Oracle Business Intelligence Discoverer 管理ガイド 10gリリース2(10.1.2.1) B25101-01 |
|
この章では、リレーショナル・データソースを使用するOracle Business Intelligence Discovererの管理の概要を説明します。項目は次のとおりです。
リレーショナル・データソースとは、データ値を含む行と列で作成されるテーブルにデータが格納されているデータベースです。リレーショナル・データベース管理システム(RDBMS)の全体的な構造は、システムの使用方法に応じて何通りもの方法で設定できます。
典型的なRDBMSはオンライン・トランザクション処理(OLTP)用に設計されており、膨大な量のトランザクション・データをできるかぎり効率的な方法で格納することを主な目的としています。OLTPシステム設計における主な目的は、データをRDBMSに格納することです。OLTPシステムには、ビジネスで日常的に使用される情報が含まれています。OLTPシステム用に設計されたRDBMSの情報は、一般的に処理に重点が置かれ、現在のデータであり、変更しやすいという性質を持ちます。
データ・ウェアハウスとは、単に情報を効率的に格納するだけでなく、データ分析を容易にする目的で設計された構造を持つRDBMSのことです。データ・ウェアハウス設計における主な目的は、データをRDBMSから取り出すことです。データ・ウェアハウスの情報は、一般的に目的に重点が置かれ、過去のデータであり、静的であるという性質を持ちます。
Oracle Business Intelligence Discovererは、RDBMSがOLTPシステム用に設計されたのか、データ・ウェアハウスとして設計されたのかにかかわらず、ビジネス・ユーザーにデータ分析機能を提供します。
Oracle Business Intelligence Discoverer Administratorは、Oracle Business Intelligence Discovererのコンポーネントの1つです。
Discoverer Administratorにより、ビジネス・ユーザーはデータソースの複雑な概念から解放されるため、Oracle Business Intelligence Discovererを使用してビジネス上の疑問に迅速かつ的確に対応できます。
Discoverer Administratorのウィザード形式インタフェースでは、次の操作を実行できます。
EULとは、データベースの他のテーブルおよびビューに関する情報(つまりメタデータ)を含む一連のデータベース・テーブルです。詳細は、「End User Layerの概要」を参照してください。
Discoverer Administratorのユーザーは、Discovererマネージャと呼ばれます。
Discoverer Administratorは、ビジネス・インテリジェンス・ツールの集まりであるOracle Business Intelligence Toolsの一部として提供されます。
リレーショナル・データソースを使用する場合は、Discovererシステムを設計および実装する前に、Discovererに関するいくつかの基本的な概念をよく理解しておく必要があります。
これ以降の項では、これらの基本概念について簡単に説明します。
各項の内容は簡単な説明のみですが、マニュアル内の他の章への相互参照が含まれているため詳細を参照できます。
End User Layer(EUL)は、Discovererエンド・ユーザーをデータベースの複雑性と物理構造から解放します。EULでは、各Discovererエンド・ユーザーまたはユーザー・グループに合せて調整できる、直観的でビジネスに焦点が合ったデータベースのビューが提供されます。EULを使用すると、Discovererエンド・ユーザーはデータ・アクセスの問題ではなくビジネスの問題に集中できます。Discovererエンド・ユーザーのクエリー作成はSQLの生成によって補完され、一連の豊富なデフォルト設定を使用することよってレポートを簡単に作成できます。
EULのメタレイヤー構造によって、データベースのデータ整合性が保持されます。DiscovererマネージャまたはDiscovererエンド・ユーザーがDiscovererに対して行う操作はEULのメタデータにのみ影響し、データベースには影響しません。
EULは、データベースのおよそ50のテーブルのコレクションです。Discoverer Administratorを介して変更可能なテーブルは、これらのテーブルのみです。ビジネスエリアは、EULデータベース・テーブルを使用してDiscoverer Administratorで定義されます。また、Discovererではアプリケーション・データベースに読取り専用アクセスが提供されます。
EULの詳細は、第4章「End User Layerの作成とメンテナンス」を参照してください。
一般的に、データベースのすべての情報に関心を持つユーザー(またはユーザー・グループ)はいません。むしろ、ユーザーは各自の行うジョブになんらかの関係がある情報のサブセットに関心を持つ傾向があります。そのような場合、Discoverer Administratorを使用して関連情報のコンテナとして1つ以上のビジネスエリアを作成します。
ビジネスエリアを作成したら、関連情報を含むデータベース・テーブルをそのビジネスエリアにロードします。
ビジネスエリアの詳細は、第5章「ビジネスエリアの作成とメンテナンス」を参照してください。
