセキュリティを設定すれば、クラスタ内の任意のノードから実行できます。他のセキュリティ・コマンドもクラスタ内の任意のノードから実行できます。セキュリティ管理者はクラスタ内のすべてのOracle ACFSファイルシステムで共通です。

    たとえば、次のコマンドで1つのクラスタに対するセキュリティを初期化し、最初のセキュリティ管理者(medHistAdmin1)を作成します。

    # /sbin/acfsutil sec init -u medHistAdmin1 -g medHistAdminGrp
    

    medHistAdmin1セキュリティ管理者はオペレーティング・システム・グループmedHistAdminGrpに属する必要があります。このグループはセキュリティ管理者用のセキュリティ・グループとして識別されます。

    rootユーザーまたはWindows Administratorユーザーはこのコマンドを実行するときに、セキュリティ管理者にセキュリティ・パスワードを割り当てます。セキュリティ管理者は、acfsutil sec admin passwordコマンドを使用してパスワードを変更できます。

    すべてのacfsutil secコマンド(acfsutil sec init以外)はOracle ACFSセキュリティ管理者により実行する必要があり、管理者は各コマンドの実行時にセキュリティ管理者のパスワードを求められます。

    注意:

    セキュリティ管理者のパスワードを求められる場合、次のテキストが表示されます。Realm management password

    要求されるパスワードはOracle ACFSセキュリティ管理者のパスワードであり、ユーザーのオペレーティング・システム・パスワードではありません。

    セキュリティ管理者は、基礎となるオペレーティング・システムの権限があるかどうか、またはレルムの確認で許可されるかどうかにかかわらず、Oracle ACFSファイルシステムのすべてのディレクトリを参照できます。これにより、セキュリティ管理者はファイルがOracle ACFSセキュリティ・レルムでセキュリティ保護されている場合にその場所を確認することができます。ただし、セキュリティ管理者は、適切なオペレーティング・システムおよびセキュリティ・レルム権限がなければ、個別のファイルの内容を表示することはできません。

  2. 必要に応じて、セキュリティ管理者を追加します。

    最初のセキュリティ管理者は、acfsutil sec admin addコマンドを使用して、Oracle ACFSセキュリティを管理するセキュリティ管理者を追加できます。

    たとえば、新しいセキュリティ管理者medHistAdmin2を追加します。

    $ /sbin/acfsutil sec admin add medHistAdmin2
    

    medHistAdmin2ユーザーはacfsutil sec initコマンドでセキュリティ管理者グループとして識別されるオペレーティング・システム・グループ(medHistAdminGrp)に属している必要があります。

    medHistAdmin2セキュリティ管理者はacfsutil sec admin passwordコマンドを使用して、割り当てられた一時的なセキュリティ・パスワードを変更する必要があります。medHistAdmin2管理者は新しいセキュリティ管理者を追加できます。

  3. セキュリティ用にOracle ACFSファイルシステムを準備します。

    セキュリティ・レルムを追加する前に、acfsutil sec prepareをOracle ACFSファイルシステムで実行します。

    たとえば、Oracle ACFSセキュリティ用に、/acfsmounts/acfs1にマウントされたOracle ACFSファイルシステムを準備します。

    $ /sbin/acfsutil sec prepare -m /acfsmounts/acfs1
    

    デフォルトで、このコマンドの実行後に、セキュリティがファイルシステムで有効になります。acfsutil sec disableまたはacfsutil sec enableコマンドを使用して、セキュリティを明示的に無効または有効にできます。

    このコマンドは自動的にSYSTEM_BackupOperatorsなどのセキュリティ・レルムを作成します。管理者はSYSTEM_BackupOperatorsレルムにユーザーを追加できます。このレルムはOracle ACFSファイルシステムにレルム保護されたファイルのバックアップを作成できる権限をユーザーに与えます。

  4. このファイルシステムの暗号化を有効にします。

    ファイルシステムの暗号化はオプションですが、このシナリオでは有効にします。

    1. まず、acfsutil encr initコマンドを実行して、暗号化を初期化し、暗号化キーに必要なストレージを作成します。このコマンドは暗号化を設定するクラスタごとに1度実行する必要があります。

      たとえば、次のコマンドはクラスタの暗号化を初期化します。

      # /sbin/acfsutil encr init
      

      このコマンドは、他の暗号化コマンドの前に実行する必要があり、実行するにはroot権限または管理者権限が必要です。

    2. 次に、acfsutil encr setコマンドを実行してOracle ACFSファイルシステムの暗号化を設定します。

      たとえば、次のコマンドでは、/acfsmounts/acfs1ディレクトリにマウントされているファイルシステムの暗号化を設定します。

      # /sbin/acfsutil encr set -m /acfsmounts/acfs1/
      

      acfsutil encr setコマンドは、acfsutil encr initコマンドで構成済のキー・ストアに格納されるボリューム暗号化キーを透過的に生成します。このコマンドを実行するにはroot権限または管理者権限が必要です。

