Oracle Fleet Patching and Provisioningの機能

Oracle Fleet Patching and Provisioning (FPP)は、構成および管理タスクを容易にする様々な機能を備えています。

Oracle Fleet Patching and Provisioningを使用してOracleソフトウェアを管理する場合、Oracle FPPは次のことを行います。
  • デプロイされるソフトウェアのゴールド・イメージおよび系統の管理により、標準化および高レベルの自動化が可能になります。

  • アクティブなデータベースまたはクラスタを中断させることなく、新しいホーム(ゴールド・イメージの作業用コピー)をアウトオブプレースでデプロイすることで、保守ウィンドウを最小にします。

  • データベース・バージョンおよびデプロイメント・モデル間で一貫性のある単純なAPIを使用して起動される自動化が提供されるため、ローカル・メンテナンス操作が簡単になります。

  • 操作をエンドツーエンドで確実に成功させる組込みの検証とドライラン・モードにより保守リスクが軽減されます。

  • 問題が発生した場合に、コマンドを再開および再起動できるため、メンテナンス操作の影響はさらに軽減されます。

  • 次の機能により、パッチ適用およびアップグレードの影響が最小化、また多くの場合は解消されます。

    • 停止時間0のデータベース・アップグレード: 追加ノードまたは外部記憶域を必要とせずにデプロイメント内ですべて実行される完全に自動化されたアップグレード。

    • ローリング・パッチ適用中のデータベース・セッションおよびOJVMのアダプティブ管理。

    • 一括デプロイメントを詳細に管理するためのオプション。

デプロイメントおよび保守操作は拡張可能で、カスタマイズにより、自動化されたワークフローに環境固有のアクションを組み込むことができます。

Oracleフリート・パッチ適用およびプロビジョニング・オートマトン

  • 停止時間0のデータベース・アップグレードにより、データベースのアップグレードに必要なステップのすべてが自動化され、Oracleデータベースのアップグレード中、アプリケーションの停止時間が最小化され、場合によっては解消されます。また、リソース要件が最小化され、アップグレードをロールバックする必要がある場合にはフォールバック・パスが提供されます。

  • OJVMデプロイメントのアダプティブOracle RACローリング・パッチ適用: クラスタ化環境で、Oracleフリート・パッチ適用およびプロビジョニングでデータベースにパッチを適用するデフォルトの方法は、Oracle RACローリング・パッチ適用です。ただし、パッチ適用対象のデータベース・ホームにOJVMパッチが含まれる場合、非ローリングが必要になることがあります。この場合、Oracleフリート・パッチ適用およびプロビジョニングにより、ローリング・パッチ適用が可能かどうか判別され、可能な場合はパッチが適用されます。

  • ドライラン・コマンド評価: Oracleフリート・パッチ適用およびプロビジョニングでは、コマンドの実行前に、コマンドを確実に成功させるために、多様な事前条件がチェックされます。ただし、一部の条件は、コマンド実行前に検出できません。また、Oracleフリート・パッチ適用およびプロビジョニングでは、エラー状況の修正後に、失敗したコマンドの取消しや再開が可能ですが、コマンド実行前に、可能なかぎり多くの潜在的な問題を解決しておくことをお薦めします。コマンド評価モードでは、コマンドが実際に実行される前に、何も変更を加えずに特定コマンドの事前条件がテストされ、発生する可能性のある問題がレポートされ、それらが修正されます。

  • 独立オートマトン: Oracle Database 18cより以前は、Oracleフリート・パッチ適用およびプロビジョニング操作(データベース・ホームを新しいバージョンに切り替えるなど)を実行するには、セントラルOracleフリート・パッチ適用およびプロビジョニング・サーバーが必要でした。Oracle Database 18c以降は、アーキテクチャ内にセントラルOracleフリート・パッチ適用およびプロビジョニング・サーバーがなくても、主な機能は独立して実行できます。

