Oracle ACFSの概要の理解

この項では、Oracle ACFSの主なコンポーネントの概要について説明します。内容は次のとおりです。

Oracle ACFSについて

Oracle ACFSは、すべてのカスタマ・ファイルをサポートする、スタンドアロン・サーバーおよびクラスタ全体の汎用ファイルシステムとして設計されています。ユーザーとアプリケーションは、ネイティブ・オペレーティング・システムのファイルシステム・アプリケーション・プログラミング・インタフェース(API)とコマンドライン・インタフェース(CLI)ツールを使用して、Oracle ACFSにアクセスし、管理できます。ユーザーは、Oracle ASMコンフィギュレーション・アシスタント(ASMCA)を使用して、Oracle ACFSを管理することもできます。

Oracle ACFSは、64ビットのファイルおよびファイルシステムのデータ構造サイズで大型ファイルをサポートしているため、64ビット・プラットフォームではファイルおよびファイルシステム容量がエクサバイト対応になります。可変エクステントに基づく記憶域の割当ておよび高パフォーマンス・ディレクトリにより、高速パフォーマンスと、各クラスタ・メンバーからOracle ACFSファイル・データへのダイレクト・ストレージ・パスを提供する共有ディスク構成が実現します。ファイルシステムの整合性と高速リカバリは、Oracle ACFSメタデータ・チェックサムとジャーナルの使用により実現します。Oracle ACFSは、マルチノード共有ファイルシステム・モデルとして設計され、各クラスタ・メンバーからOracle ACFSファイル・データへの一貫性がありキャッシュに格納されるダイレクト・ストレージ・パスを提供します。

Oracle ACFSファイルシステムは通常、クラスタ全体のアクセス用に構成されます。ファイルシステム、ファイルおよびディレクトリは、すべてのクラスタ・メンバーから見えてアクセス可能であり、どのクラスタ・メンバーからも同じパス名を使用して、ユーザーやアプリケーションが参照できます。この設計により、クラスタ・メンバー全体にわたってアプリケーション・デプロイを簡略化でき、複数インスタンス・クラスタ・アプリケーションと、変更されていないスタンドアロン・サーバー・アプリケーションの高可用性(HA)フェイルオーバーの両方が容易になります。

Oracle ACFSでは、クラスタ構成全体に対して単一のシステム・ファイル・アクセス・セマンティクを提供します。すべてのクラスタ・メンバー上のアプリケーションとユーザーには、Oracle ACFSのクラスタ全体のユーザーおよびメタデータ・キャッシュの一貫性メカニズムによってサポートされる、Oracle ACFSの共有ファイル・データの同じビューが常に提供されます。

Oracle ACFSマウント・モデルとネームスペースについて

Oracle ACFSは、リーフにファイルを持つツリー構造のネームスペースに編成されたファイルとサブディレクトリを含む階層ファイルシステムとして設計されています。ネームスペースの設計は、スタンドアロン・サーバー構成とクラスタ構成のいずれでも、単一ファイルシステム・ネーミング・モデルです。この設計により各クラスタ・メンバーは、同じパス名を使用して共有ファイルをクラスタ・アプリケーションに提供でき、マルチノードのアプリケーションおよびユーザー・アクセスと、ファイルシステム全体の管理を簡略化できます。Oracle ACFSマウント・モデルは、ノード・ローカル・マウントと、追加のカスタマ要件に対処するためのクラスタ構成におけるクラスタ・ノード・サブセット・マウントにも対応します。

Oracle ACFSファイルシステムは、Oracle Grid Infrastructureの起動および停止時に適切に処理されていることを確認するためにOracle Clusterwareリソースを使用して管理されたOracle Clusterwareになることがベスト・プラクティスです。

mountコマンドを明示的に使用できます。ただし、リソースが作成されている場合、ファイルシステムがすでにマウントされている可能性があります。

Oracle ACFSおよびデータベースのデータファイルについて

注意:

Oracle ACFSでのデータ・ファイルのベスト・プラクティスは、データ・ファイルを格納するOracle ACFSファイルシステムのクラスタワイド・リソースを使用することです。

データベース・インストールの完了後にデータ・ファイルを追加する場合、新しいOracle ACFSファイルシステムをリスト表示するようにデータベース依存性を変更する必要があります。これができない場合、アプリケーションの信頼性に関するエラーが発生します。依存性リストでファイルシステムを指定するには、SRVCTLデータベース・オブジェクト・コマンドを使用して、リソースが使用するOracle ACFSパスを変更します。