  5. ファイルシステムにセキュリティ・レルムを作成します。

    acfsutil sec realm createコマンドを実行してファイルシステムのセキュリティ・レルムを作成します。

    たとえば、medHistRealmという名前のセキュリティ・レルムを作成します。これには診療記録ファイルが含まれ、レルム内のすべてのファイルは暗号化されています。

    $ /sbin/acfsutil sec realm create medHistRealm -m /acfsmounts/acfs1/ 
                                                   -e on -a AES -k 128
    

    -eオプションは、レルム内のすべてのファイルがAESアルゴリズムで暗号化され、キーの長さが128ビットに設定されることを指定します。ファイルシステムは最初にacfsutil encr initおよびacfsutil encr setコマンドを使用して暗号化用に準備される必要があります。acfsutil sec realm create-kオプションには、acfsutil encr setコマンドで入力したのと同じ値を入力する必要はありません。

  6. セキュリティ・ルールを作成します。

    acfsutil sec rule createコマンドを実行して、セキュリティ・レルムのファイルおよびディレクトリへのアクセスを決定するルールを作成します。

    たとえば、medMaintenanceユーザーがファイルのメンテナンスのために、午後10時から午前2時の間に診療記録にアクセスできるルールを作成します。また、午前8時から午前9時の間に操作を拒否し、medBrowseユーザーに対して操作を拒否できるルールも作成します。

    $ /sbin/acfsutil sec rule create medHistRule1a -m /acfsmounts/acfs1/
          -t time 22:00:00,02:00:00 -o ALLOW
    
    $ /sbin/acfsutil sec rule create medHistRule1b -m /acfsmounts/acfs1/
          -t username medMaintenance -o ALLOW
    
    $ /sbin/acfsutil sec rule create medHistRule1c -m /acfsmounts/acfs1/ 
          -t time 08:00:00,09:00:00 -o DENY
    
    $ /sbin/acfsutil sec rule create medHistRule1d -m /acfsmounts/acfs1/ 
          -t username medBrowse -o DENY
    

    acfsutil sec rule editコマンドを使用してルールを編集できます。

  7. セキュリティ・ルール・セットを作成し、ルール・セットにルールを追加します。

    acfsutil sec ruleset createコマンドを実行して、ルールを追加可能なルール・セットを作成します。

    たとえば、medHistRealmセキュリティ・レルムのファイルおよびディレクトリでの操作のルールが含まれるmedRuleSet1およびmedRuleSet2という名前のルール・セットを作成します。

    $ /sbin/acfsutil sec ruleset create medRuleSet1 -m /acfsmounts/acfs1/
    
    $ /sbin/acfsutil sec ruleset create medRuleSet2 -m /acfsmounts/acfs1/
    

    既存のルールをルール・セットに追加します。

    $ /sbin/acfsutil sec ruleset edit medRuleSet1 -m /acfsmounts/acfs1/ 
               -a medHistRule1a,medHistRule1b -o ALL_TRUE
    
    $ /sbin/acfsutil sec ruleset edit medRuleSet2 –m /acfsmounts/acfs1/ 
               -a medHistRule1c,medHistRule1d -o ALL_TRUE
    

    ALL_TRUEオプションはデフォルトのアクションですが、各ルール・セットの両方のルールがtrueでなければならないことを強調するためにここに追加しています。

  8. セキュリティ・レルムにオブジェクトを追加します。

    acfsutil sec realm addコマンドを実行して、コマンド・ルール、ルール・セットおよびファイルなどのオブジェクトをセキュリティ・レルムに追加します。たとえば、medRuleSet1ルール・セットとmedRuleSet2ルール・セット、および/acfsmounts/acfs1/medicalrecordsディレクトリ内のすべてのファイルを、medHistRealmに追加します。

    ルール・セットをレルムに追加するときには、DELETEFILE:medRuleSet1などのコマンド・ルールが使用されます。各コマンド・ルールには1つのルール・セットしか含めることはできません。コマンド・ルールのリストを表示するには、acfsutil sec info-cオプションを使用します。

    次のacfsutil sec realm addコマンドによって、medMaintenanceユーザーは、午後10時から午前2時の間は診療記録を削除できますが、午前8時から午前9時の間はファイルへの書込みがブロックされます。

    $ /sbin/acfsutil sec realm add medHistRealm -m /acfsmounts/acfs1/ 
            -l DELETEFILE:medRuleSet1 
            -f -r /acfsmounts/acfs1/medicalrecords
    

    このacfsutil sec realm addコマンドによって、medBrowseユーザーは、診療記録をいつでも書込みまたは削除できなくなります。

    $ /sbin/acfsutil sec realm add medHistRealm -m /acfsmounts/acfs1/ 
            -l WRITE:medRuleSet2 
            -f -r /acfsmounts/acfs1/medicalrecords
    

    このacfsutil sec realm addコマンドによって、バックアップ・オペレータを、acfsutil sec prepareコマンドで自動的に作成されたSYSTEM_BackupOperatorsセキュリティ・レルムに追加します。

    $ /sbin/acfsutil sec realm add SYSTEM_BackupOperators -m /acfsmounts/acfs1/ 
            -G sysBackupGrp
    

    sysBackupGrpオペレーティング・システム・グループに属するユーザーは、Oracle ACFSファイルシステムのレルム保護されたファイルのバックアップを作成できるようになります。