グローバル・フリートの標準化および管理

  • ピアOracleフリート・パッチ適用およびプロビジョニング・サーバー間でのゴールド・イメージの共有: 大企業は、通常、複数のデータ・センターをホストし、各データ・センター内には、分離されたネットワーク・セグメントが存在する場合があります。Oracleフリート・パッチ適用およびプロビジョニング・アーキテクチャでは、特定のデータ・センター(またはデータ・センターのネットワーク・セグメント)内の一連のターゲットに対して1つのOracleフリート・パッチ適用およびプロビジョニング・サーバーが実行されます。このため、各データ・センターに少なくとも1つのOracleフリート・パッチ適用およびプロビジョニング・サーバーが必要です。

    各データ・センターには、ターゲット・サーバーが使用するゴールド・イメージに関して固有の要件が存在する場合もありますが、標準化の目標は、可能な場合は常に、すべてのデータ・センター間で同一のゴールド・イメージを使用することです。そのために、複数のOracleフリート・パッチ適用およびプロビジョニング・サーバー間でゴールド・イメージを簡単に伝播できるように、Oracleフリート・パッチ適用およびプロビジョニングではゴールド・イメージのピア・ツー・ピア共有がサポートされています。

  • ゴールド・イメージ・ドリフトの検出および集約: ゴールド・イメージからソフトウェア・ホームをプロビジョニングした後、デプロイされたホームにパッチを直接適用することが必要な場合があります。この時点で、デプロイされたホームはゴールド・イメージからドリフトしています。Oracleフリート・パッチ適用およびプロビジョニングには、ドリフトを監視およびレポートする次の2つの機能が提供されています。
    • Oracleフリート・パッチ適用およびプロビジョニングでは、特定のホームとその親のゴールド・イメージが比較され、ホームに適用され、ゴールド・イメージに適用されていないパッチがリストされます。

    • Oracleフリート・パッチ適用およびプロビジョニングでは、特定のゴールド・イメージとそのすべての子孫のホームが比較され、それらのホームに適用され、ゴールド・イメージに適用されていないすべてのパッチの集約がリストされます。これにより、元のゴールド・イメージのすべての子孫に適用できる新規ゴールド・イメージのビルド仕様が得られ、それらのデプロイメントのどこからもパッチが失われないようにします。

    関連項目:

  • 構成の収集およびレポート: Oracleフリート・パッチ適用およびプロビジョニング・サーバーは、指定されたOracleフリート・パッチ適用およびプロビジョニング・クライアントのオペレーティング・システムの構成とルート・ファイル・システムの内容を収集し、保持できます。Oracleフリート・パッチ適用およびプロビジョニング・クライアント・ノードが使用不可として表示されている場合(たとえば、ユーザーがオペレーティング・システムの構成やルート・ファイル・システムを誤って削除または変更した場合など)、問題の特定および修正が困難な場合があります。この機能により、関連する情報の収集が自動化され、ノード障害が発生した場合に簡単なリストアを行うことができます。

柔軟性と拡張性

  • RESTful API: Oracleフリート・パッチ適用およびプロビジョニング、パッチ適用、アップグレード、問合せ操作など、多くの一般的な操作のためのRESTful APIを提供します。
  • カスタマイズ可能な認証: 特にコンプライアンスに配慮する業界(金融、電子商取引など)では、特定環境のホスト対ホスト認証で、Oracleフリート・パッチ適用およびプロビジョニングがネイティブでサポートされていないテクノロジおよび製品が多く使用されます。この機能により、Oracleフリート・パッチ適用およびプロビジョニング認証とデータ・センターで使用されているメカニズムを統合できます。

  • コマンド・スケジューラ: 自動タスクをスケジュールおよびバンドルする機能は、大規模なデータベース資産の保守に非常に重要です。Oracleフリート・パッチ適用およびプロビジョニングでは、ソフトウェア・ホームのプロビジョニング、新しいホームへの切替え、クラスタのスケーリングなどのタスクのスケジューリングがサポートされます。また、コマンドにクライアントのリストを追加して、大規模な操作を容易にすることができます。

