Sun WorkShop 入門

第 1 章 Sun WorkShop について

Sun WorkShop は、構築、編集、ソースのブラウズ、デバッグなど、複雑な開発作業を高速化するための高度な統合開発環境を提供しています。また、グラフィカルユーザーインタフェース (GUI) の新規作成を支援するVisual GUI 構築ツールなど、これまでの一連のツールやサービスも、さらに使いやすく統合化されています。 たとえば、共同で行う開発作業の効率化に役立つ新しい統合エディタや、開発プロジェクトに関連するファイル、プログラム、ディレクトリ、ターゲットなどを管理するための Sun WorkShop ワークセットなどが用意されています。 ここでは、今回のリリースに含まれる次のツールについて概説します。

統合開発ツール

Sun WorkShop は、C++、C、Fortran 90、FORTRAN 77 の各アプリケーションを開発するための統合環境です。ここでは、編集、ソースのブラウズ、構築、デバッグなどの主要な開発機能を高度に統合した開発ツールを利用することができます。

Sun WorkShop の統合エディタを利用すると、通常の開発作業の大部分を簡単に実行することができます。統合エディタとは、構築ツール、デバッガ、ソースブラウザを含む統合開発ツールセットの核となるツールで、vi、XEmacs、GNU Emacs の中から、ユーザーが使いやすいものを選択できます。修正継続機能 (Fix and Continue) などの強力な新機能をはじめ、式の評価、ブレークポイントの設定、関数のステップ実行など、必要な作業の多くは、この統合エディタで行えます。このため、よりスピーディーかつ効率的にプログラムを開発することができます。

3 つの統合エディタ

Sun WorkShop では、操作性と生産性を高めるために、大部分の開発作業を XEmacs、GNU Emacs、vi のうちの任意のエディタで行えるという新しいアーキテクチャーを採用しています。この「編集サーバー」アーキテクチャーでは、任意のエディタでソースコードを表示、編集、操作することができます。また、このエディタはエミュレーションではなく、実際のエディタです。つまり、キーボードショートカットなど、既存のエディタの見た目と使い心地をそのまま維持しながら、さまざまな開発機能を実行したり、別の統合開発ツールと作業情報を共有することができるのです。

この機能により、式の評価、ブレークポイントの設定、関数のステップ実行などの一般的な作業の大部分を、エディタを含む複数のウィンドウで実行することができるようになりました。その結果、複雑なアプリケーション開発も、簡単かつ効果的に行えるようになりました。

Sun WorkShop エディタの使い方については、次の項目を参照してください。

Sun WorkShop ピックリストとワークセット

Sun WorkShop では、開発プロジェクトに関連するファイル、ターゲット、プログラム、実験結果、ワークスペース (Sun WorkShop TeamWare がインストールされている場合) を編成して利用するための新しい方式を採用しています。ここでは、この方式について簡単に説明します。Sun WorkShop は、プロジェクトでの作業を記憶して、最後に使用したファイルと命令が入ったメニューのピックリストを生成します。いちばん最後に実行した命令が 5 分前のものでも 1 時間前でも、Sun WorkShop の起動のたびに、このようなピックリストが生成されるため、ユーザーは、長いパス名や引数列を覚える必要がありません。

また、一連のピックリストをワークセットとして保存することも可能です。ワークセットを使用すると、指定の開発プロジェクトに関連する一連のピックリストを 1 つの名前でワークセットファイルに保存することができます。このワークセットファイルを読み込めば、開発プロジェクトに関連付けられているファイルをピックリストに再び読み込むことができます。

ワークセットの使い方については、次の項目を参照してください。

パフォーマンス、デバッグ、ファイル管理のためのツール

Sun WorkShop では、「ツール」メニューとツールバー上のボタンを使って、パフォーマンスツール、デバッグ用のツール、それらに関連するオブジェクトファイルを簡単に呼び出すことができます。WorkShop メインウィンドウの「ツール」メニューには、ツールごとに、以前に使用したオブジェクトを呼び出すピックリスト (作成可能) が含まれています。このピックリストからオブジェクトを選択すると、任意のオブジェクトを読み込んだ状態でツールが起動します。たとえば、以前に使用したデザインファイルを読み込んだ状態で WorkShop Visual を起動する場合は、Sun WorkShop メインウィンドウの「ツール」メニューから「Visual」を選択し、Visual 用のピックリストからファイルを選択します。

WorkShop のメインウィンドウには、デフォルトで、アナライザとファイルマージを起動するためのボタンがあります。Sun(TM) Performance WorkShop(TM) Fortran をご使用の場合は、このほかに、Sun WorkShop TeamWare (ファイル管理ツール)、ループツール (マルチスレッド開発ツール) を起動することができます。Sun(TM) Visual WorkShop(TM) C++ をご使用の場合は、Visual を起動することができます。

ツールの使い方やピックリストについては、次の項目を参照してください。

Sun WorkShop Visual

Sun Visual WorkShop C++ でのみ使用可能です。

Visual は、開発者が短期間で簡単に GUI を設計したり、移植性のあるオブジェクト指向型コードを生成したり、Motif や Microsoft Foundation Class の GUI を開発する作業を支援します。

Visual は、GUI を構築しながら、その外観や動作を確認することができる対話型ツールです。このツールを利用して、アプリケーションのソースコードの 大部分を GUI コードにすることができます。GUI コードは、デザイン (GUI の設計) の完了時に自動的に生成されます。

Visual については、『Sun WorkShop Visual ユーザーズガイド』を参照してください。

Sun WorkShop TeamWare

Sun Performance WorkShop Fortran、Sun Visual WorkShop C++ でのみ使用可能です。

Sun WorkShop TeamWare は、GUI、コマンド行のどちらからでも利用できる、ソースコードを管理するためのツールです。TeamWare は、製品の調整、統合、構築の作業を並行して行えるような枠組みを提供しているため、開発チームのメンバーが複数サイトに分散している場合でも、より効率的に共同作業を行うことができます。TeamWare には、次のような機能があります。

ワークスペース管理 

ソースコードの構成、リリースの管理と統合 

バージョン管理 

ファイルのバージョン履歴の作成と記録 

フリーズポイント 

ソフトウェアの構成やリリースの状態を記録し、後で再現できるようにする 

構築ツール 

構築ジョブを複数の Solaris ホストで実行することにより、大規模なプロジェクトの構築にかかる時間を削減する 

ファイルマージ 

ソースファイルのマージとソースの変更の調整 

TeamWare の使い方については、『Sun WorkShop TeamWare ユーザーズガイド』か、オンラインヘルプを参照してください。オンラインヘルプを起動するためには、Sun WorkShop TeamWare を起動して、メインウィンドウの「ヘルプ」を選択します。

マルチスレッド開発ツール

Sun Performance WorkShop Fortran、Sun Visual WorkShop C++ には、デバッガ、ロック lint、ループツール、アナライザなど、マルチスレッドアプリケーションを開発するための高度なツールが含まれています。こうしたツール群をまとめて「マルチスレッド開発ツール」と言います。次に、各ツールについて簡単に説明します。 Sun WorkShop のデバッガは、マルチスレッドプログラムを動的に解析、制御します。ロック lint は、ソースコードを解析して、デッドロックやデータの競合状態などの同期エラーがないかどうかを確認します。ループツールは、ループ実行時のグラフを表示し、並列化されたループを特定します。これらの各ツールが一緒になり、マルチスレッドプログラム開発を強力にサポートします。

マルチスレッド開発ツールセットの使い方については、次の項目を参照してください。

Sun WorkShop コンパイラ

Sun WorkShop は、次の 4 つのコンパイラをサポートしています。

C++ コンパイラ

Sun Visual WorkShop C++ でのみ使用可能です。

今回のリリースでは、『注釈 C++ リファレンス・マニュアル』(足立高穂、小山裕司訳、アジソンウェスレイ・トッパン出版) で紹介されている機能がすべて実装されており、例外処理、インクリメンタルリンカー、テンプレートの高速インスタンス化方式、既存の Tools.h++ クラスライブラリの拡張バージョンがサポートされています。

この内蔵コンパイラは最適化されているため、コンパイル速度と実行速度の両面で、これまでのバージョンよりも格段に優れた機能を発揮します。

また、C++ 言語機能も改善され、次の点で ISO C++ 標準規格を強力にサポートするようになりました。

C++ コンパイラの詳細については、『C ユーザーズガイド』を参照してください。ここには、C++ 関連マニュアルのリストも記載されています。

Fortran 90 コンパイラ

Sun Performance WorkShop Fortran でのみ使用可能です。

今回のリリースでは、Fortran 90 ANSI X3.198-1992 規格 (JIS X 3001-1994) のすべての機能が完全に実装されています。この規格には、数式をより直接的にプログラミング言語で表現する機能など、強力な機能が多数追加されています。このコンパイラを Sun WorkShop のほかの機能と併せて使用すると、コードを自動的に並列化することができます。

Fortran 90 コンパイラの詳細については、『Fortran ユーザーズガイド』、『Fortran プログラミングガイド』を参照してください。ここには、Fortran 関連マニュアルのリストも記載されています。

FORTRAN 77 コンパイラ

Sun Performance WorkShop Fortran でのみ使用可能です。

このコンパイラには、FORTRAN 77 ANSI X3.9-1978、ISO 1539-1980 規格のすべての機能が完全に実装されています。この規格には、VAX VMS Fortran および Cray Fortran との互換性を提供する機能のほか、数式をプログラミング言語でより直接的に表現する機能が含まれています。

FOTRAN 77 コンパイラの詳細については、『Fortran ユーザーズガイド』、『Fortran プログラミングガイド』を参照してください。ここには、Fortran 関連マニュアルのリストも記載されています。

C コンパイラ

このコンパイラは、ANSI C 言語と ANSI C 環境の規格に完全に準拠しており、K&R C もサポートしています。C オプティマイザは、最適化されていないコードのパフォーマンスを大幅に向上させます。コードオプティマイザは、冗長な個所を削除し、レジスタを効率良く割り当て、命令のスケジューリングを行います。また、デバッグ段階でのリンク時間を削減するインクリメンタルリンカーも実装されています。

C コンパイラの詳細については、『C ユーザーズガイド』を参照してください。ここには、C 関連マニュアルのリストも記載されています。

Sun WorkShop デバッガ

Sun WorkShop には、ウィンドウベースのソースコードデバッガが含まれています。このデバッガでは、プログラムを制御しながら実行したり、停止したプログラムの状態を検査することができます。さらに、WorkShop 統合テキストエディタを利用すると、デバッグ機能を最大限に活用しながら、コードの編集も行えます。このように、WorkShop では、プログラムの動的な実行を完全に制御したり、パフォーマンスデータを収集することができます。また、コマンド行でソースレベルのデバッグを行う場合は、dbx コマンドを使用します。

デバッグ操作の多くは、デバッグウィンドウと、このウィンドウから開くことのできるウィンドウで実行されます。基本的なデバッグ操作であれば、テキストエディタウィンドウでも実行可能です。デバッグ対象プログラムを読み込むと、自動的にテキストエディタウィンドウが表示されます。

「Web での最新情報」ダイアログボックス

「Web での最新情報」ダイアログボックスを使用すると、Web ブラウザで、Sun WorkShop に関する最新情報を参照することができます。「Web での最新情報」ダイアログボックスは、どの Sun WorkShop ウィンドウからでも開くことができます。「ヘルプ」メニューから「Web での最新情報」を選択してください。詳細については、Sun WorkShop オンラインヘルプの「Web での最新情報」ダイアログボックスに関する項目を参照してください。