Oracle Grid Infrastructure18cクラスタおよびスタンドアロン(Oracle Restart)構成のOracle ACFSでは、Oracle Databaseリリース11.2.0.4以上のすべてのデータベース・ファイルがサポートされます。Oracle ACFSは、データベースとともに使用するように、特にデータベースのテストと開発にOracle ACFSスナップショットを活用するように構成できます。クラスタ構成でのデータベース・ファイルをサポートするには、Oracle ACFSファイルシステムを含むディスク・グループに対して、COMPATIBLE.ADVM属性を12.1以上に設定する必要があります。Oracle Restart構成で、すべてのデータベース・ファイルをサポートするには、COMPATIBLE.ADVM属性を12.2.0.1以上に設定する必要があります。

Windowsでのデータベース・データ・ファイルのサポートは、Oracle Grid 12cリリース1 (12.1.0.2)以降可能です。Windowsでデータベース・ファイルをサポートするには、COMPATIBLE.ADVM属性を12.1.0.2以上に設定する必要があります。

Oracle Exadata (Linux)でのデータベース・データファイルのサポートは、Oracle Grid 12cリリース1(12.1.0.2)から開始されます。ただし、Oracle ACFSには現在、データベース操作を直接ストレージにプッシュする機能はありません。

Oracle Grid Infrastructure 12.1.0.2のOracle ACFSではさらに、Oracle Exadata (Linux)ストレージでOracle Database 10gリリース2 (10.2.0.4および10.2.0.5)のすべてのデータベース・ファイルがサポートされます。Oracle ExadataストレージでサポートするOracle Database 10gリリース2 (10.2.0.4および10.2.0.5)のデータベース・ファイルは、次の条件を満たしている必要があります。

  • DBCAでOracle Databaseを作成する際、REMOTE_LISTENER初期化パラメータをyour_scan_vip:1521に設定する必要があります。それ以外の場合、DBCAは作成プロセスで失敗します。

  • データベース・インスタンス・リソースのすべての起動および停止依存性を変更して、Oracle Clusterwareの起動時にリソースが起動するようにします。

次のリストに、データベース・ファイルによるOracle ACFSの使用に関する重要な情報を示します。

  • Oracle ACFSのサポートには、Oracle ASMによってサポートされるすべてのファイル・タイプが含まれます。

  • Oracle ACFSにデータベース・データファイルを格納する場合、FILESYSTEMIO_OPTIONS初期化パラメータをsetallに設定する必要があります。他の設定はサポートされません。データベース・データファイルを使用して最適なパフォーマンスを実現するには、データファイルを保持するOracle ADVMボリュームを含むディスク・グループのASMおよびADVM互換性属性を12.1以上に設定します。12.1.0.2より前に作成されたボリュームでは、ストライプ列を1に設定するか、ストライプ列を8に設定してストライプ幅を1 MBに設定します。12.1.0.2以上の実行中に作成されたボリュームは、すでに高パフォーマンス構成(ストライプ列は8、ストライプ幅は1MB)にデフォルト設定されています。

  • スナップショットを使用して最適なデータベース・パフォーマンスを得るには、ADVM互換性属性を12.1以上に設定した後で、スナップショットを作成する必要があります。

  • 最適なパフォーマンスのために、Oracle ACFSで、データベースのブロック・サイズおよび表領域のブロック・サイズを4K以上にします。

  • Oracle Exadata使用時の最適なパフォーマンスのためには、4Kのメタデータ・ファイルシステムを使用します。

  • Oracle ACFSでは、ブロック・サイズが2Kのデータベースはサポートされていません。

  • データベース・ファイルが格納されているOracle ACFSファイルシステムを、DNFSクライアントからそれらのファイルにアクセスするためのNFSを経由してエクスポートしないでください。この構成はサポートされていません。

  • データファイルが自動的に拡張されるように構成されている場合、拡張操作が頻繁に発生しないように増分サイズは十分な大きさである必要があります。頻繁な自動拡張は、パフォーマンスに悪影響を及ぼします。

  • ベース・ファイルシステムとスナップショット間で記憶域を共有するため、スナップショットでワークロードを実行すると、ベース・ファイルで実行中のプライマリ・ワークロードのリソースが低減されます。プライマリ・ワークロードに影響を与えずにOracle ACFSスナップショットでテスト・シナリオを実行するには、ファイルシステムをコピーしてから、コピーしたファイルシステムで作成されたスナップショットで、ワークロードのテストを実行します。

  • Oracle ACFSでのデータベース・ファイルによるOracle ACFS暗号化の使用は、サポートされていません。Oracle ACFSでデータベース・データファイルを暗号化するには、Oracle Advanced Securityをお薦めします。Oracle Advanced Securityでは、表領域全体のデータファイルを暗号化する、透過的データ暗号化(TDE)が提供されます。

