B Oracle Locator

Oracle Locator (Locatorともいう)は、Oracle Database Standard Editionの機能です。Locatorは、Oracle Spatial and Graphで使用可能な主要な機能およびサービスを提供します。

通常、インターネットおよびワイヤレス・サービス・ベースのアプリケーションおよびパートナ・ベースのGISソリューションをサポートするために必要な、重要な機能を提供します。Locatorは、複雑な空間データ管理が必要な地理情報システム(GIS)アプリケーションのためのソリューションとして設計されていません。線形参照、高度な空間ファンクション、Spatial and Graph Webサービスなどの機能が必要な場合は、LocatorではなくOracle Spatial and Graphを使用します。

Spatial and Graphと同様に、Locatorは、エンド・ユーザー・アプリケーションではなく、アプリケーション開発者向けの一連の空間機能として設計されています。

Locatorは、Oracle DatabaseのStandard Edition One、Standard EditionおよびEnterprise Editionと、Oracle Database XE (Express Edition)で使用できます。Spatial and Graphは、Oracle Database Enterprise Editionのみで使用可能な別ライセンスのオプションです。Spatial and Graphには、Locatorのすべての機能に加えて、Locatorでは使用できない機能も含まれています。

Locatorで使用可能な機能のみを使用する必要がある場合は、「LocatorまたはSpatial and Graphの手動によるインストールおよび削除」を参照してください。Spatial and GraphおよびLocatorに関するライセンス情報は、『Oracle Databaseライセンス情報』を参照してください。

Locatorがインストールされているかどうかは、Oracle Multimediaが正しく適切にインストールされたかどうかによります。Oracle Multimediaは、Oracle Databaseとともにインストールされ構成されますが、必要に応じて、手動でインストールすることもできます(『Oracle Multimediaユーザーズ・ガイド』を参照)。Locatorは、Oracle Multimediaのインストール時にインストールされます。

通常Locatorには、Spatial and Graphの一部のサブプログラム(ファンクションおよびプロシージャ)とともに、Oracle Spatial and Graphのデータ型、演算子および索引付け機能が含まれます。Locatorに含まれる機能は次のとおりです。

• すべてのタイプのジオメトリを記述およびサポートするオブジェクト型(SDO_GEOMETRY)

• ジオメトリ・データに空間索引を作成するための空間索引付け機能

• 空間索引を使用して空間問合せを実行する空間演算子(「空間演算子」を参照)

• ジオメトリ・サブプログラム(SDO_GEOMパッケージ(「SDO_GEOMパッケージ(ジオメトリ)」を参照))

• 空間集計ファンクション(「空間集計ファンクション」を参照)

• ジオメトリおよびレイヤーの変換における座標系のサポート(SDO_CSパッケージ(「SDO_CSパッケージ(座標系変換)」を参照))

• チューニング・サブプログラム(SDO_TUNEパッケージ(「SDO_TUNEパッケージ(チューニング)」を参照))

• Spatialのユーティリティ・ファンクション(SDO_UTILパッケージ(「SDO_UTILパッケージ(ユーティリティ)」を参照))

• Spatial and Graph Java APIのoracle.spatial.geometry (sdoapi.jar)パッケージおよびoracle.spatial.util (sdoutil.jar)パッケージのクラス(Oracle Spatial and Graph Java API Referenceを参照)

空間の概念、SDO_GEOMETRYオブジェクト型、SQL Multimedia型の注釈テキストのサポート、および空間データの索引付けとロードの詳細は、このマニュアルの第1章から第5章を参照してください。Locatorでサポートされている機能のリファレンス情報および使用方法は、表B-1に示す章または項を参照してください。