  9. セキュリティ情報を表示します。

    acfsutil sec infoコマンドを実行してセキュリティ・レルムの情報を作成します。たとえば、medHistRealmレルムのセキュリティ情報を表示します。

    $ /sbin/acfsutil sec info -m /acfsmounts/acfs1/ –n medHistRealm
    

    ファイルまたはディレクトリが属するセキュリティ・レルムを表示するには、acfsutil sec info fileコマンドを実行します。次に例を示します。

    $ /sbin/acfsutil sec info file -m /acfsmounts/acfs1/
                                   /acfsmounts/acfs1/medicalrecords
    
  10. セキュリティ・メタデータをバックアップとして保存します。

    acfsutil sec saveコマンドを実行して、ファイルシステムのセキュリティ・メタデータを保存します。

    たとえば、/acfsmounts/acfs1ファイルシステムのセキュリティ・メタデータをacfs1_backup.xmlファイルに保存します。

    $ /sbin/acfsutil sec save –m /acfsmounts/acfs1 
                              –p acfs1_backup.xml
    

    acfs1_backup.xmlセキュリティ・メタデータのバックアップ・ファイルが/acfsmounts/acfs1/.Security/backup/ディレクトリに保存されます。保存されたXMLファイルは、acfsutil sec loadコマンドを使用してロードできます。

acfsutil sec batchコマンドを使用して、バッチ・ファイルでいくつかのacfsutil secコマンドを実行できます。たとえば、acfsutil sec ruleおよびacfsutil sec rulesetコマンドのグループを含むバッチ・ファイルを作成できます。

Oracle ACFSセキュリティの監査および診断データがログ・ファイルに保存されます。

関連項目:

Oracle ACFSファイルシステムの暗号化

この項では、LinuxでOracle ACFSファイルシステムにおける暗号化を管理するための基本操作について説明します。

この項の例は、Oracle ACFSファイルシステムで診療履歴ファイルが暗号化されているシナリオを示します。この項の手順では、Oracle ACFSセキュリティがファイルシステムに構成されていないことを前提としていますが、Oracle ACFSセキュリティと暗号化の両方を同じファイルシステムで使用できます。セキュリティと暗号化の両方を使用する場合は、ファイルシステムを含むクラスタで、暗号化とセキュリティの両方を初期化する必要があります。ファイルシステムでセキュリティを初期化してから、Oracle ACFSセキュリティ管理者はacfsutil secコマンドを実行して、ファイルシステムの暗号化を有効にします。

acfsutil encr setおよびacfsutil encr rekey -vコマンドは、暗号化キー・ストアを変更するため、これらのコマンドを実行した後にOracle Cluster Registry(OCR)をバックアップし、ファイルシステムのすべてのボリューム暗号化キー(VEK)を含むOCRバックアップを保持する必要があります。

ファイルシステム用に作成したボリューム上のディスク・グループのASMおよびADVMの互換性属性は11.2.0.3以上に設定されています。

この項の例では、様々なオペレーティング・システム・ユーザー、オペレーティング・システム・グループおよびディレクトリが存在する必要があります。

暗号化を管理するための基本手順は次のとおりです。

  1. 暗号化を初期化します。

    acfsutil encr initコマンドを実行して、暗号化を初期化し、暗号化キーに必要なストレージを作成します。このコマンドは暗号化を設定するクラスタごとに1度実行する必要があります。

    たとえば、次のコマンドはクラスタの暗号化を初期化します。

    # /sbin/acfsutil encr init
    

    このコマンドは、他の暗号化コマンドの前に実行する必要があり、実行するにはroot権限または管理者権限が必要です。

  2. 暗号化パラメータを設定します。

    acfsutil encr setコマンドを実行し、Oracle ACFSファイルシステム全体の暗号化パラメータを設定します。

    たとえば、次のコマンドでは、/acfsmounts/acfs1ディレクトリにマウントされているファイルシステムに対し、AES暗号化アルゴリズムと、ファイルのキー長を128に設定します。

    # /sbin/acfsutil encr set -a AES -k 128 -m /acfsmounts/acfs1/
    

    acfsutil encr setコマンドも、acfsutil encr initコマンドで構成済のキー・ストアに格納されるボリューム暗号化キーを透過的に生成します。

    このコマンドを実行するにはroot権限または管理者権限が必要です。

  3. 暗号化を有効にします。

    acfsutil encr onコマンドを実行し、ディレクトリおよびファイルの暗号化を有効にします。

    たとえば、次のコマンドでは、/acfsmounts/acfs1/medicalrecordsディレクトリのすべてのファイルで再帰的な暗号化を有効にします。

    # /sbin/acfsutil encr on -r /acfsmounts/acfs1/medicalrecords
                             -m /acfsmounts/acfs1/
    

    /acfsmounts/acfs1/medicalrecordsディレクトリ内のファイルにアクセスするための適切な権限のあるユーザーは、復号化されたファイルを読み取ることができます。