ビジネスエリアにロードするテーブルおよびビューは、フォルダとしてDiscovererエンド・ユーザーに表示されます。テーブルまたはビュー内の列は、アイテムとして表示されます。
データベース・テーブルと列には、ユーザーにとってわかりにくい名前が付いている場合があります。Discoverer Administratorを使用すると、フォルダおよびアイテムの名前を、基礎となるテーブルと列の名前に比べてよりわかりやすい名前に変更できます。
ビジネスエリアのフォルダは、データベース・テーブルまたはビューに直接基づいている必要はありません。また、複数のテーブルまたはビューの列に基づくアイテムを含んだ複合フォルダを作成できます。さらに、自分で作成したSQL文に基づくカスタム・フォルダも作成できます。
同様に、ビジネスエリアのアイテムは列に直接基づいている必要はありません。複数の列を計算して生成されるユーザー定義アイテムや、Oracleデータベースで利用できる分析関数を利用するユーザー定義アイテムを作成できます。
フォルダおよびアイテムの詳細は、次の項目を参照してください。
Oracle Business Intelligence Discovererエンド・ユーザーは、アイテムをワークシートに挿入してDiscovererのデータ分析およびチャート作成ウィザードを使用することで情報を分析し、関心のある情報を検索します。Discovererワークシートは、ワークブックにグループ化されます。ワークブックは、ファイル・システムまたはデータベースに格納できます。
Discovererエンド・ユーザーに対して、作成されたワークシートの情報分析のみを許可する場合があります。または、エンド・ユーザーによるワークシートの作成を許可した方が適切な場合もあります。Discoverer Administratorでは、各自のワークブックを作成できるエンド・ユーザーと、作成されたワークブックの使用のみを許可されたエンド・ユーザーを決定できます。
ワークブックとワークシートの詳細は、『Oracle Business Intelligence Discoverer Plusユーザーズ・ガイド』を参照してください。
階層とは、エンド・ユーザーがドリルアップまたはドリルダウンして詳細度に応じた情報を表示できるアイテム間の論理関係です。Discovererエンド・ユーザーは、効率的に情報を分析するために次の操作を行います。
ビジネスエリアにテーブルをロードすると、Discovererによって日付アイテムのデフォルト日付階層が自動的に作成されます。他のアイテムに対して独自の階層を作成する場合もあります。
階層の詳細は、第13章「階層の作成とメンテナンス」を参照してください。
サマリー・フォルダは、再利用のために保存されたクエリー済データを表します。
Discoverer Administratorでサマリー・フォルダを作成すると、エンド・ユーザーのクエリーに対するレスポンス時間が短縮されます。クエリーのレスポンス時間が短縮されるのは、クエリーがデータベース・テーブルではなく、事前に集計および結合されたデータにアクセスするためです。また、Discovererでは、他のアプリケーションで作成されたサマリー・データを含むテーブルに基づくサマリー・フォルダを使用できます。これらのテーブルは、外部サマリー・テーブルと呼ばれます。
サマリー・フォルダの詳細は、次の章を参照してください。
Discovererマネージャには、次の操作に対する責任があります。
次のフロー・チャートに示すように、リレーショナル・データソースを使用するDiscovererシステムの実装には基本的に6つの手順があります。
これら6つの手順の詳細を説明します。
Discovererの実装を成功させるには、ユーザーの要件を満たす必要があります。ユーザー要件を特定するには、主なユーザーに次の項目について質問します。
まず、ユーザーが現在使用しているレポートと情報ソースを検討します。Discovererを使用することで、ユーザーが現在使用している情報へのアクセスと、新しい強力な方法で情報を分析する機能の両方がユーザーに提供されます。
一般的に、ユーザーの要件は時間とともに変化します。システムがロールアウトされたあとで、ユーザーから大きな変更の要望が出されることがよくあります。Discovererで実行可能な作業が明確になれば、Discovererを他のどの領域で活用できるかを判断する材料になります。
要件が変更されることを予測して作業を行うようにしてください。正常なシステムでは、最初は要件の一部を満たし、その後ユーザーのフィードバックに基づいて時間とともに変更されていきます。
ビジネスエリアを作成するには、EULが必要です。EULが存在しない場合は、EULを作成する必要があります。
ユーザーの要件が識別されると、ユーザーがアクセスする必要のある情報を把握できます。たとえば、あるユーザー・グループは販売情報にアクセスし、他のグループは製造情報にアクセスするなどです。
Discovererで、共通のビジネス目的を持つ情報を1つのビジネスエリアにグループ化します。ビジネスエリアの作成後、その情報を保持するデータベース・テーブルおよびビューを指定する必要があります。これを行うには、テーブルおよびビューをそのビジネスエリアにロードします。
ユーザーがデータにアクセスして分析するには、ビジネスエリア設定および内容はデフォルトで十分です。ただし、Discoverer Administratorではデフォルトの分析機能を拡張する多くの機能が提供されます。