  • 構成可能な接続: 多くの企業では、セキュリティ上の問題やコンプライアンス要件が増えるにつれて、イントラネットに関する接続の制限事項も増えます。Oracleフリート・パッチ適用およびプロビジョニング・サーバーとそのクライアント間の通信に使用される小規模なポート・セットを構成することで、ファイアウォールや監査対象環境への影響を低減できます。

その他のOracleフリート・パッチ適用およびプロビジョニング機能

  • 停止時間0のアップグレード: 関連するすべてのアップグレード・ステップの自動化により、Oracle Databaseのアップグレード時のアプリケーションの停止時間が最小化、さらには解消されます。また、リソース要件も最小化され、アップグレードをロールバックする必要がある場合にはフォールバック・パスが提供されます。停止時間0のアップグレードは、Oracle RACおよびOracle RAC One Nodeデータベースの特定バージョンに対して実行できます。

  • 新しいサーバー・プールのプロビジョニング: Oracle Fleet Patching and Provisioningサーバーでは、Oracleソフトウェア・インベントリのないノードにOracle Grid Infrastructureをインストールし、構成することで、完全なOracle Fleet Patching and Provisioningの機能を使用してそれらのデプロイメントを管理できます。

  • ソフトウェア・ホームのプロビジョニングおよび管理: Oracleフリート・パッチ適用およびプロビジョニングにより、あらゆるソフトウェア・ホームからゴールド・イメージを作成できます。その後、そのソフトウェアをゴールド・イメージの作業用コピーとして任意のOracleフリート・パッチ適用およびプロビジョニング・クライアントまたはターゲットにプロビジョニングできます。ソフトウェアは、Oracleフリート・パッチ適用およびプロビジョニング・クライアントで実行するバイナリか、またはターゲットで実行するバイナリです。

  • Oracle Grid Infrastructureのプロビジョニング、スケーリング、パッチ適用、およびアップグレード: Oracleフリート・パッチ適用およびプロビジョニング・サーバーでは、Oracle Grid Infrastructure 11g リリース2 (11.2.0.4)ホームのプロビジョニング、Oracle Grid Infrastructure構成に対するノードの追加または削除を実行でき、また、Oracle Grid Infrastructureホームのパッチ適用およびアップグレードにも使用できます。また、失敗したパッチ適用手順を簡単に元に戻すことができるロールバック機能も存在します。Oracle Grid Infrastructureのパッチ適用中に、必要に応じてOracleフリート・パッチ適用およびプロビジョニングを使用して、クラスタ上でホストされる任意のデータベース・ホームにパッチを適用できます。

  • Oracle Databaseのプロビジョニング、スケーリング、パッチ適用、およびアップグレード: Oracle Fleet Patching and Provisioningを使用でき、Oracle Database 11gリリース2 (11.2.0.4)以降のリリースのプロビジョニング、スケーリング、およびパッチ適用が可能です。また、Oracle Databaseを、11gリリース2 (11.2.0.4)、12cリリース1 (12.1.0.2)、12cリリース2 (12.2)および18cからOracle Database 19cにアップグレードできます。

    このようなソフトウェアをプロビジョニングするとき、Oracleフリート・パッチ適用およびプロビジョニングによって、多様なタイプのデータベース(Oracle RAC、シングル・インスタンス、Oracle Real Application Clusters One Node (Oracle RAC One Node)データベースなど)をタイプの異なる記憶域に作成する追加機能や、その他のテンプレートの使用やコンテナ・データベース(CDB)の作成などのオプションが提供されます。Oracleフリート・パッチ適用およびプロビジョニング・サーバーにより、Oracle RAC構成へのノードの追加およびOracle RAC構成からのノードの削除を実行できます。また、Oracleフリート・パッチ適用およびプロビジョニングにより、データベース・ソフトウェアへのパッチ適用が改善され、効率がよくなります。このため、ソフトウェアのリモートでの高速パッチ適用が可能になり、ほとんどのケースでデータベースの停止時間が発生しません。