    このコマンドは、管理者またはファイルの所有者が実行できます。

  4. 暗号化情報を表示します。

    acfsutil encr infoコマンドを実行し、ディレクトリおよびファイルの暗号化の情報を表示します。

    # /sbin/acfsutil encr info -m /acfsmounts/acfs1/ 
                               -r /acfsmounts/acfs1/medicalrecords
    

    このコマンドは、管理者またはファイルの所有者が実行できます。

Oracle ACFS暗号化の監査および診断データがログ・ファイルに保存されます。

関連項目:

Oracle ACFSファイルシステムのタグ付け

この項では、LinuxでOracle ACFSファイルシステムにおけるディレクトリおよびファイルのタグ付けを管理する操作について説明します。

ファイルシステム用に作成したボリューム上のディスク・グループのASMおよびADVMの互換性属性は11.2.0.3以上に設定されています。

Oracle ACFSは拡張属性を使用してタグ付けを実装します。拡張属性を使用するには、確認すべき要件がいくつかあります。

タグ付けを管理するための手順は次のとおりです。

  1. ディレクトリおよびファイルのタグ名を指定します。

    acfsutil tag setコマンドを実行してディレクトリおよびファイルにタグを設定します。このタグを使用してレプリケートするオブジェクトを指定できます。

    たとえば、/acfsmounts/repl_data/filmsディレクトリのサブディレクトリ内のファイルにcomedyおよびdramaタグを追加します。

    $ /sbin/acfsutil tag set -r comedy /acfsmounts/repl_data/films/comedies
    
    $ /sbin/acfsutil tag set -r drama /acfsmounts/repl_data/films/dramas
    
    $ /sbin/acfsutil tag set -r drama /acfsmounts/repl_data/films/mysteries
    

    この例では、dramaタグが意図的に2回使用され、そのタグが後の手順で変更されます。

    このコマンドを実行するには、システム管理者権限があるかまたはファイルの所有者であることが必要です。

  2. タグ情報を表示します。

    acfsutil tag infoコマンドを実行してOracle ACFSファイルシステムのディレクトリまたはファイルのタグ名を表示します。タグのないファイルは表示されません。

    たとえば、/acfsmounts/repl_data/filmsディレクトリ内のファイルのタグ情報を表示します。

    $ /sbin/acfsutil tag info -r /acfsmounts/repl_data/films
    

    /acfsmounts/repl_data/filmsディレクトリ内のdramaタグの付けられたファイルのタグ情報を表示します。

    $ /sbin/acfsutil tag info -t drama -r /acfsmounts/repl_data/films
    

    このコマンドを実行するには、システム管理者権限があるかまたはファイルの所有者であることが必要です。

  3. 必要な場合、タグ名を削除および変更します。

    acfsutil tag unsetコマンドを実行してディレクトリまたはファイルのタグを削除します。たとえば、/acfsmounts/repl_data/filmsディレクトリのmysteriesサブディレクトリに別のタグを適用するために、そのサブディレクトリ内のファイルのdramaタグの設定を解除します。

    $ /sbin/acfsutil tag unset -r drama /acfsmounts/repl_data/films/mysteries
    

    /acfsmounts/repl_data/filmsディレクトリのmysteriesサブディレクトリ内のファイルにmysteryタグを追加します。

    $ /sbin/acfsutil tag set -r mystery /acfsmounts/repl_data/films/mysteries
    

    このコマンドを実行するには、システム管理者権限があるかまたはファイルの所有者であることが必要です。

関連項目:

Oracle ACFSファイルシステムのレプリケーション

この項では、LinuxのOracle ACFSファイルシステムでOracle ACFSスナップショットベースのレプリケーションを管理するための操作について説明します。

プライマリおよびスタンバイ・ファイルシステムに作成したボリューム上のディスク・グループのASMおよびADVMの互換性属性が12.2以上に設定されていることが必要です。スナップショットをストレージ・ロケーションとして使用したり、レプリケーション・ロール・リバーサルを使用したりするには、Oracle ASMおよびOracle ADVMの互換性属性が18.0以上に設定されている必要があります。

レプリケーションを管理するための手順は次のとおりです。

  1. sshがレプリケーション用に構成されていることを確認します。

    • プライマリ・クラスタおよびスタンバイ・クラスタでsshコマンド用のホスト鍵およびユーザー鍵が構成されていることを確認します。

    • Windowsでは、Cygwinがインストールされており、必要に応じてレプリケーション用にsshが構成されていることを確認します。

  2. レプリケーションで必要なスナップショットが常時作成できることを確認します。任意の時点でレプリケーションでは、プライマリ・ロケーションの同時スナップショットを2つとスタンバイ・ロケーションのスナップショットを1つ使用できる必要があります。

  3. プライマリ・サイトとスタンバイ・サイトの間に適切なネットワーク接続があることを確認します。プライマリからスタンバイへの実現可能なネットワーク・データ転送速度がプライマリ・ロケーションでのデータの変更速度を大幅に上回ることを確認する必要があります。