表B-1 Locatorに含まれている機能

機能	参照先
SDO_JOINを含み、SDO_POINTINPOLYGONを含まない空間演算子。(SDO_JOINとSDO_POINTINPOLYGONは厳密にはテーブル・ファンクションですが、演算子とともに説明。)	空間演算子
SDO_GEOMパッケージ・サブプログラム	SDO_GEOMパッケージ(ジオメトリ)
空間集計ファンクション	空間集計ファンクション
座標系変換サブプログラム(SDO_CS package)	SDO_CSパッケージ(座標系変換)
演算子のコールに対する暗黙的な座標系の変換(このコールでは、問合せされたレイヤーの座標系にウィンドウを変換する必要あり)	空間演算子
ファンクション・ベースの空間索引付け	ファンクション索引のSDO_GEOMETRYオブジェクト
空間索引での表のパーティション化のサポート(パーティションおよびその索引の分割、マージおよび交換を含む)。	「パーティション空間索引の使用」および「索引を含むパーティションの交換」
測地データのサポート	「測地座標のサポート」および「レガシー表およびビュー」
索引を作成、変更、削除するためのSQL文。	空間データを索引付けするためのSQL文
パラレル空間索引作成(PARALLELキーワードを指定したALTER INDEX REBUILDおよびCREATE INDEX文)(リリース2(9.2)の新機能)。	空間データを索引付けするためのSQL文
SDO_GEOMETRYオブジェクト型のメソッド。	SDO_GEOMETRYのメソッド
SQL Multimedia空間型(ST_xxx型)	SQL Multimedia型のサポート
同等のOracle Spatial and Graphの機能がLocatorでサポートされているSQL Multimediaファンクション(ST_xxxファンクション)	ST_xxxファンクションと同等のSpatial and Graphの機能
注釈テキスト	注釈テキストの型およびビュー
以前のリリースのSpatial and Graphから今回のリリースへデータをアップグレードするパッケージ(SDO_MIGRATE)	SDO_MIGRATEパッケージ(アップグレード)
チューニング・サブプログラム(SDO_TUNEパッケージ)	SDO_TUNEパッケージ(チューニング)
Spatialのユーティリティ・ファンクション(SDO_UTILパッケージ)。	SDO_UTILパッケージ(ユーティリティ)
Spatial and Graph Java APIのoracle.spatial.geometry (sdoapi.jar)パッケージおよびoracle.spatial.util (sdoutil.jar)パッケージのクラス	『Oracle Spatial and Graph Java APIリファレンス』
オブジェクトのレプリケーション	Oracle GoldenGateのドキュメント

表B-2に、LocatorでサポートされていないSpatial and Graphの機能、およびこのマニュアルや他のマニュアルでそれらの機能の詳細を記載している章を示します。

表B-2 Locatorに含まれていない機能

機能	参照先
線形参照システム(LRS)のサポート(SDO_LRSパッケージ)	「線形参照システム」(概念および使用方法)および「SDO_LRSパッケージ(線形参照システム)」(リファレンス)
3次元のジオメトリ・サポート: Locatorでは、3D空間索引、3D演算子および3Dデータのサブプログラムは使用できません。	3次元の空間オブジェクト(3Dの概念および使用方法)
空間分析およびマイニング・サブプログラム(SDO_SAMパッケージ)	SDO_SAMパッケージ(空間分析およびマイニング)
OpenLSのサポート(ジオコーディング、マッピング、ビジネス・ディレクトリ(イエロー・ページ)および運転方向(ルーティング・)サービスのサポートを含む。)	「OpenLSのサポート」および「SDO_OLSパッケージ(OpenLS)」。関連項目: 「住所データのジオコーディング」および「SDO_GCDRパッケージ(ジオコーディング)」 ビジネス・ディレクトリ(イエロー・ページ)のサポート ルーティング・エンジン
Web Feature Service(WFS)サポート(SDO_WFS_PROCESSおよびSDO_WFS_LOCKパッケージ)	「Web Feature Service (WFS)のサポート」(概念および使用方法)、「SDO_WFS_PROCESSパッケージ(WFSの処理)」および「SDO_WFS_LOCKパッケージ(WFS)」(リファレンス)
Catalog Services for the Web(CSW)のサポート(SDO_CSW_PROCESSパッケージ)	「Catalog Services for the Web (CSW)のサポート」(概念および使用方法)および「SDO_CSW_PROCESSパッケージ(CSWの処理)」(リファレンス)
Triangulated Irregular Network(TIN)、点群(PC)データ型および関連サブプログラム	「3次元の空間オブジェクト」(概念および使用方法)、「SDO_TIN_PKGパッケージ(TIN)」(SDO_TIN_PKGのリファレンス)および「SDO_PC_PKGパッケージ(点群)」(SDO_PC_PKGのリファレンス)
SDO_POINTINPOLYGON (厳密にはテーブル・ファンクションですが、演算子とともに説明)	空間演算子
GeoRasterのサポート	Oracle Spatial and Graph GeoRaster開発者ガイド
トポロジ・データ・モデル	Oracle Spatial and Graphトポロジ・データ・モデルおよびネットワーク・データ・モデル・グラフ開発者ガイド
ネットワーク・データ・モデル・グラフ	Oracle Spatial and Graphトポロジ・データ・モデルおよびネットワーク・データ・モデル・グラフ開発者ガイド
Spatial and Graph Java APIのoracle.spatial.geometry (sdoapi.jar)パッケージおよびoracle.spatial.util (sdoutil.jar)パッケージ以外のパッケージのクラス	『Oracle Spatial and Graph Java APIリファレンス』

