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Sun Update Manager の概要

SunTM Update Manager ソフトウェアは、Sun Update Connection, System Edition 1.0 ソフトウェアの一部です。このソフトウェアでは、お使いのシステム上でアップデートをローカル管理することができます。以後は Sun Update Manager を Update Manager と呼びます。

この章では、次の項目について説明します。



注 - パッチおよびアップデートという用語は、Sun Update Manager アプリケーションと本書では同義語として扱います。




Update Manager の概要



注 - Sun Update Manager の使い方に慣れていて、クライアントソフトウェアのインストールへ進みたい場合は、第 2 章へお進みください。



Sun Update Manager には 2 つのユーザーインタフェースがあり、これを使用してシステム上でアップデートをローカル管理できます。1 つは Sun Update Manager グラフィカルユーザーインタフェースで、もう 1 つは smpatch コマンドラインインタフェースです。

このセクションでは、次の項目について説明します。

導入プロセスの概要

システムで Update Manager または Sun Update Connection サービスを使用してアップデートを管理する前に、アップデートを管理する際の方針を決定する必要があります。

1. SolarisTM 10 システムに Sun Update Manager アプリケーションをインストールして開始します。

2. 次のうちから、自分のアップデート管理環境を最もよく表す状況を見つけてください。

この場合はすぐにシステムの登録プロセスを開始できます。

この場合は、システムの登録プロセスの初めに、ネットワークプロキシのホスト名とポートを指定する必要があります。また必要に応じて、ネットワークプロキシのユーザー名とパスワードを指定します。

この場合、Sun Update Connection プロキシとして機能するようにシステムを事前に設定する必要があります。「Sun Update Connection プロキシの設定 (タスクマップ)」を参照してください。次に、登録プロセス中にプロキシからアップデートを取得するようにクライアントシステムを設定します。

3. Update Manager を使用してお使いの Solaris システムを登録します。

登録プロセス中に、サンオンラインアカウントを入力するように指示するメッセージが表示されます。Java Developer ConnectionSM、Online Support Center (OSC)、MySun、SunSolveSM および SunStore などのプログラムにアカウントの登録を行っている場合は、すでにサンオンラインアカウントを取得している可能性があります。

自分の登録レベルおよびサブスクリプションに基づいて、アップデートを管理する際の方針を決定します。

4. Solaris 10 システムでアップデートを管理します。

Update Manager のユーザーインタフェースの比較

次の表では、GUI とコマンドラインインタフェース (smpatch) でサポートされる Sun Update Manager 1.0 の機能とタスクを簡単に説明します。


機能 / タスク

グラフィカルユーザーインタフェース

コマンドラインインタフェース

システムにアップデートを適用できるか

リモートシステムでアップデート管理操作が可能であるか

可。リモートシステムで GUI を起動してローカルのシステムに表示することができます。

また Sun Update Connection サービスを使用すると、リモートでシステムを管理できます。

可。ただしリモートモードの smpatch でのみ。ローカルモードの smpatch はローカルシステムのみで実行できます。

アップデートのためにシステムを分析できるか

システム上で予定されているアップデート分析を実行できるか

可。cron を使用して smpatch analyze コマンドを実行します。

アップデートを個別にダウンロードできるか

不可。インストールするときに限り、アップデートが個別にダウンロードされます。

アップデートの依存性を解決できるか

状況による。smpatch add を実行する場合、アップデートの依存性は解決されません。ただし、smpatch update または smpatch analyze -i update-id を実行する場合は、アップデートの依存性が解決されます。

複数のアップデートを一度に削除できるか

不可。smpatch remove では、一度に 1 つのアップデートしか削除できません。

システムがシングルユーザーモードのときに実行できるか

不可

可。ローカルモードの smpatch のみで、限られた操作を実行できます。

Sun Update Connection プロキシにあるアップデートにアクセスできるか

アップデートリストで操作できるか

不可

システムに対してアップデート管理環境を設定できるか

RBAC をサポートするか

不可



Solaris アップデート管理の概要

アップデートの管理には、システムへの Solaris のアップデート (パッチともいう) の適用が含まれます。また、不要なアップデートや不完全なアップデートの削除なども含まれます。アップデートの削除は、アップデートのバックアウトともいいます。

このセクションでは、次の項目について説明します。

ディスクレスクライアントシステムへのパッチの適用の詳細については、『Solaris のシステム管理 (基本編)』の「ディスクレスクライアント OS サービスにパッチを適用する」を参照してください。

Solaris のアップデートを使用するために推奨される方針と実践の詳細については、http://docs.sun.com/doc/817-0574/ をご覧ください。