    ネットワーク・データ転送速度を見積もる方法の1つとして、実際の転送速度から始めて、判明したオーバーヘッドの原因を考慮して減らします。たとえば、ネットワーク使用率が低い期間に、1 GBのファイルをプライマリ・ロケーションから対象のスタンバイ・ロケーションにFTPするのに要する経過時間を計算できます。これにより、実現可能な最大転送速度の見積もりができます。この速度は、ネットワーク上の他の要求を考慮に入れるだけでなく、レプリケーション転送に付随するオーバーヘッドを考慮して減らす必要があります。レプリケーションのオーバーヘッドの場合、妥当なアプローチとして、測定された速度を20%ずつ減らし、プライマリ・クラスタのノードごとにさらに5%減らします。

    プライマリでの平均変更速度を見積もるには、acfsutil info fsコマンドを-sオプションを指定して使用できます。このコマンドは、プライマリ・ロケーションを含むファイル・システムがマウントされている各ノードで実行する必要があります。このコマンドは、そのノード上のファイル・システムへの変更量と変更速度を表示します。ファイルシステムの合計変更速度を計算するには、各ノードの変更速度を集計する必要があります。-sに使用する妥当な値は900で、15分のサンプリング間隔となります。

    -sオプションを指定したacfsutil info fsからの出力を使用して、平均の変更速度、ピークの変更速度、ピークの持続時間を割り出すことができます。このデータを使用するための保守的なアプローチとして、対応する必要があるターゲット速度としてピークの変更速度を選択します。

    レプリケーションでは、プライマリで変更されたデータをすべてスタンバイに転送する必要があるため、明らかに、実現可能なネットワーク転送速度は、プライマリでのターゲット変更速度を上回る(大幅に上回るのが理想)必要があります。そうでない場合は、このプライマリ・ロケーションおよびワークロードに対してレプリケーションを実装する前に、ネットワーク容量を増やす必要があります。

    たとえば、ノードが4つのプライマリ・クラスタがあり、33 MB/秒の現行FTP転送速度で、30秒に1 GBのファイルを転送できることを確認したとします。現行レプリケーション転送速度の見積りは次のように計算され、およそ20 MB/秒となります。

    33 MB/sec * (1 – 0.2 – (4 * 0.05)) = 33 * 0.6 = ~20 MB/sec

    また、プライマリに対する平均変更速度は8 GB/時間で、ピーク速度は25 GB/時間であることを確認しています。このピーク速度を使用すると、次のようにして、ターゲット変更速度をおよそ7 MB/秒と計算できます。

    (25 GB/hour * 1024) / 3600 = ~7 MB/sec

    この手順で説明したシナリオでは、レプリケーションからの追加のワークロードをネットワークで処理できると合理的に想定できます。

  4. プライマリ・サイトとスタンバイ・サイトに適切なストレージ容量があることを確認します。

    プライマリ・ロケーションおよびスタンバイ・ロケーションをホストしているサイトでレプリケーションに必要なストレージ容量を見積ります。一般に、プライマリ・サイトではプライマリ・ロケーションのスナップショットを2つ継続的に格納する必要があり、スタンバイ・サイトではスタンバイ・ロケーションのスナップショットを1つ格納する必要があります。これらのスナップショットが占める領域の大部分は、スナップショットに保存されているユーザー・データまたはメタデータから構成されます(スナップショットはその後変更され、データの新しいコピーが作成されます)。

    レプリケーション関連のスナップショットが占める領域は、acfsutil snap infoコマンドを使用して直接表示できます。プライマリでは、文字列REPLで始まる名前のスナップショットがないか確認します。スタンバイでは、SDBACKUPで始まる名前がないかスナップショットを探します。

    間隔ベースのレプリケーション(acfsutil repl init primaryに対して-iオプション)を使用している場合かつレプリケーション操作が指定した間隔内で正常に完了している場合、レプリケーション関連のスナップショットのサイズは、プライマリの変更速度と間隔の長さに関連しています。たとえば、平均変更速度が8 GB/時間でレプリケーション間隔が2時間の場合、スナップショットのストレージ使用量はスナップショット当たり16 GBの範囲内であると考えられます。

    スナップショット・サイズは、プライマリの変更速度によって異なります。もう1つの要因は、スナップショット・サイズが、変更速度の他にファイルシステム内のファイル数にも一部依存しているということです。潜在的にさらに重要なことに、常時モードのレプリケーション(acfsutil repl init primaryに対して-Cオプション)を使用している場合または間隔が短すぎてレプリケーション操作が間隔ベースのレプリケーションで指定した間隔で正常に完了していない場合、レプリケーション関連のスナップショットのサイズを前もって予測することは困難です。このような場合、時間とともに生成されるスナップショットのサイズを監視し、必要に応じてファイルシステム・サイズをacfsutil sizeコマンドを使用して調整し、さらにスナップショットの存在下での通常のストレージ要求に適応させます。この情報を収集する際、プライマリの平均変更速度で、収集期間より複数倍大きいデータが含まれるように、スナップショット用の領域を調整することから始めるとよいでしょう。

    この情報を収集する一方で、レプリケーション・スナップショットを考慮して領域量に対して控え目な開始点を選択します。たとえば、前述のように収集期間に変更をファイルシステムに格納するのに必要な領域を計算でき、将来のスナップショットにその領域を複数回割り当てることができます。