次の操作を実行できます。
ユーザーの要件が識別されると、どのユーザー(およびユーザー・グループ)がどの情報にアクセスする必要があるかを把握できます。
様々なユーザーが同じ情報へのアクセス権を必要とする場合があります。たとえば、ある従業員に関する情報を、その従業員のマネージャ、給与スタッフおよび人事管理部門のユーザーが要求することがあります。
また、1つのユーザー・グループのみが情報へのアクセス権を持つことが適切な場合もあります。たとえば、エンジニアリング・プロジェクトの情報はプロジェクト・マネージャにとっては重要ですが、給与スタッフには関係ありません。
ユーザーの情報に対する要件を考慮しながら、ユーザーにビジネスエリアへのアクセス権を付与できます。
Discovererユーザーが(エンド・ユーザーであるか管理者であるかにかかわらず)、基礎となるデータベースのセキュリティに影響を及ぼすことはありません。ユーザーは、Discovererの情報のうち、アクセス用のデータベース権限を持っていない情報は参照できません。つまり、Discovererのセキュリティと権限はすべて、データベース・セキュリティ機能に追加されたものです。
ユーザーの要件により、企業で使用可能なDiscovererコンポーネントが決定されます。
ユーザー要件を識別すると、各自でワークシートを作成する必要があるユーザーや、作成されたワークシートの使用のみを必要とするユーザーがいることがわかります。さらに、Webブラウザを使用してDiscovererを実行するユーザーと、Javaアプレット・ユーザー・インタフェースまたはHTMLユーザー・インタフェースを使用してDiscovererを実行するユーザーがいます。
次の表を参考にして、組織に配置するDiscovererコンポーネントを決定してください。
ネットワーク・パフォーマンスやセキュリティ問題など、決定内容に影響する要因は他にもあります。
配置するDiscovererコンポーネントを決定したら、固有のインストールまたは構成手順に関する適切なドキュメントを参照してください。詳細は、「関連ドキュメント」を参照してください。
リレーショナル・データソースを使用するDiscovererシステムの実装後は、ユーザー要件を満たすために継続的に行う必要があるDiscovererのメンテナンス作業量は減ります。
通常は、次の操作によってビジネスエリアを引き続き調整します。
前述の操作に加えて、ユーザーおよびそのユーザーがアクセス権を持つビジネスエリアの変更や、個々のユーザーがこれらのビジネスエリアで実行できる操作の変更が必要となる場合があります。たとえば、次のような場合です。
詳細は、第7章「情報に対するアクセス制御」を参照してください。
この項では、Oracle Business Intelligence Discoverer Administratorを使用するためのシステムおよびデータ・アクセスの前提条件について説明します。項目は次のとおりです。
Discoverer Administratorを使用する前に、次の前提条件が満たされている必要があります。
エンド・ユーザーがDiscovererを使用するには、次のいずれかまたは両方がインストールされている必要があります。
Discoverer Administratorを使用してDiscovererシステムを作成およびメンテナンスするには、特定のDiscoverer権限およびデータベース権限が必要です。
Discovererシステムを使用するには、エンド・ユーザーに特定のDiscoverer権限およびデータベース権限が必要です。
Discovererでは、データベースで使用可能な機能を利用するために様々なデータベース・パラメータが使用されます。予測した結果を得るには、データベース・パラメータを推奨値に設定する必要があります。データベース・パラメータの値は、Oracle DBMSの初期化ファイル(INIT<SID>.ORAファイル)で指定できます。たとえば、Discovererのサマリー管理機能とワークブック・スケジュール機能の両方で、Oracleデータベース固有のスケジュール機能が使用されます。job_queue_processesで指定する値により、両方の機能が影響を受けます。
次の表に、Discovererで使用されるデータベース・パラメータのうち、このガイドで参照されているものを示します。
値が設定されていない場合の結果 | データベース・パラメータ | 説明 | 推奨値 |
---|---|---|---|
スケジュール機能およびサマリー・フォルダを使用できない |
job_queue_processes |
ワークブック・スケジュール機能およびサマリー処理に関連します。詳細は、「ワークブックのスケジュールをサポートするOracleデータベースの機能」を参照してください。 |
1より大きい値 |
クエリー予測が提供されない |
timed_statistics |
クエリー予測の有効化に関連します。詳細は、「クエリー予測のためのtimed_statisticsパラメータの確認および変更方法」を参照してください。 |
TRUE |
クエリー予測が提供されない |
optimizer_mode |
クエリー予測の有効化に関連します。詳細は、「クエリー予測のためのoptimizer_modeパラメータの確認および変更方法」を参照してください。 |
CHOOSE |
クエリー速度の低下 |
optimizer_index_cost_adj |
コストベースのオプティマイザにおける索引の使用方法の調整に関連します。詳細は、Oracle10gのドキュメントを参照してください。 |
詳細は、データベース管理者に問い合せてください。 |
クエリー速度の低下 |
optimizer_index_caching |
コストベースのオプティマイザにおける索引の使用方法の調整に関連します。詳細は、Oracle10gのドキュメントを参照してください。 |
詳細は、データベース管理者に問い合せてください。 |
無効な接続文字列 |
global_names |
Generic Connectivityの設定に関連します。詳細は、「Oracle Application Server Controlを使用してDiscovererにGeneric Connectivityを設定する方法」を参照してください。 |
FALSE |
データベース障害時にデータベース・プロセスが代替のバックアップ・コンポーネントに再配置されない |
failover_mode |
透過アプリケーション・フェイルオーバーのサポートの有効化に関連します。詳細は、「Discovererで透過アプリケーション・フェイルオーバーのサポートを有効にする方法」を参照してください。 |
FAILOVER_MODE=<type><retries> |
データベース障害時にデータベース・プロセスが代替バックアップ・コンポーネントに再配置されない |
type |
failover_modeパラメータのサブパラメータです。詳細は、「Discovererで透過アプリケーション・フェイルオーバーのサポートを有効にする方法」を参照してください。 |
(TYPE=SELECT) |
データベース障害時にデータベース・プロセスが代替バックアップ・コンポーネントに再配置されない |
retries |
failover_modeパラメータのサブパラメータです。詳細は、「Discovererで透過アプリケーション・フェイルオーバーのサポートを有効にする方法」を参照してください。 |
(RETRIES=5) |
Discoverer Administratorを開始する手順は、次のとおりです。
次に表示されるプロンプトは、Discovererシステムによって異なります。
ワークエリアは、End User Layerへのビューです。ワークエリアで、次の項目を作成および編集してEULをメンテナンスします。
Discoverer Administratorのメイン・ウィンドウに「ワークエリア」ウィンドウが表示されます。一度に複数の「ワークエリア」ウィンドウを開くと、ビジネスエリア間でオブジェクトをコピーするときに便利です。ただし、すべての「ワークエリア」ウィンドウには同じビジネスエリアが含まれていることに注意してください。
「ワークエリア」ウィンドウには4つのタブがあります。
「データ」タブおよび表示されるアイコンの詳細は、「ワークエリア: 「データ」タブ」を参照してください。
「階層」タブの「表示」ボタンを使用すると、表示する階層を指定できます。
「階層」タブおよび表示されるアイコンの詳細は、「ワークエリア: 「データ」タブ」を参照してください。
「アイテム・クラス」タブの「表示」ボタンを使用すると、表示するアイテム・クラスを指定できます。
「アイテム・クラス」タブおよび表示されるアイコンの詳細は、「ワークエリア: 「データ」タブ」を参照してください。
「サマリー」タブおよび表示されるアイコンの詳細は、「ワークエリア: 「データ」タブ」を参照してください。
Discoverer Administratorでの作業中にマウスの右ボタンをクリックすると、ポップアップ・メニューが表示されます。「ワークエリア」ウィンドウでは、このポップアップ・メニューの内容は現在選択されているオブジェクトで最も頻繁に使用されるコマンドとなります。
現在選択されているオブジェクトがない場合、ポップアップ・メニューにはビジネスエリア全般における作業用のコマンドと、現行のタブに適したコマンドが表示されます。
Discoverer Administratorを初めて開始すると、Discoverer Administratorのメイン・ウィンドウ上部に「管理タスクリスト」が表示されます。
「管理タスクリスト」には、2通りの使用方法があります。
Discoverer Administratorリリース10.1.2には、次のような新機能と改善された機能が含まれています。
Discoverer Administratorでは、オンライン・ヘルプとドキュメントが提供されます。
Discoverer Administratorヘルプ・システムにより、HTML形式の管理ガイド情報を参照する状況依存アクセスが提供されます。
ヘルプ・システムを開始するには、「Discoverer」ダイアログの「ヘルプ」をクリックするか、「ヘルプ」→「トピックの検索」を選択します。
ヘルプ・システムでトピックを検索する手順は、次のとおりです。
管理ガイドをPDF形式で表示(および印刷)するには、Oracle Developer SuiteのドキュメントCDを使用してください。
ヒント: 語句を検索するには、PDFフォーマットの管理ガイドを使用します。
Discovererのその他の情報(ホワイト・ペーパー、ベスト・プラクティス、チュートリアルなど)は、Oracle Technology Network(www.oracle.com/technology)から入手できます。
|
Copyright © 1996, 2005 Oracle. All Rights Reserved. |
|