アップデートの種類

アップデートは、既存のソフトウェアの正常な動作を妨げる既存のファイルやディレクトリを置き換えたりアップデートしたりするファイルやディレクトリのコレクションです。アップデートによって、システムに新しい機能が導入される場合もあります。このようなアップデートを、機能アップデートと呼びます。既存のソフトウェアは、Application Binary Interface (ABI) に準拠する指定のパッケージフォーマットに基づいているものです。

アップデートは、Update Manager アプリケーション、smpatch コマンドまたは patchadd コマンドを使用して Solaris システム上で管理することができます。



注 - システム上でアップデートを管理する際には、Update Manager GUI、smpatch コマンドおよび patchadd コマンドを同時に使用しないでください。Update Manager GUI が起動しているときは、smpatchpatchadd で行った変更内容が Update Manager で正しく反映されない場合があります。



署名付きアップデートと署名なしアップデート

署名付きアップデートは、デジタル署名が適用されたアップデートです。検証済みのデジタル署名が付いたアップデートは、署名が適用されてからは変更されていません。署名付きアップデートのデジタル署名は、アップデートがシステムへダウンロードされた後に検証されます。

Solaris の各リリース用に発行されたアップデートやパッチは、署名付きアップデートおよび署名なしアップデートとして使用できます。署名なしアップデートにはデジタル署名は付いていません。

署名付きアップデートは JavaTM アーカイブ形式 (JAR) のファイルに保存されているため、Sun アップデートサーバーから入手できます。署名なしアップデートはディレクトリ形式で保存されます。こちらも、Sun アップデートサーバーから .zip ファイルとして入手できます。

Solaris のアップデートへのアクセス

Sun のユーザーは、SunSpectrumSM プログラムを利用しているかどうかにかかわらず、Sun アップデートサーバーからアップデートやパッチへアクセスすることができます。これらのアップデートやパッチは、毎日夜にアップデートされます。

Solaris のアップデートは、次の方法で取得できます。

Sun Patch ポータルからアップデートにアクセスするには、システムがインターネットに接続され、MozillaTM などの Web ブラウザソフトが起動可能になっている必要があります。

アップデートクラスタから個々のアップデート、またはアップデートのセットにアクセスしたり、アップデートレポートを参照することができます。また、Sun Update Manager を使用してシステムを分析し、適切なアップデートを決定することもできます。また Update Manager では、アップデートをシステムにダウンロードして適用することもできます。

それぞれのアップデートには、アップデートの情報が記載された README ファイルが添付されています。README は Update Manager GUI で表示できます。

Solaris のアップデートのナンバリング

アップデートは固有のアップデート ID で識別されます。アップデート ID は英数字の文字列で、アップデートのベースコードとアップデートのリビジョン番号がハイフンでつながった形になっています。たとえば 118822-02 というアップデートは、SunOSTM 5.10 カーネルアップデートのアップデート ID です。

Solaris のアップデートを管理するツール

アップデートを Solaris システムに適用するには、次のツールが使用できます。

ディスクレスクライアントシステムにパッチを適用する必要がある場合は、『Solaris のシステム管理 (基本編)』の「ディスクレスクライアント OS サービスにパッチを適用する」を参照してください。

Update Manager アプリケーションは、Sun Update Connection System, System Edition ソフトウェアの一部となっています。Sun Update Connection サービスも、このソフトウェアの一部です。

次の表では、さまざまな Solaris アップデート管理ツールの使用に関する概要を示します。


ツールの使用状況

Sun Update Manager 1.0 および Sun Patch Manager 2.0

Sun Update Connection 1.0

patchadd/patchrm コマンド

Solaris 2.6 および Solaris 7 のパッチ管理ツール

PatchPro Interactive または PatchPro Expert

ツールの入手方法

Solaris 10 の場合 ― Update Manager の機能アップデートを適用

Solaris 8 または 9 の場合 ― Sun Download Center Web サイトから適切なバージョンの Patch Manager をダウンロード