  • スナップショットまたはファイルシステムのベースとストレージを共有するデータベースは、アクティブなオンライン・トランザクション処理(OLTP)のワークロード下で断片化されていく可能性があります。この断片化により、順次スキャンにおいてボリューム内のデータの場所が不連続になることがあります。Oracle ACFSでは、このようなファイルをバックグラウンドで自動的にデフラグします。断片化はacfsutil defrag dirおよびfileコマンドによってレポートされますが、acfsutil info fileコマンドを使用して表示することもできます。また、自動デフラグの実行が速さに欠ける場合に、acfsutil defrag dirおよびfileコマンドを使用すると、ファイルのオンデマンド・デフラグが可能になります。

関連項目:

Oracle ACFSとOracle Databaseホームについて

Oracle ACFSファイルシステムは、Oracle Databaseホームとして構成できます。

クラスタにデータベースをインストールする場合、データベース・ホームの共有Oracle ACFSファイルシステムを使用する必要があります。Oracle ACFSのファイルシステムは、Oracle 11gリリース2(11.2)以上のOracle Databaseホームに使用できます。

Oracle Softwareをインストールする際には、各オペレーティング・システムのユーザーに関連した個別のOracleベース(ORACLE_BASE)である必要があります。たとえば、グリッドユーザーとデータベースユーザーに対しては、別のOracleベースである必要があります。

Oracle ACFSファイルシステム上にOracle Databaseベース・ディレクトリ(データベース用のORACLE_BASE)およびホーム・ディレクトリ(データベース用のORACLE_HOME)を配置できます。Oracle Databaseベース・ディレクトリ(データベース用のORACLE_BASE)を、Oracle Grid Infrastructureのベース・ディレクトリ(グリッド用のORACLE_BASE)にしないでください。また、Oracle Grid Infrastructureのベース・ディレクトリ(グリッド用のORACLE_BASE)の下に配置しないでください。

Oracle Grid Infrastructureをインストールするまで、Oracle ACFSファイルシステムは作成されないため、Oracle Grid Infrastructureベース・ディレクトリ(グリッド用ORACLE_BASE)およびホーム・ディレクトリ(グリッド用ORACLE_HOME)をOracle ACFSファイルシステム上に配置できません。

同一のマウント・ポイントの下には、Oracle ACFS上に1つ以上のOracle Databaseホームを作成でき、各ホームは別のOracle ACFSファイルシステムを使用して作成します。

Oracle Grid Infrastructureソフトウェアのインストール後、Oracle Universal Installer (OUI)を使用してOracle Databaseソフトウェアをインストールする前に、Oracle Databaseホームとして使用するために構成するOracle ACFSファイルシステムを作成できます。

Oracle ASMコンフィギュレーション・アシスタント(ASMCA)を使用するか、Oracle ACFSコマンドを使用して、ファイルシステムを作成することもできます。

注意:

Oracle ACFSファイルシステムにOracle Databaseホームが含まれる場合、または Oracle Databaseがファイル・ストレージにファイルシステムを使用する場合、ファイルシステムにはOracle ACFSファイルシステム・リソースが必要です。Oracle ASMコンフィギュレーション・アシスタントを使用してマウント・ポイントを設定しない場合、サーバー制御ユーティリティ(SRVCTL)コマンドを使用してOracle Database依存性を設定する必要があります。

Oracle Grid Infrastructureクラスタウェア構成では、データベース・ホームにOracle ACFSを使用する場合、クラスタワイドOracle ACFSリソースが必要になります。データベース所有者がリソースを操作できるようにするには、リソースの作成時に所有者を許可されたユーザーとして指定する必要があります。データベース所有者は、srvctl add filesystem-uオプション、またはacfsutil registryコマンドで指定できます。LinuxまたはUNIX環境でリソースを追加する場合、ルート権限が必要です。

Oracle ACFSファイルシステムおよびリソースの作成後、Oracle ACFSベースのデータベース・ホーム・マウント・ポイントの場所を、Oracle Universal Installer (OUI)データベース・ソフトウェアのインストール時にディレクトリを参照して選択することで、Oracle Databaseホームの場所として選択できます。

srvctl start filesystemコマンドを使用して、手動でOracle ACFSファイルシステムをマウントできます。

注意:

作成後にOracle ACFSファイルシステムをOracle Databaseに追加する場合、Oracle Databaseリソース依存性リストでこれらを指定する必要があります。これができない場合、アプリケーションの信頼性に関するエラーが発生します。依存性リストでファイルシステムを指定するには、SRVCTLデータベース・オブジェクト・コマンドを使用して、リソースが使用するOracle ACFSパスを変更します。