  • 単一インスタンス・データベースのサポート: Oracleフリート・パッチ適用およびプロビジョニングを使用して、クラスタ、Oracle Restartまたは単一のスタンドアロン・ノードで実行される単一インスタンス・データベースのプロビジョニング、パッチ適用およびアップグレードを実行できます。

  • 拡張パッチ適用機能: Oracle Grid InfrastructureまたはOracle Databaseホームにパッチを適用する場合、Oracle Fleet Patching and Provisioningでは、クラスタの一部またはすべてのノードに順次ではなくパラレルまたは特定のノード順にパッチを適用することで、パッチ適用プロセスを高速化するバッチ・モードが提供されます。

    Oracle Databaseホームに対して、非結合のノードのセットを定義できます。ノードの各セットは順次更新されます。それ自体で実行されるデータベース・インスタンスへの参照を含むセットを定義することで、サービス全体がオフラインになることがなくなり、ローリング更新の影響を最小化できます。この目的のために、バッチ・セットの定義に役立つsmartmoveオプションを使用できます。

    もう1つの拡張機能はアプリケーションの継続性との統合で、メンテナンスの影響の解消に役立ちます。これにより、クラスタ内でサービスを正常にドレインおよび再配置して、ユーザーに対してメンテナンスを完全に隠すことができます。

  • 通知: Oracleフリート・パッチ適用およびプロビジョニング・サーバーは、データ・センターで使用できるソフトウェア・ホームの中央リポジトリです。そのため、データ・センター全体の管理者が、自身の担当する領域に影響する可能性があるインベントリへの変更を把握する必要があります。

    Oracleフリート・パッチ適用およびプロビジョニングにより、各ユーザーがイメージ・シリーズ・イベントにサブスクライブできます。サブスクライバには、特定のイメージ・シリーズの使用可能なイメージに対する変更が電子メールで通知されます。また、クライアントでゴールド・イメージの作業用コピーが追加または削除されたときに、ユーザーに電子メールで通知できます。

  • カスタム・ワークフロー・サポート: イメージのインポート、ゴールド・イメージの作業用コピーの追加または削除、ソフトウェア・ホームの管理など、様々なOracleフリート・パッチ適用およびプロビジョニング操作のアクションを作成できます。操作ごとに異なるアクションを定義して、操作が適用されるイメージのタイプでさらに区別できます。定義するアクションは、特定の操作の前後で実行でき、操作が適用されるデプロイメント(Oracleフリート・パッチ適用およびプロビジョニング・サーバー、Oracleフリート・パッチ適用およびプロビジョニング・クライアントを実行していないターゲット、またはOracleフリート・パッチ適用およびプロビジョニング・クライアントを実行しているターゲット)で実行されます。

  • 失敗した操作の再開: イメージの追加、ゴールド・イメージの作業用コピーのプロビジョニング、あるいはスケーリング、パッチ適用またはアップグレードの実行などの操作が失敗した場合、Oracleフリート・パッチ適用およびプロビジョニングでエラーがレポートされて停止します。問題が解決した(たとえば、ターゲット・ノードのディレクトリの権限または所有権の構成ミスなど)後で、失敗したRHPCTLコマンドを再度実行して、失敗したところから再開できます。これにより、失敗の前に完了した作業を再度実行する必要がなくなります。

  • 監査コマンド: Oracleフリート・パッチ適用およびプロビジョニング・サーバーは、Oracleフリート・パッチ適用およびプロビジョニング操作すべての実行を記録し、その結果(成功または失敗)も記録します。監査メカニズムにより、様々なディメンションで監査ログを問い合せることができ、さらにその内容とサイズを管理できます。