Sun Update Connection Web サイトからツールを実行

Solaris リリースに付属

Sun Download Center からダウンロード

PatchPro Web サイトからツールを実行

利用できる Solaris リリース

Solaris 10 の場合 ― Sun Update Manager 1.0

Solaris 8 および Solaris 9 の場合 ― Sun Patch Manager 2.0

Solaris 10

Solaris 2.6、7、8 および 9

Solaris 2.6 および 7

Solaris 2.6、7、8 および 9

署名付きアップデートの適用

可。署名付きアップデートはダウンロード時に自動的に検証される

Solaris 9 12/03 以降 ― 可。署名付きアップデートはダウンロード時に自動的に検証される

可。署名付きアップデートはダウンロード時に自動的に検証される

不可。ツールはアップデートを適用しない

署名なしアップデートの適用

Sun Update Manager 1.0 の場合 ― 不可

Sun Patch Manager 2.0 の場合 ― 可。ただし最初にアップデートを解凍する必要あり

不可

不可

GUI の使用

Solaris 10 の場合 ― Update Manager が動作しているシステムでは可

Solaris 9 の場合 ― Patch Manager (smc) が動作しているシステムでは可

Solaris 8 の場合 ― 不可

Sun ベースの Web アプリケーション

不可

不可

可。PatchPro Web サイトからのみツールを実行可能

システムを分析し、適切なアップデートを決定して署名付きまたは署名なしアップデートをダウンロードする

可。ただし署名付きアップデートのみ

不可

可。ただし署名付きアップデートのみ

可。ただし署名なしアップデートのみ

ローカルおよびリモートシステムのアップデートサポート

ローカルおよびリモート

Solaris 8 の場合 ― ローカル

リモート

ローカル

ローカル

不可

RBAC サポート

Update Manager の場合 ― 不可

smpatch の場合

適用外

不可

不可


この表では、Solaris システム上でアップデートを管理するためのツールについて説明しています。

Solaris のアップデート管理

アップデートの適用中に、patchadd コマンドによって情報が /var/sadm/patch/update-id/log ファイルに記録されます。

次の条件に当てはまる場合、patchadd コマンドではアップデートを適用できません。

アップデートの適用に最適な方法の選択

システムに 1 つまたは複数のアップデートをダウンロードしたり適用したりするための方法はいくつかあります。次の表で、自分のニーズに最適な方法を決定してください。



注 - この表で説明されている smpatch コマンドのバージョンは、Solaris 8 システムから使用可能になったものです。



この表では、Solaris システムでアップデートを管理するための方法について説明しています。

コマンドまたはツール

説明

詳細情報

Update Manager GUI

アップデートの管理に GUI の利便性が必要な場合は、このツールを使用します。

この GUI の機能には次のようなものがあります。

  • システムを分析して適切なアップデートを決定する
  • 1 つまたは複数のアップデートでシステムをアップデートする
  • アップデートを削除する
  • 適用したアップデートの一覧を表示する
  • アップデート管理の環境を設定する
  • 自分のシステムで新しいアップデートが使用可能になった場合に通知する

Sun Update Manager GUI を使用した Solaris アップデートの管理

Sun Update Connection サービス

Sun から提供されるこの Web アプリケーションは、すべての Solaris 10 システム上のアップデートをリモート管理する場合に使用します。

『Sun Update Connection 1.0 管理ガイド』

smpatch update

このコマンドは、システムを分析して適切なアップデートを決定し、そのアップデートをダウンロードおよび適用する際に使用します。

このコマンドでは interactive プロパティセットを含むアップデートは適用されないことに注意してください。

Solaris 8 システムでは、ローカルモードの smpatch のみが有効となります。

smpatch(1M) のマニュアルページ

smpatch analyze および smpatch update

まず、smpatch analyze を使用してシステムを分析し、適切なアップデートを決定します。その後、smpatch update を使用して 1 つまたは複数のアップデートをシステムにダウンロードおよび適用します。

このコマンドでは interactive プロパティセットを含むアップデートは適用されないことに注意してください。

Solaris 8 システムでは、ローカルモードの smpatch のみが有効となります。

smpatch(1M) のマニュアルページ

smpatch analyzesmpatch download および smpatch add

まず、smpatch analyze を使用してシステムを分析し、適切なアップデートを決定します。その後、smpatch download を使用してアップデートをダウンロードします。このコマンドでは、適用対象のアップデートの前提条件となるアップデートもすべてダウンロードされます。その後、smpatch add を使用して、1 つまたは複数のアップデートをシステムに適用します。システムはシングルユーザーモードとマルチユーザーモードのいずれでも有効です。

Solaris 8 システムでは、ローカルモードの smpatch のみが有効となります。

smpatch(1M) のマニュアルページ

patchadd

Solaris 2.6 リリース以降 ― 署名なしアップデートをシステムに適用します。

Solaris 9 12/03 リリース以降 ― このコマンドを使用して、署名付きまたは署名なしアップデートをシステムに適用します。署名付きアップデートを適用するには、まずパッケージのキーストアを設定する必要があります。

patchadd(1M) のマニュアルページ


アップデート適用方法として smpatch コマンドラインインタフェースまたは Update Manager グラフィカルユーザーインタフェースの使用を選択した場合は、選択した方法に影響する可能性のある詳細情報を「Update Manager の概要」で参照してください。


Sun Update Connection の機能

このセクションでは、Sun Update Connection, System Edition の主な機能について説明します。

Update Manager ツールを使用するには、少なくとも Solaris 10 ソフトウェアの End User Solaris Software Group をインストールする必要があります。



注 - 2005 年 7 月時点では、Sun のアップデートのうち Sun Update Manager アプリケーションで適用できないアップデートがいくつかあります。そのようなアップデートには、PatchPro の規格に準拠していないアップデートや、サードパーティーによる契約の制限を受けるアップデートなどがあります。



Solaris パッチおよび Sun Patch Manager 2.0 ソフトウェアに関する情報は、docs.sun.com のサイトの Solaris 10 System Administrator Collection の『Solaris のシステム管理 (基本編)』に記載されています。

Sun Update Manager のグラフィカルユーザーインタフェース

Update Manager には、システムをアップデートする際のグラフィカルユーザーインタフェース (GUI) が装備されています。GUI を使用すると、システムを分析したり、選択したアップデートを適用したり、アップデートを削除したり、アップデート管理環境を設定したりすることができます。

Sun Update Connection サービス

Sun Update Connection サービスでは、登録済みの各システムのすべてのアップデートアクティビティをリモートで監視および管理することができます。このサービスは、Sun で動作する Web アプリケーションを介して使用できます。



注 - Sun Update Connection サービスで管理するシステムも、引き続き Update Manager を使用してリモート管理できます。このツールに表示されるアップデートデータが、遅延により同期していない場合があります。



Sun Update Connection サービスでは、Sun の Web サイト上で提供される Web アプリケーションが使用できます。このツールを使用してジョブを作成し、サービスにチェックインしながら、このジョブをシステム上で実行することができます。ジョブには、アップデートをインストールするものとアンインストールするものがあります。また、この Web アプリケーションを使用することにより、システムおよびジョブのアップデートステータスを表示することもできます。

Sun Update Connection サービスの機能は次のとおりです。

Sun Update Connection サービスの詳細については、『Sun Update Connection 1.0 管理ガイド』を参照してください。

Sun Update Connection プロキシ

Sun Update Connection プロキシは、以前、ローカルパッチサーバーと呼ばれていました。

このプロキシは、Sun Update Connection, System Edition 1.0 および Sun Patch Manager 2.0 を使用するクライアントシステムに対応しています。Sun Update Connection クライアントシステムには、Sun Patch Manager 2.0 に関連する古いバージョンのローカルパッチサーバーの機能との互換性はありません。



注 - Sun Update Connection プロキシはオプション機能で、Sun Service Plan に加入していれば無料で取得できます。Sun Service Plan への加入に関する詳細は、Solaris Operating System Software Support の Web サイト (http://www.sun.com/service/support/software/solaris/) にアクセスし、適切なサービスのレベルを選択してください。



Solaris 8 オペレーティングシステム以降は、クライアントシステムでアップデートおよびアップデートデータにアクセスして、アップデートの分析や管理を行うことができます。アップデートデータはアップデートソースから提供されます。アップデートソースは、Sun アップデートサーバーや Sun Update Connection プロキシなどのアップデートサーバー (ローカルパッチサーバーともいう) の場合と、アップデートのローカルコレクションの場合があります。

イントラネット上で Sun Update Connection プロキシを使用すると、ローカルシステムにアップデートを供給して、お使いのシステムと Sun アップデートサーバーの間のインターネットトラフィックを最小化することができます。このプロキシでは、アップデートソースからダウンロードしたすべてのアップデートをキャッシュします。

このタイプのプロキシをイントラネット上で設定する方法については、「コマンドラインインタフェースを使用した Sun Update Connection プロキシの設定」を参照してください。

Sun Update Connection プロキシでは、要求を受けるごとにアップデートソースからアップデートを取得します。アップデートを使用するまでは、そのアップデートをプロキシに保存しておく必要はありません。

Sun Update Connection プロキシとして動作するシステムには、少なくとも Solaris 10 が動作しており、Developer Solaris Software Group がインストールされているシステムを選択する必要があります。また、このシステムには Sun Update Manager 1.0 ソフトウェアもインストールされている必要があります。

Sun Update Connection プロキシを使用する利点

Sun Update Connection プロキシを使用することにより、セキュリティの問題のほか、システム分析やアップデートのダウンロードのパフォーマンスなどの問題に対処することができます。

たとえば、クライアントシステムが Sun Update Connection プロキシに接続されていてローカルで管理されている場合、クライアントシステムをインターネットに接続する必要はありません。また、これらのクライアントシステムを Sun Update Manager で登録する必要もありません。

別の例としては、このタイプのプロキシを使用することにより、アップデートに関連したパフォーマンスの問題が改善されます。Sun アップデートサーバーから各システムにアップデートやメタデータをダウンロードする代わりに、Sun Update Connection プロキシへアップデートを 1 度だけダウンロードするという方法があります。アップデートデータをこのサーバーに格納すれば、アップデートデータはインターネットではなく、イントラネット経由でシステムへ転送され、分析されます。

Sun Update Connection プロキシの連鎖は、イントラネット上で設定できます。プロキシの連鎖の最後のリンクは、Sun アップデートサーバーまたはアップデートのローカルコレクションに指定できます。こうしたプロキシの連鎖を使用することにより、システムからの主要な Sun Update Connection プロキシに対するアップデートダウンロードの要求は、連鎖内の別のプロキシに転送され、要求が実行されます。システムの主要な Sun Update Connection プロキシがアップデートを検索できない場合、プロキシは連鎖内の次のプロキシに対して同じ要求を行い、そこにアップデートが格納されているかどうかを確認します。アップデートが見つかれば、システムにそのアップデートがダウンロードされます。アップデートが見つからない場合、アップデートが見つかるか、連鎖内の最後のプロキシに到達するまで、要求は連鎖内で次々と実行されます。

たとえば、ある会社に、Sun アップデートサーバーから直接アップデートを取得する Sun Update Connection プロキシがあると仮定します。社内の事業所にはそれぞれ Sun Update Connection プロキシがあり、会社のプロキシからアップデートを取得します。

連鎖内の各 Sun Update Connection プロキシには、別のプロキシで発見されたアップデートがダウンロードの要求ごとに格納されています。これにより、自分のプロキシで最初に見つからなかったアップデートもダウンロードされ、格納されてから、クライアントシステムにダウンロードされます。プロキシの連鎖内には多数のシステムがあるため、システムを 1 つ進むごとに、クライアントシステムへのアップデートのダウンロードにかかる時間が長くなる場合があります。したがって、クライアントシステムで初めてダウンロードを要求すると、アップデートはインターネット経由でプロキシシステムにダウンロードされます。その後アップデートを要求すると、プロキシシステムからイントラネット経由でクライアントシステムへアップデートがダウンロードされます。

PatchPro 分析エンジン

Update Manager には、PatchPro 機能が組み込まれています。PatchPro はシステム上でアップデートの分析を行い、その結果必要なアップデートをダウンロードおよび適用します。これまで、この自動処理機能は Solaris 2.6、Solaris 7、Solaris 8、および Solaris 9 で別個の PatchPro 製品として、また、Sun Patch Manager 2.0 製品で使用可能でした。現在、PatchPro 機能は Sun Update Manager 1.0 の一部になっています。

PatchPro は署名付きのアップデートを使用するため、Solaris のアップデートが変更されていないことを確認することによってアップデートの安全性が向上します。



注 - Sun Update Manager 1.0 には移行のために pprosetup および pprosvc コマンドが入っています。これらのコマンドはなるべく使用せず、代わりに smpatch コマンドを使用することをお勧めします。



ローカルモードのコマンドラインインタフェース



注 - Solaris 8 システムでは、ローカルモードで実行できるコマンドは smpatch のみです。



Solaris 9 以降は、smpatch コマンドはローカルとリモートの 2 つのモードで使用できます。ローカルモードは、ローカルシステム上でのみ実行できます。システムがシングルユーザーモードとマルチユーザーモードのいずれの場合でも実行できます。リモートモードは、リモートシステム上でタスクを実行する場合に使用できます。ローカルモードとリモートモードはいずれも、適切な権限を持つユーザーまたは役割によって使用できます。

デフォルトでは、smpatch がローカルモードで実行されます。ローカルモードでは Solaris WBEM サービスが使用されません。また、認証オプションも、リモートシステムを参照するオプションも使用できません。ローカルモードで smpatch コマンドを実行すると、リモートモードよりも高速で処理されます。

リモートオプションや認証オプション (-L を除く) を指定すると、リモートモードが使用されます。

ローカルモードでのシングルユーザーモードの操作

ローカルモードで smpatch add コマンドを使用すると、システムがシングルユーザーモードでもアップデートを適用することができます。この方法でアップデートを適用できるのは、該当するアップデートが singleuser アップデートプロパティと関連している場合か、操作中ではないシステムにアップデートを適用する場合です。

システムがシングルユーザーモードで動作しているときにアップデートを管理するには、smpatch addsmpatch order、および smpatch remove コマンドのみを使用してください。

システムがシングルユーザーモードで動作しているときにアップデートの管理環境を設定するには、smpatch getsmpatch set、および smpatch unset コマンドを使用します。

システムがシングルユーザーモードで動作しているときは、smpatch analyzesmpatch download、および smpatch update コマンドは使用しないでください。これらのコマンドが依存するネットワークサービスは、システムがシングルユーザーモードのときには使用できません。

アップデートを適用する際のポリシーとアップデートが一致しない場合、そのアップデートは自動的にはシステムに適用されません。このようなアップデートは、シングルユーザーモードで手動で適用する必要があります。

適用後すぐに再起動、または再構成のための再起動を行う必要のあるアップデートは、すぐには適用されません。このようなアップデートは、予定されたシステムシャットダウンの間に自動的に適用されます。

アップデートリストの操作

smpatch コマンドを使用して、アップデートを順序に沿って並べたリストを作成することができます。このリストはテキストファイルで保存し、それを使用してアップデート操作を行うことができます。

アップデートリストを使用すれば、同じハードウェアおよびソフトウェア設定のシステムに、同じアップデートのセットを適用できます。また、関連するすべてのセキュリティアップデートを含むアップデートリストファイルを作成し、そのリストを使用して 1 つまたは複数のシステムにセキュリティアップデートを適用することもできます。

アップデートを順序に沿って並べたリストを含むファイルを作成するには、次のいずれかの方法で smpatch コマンドを使用します。

アップデートリストを変更したときに、そのアップデートがシステムで使用できる場合は、smpatch order コマンドを使用して、アップデートの適用に適した順序でリストを出力します。アップデートが使用できない場合は、smpatch analyze コマンドを使用する方法でも、アップデートを順序に沿って並べたリストを作成できます。



警告アイコン

警告 - smpatch add コマンドは、アップデート適用のポリシーやアップデートの依存性にかかわらず、アップデートリスト内のすべてのアップデートを適用しようとします。



アップデートリストは、smpatch addsmpatch analyzesmpatch downloadsmpatch order、および smpatch update コマンドへの入力として使用できます。


Sun Update Manager の概念

Sun Update Manager ソフトウェアを使用するには、次の概念についてよく知っておく必要があります。

Solaris パッチおよび Sun Patch Manager 2.0 ソフトウェアに関する情報は、docs.sun.com のサイトの Solaris 10 System Administrator Collection の『Solaris のシステム管理 (基本編)』に記載されています。

Sun Update Manager ツール

Update Manager は、Solaris 10 システム上でアップデートを管理するツールです。Update Manager では、以前の Sun Patch Manager 2.0 ソフトウェアで使用できた機能をさらに拡張しています。新機能は、サンオンラインアカウントを持っていて、お使いのシステムを Sun に登録している場合のみ使用できます。



注 - smpatch add コマンドおよび smpatch remove コマンドを使用すれば、いつでも Sun から手動でダウンロードしたアップデートを管理することができます。この方法で管理するシステムは、登録の必要はありません。ただし、smpatch analyzesmpatch download または smpatch update コマンドを使用する場合は、システムを登録する必要があります。



Sun Update Manager の登録

Update Manager で登録したシステムでのみ、Update Manager の機能の使用や、Sun Update Connection サービスでのリモート管理が可能となります。

システムの登録手順については、「システムを登録する方法」を参照してください。サブスクリプションキーの取得に関する詳細については、「Sun サブスクリプションキーを取得する方法」を参照してください。



注 - Sun Update Connection プロキシのクライアントになっているシステムをイントラネット上でローカル管理している場合、そのクライアントシステムを登録する必要はありません。プロキシとして動作するシステムは登録する必要があります。ただし、クライアントシステムが Sun Update Connection サービスによってリモートでも管理されている場合は、そのクライアントシステムも登録する必要があります



ソフトウェアサポートを含む Sun Service Plan に加入している場合は、次の操作を行うことができます。

有効な Solaris Service Plans の情報については、http://www.sun.com/service/solaris10/ の Web サイトをご覧ください。

登録サービスのレベル

Update Manager を使用するには、本ソフトウェアをインストールしたシステムを登録する必要があります。登録と権限のレベルは、次の 3 つから選択できます。各レベルについては以降のセクションで説明します。



注 - 未登録のシステムでは、セキュリティアップデートのみにアクセスできます。未登録のシステムでアップデートを管理するには、smpatch add コマンドおよび smpatch remove コマンドを使用します。



サブスクリプションなしの登録

システムの基本情報を Sun へ送信しているが、アップデート管理のサブスクリプションは購入していない状態です。このサービスレベルでは、Update Manager を使用してアップデートをローカル管理できます。管理には次のような操作が含まれます。



注 - アップデート管理環境に Sun Update Connection プロキシが含まれていて、システムがそのプロキシのクライアントである場合、Sun Update Manager を使用してクライアントシステムを登録する必要はありません。ただし、プロキシとして動作するシステムは登録する必要があります



サブスクリプション付きの登録

システムの情報を Sun へ送信し、アップデート管理のサブスクリプションを購入した状態です。このサービスレベルでは、以前の (基本) サービスレベルで使用できた機能が拡張されています。Update Manager を使用して次の作業を実行できます。



注 - アップデート管理環境に Sun Update Connection プロキシが含まれていて、システムがそのプロキシのクライアントである場合、Sun Update Manager を使用してクライアントシステムを登録する必要はありません。プロキシとして動作するシステムは登録する必要があります。ただし、Sun Update Connection サービスを使用してクライアントシステムをリモート管理するように設定する場合は、システムを登録する必要があります



Sun Update Connection で管理する、サブスクリプション付きの登録

システム情報を送信して、サブスクリプションを購入し、Sun Update Connection サービスを使用してアップデートをリモートで管理しようとしている状態です。このサービスレベルでは、以前の (中間) サービスレベルで使用できた機能が拡張されています。Sun Update Connection サービスを使用して次の作業を実行できます。

アップデート管理のプロセス

Update Manager では、アップデートの管理プロセスを実行できます。管理プロセスのタスクには、次のようなものがあります。

Solaris のアップデートを使用するために推奨される方針と実践の詳細については、http://docs.sun.com/doc/817-0574/ をご覧ください。

アップデートが正常に適用されると、ダウンロードしたアップデートはダウンロードディレクトリから削除されます。

システムに適用されるアップデートは、指定したポリシー、およびダウンロードしたアップデートに関連するアップデートプロパティによって異なります。

アップデート適用のポリシーに一致しないアップデートがあると、そのアップデートはすぐには適用されません。このようなアップデートは、予定されたシステムシャットダウンの間に適用されます。Update Manager では、これらのアップデートを「再起動が必要」なアップデートとして表示します。

interactive プロパティセットを含むアップデートについては、そのアップデートの README ファイルの指示に従って手動で適用してください。Update Manager では、これらのアップデートを「ダウンロードのみ」のアップデートとして表示します。

システムの分析

システムにアップデートを適用する前に、必要なアップデートを判断する必要があります。Update Manager を使用してシステムのアップデート分析を行い、適切なアップデートの一覧を取得できます。

Update Manager では、分析モジュールおよび有効なアップデートのリストを使用して Solaris システムの分析を行います。アップデートのソースの詳細については、「アップデートのソースの指定」をご覧ください。

分析結果に基づいて、適切なアップデートがシステムにダウンロードおよび適用されます。

場合により、あるアップデートが、別のアップデートを適用しないとシステムに適用できないことがあります。このことを、前者のアップデートが後者のアップデートに依存しているといいます。Update Manager でシステムを分析すると、Update Manager はアップデートの依存性をチェックして、自動的にすべてのアップデートを結果一覧に出力します。



Note - 分析によって生成されたアップデートの一覧は、Sun アップデートサーバーから取得した、すべての有効なアップデートに基づいています。ホストシステムやシステムのネットワーク設定に関する明示的な情報が、Sun に転送されることはありません。Sun のアップデートセットに必要な要求のみが転送されます。アップデートセットでホストシステムに適したアップデートをスキャンし、その結果が表示されます。必要に応じて、表示されたアップデートをダウンロードします。



システムへのアップデートのダウンロード

システムにアップデートを適用する前に、必要なアップデートを Sun アップデートサーバーからシステムへダウンロードする必要があります。

システム分析に基づいて Sun アップデートサーバーからアップデートをダウンロードすることも、特定のアップデートをダウンロード対象に指定することもできます。

Update Manager は、ダウンロード操作とインストール操作を結びつけて行います。したがって、アップデートのインストールを要求すると、アップデートはまずシステムにダウンロードされ、その後インストールされます。

「ダウンロードのみ」のマークが付いた一部のアップデートは、Update Manager ではインストールできません。「ダウンロードのみ」のアップデートのインストールを要求すると、そのアップデートはシステムにダウンロードされますが、インストールはされません。このアップデートをインストールするには、アップデートの README ファイルのインストール手順に従う必要があります。

システムへのアップデートの適用

Update Manager では、システムにアップデートを適用できます。

smpatch add コマンドを使用して特定のアップデートを適用すると、コマンドは指定したアップデートのみを適用しようとします。smpatch add コマンドでは、アップデートの依存性は解決されません。適用しようとしたアップデートが依存するアップデートが存在しない場合、アップデートは適用されません。アップデートの依存性の問題を解決するには、smpatch analyze コマンドまたは smpatch update コマンドを使用します。

Sun Update Manager GUI を使用して、アップデートの一覧から選択したアップデートを適用すると、それぞれのアップデートが (必要に応じて) ダウンロードされてから適用されます。

一覧になっているアップデートをインストールしようとすると、Update Manager ではまず分析を行い、依存性のあるアップデートをインストールする必要があるかどうかを判断します。

システムからのアップデートの削除

以前にシステムに適用したアップデートを削除 (または取り消し) したい場合があります。Update Manager では、アップデートを削除することができます。



警告アイコン

警告 - Sun Update Manager 1.0 の機能アップデートはシステムから削除しないでください。削除すると Update Manager が誤動作します。



アップデートを削除すると、そのアップデートによって変更されていたファイルが Solaris アップデートツールによってすべて復元されます。ただし次の条件に一致する場合を除きます。

アップデートの削除処理中に、patchrm コマンドによってバックアウト処理が /tmp/backoutlog.process-id ファイルに記録されます。アップデートが正常に削除されると、このログファイルは自動的に削除されます。

Sun Update Manager GUI を使用して、適用したアップデートの一覧から 1 つまたは複数のアップデートを選択して削除することができます。ただし、smpatch remove コマンドを使用した場合、一度に削除できるアップデートは 1 つのみです。



注 - 他のアップデートが依存するアップデートを削除しようとしても、削除できません。これに依存するアップデートをすべて削除すれば、そのアップデートを削除できます。



他のアップデートが依存しているアップデートを削除しようとすると、そのアップデートと同時に削除する必要のあるアップデートの一覧が表示されます。最初に選択したアップデートを削除するには、これらのアップデートの削除に同意する必要があります。

Sun Update Connection サービスを使用したシステムの管理

Sun Update Connection サービスによる Solaris 10 システムの管理は、登録処理中または処理後に要求できます。Sun Update Connection サービスでは、すべてのシステム上にあるアップデートを管理する Web アプリケーションが使用できます。

詳細については、『Sun Update Connection 1.0 管理ガイド』を参照してください。

Sun Update Connection サービスでシステムを管理しても、Update Manager を使用してローカルのシステムのアップデートを管理することは引き続き可能です。

アップデートのソースの指定

Update Manager を使用する場合は、クライアントシステムおよび Sun Update Connection プロキシに、Solaris のアップデートおよびアップデートデータへのアクセス権が必要となります。クライアントシステムでもプロキシでも、次のソースからアップデートを取得することができます。

クライアントシステムおよび Sun Update Connection プロキシに対するアップデートのデフォルトのソースは Sun アップデートサーバーです。したがって、Sun アップデートサーバーからアップデートを取得するクライアントシステムや Sun Update Connection プロキシは、直接またはネットワークプロキシ経由のいずれかでインターネットに接続している必要があります。

Sun Update Connection プロキシと別のアップデートソースを組み合わせることによって、このようなアップデート管理の環境を設定することができます。

クライアントがアクセスするアップデートおよびアップデートデータのソースは次のとおりです。

クライアントシステムで取得するアップデートのソースを指定する方法については、「アップデートソースを指定する方法 (GUI)」を参照してください。

プロキシで取得するアップデートのソースを指定する方法については、「Sun Update Connection プロキシの設定を変更する方法 (コマンドライン)」を参照してください。

アップデートを適用する際のポリシーのカスタマイズ

Update Manager でシステムに適用されるアップデートのタイプは次のとおりです。

標準のアップデートは、standard アップデートプロパティと関連しています。「再起動が必要」というマークが付いたアップデートは、rebootafterreconfigafterrebootimmediatereconfigimmediate および singleuser アップデートプロパティと関連しています。「ダウンロードのみ」というマークが付いたアップデートは、interactive アップデートプロパティと関連しています。「ダウンロードのみ」のアップデートは、システムにダウンロードされるだけで、アップデートの README ファイルの手順に従って手動で適用する必要があります。

ただし、smpatch update コマンドを使用してシステムをアップデートすると、アップデート適用のポリシーをカスタマイズすることができます。

このポリシーの詳細については、smpatch(1M) のマニュアルページを参照してください。

Update Manager の設定プロパティの設定

smpatch set コマンドでは、次のパラメータを使用してアップデート管理環境を設定します。



注 - patchpro.patchset 以外のパラメータは、Sun Update Manager GUI で「ファイル」メニューから「プリファレンス」を選択し、適切な値を指定する方法でも変更できます。



「コレクションの表示」メニューからアップデートのセットを選択します。