Oracle ACFSファイルシステムは、アプリケーションのホームとして使用するために構成することもできます。ただし、Oracle ACFSファイルシステムは、Oracle Clusterware、Oracle ASM、Oracle ACFSおよびOracle ADVMコンポーネントのソフトウェアが含まれるOracleベース・ディレクトリやOracle Grid Infrastructureホームには使用できません。

Oracle ACFSでOracle Databaseホームが共有されている場合にOracle RAC環境内のOracle ACFSファイルシステム上の競合を減らすために、Oracle Database監査オペレーティング・システム・ファイルをノード固有として構成する必要があります。ノード固有として設定するには、各データベース・インスタンスの構成ファイル内のAUDIT_FILE_DEST初期化パラメータが、すべてのデータベース・インスタンス用の1つの場所ではなく、固有の場所を指すようにする必要があります。

たとえば、Oracle名をTESTに設定しているデータベースを使用し、各データベース・インスタンス(TEST1TEST2など)のAUDIT_FILE_DEST初期化パラメータの場所がこのインスタンスのノード固有の場所を指すようにする場合、次のSQL文を実行できます。

SQL> ALTER SYSTEM SET AUDIT_FILE_DEST='$ORACLE_BASE/admin/adump/TEST/@' 
     SCOPE=SPFILE SID='*';

前述の例では、@は、各インスタンスのORACLE_SIDに展開します。前述の例でORACLE_BASE/acfsmountsに設定された場合、この値はORACLE_BASE変数のかわりに使用されている可能性があります。

関連項目:

Oracle ASM動的ボリューム・マネージャについて

Oracle ASM動的ボリューム・マネージャ(Oracle ADVM)は、ボリューム管理サービスと、クライアントとの標準ディスク・デバイス・ドライバ・インタフェースを提供します。ファイルシステムと他のディスクベース・アプリケーションからは、相手がベンダー・オペレーティング・システム上の他のストレージ・デバイスである場合と同様に、I/OリクエストがOracle ADVMボリューム・デバイスに送信されます。

Oracle ADVMの詳細は、Oracle ASM動的ボリューム・マネージャの概要を参照してください。

Oracle ACFSドライバ・モデルについて

Oracle ACFSファイルシステムは、動的にロード可能なベンダー・オペレーティング・システム(OS)ファイルシステム・ドライバと、サポートされているオペレーティング・システム・プラットフォームごとに開発されているツール・セットとしてインストールされます。ドライバは仮想ファイルシステム(VFS)として実装され、特定のファイルシステムに対するすべてのファイルおよびディレクトリ操作を処理します。

注意:

ドライバで発生したエラーは、ネイティブ・オペレーティング・システム・コンソールおよびシステム・イベント・ログ出力に書き込まれます。Oracle ACFS I/O障害コンソール・メッセージの理解を参照してください。

Oracle ACFSマウント・レジストリについて

Oracle ACFSマウント・レジストリは、Oracle Grid Infrastructureクラスタ構成をサポートしますが、Oracle Restart構成はサポートしません。

継続して(再起動されても)マウントされるファイルシステムは、Oracle ACFSマウント・レジストに登録できます。クラスタ構成では、登録済のOracle ACFSファイルシステムは、クラスタ全体のマウント表と同様に、マウント・レジストリによって自動的にマウントされます。ただし、登録済のOracle ACFSファイルシステムの自動マウントは、Oracle Restart構成ではサポートされません。

デフォルトでは、Oracle ACFSマウント・レジストリに挿入されたOracle ACFSファイルシステムは、レジストリ追加後に追加されるクラスタ・メンバーを含め、すべてのクラスタ・メンバーに自動的にマウントされます。ただし、Oracle ACFSマウント・レジストリは、スタンドアロンおよびマルチノード(クラスタ・ノードのサブセット)のファイルシステム登録にも対応しています。クラスタ・メンバーごとのマウント・レジストリ・アクションは、そのメンバーへのマウント用に指定された登録済ファイルシステムのみをマウントします。

Oracle ACFSマウント・レジストリは、Oracle Clusterwareリソース、特にOracle ACFSリソースを使用して実装されます。Oracle ACFSリソース・アクションは、特定のファイルシステムをディスマウントする管理アクションとの考えられる競合を避けるために、Oracle Grid Infrastructureを初期化するたびに、1回かぎりファイルシステムを自動的にマウントするように設計されています。

関連項目:

クラスタ・ドメイン内のOracle ACFSについて

ローカル・ストレージが接続されたOracle Databaseメンバー・クラスタのサポートに加え、Oracle ACFSは、ローカル・ストレージが接続されていないOracle Databaseメンバー・クラスタ(間接ストレージ・メンバー・クラスタ)上でネイティブOracle ACFS機能のOracle ACFSリモート・サービスを提供します。Oracleドメイン・サービス・クラスタ(DSC)でOracle ACFSのデプロイメントを利用することにより、Oracle ACFSリモート・サービスをOracle Databaseアプリケーション・クラスタとOracle Databaseメンバー・クラスタの両方に使用して、フレキシブルでファイル・システムベースのアプリケーションおよびデータベースのデプロイメントを可能にします。NFSベースのエクスポートとは異なり、Oracle ACFSリモート・サービスは、宛先メンバー・クラスタでのレプリケーション、スナップショット、およびタグ付けなどの高度なOracle ACFS機能を完全にサポートします。

Oracle Databaseメンバー・クラスタ

Oracle Databaseメンバー・クラスタは、ローカル・ストレージあり、またはローカル・ストレージなしで構成できます。

  • ローカル・ストレージが接続されたOracle Databaseメンバー・クラスタ

    Oracle Databaseメンバー・クラスタは、ローカル・ストレージありで構成できます。これらのクラスタは、ドメイン・サービス・クラスタのGIMRを使用し、スタンドアロンのOracle ASMクラスタと同様に動作します。これらのクラスタ内のOracle ACFSは、完全なOracle ASMプロキシおよびすべての従来のツールで正常に動作します。これらのメンバー・クラスタは、自身のストレージを管理します。

  • ローカル・ストレージが接続されていないOracle Databaseメンバー・クラスタ

    ローカル・ストレージが接続されていないOracle Databaseメンバー・クラスタも構成できます。これらの間接ストレージ・メンバー・クラスタは、ドメイン・サービス・クラスタ(DSC)の統合ストレージ・サービスを使用します。Oracle ACFSファイル・システムおよびOracle ADVMボリュームを使用するために、Oracle Databaseメンバー・クラスタはドメイン・サービス・クラスタのOracle ACFSリモート・サービスを使用します。

    間接ストレージ・メンバー・クラスタでは、従来のデータベースやその他のアプリケーションを実行できる、小規模で軽量のOracle Clusterware(CRS)スタックが提供されます。直接接続ストレージの要件がないため、このメンバー・クラスタはメモリー消費量が少なく、プロビジョニングが簡単で、VMで容易にホストできます。間接ストレージ・メンバー・クラスタは、リソースおよびアプリケーションの統合に非常に適しています。このシナリオでは、Oracle ACFSリモートは、ドメイン・サービス・クラスタ上の完全なストレージおよびリソース統合を可能にし、新世代のコンパクトで安価なコンピューティング・リソースを使用可能にします。

Oracle ACFSリモート・サービス

Oracle ACFSリモート・サービスは、間接ストレージ・メンバー・クラスタ内でのOracle ACFSの使用を可能にします。Oracle ACFSリモート・サービスは、DSCのもう1つのサービスとして提供されています。間接ストレージ・メンバー・クラスタには、Oracle Databaseメンバー・クラスタへの直接接続ストレージがないため、Oracle ACFSリモート・サービスは、標準のブロック転送でのOracle ACFSの使用のために、DSCとメンバー・クラスタ間に、Oracle ACFSで有効化したストレージ・ファストパスを提供します。

Oracle ACFSリモート・サービスが使用されている場合、Oracle Databaseメンバー・クラスタは、スナップショット、サイズ変更、Oracle Databaseおよびその他のPOSIXアプリケーションに加えて、ACFS NAS|MAX、タグ付け、チェック、修復、修正、セキュリティ、暗号化、および圧縮など、すべてのOracle ACFS機能にアクセスできます。アプリケーションがメンバー・クラスタでOracle ACFSリモート・サービスのエクスポート機能を使用する際に、Oracle ACFSのローカルでの使用とリモートでの使用の間に、機能的またはプログラム的な違いはありません。また、すべてのOracle ACFSツールおよびユーティリティも引き続き正常に動作します。デフォルト構成の一部として、Oracle ACFSリモート・サービスではエクスポートの高可用性が提供されます。トランスポートまたはDSCのノードが使用できない場合は、DSCの他のノードで操作が継続されます。この継続により、メンバー・クラスタ操作の完全なフェイルオーバーと可用性が提供されます。Oracle ACFSリモートは、一時的なトランスポート・レベルの停止も同様の方法で処理します。

