Solaris のシステム管理 (ネットワークサービス)

第 27 章 リモートシステムの利用 (概要)

この章では、リモートファイルの利用について説明します。

FTP サーバーとは

FTP サーバーは wu-ftpd に基づいています。ワシントン大学 (セントルイス) で開発された wu-ftpd は、インターネット上での大量データの配布に幅広く使用され、大規模な FTP サイトではよく使われる規格です。ライセンス条項については、/var/sadm/pkg/SUNWftpu/install/copyright から利用できるドキュメントを参照してください。

リモートシステムとは

この章では、リモートシステムとは、物理ネットワークによってローカルシステムに接続され、TCP/IP 通信用に構成されたワークステーションまたはサーバーであると想定します。

Solaris リリースのシステム上では、TCP/IP は起動時に自動的に構成されます。詳細については、『Solaris のシステム管理 (IP サービス)』を参照してください。

Solaris 10 リリース FTP サービスの変更点

Solaris 10 リリースでは、FTP サーバーの機能強化、ftpcount ftpwhoftp コマンドの変更など、いくつかの点で FTP サービスの変更が行われています。

FTP サーバーの機能強化により、スケーラビリティーと転送のロギングが向上しました。これらのオプションの説明は、「多忙なサイトにおける構成についてのヒント」と、ftpaccess(4) のマニュアルページに挙げられています。次に、具体的な変更点を示します。

また、このリリースでは ftpcountftpwho-v オプションが追加されました。このオプションは、仮想ホスト ftpaccess ファイルに定義されている FTP サーバークラスのユーザー数とプロセス情報を表示するものです。詳細は、ftpcount(1)ftpwho(1) のマニュアルページを参照してください。

このリリースでは、FTP クライアントとサーバーは Kerberos をサポートするようになりました。詳細は、ftp(4) のマニュアルページと、『Solaris のシステム管理 (セキュリティサービス)』「Kerberos ユーザーコマンド」を参照してください。

ftp コマンドは変更されました。デフォルトでは、Solaris FTP サーバーに接続された Solaris FTP クライアントは、クライアントに対して ls コマンドが発行されるとディレクトリとプレーンファイルの一覧を表示します。FTP サーバーが Solaris OS で稼働していない場合は、ディレクトリは表示されない可能性があります。Solaris 以外の FTP サーバーに接続している場合に Solaris のデフォルト動作が起きるようにするには、Solaris クライアントごとに /etc/default/ftp ファイルを適宜編集します。個々のユーザーについてこの変更を行うには、FTP_LS_SENDS_NLST 環境変数を yes に設定します。詳細は、ftp(4) のマニュアルページを参照してください。

ftpd デーモンは、サービス管理機能によって管理されます。このサービスに関する有効化、無効化、再起動などの管理アクションは svcadm コマンドを使用して実行できます。すべてのデーモンのサービスの状態は、svcs コマンドを使用して照会することができます。サービス管理機能の概要については、『Solaris のシステム管理 (基本編)』の第 18 章「サービスの管理 (概要)」を参照してください。

Solaris 9 の FTP サーバーの新機能

Solaris 9 リリースでは FTP サーバーに大幅な変更が加えられたため、Solaris 10 リリースでも引き続きこの節を残してあります。Solaris 9 の FTP サーバーは、Solaris 8 の FTP ソフトウェアとの互換性を保ちながら、新しい機能を提供してパフォーマンスの向上を図っています。

表 27–1 Solaris 9 の FTP サーバーの新機能

機能 

説明 

参照先 

タイプと場所によるユーザーの分類 

タイプとアドレスに基づいて、ユーザーのクラスを定義できる 

「FTP サーバークラスの定義方法」

クラスごとの制限 

ftpaccess ファイルに設定されている制限に基づいて、同時にログインできる特定クラスのユーザー数を制御する

「ユーザーログインの制限を設定する方法」

システム全体およびディレクトリ関連のメッセージ 

特定のイベントに対して指定されるメッセージを表示する 

「ユーザーに送信するメッセージの作成方法」

ディレクトリごとのアップロード権 

ファイルおよびディレクトリの作成やアクセス権など、FTP サーバーへのアップロードを制御できる 

「FTP サーバーへのアップロードの制御方法」

ファイル名フィルタ 

アップロードしたファイルの名前に使用できる文字とその順序を指定できる 

「FTP サーバーへのアップロードの制御方法」

仮想ホストのサポート 

単一のマシンで複数のドメインをサポートするように FTP サーバーを構成できる 

「完全仮想ホスティングを有効にする方法」

コマンドのログ 

実ユーザー、ゲストユーザー、匿名ユーザーの各 FTP ユーザーが実行したコマンドのログを記録できる 

「FTP ユーザーにより実行されたコマンドの検査」

転送処理のログ 

実ユーザー、ゲストユーザー、匿名ユーザーの各 FTP ユーザーが実行した転送処理のログを記録できる 

ftpaccess(4)xferlog(4)in.ftpd(1M) のマニュアルページ

必要時の圧縮とアーカイブ 

必要に応じて、ftpconversions ファイルに指定されている変換方法で圧縮およびアーカイブができる

ftpconversions(4)ftpaccess(4)のマニュアルページ

次に、Solaris 8 よりも後のリリースではサポートされない Solaris 8 の機能を示します。