この節では、Backup でオートチェンジャを使用する場合に起こる問題の解決法を説明します。
Backup デバイスドライバソフトウェアをインストールしたあと、lusdebug プログラムを使ってサーバーとの接続を検査し、jbexercise プログラムを使ってオートチェンジャを検査します。次に示すコマンドの control-port に、たとえば scsidev@0.6.0 などの、使用しているオートチェンジャに割り当てられている制御ポートの番号を指定します。
# lusdebug control-port 0 # jbexercise -c control-port -m model |
これらのコマンドの実行が失敗した場合やエラーメッセージが表示された場合には、以降の節の説明を参考にして、原因を追及し、解決してください。
lusdebug コマンドが失敗した場合は、次のヒントを参考にして、考えられる問題を特定し、解決をはかります。
スーパーユーザーになって sjiinq コマンドを使い、引数に制御ポートを指定します。次のようなメッセージが表示されます。
scsidev@0.6.0:<EXABYTE EXB-10i EXB-10i > |
このメッセージの情報に誤りがないことを確認します。
ベンダー名とモデル名が正しくない場合は、ドライバのインストール時に、デバイス ID に誤った SCSI ID を指定しています。インストールスクリプトでは、テープドライブではなく、機械的な機構の SCSI ID の指定が求められます。
デバイスドライバをアンインストールしてインストールし直し、オートチェンジャ (無人アーム) の正しいアドレスを指定します。SCSI バスの各デバイスに、それぞれ異なる SCSI ID アドレスが指定されていることを確認します。
次の各テストをして、オートチェンジャが正しく接続されていることを確認します。
SCSI バスのコネクタがすべて正しく接続されているか
すべての SCSI ケーブルに欠陥がないか
SCSI バスの終端抵抗が正しく設定されていて、バスが ANSI SCSI-II 仕様 (ANSI X3.131-1994) で規定されている長さの範囲にあるか
終端抵抗を正しく設定するには、SCSI バスの両端を適切な抵抗で終端処理しければなりません。シングルエンドの SCSI バスでは、+5VDC 側で 220 オーム、接地側で 330オームです。差動型ターミネータでは、122 オームの特性インピーダンス (-5VDC から +5VDC) があります。SCSI バスの終端は、バスのどちらの側から見ても最後の SCSI デバイスとみなされます。そこでは、周辺機器とシステムの両方がピア SCSI デバイスとみなされます。
SCSI バスのバスの両端以外でデバイスに終端抵抗を付けるのは、お勧めできません。終端を追加すると、バスの各デバイスのハードウェアバスドライバに負担がかかり (仕様の範囲を越えて)、信号の伝送に影響が及びます。その結果、信号の伝送時にタイミング要件に対応できなくなる可能性があります。
SCSI バスの長さの制限は信号の品質に影響することから、バスの伝送エラーの確率にも影響があります。シングルエンドの SCSI バスが最も普及していますが、この SCSIバスの長さは 6 メートルです。ただし、FAST SCSI デバイスを接続して使用しているときは、長さの制限は 3 メートルになります。この長さには、外部のケーブルの長さと、デバイス内でのバスの長さがそのまま含まれます。内部の長さのおおよその目安としては、ワークステーションシャーシの内部バスの長さを 1 メートル、外部の周辺ボックスではデバイスごとにおよそ 0.25 メートルとみなします。
差動型のオプションの SCSI バスは、これに比べてかなり長くでき (シングルエンドとは電気的に違いがあるため)、最大 25 メートルまで可能です。差動型デバイスとシングルエンドデバイスは決して混在させてはいけません。
旧バージョンのオートチェンジャドライバがインストールされていないことを確認します。旧バージョンの Backup に添付されていた AAP ドライバか、または SCSI バス 0 だけをサポートする Parity ドライバのリリース 1.1 以前のドライバがインストールされている可能性があります。
同じバスに接続されているすべてのデバイスの SCSI ID を調べ、重複した ID がないことを確認します。2 つのデバイスのターゲット ID が同じときは、システムログファイルに SCSI バスのリセットエラーが記録される、マシンが起動しない、SPARC システムで probe-scsi ブートプロンプトコマンドがハングする、などの症状が起こることがあります。
テープドライブのドアが開いていることを確認するセンサが故障したときは、オートチェンジャのハードウェアに添付された説明書に従って原因を特定するか、ハードウェアベンダーに連絡します。
オートチェンジャがシーケンシャルモードに設定されている場合は、設定をランダムモードに変更します。
上記の対応で問題が解決しないときは、ご購入先にお問い合わせください。その際は、「ご購入先に連絡する前に揃えておく情報」で説明した情報と、sjiinq および sjirjc の各プログラムの出力結果を提示してください。これら 3 つのプログラムの詳細は、付録 B 「コマンド行リファレンス」の該当箇所か、または各プログラムのマニュアルページを参照してください。
jbexercise コマンドが異常終了した場合は、次のヒントを参考にして考えられる問題を特定し、解決をはかります。
jbexercise プログラムによって、たとえば Solaris の場合には /dev/rmt/0mbn といった非巻き戻し式テープドライブの名前を入力するようにプロンプトが表示されます。テープドライブに対して、正しいデバイスのパス名が指定されていることを確認します。名前は、オートチェンジャそのものの名前ではなく、オートチェンジャ内のテープドライブ名でなければなりません。次のエラーメッセージが表示されたら、非巻き戻し式の装置の名前が入力されていません。
device not ready |
パス名を入力したテープドライブが動作するかどうかを確認します。ボリュームをドライブに挿入して、次のテストを行います。
tar コマンドを使って、小さなファイルをボリュームにコピーする
tapeexercise コマンドを使って、さらに広範囲の動作を確認する
これらのテストで正常に終了しなければ、テープドライブは動作していません。使用しているシステムでのドライブの構成方法については、ハードウェアベンダーにお問い合わせください。
上記の対応で問題が解決しないときは、ご購入先にお問い合わせください。その際は、「ご購入先に連絡する前に揃えておく情報」で説明した情報と、jbexercise、sjiinq、sjirjc の各プログラムの出力結果を提示してください。これら 3 つのプログラムの詳細は、付録 B 「コマンド行リファレンス」の該当箇所か、または各プログラムのマニュアルページを参照してください。
jb_config オプションを使って自動検出 SCSI ジュークボックスをインストールしている場合にサーバーがハングしたときには、次の対策をお勧めします。
SJI ジュークボックスをインストールするための jb_config オプションを選択します。ジュークボックスの一覧が表示されます。
これからインストールするジュークボックスのタイプに該当する番号を入力します。
次のメッセージが表示されるまで、jb_config オプションを続行させます。
Jukebox has been added successfully. |
次のいずれかの状況では、オートチェンジャのインベントリが無効となるため、Backup でそのオートチェンジャを使用できなくなります。
オートチェンジャドライブからメディアを手動で取り除く
メディアをオートチェンジャから取り外す
オートチェンジャのドアが開いている
オートチェンジャを再び使用できるようにするには、次の手順に従います。
メディアカートリッジが正しくオートチェンジャ内に取り付けられていて、オートチェンジャのドアが閉まっていることを確認します。
Backup サーバーのスーパーユーザーになります。
次のようにして、オートチェンジャをリセットします。
# nsrjb -Hv |
次のようにして、インベントリを作成します。
# nsrjb -Iv |
インベントリの作成が完了すると、再び Backup でオートチェンジャが使用できるようになります。
nsrjb コマンドの使用法の詳細は、nsrjb(8) のマニュアルページか、または 第 7 章「オートチェンジャモジュール」を参照してください。
通常、「Destination component full」のメッセージが表示されるのは、たとえば Backup を使ってボリュームのマウントを解除せずに、オートチェンジャのボタンを押して物理的にテープドライブをアンロードするといった、手動の操作をした場合です。このような操作をすると、オートチェンジャ内のメディアの状態を Backup は追跡できなくなります。
この問題を解決するには、Backup の nsrjb -H コマンドを使ってオートチェンジャをリセットします。
Backup がテープ容量のすべてを使用できないことがあります。たとえば、公称容量 4000M バイト のテープにまだ 3000M バイトのデータしか書き込んでいないのに「full」マークが付けられることがあります。
Backup でテープを容量いっぱいまで使うには、現在のデバイスに適した最高の密度で書き込まれたデバイスドライバを選択します。テープにラベルを付けるときに、そのデバイスがサポートしている最高密度が Backup によって書き込みに使用されます。
テープの全容量が使われていないのにいっぱいになったとみなされる原因としては、次のものがあります。
バックアップ中に書き込みエラーが起こった
ほとんどのテープドライブは、書き込み動作のあとデータを読み取って、データがテープに正常に書き込まれたことを確認し、正常に書き込まれていなければもう一度書き込みます。書き込みエラーは、テープが終わったかまたは、読み取りエラーのいずれかを意味しています。どのようなテープエラーが起こっても、Backup ではテープに「full」のマークが付けられます。
テープの書き込みエラーを防ぐには、定期的にテープドライブをクリーニングして、データ品質のテープだけを使うようにします。ドライブをクリーニングしてもエラーが出る場合は、次のことを確認します。デバイスドライバが正しく設定されているか、テープドライブ上の必要なスイッチ設定がメーカーの仕様どおりに設定されているか、ケーブルはしっかり接続されているか、考えられるその他の SCSI 問題に対処しているか。
Backup が付けるファイルマークがテープの領域をとる
データ復旧を迅速に行うために、Backup によって定期的にファイルマークが書き込まれます。このファイルマークは領域を使います。この領域の大きさはテープドライブのタイプによって異なり、ある種のドライブでは数 M バイトになります。Backup によってテープに書き込まれるファイルマークの数は、そのテープ上のセーブセットの数に比例します。小さいセーブセットをたくさん格納すると、大きいセーブセットを少なく格納する場合よりもファイルマークが多くなります。
テープによって容量に差がある
テープの容量はテープによって異なり、一定ではありません。同じベンダーの、見かけ上まったく同じ 2 本のテープでも、容量がかなり違うことがあります。このためデータがいっぱいに書き込まれているテープをほかのテープにコピーする場合、特にコピー先のテープの容量がコピー元のテープの容量よりも小さい場合に、問題が起こることがあります。
テープ容量に対するデータ圧縮の影響
テープドライブでデータを圧縮すると、圧縮によってテープ容量がどう変わるかは予測できません。圧縮機能を使うドライブの容量は、圧縮機能を使わないドライブの 2 倍になる場合もありますが、これはバックアップされるデータの種類によって増減します。たとえば、非圧縮ドライブで特定のテープに 2G バイトのデータを書き込めるとすると、圧縮ドライブで 10G バイト、2G バイト、5G バイト、または予想をはるかに超える量のデータを書き込める場合があります。
テープの長さ
必ずテープの長さを確認します。120 m の DAT テープは、90 m の DAT テープよりも多くのデータを記録できます。ただし、2 つのテープは見かけは同じなので、テープカセットに記載されている情報を確認してください。
Solaris の場合、使用しているテープデバイスが Sun によって直接サポートされていなければ、st.conf ファイル内にエントリを作成し直す必要があります。このための支援が必要な場合は、ご購入先にお問い合わせください。
コントロールポートによって、オートチェンジャの装着機能を制御します。コントロールポートが正しく接続されていることを確認する方法は、オートチェンジャのハードウェアインストールマニュアルに記載されています。コントロールポートが動作しているかどうかを判断できない場合は、オートチェンジャのベンダーにお問い合わせください。