リポジトリ、エクスポート、およびトランスポート

リポジトリ、エクスポート、およびトランスポートは、Oracle ACFSリモート・サービスの不可欠なコンポーネントです。

  • リポジトリ

    リポジトリは、エクスポートのホストとして機能するDSCのOracle ACFSファイル・システムのディレクトリです。ファイル・システムは、標準的なOracle ACFSファイル・システムで、サイズ変更、レプリケーション、およびスナップショットなどの標準的なOracle ACFS機能をファイル・システムに適用できます。これはOracle ACFSファイル・システムのため、リポジトリは、1ペタバイトのOracle ACFSファイル・システム制限を受けます。Oracle ACFSファイル・システムのすべてのリポジトリ内で予期されるバッキング・ファイルの合計がファイル・システムのサイズを超える場合は、複数のリポジトリが必要です。

    Oracle ACFSファイル圧縮は、リポジトリでサポートされていません。

  • エクスポート

    DSCではエクスポートが用意されています。これらのエクスポートは、DSCのOracle ACFSリモート・サービス・リポジトリに格納されているバッキング・ファイルとして開始されます。ファイルはトランスポートを使用してエクスポートされるため、意図したメンバー・クラスタ・ノードのみが、そのトランスポートを使用してエクスポートにアクセスできます。エクスポートは、advmutil exportの一連のコマンドを使用して管理されます。ファイルがOracle ACFSリモート・サービスで使用された後は、Oracle ACFSリモート・サービスでの使用が終了するまではそのファイルを削除できません。

  • トランスポート

    Oracle ACFSリモート・サービスは、トランスポートを使用してエクスポートへのアクセスを提供します。Oracle ASMリリース18c、バージョン18.1では、iSCSIトランスポートのみがサポートされます。このトランスポートは、小規模なトランスポート定義ファイルを使用して構成され、Oracle ACFSリモート・サービスで自動的に管理されます。トランスポートは、advmutil transportの一連のコマンドを使用して管理されます。

Oracle ACFSスナップショットについて

Oracle ACFSスナップショットは、Oracle ACFSファイルシステムのオンライン読取り専用または読取り-書込みポイント・イン・タイム・コピーです。

スナップショット・コピーは領域使用効率がよく、copy-on-write機能を使用します。Oracle ACFSファイル・エクステントの変更または削除前に、その現行値は、ファイルシステムのポイント・イン・タイム・ビューを保持するスナップショットにコピーされます。

Oracle ACFSスナップショットは、作成後すぐに使用可能になります。ファイルシステムの.ACFS/snaps/ ディレクトリにスナップショットが作成されます。ファイルシステムがマウントされている間は、常にオンラインです。そのため、Oracle ACFSスナップショットは、不用意に変更、またはファイルシステムから削除してしまったファイルのオンライン・リカバリをサポートできます。Oracle ACFSスナップショットは、アクティブ・ファイルシステムの一貫性のある現行オンライン・ビューを提供するために、要求に応じて作成できるので、ファイルシステム・バックアップのソースとしても使用できます。

最大1023個の読取り専用、読取り-書込み、または読取り専用と読取り-書込みの組合せのスナップショット・ビューがファイルシステムごとにサポートされているため、使用する複数のビューにわたって柔軟なオンライン・ファイル・リカバリ・ソリューションが可能になります。64ビット・システムのOracle ACFSでは、1023個のスナップショットがサポートされます。スナップショットの合計数は、読取り専用スナップショットと読取り-書込みスナップショットの組合せでもかまいません。63を超えるスナップショットの作成をサポートするには、ADVMのディスク・グループ互換性属性を12.1.0.2以上に設定する必要があります。また、63を超えるスナップショットを作成するには、次の条件を満たす必要があります。

  • COMPATIBLE.ADVM12.1.0.2未満に設定して作成されたファイルシステムのスナップショットは、すべて削除する必要があります。

  • COMPATIBLE.ADVM12.1.0.2以上に設定した後、それより古いスナップショットが存在する間に作成されたファイルシステムのスナップショットは、すべて削除する必要があります。

Oracle ACFSの読取り-書込みスナップショットでは、イメージスナップショット・イメージをホストしているOracle ACFSファイルシステムの状態に影響を与えずに、読取りと書込みの両方が可能なスナップショット・イメージを高速で作成できます。次の場合に、読取り-書込みスナップショットを使用できます。

  • アプリケーション・ソフトウェアの新しいバージョンを、読取り-書込みスナップショット・イメージが反映された本番ファイル・データ上で、元の製品ファイルシステムを変更することなく実行するテスト

  • 実際のデータセット上で本番ファイルシステムを変更しないテストシナリオの実行

Oracle ACFS読取り-書込みスナップショットを使用するには、ADVMに対するディスク・グループ互換性属性を11.2.0.3.0以上に設定する必要があります。11.2.0.3.0より前のバージョンの既存のOracle ACFSファイルシステムで読取り-書込みスナップショットを作成する場合、ファイルシステムは11.2.0.3.0以上の形式に更新されます。ファイルシステムを新しいバージョンに更新した後で、Oracle ACFSファイルシステムを以前のバージョンに戻すことはできません。それに応じて、以前のOracle Grid Infrastructureのバージョンでマウントすることもできません。

同じOracle ACFSファイルシステム内の既存のスナップショットから、スナップショットを作成できます。また、読取り専用と読取り-書込みの形式間で、スナップショットを変換できます。既存のスナップショットからスナップショットを作成するか、スナップショットを変換するには、ADVMのディスク・グループの互換性属性を12.1以上に設定する必要があります。また、次のものがある場合、既存のスナップショットからの作成は許可されません。

  • ADVM互換性を12.1未満に設定して作成されたファイルシステム内に存在するスナップショット

  • ADVM互換性を12.1に設定した後でも、11.2のスナップショットが存在しているときに作成されたファイルシステムのスナップショット

Oracle ACFSスナップショット記憶域は、ファイルシステム内に保持され、ファイルシステムとスナップショット用に別々の記憶域プールを管理する必要がありません。Oracle ACFSファイルシステムは、追加のファイルやスナップショット記憶域の要件に対応するために動的にサイズを変更できます。

セキュリティまたは暗号化の有効化または無効化を除いて、読取り-書込みスナップショット内のセキュリティまたは暗号化メタデータを変更できません。その他の変更は、スナップショット内のOracle ACFSセキュリティまたは暗号化メタデータでは許可されません。ファイルがスナップショット内のセキュリティ・レルムによりセキュリティ保護されていなかった場合、アクティブ・ファイルシステム内の対応するファイルのセキュリティ・レルムへの追加により、セキュリティ保護されるレルムにすることはできません。ファイルがスナップショット内で暗号化されていなかった場合、アクティブ・ファイルシステム内の対応するファイルの暗号化により、そのファイルを暗号化することはできません。

読取り-書込みスナップショットのレルム保護されたディレクトリ内で作成された新しいファイルは、親ディレクトリのレルム・セキュリティ属性を継承します。レルム保護している新しいファイルの暗号化がオンになった場合、レルム内の暗号化親セットで暗号化されます。レルム保護している新しいファイルの暗号化がオフになった場合、ファイルは復合化されます。読取り-書込みスナップショット内のファイルとディレクトリは、セキュリティ・レルムから追加または削除できません。

操作対象が読取り-書込みスナップショットのファイルまたはディレクトリについてパス指定されている場合、読取り-書込みスナップショット内のファイルを暗号化、復号化、またはキー更新できます。ただし、暗号化、復号化、またはキー更新の操作がファイルシステムのレベルで指定されている場合、その操作では、.ACFS/snaps/ディレクトリ内のスナップショットのファイルとディレクトリを処理しません。

すべてのOracle ACFSスナップショット操作は、カーネル内のクラスタ全体でシリアル化されます。たとえば、スナップショット削除操作と同時にスナップショット作成操作を開始した場合、両方の操作は完了しますが、それらはカーネルの内部で同時に実行されません。1つの操作が完了してからもう1つの操作が開始します。

acfsutil snap duplicateコマンドは、ターゲット・ファイルシステムまたは書込み可能なスナップショットでソース・ファイルシステムまたはスナップショットの段階的変化を最小のオーバーヘッドで追跡できるように、手動で起動できます。Oracle ACFSでは、各適用操作後に、現在の内容を示すようにターゲットを更新し、次の適用操作を開始する前に、受信スナップショット複製ストリームの起点が最後に適用されたストリームの終点と一致するようにチェックします。ターゲットは、acfsutil snap duplicate applyで使用中である場合でも、あらゆるアプリケーションよって書込み可能なままです。Oracle ACFSでは、適用プロセス以外のプロセスによるターゲットに対する更新を判別し、そのような更新が発生した場合は、ターゲットの内容を追跡する内部メタデータを無効にします。これにより、ターゲットに対するそれ以降の適用操作を防ぎ、将来の適用操作によって予期しない結果が発生する可能性を回避します。

acfsutil snap duplicateコマンドの使用では、Oracle ACFSレプリケーション操作とやり取りします。acfsutil snap duplicate applyで使用中のターゲット・ファイルシステムをレプリケーション用のファイルシステムとして使用するために指定することはできません。また、レプリケーションで使用中のファイルシステムをacfsutil snap duplicate apply用のターゲットとして指定することはできません。

acfsutil snap duplicateコマンドを実行するには、ADVMのディスク・グループ互換性属性を12.2以上に設定する必要があります。

その他のacfsutil snapコマンドは、複製スナップショットの管理および既存のスナップショットによるOracle ADVMボリュームの再マスタリングに使用できます。