  5. レプリケーションに使用するユーザーを決定し、必要に応じてタグを設定します。

    sshを使用してスタンバイ・クラスタにログインし、プライマリ・ロケーションからスタンバイ・ロケーションにレプリケートされたデータを適用するレプリケーション・ユーザーを選択または作成します。このユーザーは、OSレベルでのみ定義し、Oracle内では定義しません。ユーザーは、Oracle AM管理者のアクセス用に定義したグループに属する必要があります。

    オプションで、ディレクトリおよびファイルにタグを設定して、Oracle ACFSプライマリ・ロケーション内で選択したファイルのみをレプリケートするようにします。レプリケートが開始されてからファイルにタグを追加することもできます。

  6. スタンバイ・ロケーションをホストしているサイトを構成します。

    Oracle ACFSプライマリ・ストレージ・ロケーションをレプリケートする前に、以下を実行して、スタンバイ・ロケーションをホストするサイトを構成します。

    • ファイル・システムをスタンバイ・ロケーションとして使用するには、プライマリ・ロケーションからレプリケートされたファイルと、単一のレプリケーション・スナップショットを保持するのに適したサイズの新しいスタンバイ・ファイル・システムを作成し、ファイル・システムをマウントします。次に例を示します。

      /standby/repl_data

    • 既存のファイル・システムのスナップショットをスタンバイ・ロケーションとして使用するには、新しい読取り-書込みスナップショットを作成し、ファイル・システムのサイズが、プライマリ・ロケーションからレプリケートされたファイルと単一のレプリケーション・スナップショットを保持するのに十分であることを確認します。

    • どちらの種類のスタンバイ・ロケーションについても、スタンバイ・ロケーションをホストするサイトでacfsutil repl init standbyコマンドを実行します。次に例を示します。

      # /sbin/acfsutil repl init standby -u repluser /standby/repl_data

      注意:

      acfsutil repl init standbyコマンドがなんらかの理由で中断された場合、そのロケーションに使用されるファイル・システムまたはスナップショットを再作成し、必要に応じてファイル・システムを再マウントしてから、コマンドを再実行する必要があります。

      このコマンドには、レプリケーション・ユーザーの名前およびスタンバイ・ロケーションが必要です。指定するユーザーは、プライマリ・クラスタからsshを起動し、スタンバイ・クラスタにログインして変更を適用するユーザーです。このユーザーは、-uオプションを使用して指定します。たとえば、-u repluserです。

      スタンバイ・ロケーションがファイル・システムの場合は、そのマウント・ポイントを使用して名前が付けられます。たとえば、/standby/repl_dataです。

      スタンバイ・ロケーションが読取り-書込みスナップショットの場合は、そのスナップショット名と、含まれているファイル・システムのマウント・ポイントを使用して名前が付けられます(その2つは@文字で区切られます)。たとえば、drsnap1101@/standby/repl_dataです。

    acfsutil repl init standbyコマンドを実行するには、root権限またはシステム管理者権限が必要です。

  7. スタンバイ・ロケーションの設定後、プライマリ・ロケーションをホストしているサイトを構成してレプリケーションを開始します。

    acfsutil repl init primaryコマンドを、プライマリ・ロケーションをホストしているサイトで実行します。次に例を示します。

    $ /sbin/acfsutil repl init primary -i 2h -s repluser@standby12_vip -m /standby/repl_data /acfsmounts/repl_data

    このコマンドには次の構成情報が必要です。

    • レプリケーション間隔: オプション-i interval (間隔モードの場合)またはオプション-C(常時モード・レプリケーションの場合)で指定します。間隔を指定する場合、オプション値はレプリケーション操作から次のレプリケーション操作までの最小時間です。各レプリケーション操作の開始時に、プライマリの新しいスナップショットを取得し、前のスナップショットがある場合はそれと比較します。その後、スタンバイを更新してプライマリと一致させるために必要な変更がスタンバイに送信されます。-i intervalではなく-Cを指定すると、前のレプリケーション操作が完了するとすぐに新しいレプリケーション操作が開始されます。

      たとえば、レプリケーション間隔を2時間に設定するには、-i 2hと指定します。

    • ユーザー名およびネットワーク・エンドポイント(VIP名またはアドレスか、ホスト名またはアドレス)をスタンバイ・ロケーションをホストするサイトへの接続に使用し、—sオプションを使用して指定します。たとえば、-s repluser@standby12_vipです。

    • プライマリ・ロケーションがファイル・システムの場合は、ファイル・システムのマウント・ポイントの名前を指定します。たとえば、/acfsmounts/repl_dataです。

    • プライマリ・ストレージ・ロケーションがスナップショットの場合は、スナップショット名と、含まれているファイル・システムのマウント・ポイントを@文字で区切って指定します。たとえば、drsnap1101@/acfsmounts/repl_dataです。

