アクセシビリティに対応した設計

様々なユーザーが消費するコンテンツを作成する場合、障害を持つユーザーへのサポートを提供できるように設計する必要があります。

アクセシビリティ・サポートは、世界中のいたる所で法的要件となっています。

異なる障害を持つ様々なユーザーが消費するコンテンツを設計する際に使用できる一般的なガイドラインがいくつかあります。これらのガイドラインを、Oracle BI EEやその他のアプリケーション用に作成するコンテンツに適用します。Oracle BI EEに固有の機能にも注意し、作成するコンテンツがアクセシビリティ要件を必ずサポートするようにする必要があります。

この項には、アクセシビリティに対応した設計に関する次のトピックが含まれています:

一般的な情報の入手

アプリケーションについての情報は様々なドキュメントにあります。

IT産業におけるアクセシビリティに関する情報は、出版されている様々な書籍から得ることができます。このガイドでは、それらの情報を繰り返すつもりはありません。様々な規格や法律(特にWorld Wide Web Consortium(W3C)や米国リハビリテーション法第508条)がドキュメントになっています。

よくある誤解の回避

テクノロジとアクセシビリティについて特定の想定をしている設計者が多くいます。

よくある誤解には次のようなものがあります:

  • HTMLのコンテンツは自動的にアクセシブルなコンテンツになります。

  • アクセシブルなツールは自動的にアクセシブルなコンテンツを作成します。

  • 自動化されたテスティング・ツールは、アクセシビリティを確実に判断できます。

しかし、これらの想定はいずれも正しくありません。開発者は、HTMLを使用してアクセシブルでないコンテンツを作成できます。アクセシブルなコンテンツを生成できるツールがデフォルトではそのように動作しない場合もあれば、既存のアクセシブルなコンテンツ内でアクセシビリティ機能を無効にするオプションを開発者が選択できる場合もあります。自動化されたテスティング・ツールは、必ずしもエンド・ユーザーが行うのと同じようにコンテンツと対話するわけではありません。その結果、アクセシブルな要素をアクセシブルでないと誤ってレポートする可能性があります。したがって、アクセシビリティは、最終的にはコンテンツ設計者が責任を負います。コンテンツの作成時、設計者はよく行われる特定の操作に注意し、コンテンツがすべてのユーザーにアクセシブルであるようにします。

推奨されるベスト・プラクティスの踏襲

ダッシュボードを最も有効に使用するためには、次の基本ガイドラインに従ってください。

ダッシュボード・ページのコンテンツを構成または作成する場合、推奨される次のベスト・プラクティスについて考慮してください:

  • ティッカはサポートされていないため、使用を控えます。

  • ダッシュボードを保存する場合は、ユーザーがアクセスしやすい適切な場所に必ず保存してください。適切な場所の詳細は、他の名前と他の場所でのダッシュボードの保存を参照してください。

  • ページの双方向性と複雑性を減らします。たとえば、プロンプトやドロップダウン・メニューの数を制限したり、セクションのドリル・インライン機能の使用や多数の行を表示する表の構成を避けます。

アクセシブルなコンテンツに関する一般的なガイドラインの準拠

障害には様々なものがあるという事実および1人の人間が複数の障害を持っている場合があるという事実を常に考慮に入れてください。

様々な障害の程度(様々な色覚異常のタイプなど)があるということにも注意する必要があります。設計の際、これらの可能性をすべて考慮に入れる必要があります。

この項には、次の設計の一般的な分野に関するガイドラインが含まれます:

フォントの選択

表示に最適なフォントを選択すると、ユーザーが情報を理解するのに役立ちます。

視力の弱いユーザーは、多くの場合、画面拡大ソフトウェアを使用して画面を読み易くします。使用するフォントは、アクセシビリティ・ツールで20倍に拡大されても判読可能である必要があります。フォントには、拡大すると適切に表示されないものと、適切に表示されるものがあります。

Oracle BI EEのダッシュボードでは、スタイル・シートを使用して標準的な表示定義を設定します。これらのスタイル・シートで、適切に拡大されるフォントが常に選択されているようにします。そのようにすると、コンテンツの作成者によって、アクセス可能なフォントを使用するよう自動的にデフォルト設定されます。

色の選択

色覚欠損のユーザーがデータを正しく解釈できるよう、データ出力の色を慎重に選択します。

色覚異常には、赤と緑などのような一般的な2つの色の区別がつきにくいもの(最も一般的な色覚異常)から、灰色と黒の濃淡のみがわかる全色覚異常まで様々なタイプがあります。重要な情報の伝達に色のみを使用すると、特定のユーザーが関連するすべての情報に完全には気付かない可能性があります。視覚障害者は、色によって伝達される情報を代替テキストの形式で示される必要があることは言うまでもありません。

開発者としては、重要な情報を色のみで示すコンテンツを作成しないでください。アクセスできないデザインの1つの例に、テキストを赤に色付けすることでのみ負の数値を表すことがあります。もう1つの例には、コンテキスト情報が色のみで示される(よい場合は緑、悪い場合は赤)、典型的なストップライト・インディケータがあります。

色とテキストの使用

色分けされたテキストにより、表示されるデータがいっそうわかりやすくなります。

同じ情報を表す別の方法が含まれている場合、デザインに色を使用できます。たとえば、マイナス記号やカッコを使用して表やピボット表で負の数値を表すことができます。ストップライト表示の場合、色以外に説明テキストや異なる形状のアイコンを追加できます。「ステータス: 良」などのテキストを含めることができます。「よい」を表す緑色の円、「警告」を表す黄色の三角、「悪い」を表す赤色の八角形を含めることができます。