Locatorは、Oracle DatabaseのStandard EditionとEnterprise Editionの両方で使用できますが、Locatorの一部の機能には、Standard Editionでは使用できないか、または使用が制限されているデータベース機能が必要です。表B-3に、Locatorのこれらの機能の一部およびその可用性を示します。

表B-3 Standard EditionまたはEnterprise Editionでの機能の可用性

機能	Standard/Enterprise Editionでの可用性
パラレル空間索引作成	Enterprise Editionでのみサポートされます。
SDO_GEOMETRYオブジェクトのマルチマスター・レプリケーション	Enterprise Editionでのみサポートされます。(SDO_GEOMETRYオブジェクトの単一のマスター・ビューまたはマテリアライズド・ビューのレプリケーションは、Standard EditionおよびEnterprise Editionの両方でサポートされます。
パーティション化された空間索引	Enterprise EditionではPartitioning Optionが必要です。Standard Editionではサポートされません。

• LocatorまたはSpatial and Graphの手動によるインストールおよび削除
  

B.1 LocatorまたはSpatial and Graphの手動によるインストールおよび削除

Spatial and Graphをインストールしたり、LocatorではなくSpatial and Graphに固有の機能を使用するには、Spatial and Graphのライセンス要件を満たす必要があります。Spatial and GraphおよびLocatorに関するライセンス情報は、『Oracle Databaseライセンス情報』を参照してください。

ノート:

Oracle MultimediaをOracle Databaseとともにインストールして構成する場合は、Oracle Locatorもインストールされます。

LocatorおよびSpatial and Graphに関連する特定のインストールおよび削除操作を実行するために、次のスクリプトを使用できます。

• mddins.sqlは、Spatial and Graphを手動で削除し、Locatorのみを残します(したがって、Locatorのみがインストールされている状態です)。これにより、Locatorで使用可能な機能のみを使用することができ、Spatial and Graphでのみ使用可能な機能は使用できなくなります。

• mdinst.sqlは、Spatial and Graphを手動でインストールするため、Spatial and GraphおよびLocatorで使用可能なすべての機能を使用できます。

Locatorの機能のみを使用する必要があるにもかかわらず、Spatial and Graphがすでにインストールされている場合は、mddins.sqlスクリプトを次のように実行します。

1. Oracle Multimediaがインストールされていることを確認します。

2. SYSDBA権限を持つSYSユーザーとしてデータベースに接続します(SYS AS SYSDBAを使用し、SYSアカウントのパスワードを求められたら入力します)。

3. SQL*Plusを起動し、次の文を入力します。

   • Linuxの場合: @$ORACLE_HOME/md/admin/mddins.sql

   • Windowsの場合: @%ORACLE_HOME%\md\admin\mddins.sql

Spatial and Graphを使用できる必要がある場合は、mdinst.sqlスクリプトを次のように実行します。

1. SYSDBA権限を持つSYSユーザーとしてデータベースに接続します(SYS AS SYSDBAを使用し、SYSアカウントのパスワードを求められたら入力します)。

2. SQL*Plusを起動し、次の文を入力します。

   • Linuxの場合: @$ORACLE_HOME/md/admin/mdinst.sql

   • Windowsの場合: @%ORACLE_HOME%\md\admin\mdinst.sql