    • マウント・ポイント、またはマウント・ポイントを含むスナップショット名が、スタンバイ・ロケーションをホストするサイトとプライマリ・ロケーションをホストするサイトで異なる場合は、-mオプションを指定してスタンバイ・ロケーションの名前を指定します。たとえば、-m /standby/repl_dataです。

    acfsutil repl init primaryコマンドを実行するには、root権限またはシステム管理者権限が必要です。

  8. ロケーションのレプリケーションに関する情報をモニターします。

    acfsutil repl infoコマンドは、プライマリ・ロケーションまたはスタンバイ・ロケーションで処理中のレプリケーションの状態に関する情報を表示します。

    たとえば、プライマリ・ロケーションをホストしているサイトで次のコマンドを実行して、構成情報を表示できます。

    $ /sbin/acfsutil repl info -c -v /acfsmounts/repl_data

    このコマンドを実行するには、システム管理者(Windows以外のシステムではrootユーザー、WindowsではローカルSYSTEM)またはOracle AM管理者の権限が必要です。

  9. レプリケーション・バックグラウンド・プロセスを管理します。

    acfsutil repl bgコマンドを実行してレプリケーション・バックグラウンド・プロセスを開始、停止、または情報を取得します。

    たとえば、次のコマンドを実行して/acfsmounts/repl_dataファイルシステムのレプリケーション・プロセスの情報を表示します。

    $ /sbin/acfsutil repl bg info /acfsmounts/repl_data

    acfsutil repl bg infoコマンドを実行するには、システム管理者またはOracle AM管理者権限が必要です。

  10. 必要な場合にのみレプリケーションを一時的に停止します。

    acfsutil repl pauseコマンドを実行して、レプリケーションを一時停止します。できるだけ早くacfsutil repl resumeコマンドを実行して、レプリケーションを再開します。

    たとえば、次のコマンドでは、/acfsmounts/repl_dataファイルシステムのレプリケーションを一時停止します。

    $ /sbin/acfsutil repl pause /acfsmounts/repl_data

    次のコマンドでは、/acfsmounts/repl_dataファイルシステムのレプリケーションを再開します。

    $ /sbin/acfsutil repl resume /acfsmounts/repl_data

    acfsutil repl pauseコマンドおよびacfsutil repl resumeコマンドを実行するには、システム管理者またはOracle AM管理者の権限が必要です。

  11. スタンバイ・ロケーションにフェイルオーバーするか、スタンバイ・ロケーションをアクティブ・ロケーションに切り替えます。

    プライマリ・ロケーションにアクセスできない場合は、acfsutil repl terminate standbyコマンドを実行して、スタンバイ・ロケーションを読取り-書込みストレージに変更できます。プライマリ・ロケーションがまだ存在する場合は、acfsutil repl terminate primaryコマンドを使用してプライマリを先に終了する必要があります。

    スタンバイ・ロケーションでacfsutil repl terminate standbyを使用してレプリケーションを終了する前に、スタンバイ・ロケーションが表すプライマリ・ロケーションのポイント・イン・タイムを確認できます。このタイムスタンプは、acfsutil repl info -cによりLast sync time with primaryと表示されます。フェイルオーバー・アクションとOracle Data Guardを連携させる必要がある場合は、必要に応じてタイムスタンプを使用してデータベースを元に戻したり、タイムスタンプに基づく他の必要なアクションを実行することができます。

    スタンバイ・ロケーションがレプリケーションによる変更処理中である場合があります。これは次の場合に発生します。

    • プライマリ・ロケーションが使用可能であり、レプリケーション操作が現在進行中である場合。

    • プライマリ・ロケーションは使用可能ではないが、使用不可になったときにレプリケーション操作が進行中であった場合。

    プライマリのスナップショットと最後に同一だったときにスタンバイ・ロケーションのコンテンツを確実に取得するには、次のいずれかの手順に従います。

    • プライマリ・ロケーションが使用可能な場合、プライマリ・サイトでacfsutil repl terminate primaryコマンドを実行してレプリケーションを終了します。このコマンドは、あらゆる進行中のレプリケーション操作が完了するまで待機してから、戻ります。次に、acfsutil repl info -cを実行して、スタンバイが表すプライマリ・ロケーションのポイント・イン・タイムを確認します。この情報を取得したら、スタンバイ・サイトでacfsutil repl terminate standbyを実行します。

    • プライマリ・ロケーションが使用不可の場合、まず、acfsutil repl info -c出力の2つの日付文字列を比較します。これらの2つの日付はReceiving primary as of行およびLast sync time with primary行にあります。これらの日付が同一の場合、スタンバイ・ロケーションにはプライマリの最新の使用可能なポイント・イン・タイム・イメージがあります。一致しない場合は、レプリケーションによって記録されているバックアップ・スナップショットを使用して、スタンバイで取得されている最後のポイント・イン・タイム・イメージをリカバリします。プライマリ・ロケーションとスタンバイ・ロケーションの両方がファイル・システムの場合は、acfsutil snap infoコマンドを使用してこのスナップショットを検出できます。次の形式の名前を持つスナップショットを探します。

      SDBACKUP_tstamp1_REPL_0_tstamp2_0

      tstamp1はバックアップ・スナップショットが作成された時刻を、tstamp2はプライマリ・コンテンツがこのスナップショットに記録されたポイント・イン・タイムを表します。存在するバックアップ・スナップショットは1つのみです。バックアップ・スナップショットの日付は、acfsutil repl info -cによって出力されたLast sync time with primary行の日付に対応しています。使用可能なバックアップ・スナップショットがない場合、プライマリのコンテンツはスタンバイに正常に転送されていませんでした。