色のコントラスト

同系色の微妙な濃淡を区別できない色覚異常もあるため、すべての画面要素の全体的な色彩設計では、色の対比を大きくする必要があります。

色の明度のコントラスト比が最低でも4.5:1になるようにする必要があります。たとえば、薄い灰色の背景に濃い灰色のテキストを使用するのではなく、白い背景に黒のテキストを使用します。

支援のための次のWebサイトを活用できます:

アクセシブルなダッシュボードの設計

ダッシュボードは大量の情報を伝達するための主要なフォーマットであるため、最大限に理解できるよう設計することが重要です。

アクセス可能なダッシュボードを設計するには、次の項のガイドラインを使用します:

一貫した構造の奨励

ダッシュボードに一貫した構造を使用することで、ユーザーには見慣れた形式でデータが表示されます。

次のガイドラインを使用して、ダッシュボードに一貫した構造を使用するよう努めます:

  • 複数のダッシュボードに同様の機能やコンテンツが含まれる場合、それらのリンクやフォームをすべてのダッシュボードで同じ位置に配置します。

  • 同じ機能やリンク先のボタンやリンクには同じテキストとラベルを使用します。グラフィック要素を使用して、コントロール、ステータス・インジケータまたは他のプログラム要素が表されている場合、各グラフィック要素に割り当てられている意味が、ダッシュボードの全ページで一貫しているようにします。

  • 同じ機能に使用されているアイコンや他のグラフィックに同じテキストを関連付けます。グラフィックは支援技術では読み取ることができず、弱視のユーザーはグラフィックの意味を認識できない可能性があります。したがって、すべてのグラフィックに、機能を表す追加テキストを付ける必要があります。

    グラフィックにはALTテキスト(グラフィックに関連付けられている、用途を適切に説明するテキスト)を付ける必要があります。この代替テキストは、HTMLコードの要素のALT属性で指定されます。グラフィックが美術的な目的のために存在し、機能上意味がない場合でも、要素にnullのALTテキスト(alt="")を指定し、テキストをスキップする必要があることをスクリーン・リーダーが認識できるようにします。

    ALTテキストの作成がサポートされない他のグラフィック要素の場合、上部または横に機能を表すテキスト・フィールド(「下の表示ビューを選択」など)を含めます。

ダッシュボード・ページの単純化

ダッシュボード・ページを単純にしておくなら、ユーザーにわかりやすくなります。

ダッシュボード・ページが単純になるよう努めます。1つのページに多数のオブジェクトを含めないようにします。複雑でナビゲートが難しい1つのページではなく、ナビゲートが簡単な複数のページを含めます。

画面上のコンテンツの機能強化

ダッシュボード様々な方法で機能強化できます。

次のガイドラインを使用して、ダッシュボードの画面上のコンテンツを機能強化します:

  • グラフで色の明度差が大きくなるようにするのと同様に、ダッシュボード・ページに色付きまたはパターン付きの背景を使用しません。

  • ダッシュボードのヘッダー領域および複数ページのダッシュボードのタブに、背景とテキストとの高コントラストをサポートするスタイルを使用します。

  • 最も重要なコンテンツをページの最上部に配置し、スクリーン・リーダーのユーザーが画面全体を移動しなくてもコンテンツにアクセスできるようにします。

代替表示の提供

アクセシビリティ・ツールを使用するユーザーにアクセス可能なデータを提供することは、すべてのユーザーが同じ情報を受け取れるようにするために重要な方法です。

インタラクティブなGISマップやオーディオ・ビデオ・フィードなどの元来視覚的な表示の場合、これらの要素を直接アクセス可能にする方法はありません。この種のコンテンツをデプロイする場合、同様の相互作用機能を持った、同じ情報をテキスト・ベースで表したものも用意する必要があります。通常、これは、関連するデータ(ある場合)で対応する表またはピボット表を作成するか、オーディオビジュアル・コンテンツに対してはキャプションとテキストの説明を付けることを意味します。

分析の説明の付加

ダッシュボード・ページでは、説明フィールドに基づいてオブジェクトに説明テキストが生成されます。

作成する各分析に、機能の短い説明が含まれていることを確認します。この説明は、分析の「保存」ダイアログの「説明」フィールドに指定します。

ダッシュボードへのスタイルの使用

Oracle BI EEシステムで使用できるスタイルとスキンのセットによって、ダッシュボードの全体的なルック・アンド・フィールが制御されます。次の項に記載のとおり、スタイルとスキンをアクセシビリティに使用できます:

カスタムのスタイルとスキンの作成

カスタムのスタイルとスキンを作成して、デフォルトのフォント選択、高コントラスト色スキームなどのアクセシビリティをサポートする標準設定を実装できます。

デフォルトのスタイルをコピーして修正することで開始できます。これらのファイルを修正することによって、特定の障害をお持ちのユーザーに役立つデフォルトの色、コントラストおよびフォントを選択できます。

ダッシュボードへのスタイルの適用

すべてのダッシュボードに対するデフォルト・スタイルを設定することも、個々のダッシュボードに適用するスタイルを選択することもできます。

アクセシビリティの必要なユーザー向けに特に最適化されたコンテンツを含むダッシュボードのセットを作成できます。必要なユーザー用に、1つ以上の個々のダッシュボードに特別なアクセシビリティ用スタイルを適用することもできます。

特定のダッシュボードのダッシュボードのプロパティ・ページでスタイルを指定します。

禁止されている機能の回避

2Hzから55Hzまでの周波数で点滅する要素やアニメーションを過度に使用する要素(証券ティッカ表示ウィジェットなど)などの特定の機能は絶対に使用しないでください。

法律で規定されたデザインの禁止事項に精通し、それらの要素をダッシュボード・ページに含めないようにします。