Oracle Solaris Trusted Extensions 管理の手順

第 18 章 Trusted Extensions での監査 (概要)

この章では、Solaris Trusted Extensions で提供される監査の追加機能について説明します。

Trusted Extensions と監査

Trusted Extensions ソフトウェアが設定されたシステムでは、監査の構成と管理は Solaris システムでの監査の場合と類似しています。ただし、次の相違点があります。

Trusted Extensions の役割による監査の管理

Trusted Extensions での監査には、Solaris OS の場合と同様の計画が必要です。計画については、『System Administration Guide: Security Services』の第 29 章「Planning for OpenSolaris Auditing」を参照してください。

監査管理のための役割の設定

Trusted Extensions では、監査を担当する役割が 2 つあります。 システム管理者役割は、ディスクと監査ストレージのネットワークを設定します。セキュリティー管理者役割は、監査の対象を決定し、監査構成ファイルに情報を指定します。Solaris OS の場合と同じく、管理者がソフトウェアで役割を作成します。これら 2 つの役割に対する権利プロファイルが用意されています。初期設定チームは、初期構成中にセキュリティー管理者役割を作成しました。詳細は、『Oracle Solaris Trusted Extensions 構成ガイド』「Trusted Extensions でセキュリティー管理者役割を作成する」を参照してください。


注 –

システムは、監査構成ファイルによってシステムが記録するように設定されている (事前選択の) セキュリティー関連イベントのみを記録します。したがって、後続の監査見直しでは、記録されたイベントしか考慮しません。設定に誤りがあると、システムのセキュリティーに対する侵入の試みが検出されなかったり、セキュリティー侵入の責任があるユーザーを管理者が特定できなくなる可能性があります。管理者は定期的に監査証跡を分析して、セキュリティー侵入をチェックする必要があります。


Trusted Extensions での監査タスク

Trusted Extensions で監査を構成し管理する手順は、Solaris での手順と少し異なります。

セキュリティー管理者の監査タスク

次のタスクはセキュリティー関連であり、セキュリティー管理者が担当します。Solaris に関する指示に従いますが、Trusted Extensions の管理ツールを使用してください。

作業 

Solaris に関する指示 

Trusted Extensions に関する指示 

監査ファイルを設定します。 

『System Administration Guide: Security Services』「Configuring Audit Files (Task Map)」

トラステッドエディタを使用します。詳細は、「Trusted Extensions の管理ファイルを編集する」を参照してください。

(省略可能) デフォルトの監査ポリシーを変更します。 

『System Administration Guide: Security Services』「How to Configure Audit Policy」

トラステッドエディタを使用します。 

監査を無効にし、再度有効にします。 

『System Administration Guide: Security Services』「How to Disable the Audit Service」

監査機能はデフォルトで有効になります。 

監査を管理します。 

『System Administration Guide: Security Services』「Solaris Auditing (Task Map)」

トラステッドエディタを使用します。 

ゾーンごとの監査タスクを無視します。 

システム管理者の監査タスク

次のタスクは、システム管理者が担当します。Solaris に関する指示に従いますが、Trusted Extensions の管理ツールを使用してください。

作業 

Solaris に関する指示 

Trusted Extensions に関する指示 

監査パーティションおよび監査管理サーバーを作成、監査パーティションをエクスポート、監査パーティションをマウントします。 

audit_warn 別名を作成します。

『System Administration Guide: Security Services』「Configuring and Enabling the Audit Service (Tasks)」

大域ゾーンですべての管理を実行します。 

トラステッドエディタを使用します。 

カスタマイズされた監査ファイルをラベル付きゾーンにコピーまたはループバックマウントします。 

『System Administration Guide: Security Services』「Configuring the Audit Service in Zones (Tasks)」

最初のラベル付きゾーンにファイルをコピーしてから、そのゾーンをコピーします。 

あるいは、ラベル付きゾーンが作成されたあとで、それぞれのゾーンにファイルをループバックマウントまたはコピーします。 

(省略可能) 監査構成ファイルを配布します。 

指示なし 

『Oracle Solaris Trusted Extensions 構成ガイド』「Trusted Extensions でポータブルメディアからファイルをコピーする方法」を参照してください

監査を管理します。 

『System Administration Guide: Security Services』「Solaris Auditing (Task Map)」

ゾーンごとの監査タスクを無視します。 

ラベル別の監査レコードを選択する

『System Administration Guide: Security Services』「How to Select Audit Events From the Audit Trail」

ラベル別のレコードを選択するには、auditreduce コマンドと -l オプションを使用します。

Trusted Extensions の監査のリファレンス

Trusted Extensions ソフトウェアは、監査クラス、監査イベント、監査トークン、および監査ポリシーのオプションを Solaris OS に追加します。いくつかの監査コマンドが、ラベル処理のために拡張されています。Trusted Extensions の監査レコードには、次の図に示すようにラベルが含まれています。

図 18–1 ラベル付きシステムでの一般的な監査レコード

一般的な監査レコードを構成する、ヘッダー、件名、ラベル、戻りの 4 つのトークンが並んだ図

Trusted Extensions の監査クラス

Trusted Extensions ソフトウェアで Solaris OS に追加される監査クラスの一覧を次の表にアルファベット順に示します。これらのクラスは、/etc/security/audit_class ファイルに一覧されています。監査クラスについては、audit_class(4) のマニュアルページを参照してください。