      バックアップ・スナップショットの日付は、acfsutil repl info -cによって出力されたLast sync time with primary行の日付に対応しています。

      バックアップ・スナップショットを使用するには、スナップショットはデフォルトでは削除されるため、レプリケーションを終了してスナップショットが保持されるようにする必要があります。スナップショットが保持されるようにするには、acfsutil repl terminate standbyのコマンドラインに-kを追加する必要があります。レプリケーションの終了後、オプションでacfsutil snap remasterコマンドを実行して、スナップショットをスタンバイ・ファイル・システムの新しいコンテンツとして使用できます。

注意:

レプリケーションが使用中の場合、レプリケーション・スナップショットは、他のスナップショットと同様に、acfsutil snap infoコマンドを使用して表示できます。このコマンドを使用すると、レプリケーション・スナップショットによって現在占められている領域のおおよその概念がわかります。

関連項目:

ボリュームおよびOracle ACFSファイルシステムの登録解除、ディスマウント、無効化

このトピックでは、ファイル・システムを登録解除またはディスマウントする操作と、ボリュームを無効にする操作について説明します。

Oracle ACFSファイルシステムの登録解除

Oracle ACFSファイルシステムを自動的にマウントしない場合は、ファイルシステムを登録解除できます。

次に例を示します。

$ /sbin/acfsutil registry -d /acfsmounts/acfs1

ファイルシステムを登録解除すると、Oracle Clusterwareまたはシステムの再起動後は、ファイルシステムを明示的にマウントする必要があります。

レジストリの詳細は、「Oracle ACFSマウント・レジストリについて」を参照してください。acfsutil registryの詳細は、「acfsutil registry」を参照してください。

Oracle ACFSファイルシステムのディスマウント

ファイルシステムを登録解除せずに、あるいはファイルシステムがマウントされているボリュームを無効化せずに、ファイルシステムをディスマウントできます。

たとえば、ファイルシステムをディスマウントし、fsckを実行してファイルシステムをチェックできます。

# /bin/umount /acfsmounts/acfs1

# /sbin/fsck -a -v -y -t acfs /dev/asm/volume1-123

ファイルシステムは、ディスマウント後、明示的にマウントする必要があります。

Linuxシステムではumountを、Windowsシステムではacfsdismountを使用します。ファイル・システムをディスマウントするコマンドの詳細は、「umount」または「acfsdismount」を参照してください。

Linuxシステムではfsckを、Windowsシステムではacfschkdskを使用してファイルシステムをチェックします。ファイル・システムをチェックするコマンドの詳細は、「fsck」または「acfschkdsk」を参照してください。

ボリュームの無効化

ボリュームを無効にするには、まずボリュームがマウントされているファイルシステムをディスマウントする必要があります。

次に例を示します。

# /bin/umount /acfsmounts/acfs1

ファイルシステムをディスマウントしたら、ボリュームを無効にしてボリューム・デバイス・ファイルを削除できます。

次に例を示します。

ASMCMD> voldisable -G data volume1

ファイルシステムをディスマウントしてボリュームを無効にしても、ファイルシステム内のデータは破棄されません。ボリュームを有効にしてファイルシステムをマウントすると、既存のデータにアクセスできます。voldisableおよびvolenableの詳細は、「ASMCMDによるOracle ADVMの管理」を参照してください。

Oracle ACFSファイルシステムおよびボリュームの削除

Oracle ACFSファイルシステムとボリュームは、acfsutilコマンドとASMCMDコマンドを使用して削除できます。

ボリュームおよびOracle ACFSファイルシステムを永続的に削除するには、次の手順を実行します。次の手順により、ファイルシステム内のデータは破棄されます。

  1. acfsutil registry -dを使用してファイルシステムを登録解除します。

    次に例を示します。

    $ /sbin/acfsutil registry -d /acfsmounts/acfs1
    acfsutil registry: successfully removed ACFS mount point
       /acfsmounts/acfs1 from Oracle Registry
    
  2. ファイルシステムをディスマウントします。

    次に例を示します。

    # /bin/umount /acfsmounts/acfs1
    

    クラスタのすべてのノードでファイルシステムをディスマウントする必要があります。

    Linuxシステムではumountを、Windowsシステムではacfsdismountを使用します。

  3. acfsutil rmfsを使用してファイルシステムを削除します。

    後続の手順でボリュームを削除しない場合は、この手順を実行してファイルシステムを削除する必要があります。それ以外の場合は、ボリュームを削除するとファイルシステムは削除されます。

    次に例を示します。

    $ /sbin/acfsutil rmfs /dev/asm/volume1-123
    
  4. 必要に応じて、ASMCMD voldisableコマンドを使用してボリュームを無効にできます。

    次に例を示します。

    ASMCMD> voldisable -G data volume1
    
  5. ASMCMD voldeleteコマンドを使用してボリュームを削除します。

    次に例を示します。

    ASMCMD> voldelete -G data volume1
    

関連項目: