A Oracle WebLogic Server 10.3.6から12.2.1.4へのクイック・スタート・アップグレード
この付録では、スタンドアロンのWebLogic Server 10.3.6単一サーバー・ドメインを12.2.1.4と互換性を持つようにアップグレードするステップの概要を示します。
このクイック・スタート・アップグレードは、Oracle WebLogic Server 10.3.6アプリケーションのOracle WebLogic Server 12.2.1.4へのアップグレードを評価するためのものです。このアップグレードの実行の詳細は、このガイドの前の章を参照してください。
背景
WebLogic Server 10.3.6は幅広く採用されているWebLogic Serverのリリースで、長年にわたってユーザー要件を満たしています。しかし、現時点で、より新しいリリースのWebLogic Serverにアップグレードすることをお薦めします。
WebLogic Server 10.3.6からWebLogic Server 12.2.1.4にアップグレードすると、WebLogic Serverユーザーにとって特に大きな利点があります:
- RESTfulアプリケーションの追加サポート、JSON処理、注釈と依存関係インジェクションの使用、WebSocketサポート、Webサービスの改善、JPAの更新など、Java EE 7のサポート。
- KubernetesでWebLogic Serverアプリケーションを移行、デプロイ、監視および管理するための一連のツールを使用した、クラウド・ネイティブのKubernetes環境での実行のサポート。
- Mavenサポート、WebLogic Serverクラスタの自動スケーリング、RESTを使用したWebLogic Server構成の管理などの領域の新機能。これにより、アプリケーション開発ライフサイクル全体に対する広範な自動化およびDevOpsサポートが可能になります。
- WebLogic Serverクラスタおよびアプリケーションのスケーラビリティの向上(特にクラウド対応のユニキャスト・メッセージング・プロトコルを使用する場合)。
- アプリケーション・コンティニュイティ統合、ゼロ・ダウンタイム・パッチ適用、最大可用性アーキテクチャ・ソリューションなどの高可用性拡張機能。
- 更新された環境に対する動作保証。最新のオペレーティング・システム、JDK、データベース・バージョン、Webサーバーおよびロード・バランサとの統合が可能になり、ユーザーはこれらの更新された製品の利点を活用できます。
- 製品のメンテナンスを容易にする、標準のOracleインストールおよびパッチ適用テクノロジとの統合。
ノート:
前述の利点の多くは、既存のアプリケーションをアップグレードすることで利用でき、アプリケーションを変更する必要はありません。開発チームは、新しいAPIサポートを使用して、これらの既存のアプリケーションを拡張し、新しいアプリケーションを構築できます。変更の概要
アップグレードを開始する前に、WebLogic Serverに対するいくつかの重要な変更を確認します。
次のリストに、アップグレードを実行した場合にアプリケーションおよび構成に影響する可能性のある、Oracle WebLogic Server 10.3.6とOracle WebLogic Server 12.2.1.4の間の主な変更点を示します。これらの変更について理解しておく必要があります。
- Oracle WebLogic Server 10.3.6はJDK 6およびJDK 7で動作保証されているのに対し、Oracle WebLogic Server 12.2.1.4はJDK 8 (1.8.0_211+)で動作保証されています。Oracle WebLogic Server 10.3.6からOracle WebLogic Server 12.2.1.4にアップグレードするには、JDKをJDK 8にアップグレードする必要があります。
使用可能な最新のJDK 8アップグレード・レベルにアップグレードすることをお薦めします。詳細は、JDK 8とServer JRE 8の動作保証に関する項を参照してください。
- Oracle WebLogic Server 12.2.1.4では、Oracle WebLogic Server 10.3.6で使用されていたインストーラ・テクノロジがOracle Universal Installer (OUI)テクノロジに置き換えられています。
- Oracle OPatchは、Oracle WebLogic Server 10.3.6で使用されていたBEA Smart Update (BSU)パッチ適用テクノロジにかわるものです。Oracle WebLogic Server 10.3.6環境用に作成したインストールおよびパッチ適用の自動化を、Oracle WebLogic Server 12.2.1.4で使用される新しいインストールおよびパッチ適用テクノロジに適応するように変更する必要があります。
- Oracle再構成ウィザードは、WebLogicアップグレード・ウィザードにかわるものです。再構成ウィザードは、WebLogic Server 12.2.1.4と互換性を持つように既存の10.3.6ドメイン・ホームを変更します。
- 再構成ウィザードでは、WebLogicアップグレード・ウィザードのように、アップグレードするドメインは自動的にはバックアップされません。ドメインをアップグレードする前に、ドメイン・ディレクトリを手動でバックアップする必要があります。アップグレード中に問題が発生した場合は、バックアップからシステムをリストアする必要があります。プロセスの開始後、ロールバック・オプションはありません。
- デフォルトのノード・マネージャ構成がホストごとからドメインごとに変更されました。ドメインごとの構成では、特定のマシン上の複数のドメインが、異なるノード・マネージャ構成を持つことができます。
ホストごとのノード・マネージャ構成の使用を続行する場合、ドメインの再構成の後で、「ノード・マネージャ構成の完了」の説明に従って、ノード・マネージャを手動で再構成する必要があります。
変更点の完全なリストは、『Oracle WebLogic Serverの新機能』を参照してください。
既知の問題と回避方法
アップグレード中に発生するいくつかの一般的な問題とその解決方法について説明します。
アップグレード時に最もよく言及される問題のいくつかを便宜上次に示します。問題の完全なリストは、『Oracle WebLogic Server リリース・ノート12.2.1.4.0』の既知の問題および回避策に関する項を参照してください。
- JDK 8でのMetaspaceSizeの使用
JDK 8のクラス・メタデータに使用できるネイティブ・メモリーの容量はデフォルトで無制限です。パフォーマンスを最大化するには、オプションMetaspaceSizeを使用して、クラス・メタデータに使用するネイティブ・メモリーの容量に上限を設定します。
JDK 8のチューニングに関する考慮事項の詳細は、『Java Platform, Standard Edition HotSpot仮想マシン・ガベージ・コレクション・チューニング・ガイド』のクラス・メタデータに関する項を参照してください。
- アップグレード後のカスタム起動スクリプトの再適用
再構成ウィザードを使用してこの評価アップグレードを実行すると、再構成ウィザードによって、Oracle WebLogic Server 12.2.1.4にアップグレードされたドメインの新しい起動スクリプトが作成されます。これらの起動スクリプトは、再構成ウィザードを使用してドメインをアップグレードしたときにインストールおよび参照した新しいJDK 8バージョンを参照します。
Oracle WebLogic Server 10.3.6ドメインの起動スクリプトに対するカスタマイズは、アップグレードされたドメイン用に生成された起動スクリプトには存在しません。場合によっては、Oracle WebLogic Server 10.3.6ドメインの起動スクリプトに適用されたカスタマイズを再適用する必要があります。
ノート:
JDK 6/7の起動スクリプトにPermSizeおよびMaxPermSize JVM引数を追加していた場合、これらの引数を新しい起動スクリプトに追加する必要はありません。前述のように、MetaspaceSize引数を使用してネイティブ・メモリーの上限を設定します。 - サーバーが警告状態になる原因となるスレッド・デッドロックの検出
この問題を解決するには、パッチ30965440を適用してサーバーを再起動します。weblogic.wsee.jaxws.spi.ClientIdentityRegistry
のスタック・スレッドが原因で、管理対象サーバーが警告状態になり、Deadlock Detected
エラー・メッセージが表示されます。 - JSPファイルのサイズの制限
Java仮想マシン(JVM)では、アップグレード後のJavaメソッドごとにコードの量が65536バイトに制限されます。したがって、Oracle WebLogic Server 12.2.1.4.0へのアップグレード後にアプリケーションを再デプロイする際に、JSPファイルに埋め込まれているスクリプトレットが多すぎると、コンパイラはコードの最適化に失敗し、デプロイメントがCompilationExceptionで失敗します。
最小限のスクリプトレットでJSPファイルのサイズを小さくし、アプリケーションを再デプロイしてください。 - Apache Commons FileUpload jarファイルへの変更
WebLogic ServerにバンドルされているApache Commons FileUpload jarファイルのJavaクラス
org.apache.commons.fileupload.disk.DiskFileItem
は、潜在的なセキュリティ脆弱性を防ぐためにjava.io.Serializableを実装しなくなりました。Weblogic.xmlでのフィルタリング・クラス・ローダーの構成方法(Doc ID 1163020.1)を参照してください。
- アプリケーションで非推奨になったAPIまたは削除されたAPIが使用されている場合は、アプリケーションが再コンパイルされていないと、実行時に警告または例外が発生するおそれがあります。非推奨になった機能の完全なリストは、非推奨の機能(Oracle WebLogic Server 12c 12.2.1.x)を参照してください
システム構成の検証
JDK、オペレーティング・システム、データベースおよびその他の構成が、12.2.1.4の最小動作保証要件を満たしていることを確認します。
カテゴリ | 最小要件 |
---|---|
JDK 8 | 1.8.0_211+ |
オペレーティング・システム |
Oracle Linux 6+、7または8 Red Hat Enterprise Linux 6+、7または8 SLES 11 SP3+またはSLES 12 SP1+ Microsoft Windows Server 2012、2012R2、2016または2019 Oracle Solaris 11.2+ HP-UX Itanium 12+ IBM AIX on POWER Systems 7.1+ |
データベース |
IBM DB2 10.1 FP6+ IBM DB2 10.5 FP9+ IBM DB2 11.1 FP2+ Microsoft SQL Server 2012, SP4+ Microsoft SQL Server 2014, SP2+ Microsoft SQL Server 2016, SP1+ Microsoft SQL Server 2017 Microsoft SQL Server 2019 MySQL Database Server 5.7+または8.0 Oracle Database 11.2.0.4+ Oracle Database 12.1.0.1+ Oracle Database 12.2.0.1.0 Oracle Database 18c Oracle Database 19c Oracle Database 19c Autonomous Sybase Adaptive Server Enterprise 15.7 |
Webサーバー |
Apache HTTP Server 2.4.4+ Microsoft Internet Information Services 8.5+ |
ブラウザ |
Microsoft Internet Explorer 11.* Google Chrome 84+ Mozilla Firefox 79+ Apple Safari 11+ |
ノート:
前述の表に反映されていない新しい動作保証が導入されている場合があります。また、表の一部のテクノロジは、テクノロジ・ベンダーによってサポートされなくなっている可能性があります。該当するベンダーのドキュメントを参照してください。
既存のドメインのバックアップの作成
アップグレードの前に、既存のドメインの完全なバックアップを作成し、ファイルを安全な場所にコピーする必要があります。
カスタマイズされた起動スクリプトがバックアップに含まれていることを確認します。前述のように、アップグレードされたドメイン用に作成された起動スクリプトにこれらのカスタマイズを再適用する必要がある場合があります。
このアップグレード評価では、ドメイン・バックアップ・ファイルを使用して、クローニングされた10.3.6ドメイン環境を作成します。クローニングされた環境でアップグレードを実行します。
ノート:
プロセスの開始後にアップグレードをロールバックすることはできません。バックアップ・ファイルからシステムをリストアする必要があります。
Oracle WebLogic Server 12c (12.2.1.4)のダウンロード
Oracle Software Delivery CloudまたはOracle Technical Resourcesからインストーラ・パッケージをダウンロードします。
商用ライセンスがすでにある場合は、Oracle Software Delivery Cloud (https://edelivery.oracle.com)からソフトウェアをダウンロードする必要があります。
- Oracle Software Delivery Cloudポータルにサインインします。
- 「カテゴリ」ドロップダウン・メニューから「パッケージのダウンロード」を選択します。
- 次を入力します
「検索」をクリックします。WebLogic Server 12c
- 「Oracle WebLogicServer 12.2.1.4.0 (Weblogic Server12c)」を選択して、パッケージをダウンロード・キューに追加します。
- 「続行」(右上隅)をクリックして、インストールする製品を選択します。
- 各製品のプラットフォームを指定し、「続行」をクリックして、利用規約を受け入れます。
- 「続行」をクリックして、製品のリストを確認します。
- 「ダウンロード」(右下隅)をクリックして、ダウンロード・プロセスを開始します。
開発者および本番環境のダウンロードは、Oracle Technical Resources (以前のOracle Technology Network) (https://www.oracle.com/middleware/technologies/weblogic-server-downloads.html)からも入手できます
- 汎用インストーラ(579MB)
ほとんどの本番デプロイメントに推奨されるインストーラ。
- Mac OSX、WindowsおよびLinux用クイック・インストーラ(225MB)
Oracle WebLogic ServerおよびOracle Coherence開発専用。
- スリム・インストーラ(182MB)
スリム・インストーラには、サンプル、WebLogic Server管理コンソール、WebLogicクライアント、MavenプラグインやJava DBは含まれていません。
Oracle WebLogic Server 12c (12.2.1.4)のインストール
Oracle Universal Installerを使用して、12.2.1.4を新しいMiddlewareホームにインストールします。
ここから項目が開始します。
-
次を実行してインストール・プログラムを起動します
(システムのJDK 8ディレクトリから)。ダウンロードしたインストーラのフルネームを指定します。たとえば:java -jar
$ ORACLE_HOME/jdk/jdk1.8.0_211/bin/java -jar fmw_12.2.1.4.0_wls_lite_generic.jar
- インストールが完了したら、構成ウィザードを自動的に起動するオプションの選択を解除します。新しい12.2.1.4ドメインを構成する必要はありません。
Oracle Universal Installerの使用の詳細は、『Oracle WebLogic ServerおよびCoherenceのインストールと構成』のインストール・プログラムの起動に関する項を参照してください。
Oracle WebLogic Server 10.3.6ドメインのアップグレード
再構成ウィザードを使用して、12.2.1.4と互換性を持つようにWebLogic Server 10.3.6ドメインをアップグレードします。
アップグレード後も10.3.6ドメイン・ホームは引き続き使用されますが、WebLogic Serverのバージョンは12.2.1.4に更新されます。
-
12.2.1.4 Middlewareホーム・ディレクトリから再構成ウィザードを起動します。
$ MW_HOME/wls12.2.1.4/oracle_common/common/bin/ reconfig.sh
- 10.3.6ドメインのクローン・バージョンがあるドメイン・ディレクトリを選択します。10.3.6ドメインはインプレースでアップグレードされ、アップグレードのこのフェーズで上書きされます。
- 指示に従って画面を進みます。
- アップグレードが完了したら、10.3.6 Middlewareホーム・ディレクトリからWebLogic Serverを再起動します。起動スクリプトによる管理サーバーの起動を参照してください
$ MW_HOME/user_projects/domains/<1036_domain> startWebLogic.sh
以前の環境でカスタマイズした起動スクリプトを使用していた場合は、「カスタム起動スクリプト」の説明に従って、アップグレード後にカスタマイズを再適用する必要があります。
新規ドメインへのアプリケーションのデプロイ
通常、WebLogic Serverアプリケーションは、修正を加えることなくWebLogic Server 12.2.1.4.0の新たなアプリケーション環境で動作します。
実際の環境においてアプリケーションが機能変更の影響を受けるかどうかを判断するには、「WebLogic Server 12.2.1.4.0の旧リリースとの互換性」で互換性情報を確認してください。
セキュリティ構成の確認
アップグレード後に、新しい最小要件を満たすようにWebLogic Serverセキュリティを構成する必要がある場合があります。
SSLおよびTLSサポート
SSL接続で有効なSSLとTLSの最低サポート・バージョンを制限するようにWebLogic Serverを構成する必要がある場合があります。本番環境ではTLS V1.2以降を使用することをお薦めします。
詳細は、『Oracle WebLogic Serverセキュリティの管理』のセキュリティ標準に関する項を参照してください:
SSL証明書の検証
WebLogic Server 10.3.6で正常に動作していたSSL通信が予期せず失敗し始める場合は、証明書検証に関する問題のトラブルシューティングに関する項を参照してください。アップグレード後にSSL証明書を更新または置換する必要がある場合があります。
Oracle WebLogic Serverで構成されている期限の切れた、または期限の切れるSSL証明書の更新の詳細は、『Oracle WebLogic Serverセキュリティの管理』のSSL証明書の検証に関する項を参照してください。
WebLogicドメインのRDBMSセキュリティ・ストア
WebLogicドメインでRDBMSセキュリティ・ストアを使用する場合は、RDBMSセキュリティ・ストアが構成された新しいドメインを作成すること推奨します。RDBMSセキュリティ・ストアを使用するドメインが作成済であっても、新しいドメインを作成し、そのドメインに既存のセキュリティ・レルムを移行してください。既存のドメインにはRDBMSセキュリティ・ストアを組み込まないでください。
詳細は、『Oracle WebLogic Serverのセキュリティの管理』のRDBMSセキュリティ・ストアの管理に関する項を参照してください。
新しいドメインで使用されるAES 256ビットの暗号化
再構成ウィザードを使用してWebLogic Server 10.3.6ドメインを12.2.1.4にアップグレードすると、アップグレードされた12.2.1.4ドメインでは、ソース10.3.6ドメインに使用されているのと同じAES 128ビット暗号化が使用されます。ただし、新しく作成されたWebLogic Server 12.2.1.4ドメインはAES 256ビット暗号化を使用して作成されます。これはAES 128ビット暗号化よりも安全であり、本番環境で推奨されます。
再構成ウィザードを使用して単一サーバー・ドメインのアップグレードを検証した後、およびアップグレードしたドメインでアプリケーションが正しく実行されていることを検証した後、AES 256ビット暗号化を使用して12.2.1.4本番ドメインを作成することをお薦めします。これを行うには、たとえば、ドメイン・テンプレート・ビルダーを使用して、アップグレードしたドメインからドメイン・テンプレートを作成し、構成ウィザードまたはWLSTオフラインを使用してAES 256ビット暗号化で新しいドメインを作成します。
証明書チェーン(非推奨)
ファイル・ベースの証明書チェーンの使用は非推奨になりました。現在のリリースのWebLogic Serverでは、証明書チェーン全体がキーストアにインポートされます。
詳細は、「WebLogic Serverでのキーストアの構成」を参照してください。
互換性セキュリティ(非推奨)
10.3.6ドメインで互換性セキュリティが使用されていないことを確認します。
12.2.1.4でのセキュリティ変更の詳細は、WebLogic Server 12.2.1.4のセキュリティの構成に関する項を参照してください。