この章では、リモートファイルの利用について説明します。
FTP サーバーは wu-ftpd に基づいています。ワシントン大学 (セントルイス) で開発された wu-ftpd は、インターネット上での大量データの配布に幅広く使用され、大規模な FTP サイトではよく使われる規格です。ライセンス条項については、/var/sadm/pkg/SUNWftpu/install/copyright から利用できるドキュメントを参照してください。
この章では、リモートシステムとは、物理ネットワークによってローカルシステムに接続され、TCP/IP 通信用に構成されたワークステーションまたはサーバーであると想定します。
Solaris リリースのシステム上では、TCP/IP は起動時に自動的に構成されます。詳細については、『Solaris のシステム管理 (IP サービス)』を参照してください。
Solaris 10 リリースでは、FTP サーバーの機能強化、ftpcount 、ftpwho、ftp コマンドの変更など、いくつかの点で FTP サービスの変更が行われています。
FTP サーバーの機能強化により、スケーラビリティーと転送のロギングが向上しました。これらのオプションの説明は、「多忙なサイトにおける構成についてのヒント」と、ftpaccess(4) のマニュアルページに挙げられています。次に、具体的な変更点を示します。
sendfile() 関数により、バイナリダウンロードを行う
ftpaccess ファイルでサポートされる新機能
flush-wait により、ダウンロードまたはディレクトリ表示の最後の動作を制御する
ipcos により、制御接続またはデータ接続の「IP CoS (サービスクラス)」を設定する
passive ports を設定し、待機する TCP ポートをカーネルに選択させることができる
quota-info により、割り当て情報を取得できる
recvbuf により、バイナリ転送に使用される受信 (アップロード) バッファーサイズを設定する
rhostlookup により、リモートホスト名検索の許可または拒否を設定する
sendbuf により、バイナリ転送に使用される送信 (ダウンロード) バッファーサイズを設定する
xferlog により、転送ログエントリの書式をカスタマイズする
-4 オプションを指定すると、スタンドアロンモードで稼働している FTP サーバーは IPv4 ソケットを使用した接続だけを待機する
また、このリリースでは ftpcount と ftpwho に -v オプションが追加されました。このオプションは、仮想ホスト ftpaccess ファイルに定義されている FTP サーバークラスのユーザー数とプロセス情報を表示するものです。詳細は、ftpcount(1) と ftpwho(1) のマニュアルページを参照してください。
このリリースでは、FTP クライアントとサーバーは Kerberos をサポートするようになりました。詳細は、ftp(4) のマニュアルページと、『Solaris のシステム管理 (セキュリティサービス)』の「Kerberos ユーザーコマンド」を参照してください。
ftp コマンドは変更されました。デフォルトでは、Solaris FTP サーバーに接続された Solaris FTP クライアントは、クライアントに対して ls コマンドが発行されるとディレクトリとプレーンファイルの一覧を表示します。FTP サーバーが Solaris OS で稼働していない場合は、ディレクトリは表示されない可能性があります。Solaris 以外の FTP サーバーに接続している場合に Solaris のデフォルト動作が起きるようにするには、Solaris クライアントごとに /etc/default/ftp ファイルを適宜編集します。個々のユーザーについてこの変更を行うには、FTP_LS_SENDS_NLST 環境変数を yes に設定します。詳細は、ftp(4) のマニュアルページを参照してください。
ftpd デーモンは、サービス管理機能によって管理されます。このサービスに関する有効化、無効化、再起動などの管理アクションは svcadm コマンドを使用して実行できます。すべてのデーモンのサービスの状態は、svcs コマンドを使用して照会することができます。サービス管理機能の概要については、『Solaris のシステム管理 (基本編)』の第 18 章「サービスの管理 (概要)」を参照してください。
Solaris 9 リリースでは FTP サーバーに大幅な変更が加えられたため、Solaris 10 リリースでも引き続きこの節を残してあります。Solaris 9 の FTP サーバーは、Solaris 8 の FTP ソフトウェアとの互換性を保ちながら、新しい機能を提供してパフォーマンスの向上を図っています。
表 27–1 Solaris 9 の FTP サーバーの新機能
機能 |
説明 |
参照先 |
---|---|---|
タイプと場所によるユーザーの分類 |
タイプとアドレスに基づいて、ユーザーのクラスを定義できる | |
クラスごとの制限 |
ftpaccess ファイルに設定されている制限に基づいて、同時にログインできる特定クラスのユーザー数を制御する | |
システム全体およびディレクトリ関連のメッセージ |
特定のイベントに対して指定されるメッセージを表示する | |
ディレクトリごとのアップロード権 |
ファイルおよびディレクトリの作成やアクセス権など、FTP サーバーへのアップロードを制御できる | |
ファイル名フィルタ |
アップロードしたファイルの名前に使用できる文字とその順序を指定できる | |
仮想ホストのサポート |
単一のマシンで複数のドメインをサポートするように FTP サーバーを構成できる | |
コマンドのログ |
実ユーザー、ゲストユーザー、匿名ユーザーの各 FTP ユーザーが実行したコマンドのログを記録できる | |
転送処理のログ |
実ユーザー、ゲストユーザー、匿名ユーザーの各 FTP ユーザーが実行した転送処理のログを記録できる |
ftpaccess(4)、xferlog(4)、in.ftpd(1M) のマニュアルページ |
必要時の圧縮とアーカイブ |
必要に応じて、ftpconversions ファイルに指定されている変換方法で圧縮およびアーカイブができる |
ftpconversions(4)、ftpaccess(4)のマニュアルページ |
次に、Solaris 8 よりも後のリリースではサポートされない Solaris 8 の機能を示します。
Solaris 8 よりも後のリリースでは、Solaris 8 の /etc/default/ftpd はサポートされていません。Solaris 8 から Solaris 9 へのアップグレード中に、BANNER および UMASK の各エントリは、wu-ftpd 用の対応するエントリに変換されます。ただし、いくつかの BANNER 行は、ftpaccess のメッセージ機能に合わせて手作業で変換する必要があります。詳細は、ftpaccess(4) のマニュアルページを参照してください。
Solaris 8 の FTP サーバーで提供されていたサブログイン機能は、Solaris 9 の FTP サーバーではサポートされていません。