表 18–1 X サーバー監査クラス

短い名前 

長い名前 

監査マスク 

xc 

X - オブジェクトの作成/破棄 

0x00800000

xp 

X - 特権/管理操作 

0x00400000

xs 

X - 失敗した場合、常にメッセージを表示せずにエラーになる操作 

0x02000000

xx 

X - xl、xc、xp、および xs クラスのすべての X イベント (メタクラス) 

0x03e00000

X サーバー監査イベントは、次の条件に従ってこれらのクラスにマップされます。

Trusted Extensions の監査イベント

Trusted Extensions ソフトウェアでは、システムに監査イベントが追加されます。新しい監査イベントと、そのイベントが属する監査クラスは、 /etc/security/audit_event ファイルに一覧されています。Trusted Extensions の監査イベント番号は、9000 から 10000 の間です。監査クラスについては、audit_event(4) のマニュアルページを参照してください。

Trusted Extensions の監査トークン

Trusted Extensions ソフトウェアで Solaris OS に追加される監査トークンを、次の表にアルファベット順に一覧しています。トークンは、audit.log(4) マニュアルページにも一覧されています。

表 18–2 Trusted Extensions の監査トークン

トークン名 

説明 

label トークン」

機密ラベル 

xatom トークン」

X ウィンドウのアトム ID 

xclient トークン」

X クライアント ID 

xcolormap トークン」

X ウィンドウのカラー情報 

xcursor トークン」

X ウィンドウのカーソル情報 

xfont トークン」

X ウィンドウのフォント情報 

xgc トークン」

X ウィンドウのグラフィカルコンテキスト情報 

xpixmap トークン」

X ウィンドウのピクセルマッピング情報 

xproperty トークン」

X ウィンドウのプロパティー情報 

xselect トークン」

X ウィンドウのデータ情報 

xwindow トークン」

X ウィンドウのウィンドウ情報 

label トークン

label トークンは、機密ラベルを含みます。次のフィールドがあります。

トークン形式は次の図のとおりです。

図 18–2 label トークン形式

図については本文で説明します。

label トークンは、praudit コマンドによって次のように表示されます。


sensitivity label,ADMIN_LOW

xatom トークン

xatom トークンは、X アトムに関する情報を含みます。次のフィールドがあります。

xatom トークンは、praudit によって次のように表示されます。


X atom,_DT_SAVE_MODE

xclient トークン

xclient トークンは、X クライアントに関する情報を含みます。次のフィールドがあります。

xclient トークンは、praudit によって次のように表示されます。


X client,15

xcolormap トークン

xcolormap トークンは、カラーマップに関する情報を含みます。次のフィールドがあります。

トークン形式は次の図のとおりです。

図 18–3 xcolormap xcursorxfontxgcxpixmap xwindow トークンの形式

図については本文で説明します。

xcolormap トークンは、praudit によって次のように表示されます。


X color map,0x08c00005,srv

xcursor トークン

xcursor トークンは、カーソルに関する情報を含みます。次のフィールドがあります。

トークン形式は、図 18–3 のとおりです。

xcursor トークンは、praudit によって次のように表示されます。


X cursor,0x0f400006,srv

xfont トークン

xfont トークンは、フォントに関する情報を含みます。次のフィールドがあります。

トークン形式は、図 18–3 のとおりです。

xfont トークンは、praudit によって次のように表示されます。


X font,0x08c00001,srv

xgc トークン

xgc トークンは、xgc に関する情報を含みます。次のフィールドがあります。

トークン形式は、図 18–3 のとおりです。

xgc トークンは、praudit によって次のように表示されます。


Xgraphic context,0x002f2ca0,srv

xpixmap トークン

xpixmap トークンは、ピクセルマッピングに関する情報を含みます。次のフィールドがあります。

トークン形式は、図 18–3 のとおりです。

xpixmap トークンは、praudit によって次のように表示されます。


X pixmap,0x08c00005,srv

xproperty トークン

xproperty トークンは、ウィンドウの各種プロパティーに関する情報を含みます。次のフィールドがあります。

xproperty トークン形式は次の図のとおりです。

図 18–4 xproperty トークン形式

図については本文で説明します。

xproperty トークンは、praudit によって次のように表示されます。


X property,0x000075d5,root,_MOTIF_DEFAULT_BINDINGS

xselect トークン

xselect トークンは、ウィンドウ間で移動するデータを含みます。このデータは、内部構造を想定されないバイトストリームと、プロパティー文字列です。次のフィールドがあります。

トークン形式は次の図のとおりです。

図 18–5 xselect トークン形式

図については本文で説明します。

xselect トークンは、praudit によって次のように表示されます。


X selection,entryfield,halogen

xwindow トークン

xwindow トークンは、ウィンドウに関する情報を含みます。次のフィールドがあります。

トークン形式は、図 18–3 のとおりです。

xwindow トークンは、praudit によって次のように表示されます。


X window,0x07400001,srv

Trusted Extensions での監査ポリシーオプション

Trusted Extensions は、既存の Solaris 監査ポリシーオプションに 2 つの監査ポリシーオプションを追加します。追加の監査ポリシーを確認するには、ポリシーを一覧表示します。


$ auditconfig -lspolicy
...
windata_down Include downgraded window information in audit records

windata_up   Include upgraded window information in audit records

Trusted Extensions の監査コマンドの拡張

auditconfigauditreduce、および bsmrecord の各コマンドは、Trusted Extensions 情報を処理できるように拡張されています。