Oracle ACFSスナップショットは、acfsutil snapコマンドにより管理されます。

注意:

Oracle ACFSファイルシステム内および関連付けられた読取り-書込みスナップショット内のファイルまたはその逆で、リンクまたはファイル名変更が試みられた場合、link()およびrename()システム・コールは失敗します。lnmvのようにlink()およびrename()システム・コールを使用するツールも同じシナリオによって失敗します。

関連項目:

Oracle ACFSとバックアップおよびリストアについて

Oracle ACFSは、オペレーティング・システム・プラットフォームで、ネイティブ・オペレーティング・システムのファイルシステム・アプリケーション・プログラム・インタフェース(API)をサポートするネイティブ・ファイルシステム・テクノロジとして動作します。そのため、ネイティブ・オペレーティング・システムのファイルシステム・インタフェースを使用してファイルにアクセスするバックアップ・アプリケーションは、Oracle ACFSファイルシステムとその他のネイティブ・オペレーティング・システムのファイルシステムにアクセスし、バックアップすることができます。Oracle ACFSスナップショットは、動的に作成され、アクティブ・ファイルシステムの一貫したオンライン・ビューをバックアップ・アプリケーションに提示するために使用できます。

標準オペレーティング・システム・インタフェース(読取りまたは書込み)以外のインタフェースを使用するバックアップ・アプリケーションは、Oracle ACFSではサポートされません。たとえば、再解析ポイントの存在に依存するWindowsバックアップ・アプリケーション、またはWindows Volume Shadow Copy Service(VSS)はサポートされません。

注意:

Oracle ACFSをOracle Recovery Manager (RMAN)のバックアップまたはリストアで使用する場合、デフォルト値はOracle ACFSファイルシステムに最適ではないこともあるため、RMANをチューニングしてパフォーマンスを向上させる必要があります。たとえば、バッファ・サイズをボリューム・ストライプ幅またはOracle ASM AUサイズと適合するようにRMANのパラメータを調整できます。また、Oracle ASMディスク・グループ内のデバイス数と適合するようにバッファ数を調整することもできます。

関連項目:

  • 共通のオペレーティング・システム・ユーティリティを使用したタグ付け定義の拡張属性の保存の詳細は、「Oracle ACFSタグ付け」

  • Oracle ACFSメタデータのバックアップおよびリストアの詳細は、「md_backup」「md_restore」

  • RMAN Performance Tuning Using Buffer Memory Parameters (文書ID 1072545.1)やRMAN Performance Troubleshooting (文書ID 1326686.1)など、RMANのチューニングに関する記事は、My Oracle Support (https://support.oracle.com)

Oracle ACFSとOracle ASMの統合について

Oracle ACFSは常にOracle ASMストレージを使用して構成され、従来のデバイス・ファイルを介してOracle ASMストレージと連動します。このデバイス・ファイルは、Oracle ADVMによって提供され、動的ボリューム・ファイルを使用して構成されます。Oracle ADVMボリューム・デバイス・ファイルは、Oracle ADVMボリュームの作成後に自動的に作成されます。その後、Oracle ACFSファイルシステムがファイルシステムの作成中にOracle ADVMデバイス・ファイルにバインドされます。

Oracle ACFSが構成されてマウントされると、ファイルシステムは、Oracle ADVMボリュームに関連付けられたOracle ASMストレージ管理機能(動的バランス分散、ミラー化およびストライプ化、動的サイズ変更など)を継承します。

Oracle ACFSドライバでは、Oracle ASMインスタンスとの通信を確立し、Oracle ASMインスタンスおよびディスク・グループの状態遷移などのOracle ASMステータス情報を受信します。ただし、I/OはOracle ASMもOracle ASMプロキシも経由せず、基礎となるOracle ASMストレージに直接進みます。

Oracle ACFSとOracle ASMの操作の詳細は、Oracle ACFSとディスマウントまたは停止操作を参照してください。

Windows上のOracle ACFSおよび外部表について

Windows上のOracle ACFSファイルシステムに保存されている外部表にアクセスするには、外部表はDISABLE_DIRECTORY_LINK_CHECKアクセス・パラメータで作成される必要があります。

関連項目: