Communications Suite は、多くの Sun サーバー製品とクライアント製品を統合して、分散型の通信アプリケーションやコラボレーションアプリケーションをサポートします。このマニュアルでは、これらの製品を「製品コンポーネント」と呼びます。Communications Suite インストーラは、Communications Suite および Java Enterprise System (Java ES) の製品コンポーネントと共有コンポーネントをさまざまな組み合わせで、一度に 1 台のホストに対してインストールします。これらのコンポーネント間には複雑な相互関係が存在するため、それらをインストールする際には、単一の製品コンポーネントをインストールする場合よりも多くのインストール前作業やインストール後作業が必要となります。
インストール後、インストーラのユーティリティー、ログ、およびデータファイルは次の場所に置かれています。
Solaris OS の場合: /var/sadm/prod/SUNWcomm-entsys5i
Linux の場合: /var/sadm/prod/sun-comm-entsys5i
ここで説明する内容は、次のとおりです。
Communications Suite ソフトウェアは、一連の Sun サーバー製品とクライアント製品、およびそれらをサポートする共有コンポーネントで構成されています。これらは連携して、ネットワーク上に分散されたアプリケーションをサポートします。Communications Suite 5 release に含まれる選択可能なコンポーネントは、次のとおりです。(名前とバージョンの後に、このマニュアル内で使用する省略名を示す。)
Sun Java System Delegated Administrator 6.4 (Delegated Administrator)
Sun Java System Calendar Server 6.3 (Calendar Server)
Sun Java System Communications Express 6.3 (Communications Express)
Sun Java System Directory Preparation Tool 6.4 (Directory Preparation Tool)
Sun Java System Instant Messaging 7.2 (Instant Messaging)
Sun Java System Messaging Server 6.3 (Messaging Server)
また、Communications Suite 5 には Sun Java System Connector for Microsoft Outlook 7.2 も含まれていますが、Connector for Microsoft Outlook は Communications Suite インストーラではインストールされません。Connector for Microsoft Outlook のインストール手順については、『Sun Java System Connector for Microsoft Outlook 7.2 Installation Guide』を参照してください。
Java ES ソフトウェアは、一連の Sun サーバー側製品およびそれらをサポートする共有コンポーネントで構成されています。これらは連携して、ネットワーク上に分散されたアプリケーションをサポートします。Communications Suite 5 release に含まれる選択可能な Java ES コンポーネントは、次のとおりです。(名前とバージョンの後に、このマニュアル内で使用する省略名を示す。)
Sun Java System 用 Sun Cluster エージェント (Sun Cluster エージェント)
Sun Java System Access Manager 7.1 (Access Manager)
Sun Java System Application Server Enterprise Edition 8.2 (Application Server)
Sun Java System Directory Server Enterprise Edition 6.0 (Directory Server)
Sun Java System High Availability Session Store 4.4 (HADB)
Sun Java System Message Queue 3.7 UR1 (Message Queue)
Sun Java System Web Server 7.0 (Web Server)
インストーラに表示されるサービスおよびサブコンポーネントの完全な一覧については、付録 E 「このリリースの製品コンポーネント」 を参照してください。この付録では、今回のリリースで提供する共有コンポーネントの一覧も示します。Communications Suite 製品コンポーネントの中には、Communications Suite インストーラでインストールされない Java ES 製品と動作するものもあります。たとえば、Sun Java System Monitoring Console 1.0 (Monitoring Console) や Sun Java System Portal Server などです。これらの Java ES 製品のインストールについては、『Sun Java Enterprise System 5 インストールガイド (UNIX 版)』を参照してください。
Communications Suite インストーラは、Solaris pkgadd、Linux rpm のいずれかのユーティリティーを使ってCommunications Suite ソフトウェアをシステムに転送するためのインストールフレームワークです。Communications Suite のインストールは、対話形式で実行することも、再利用可能なスクリプトを使用して実行することもできます。
グラフィカルモード (対話式): グラフィカルワークステーションへのソフトウェアのインストール作業の手順を示す、対話式のグラフィカルウィザードを提供します。
テキストモード (対話式): グラフィカルモードと同じ機能を提供しますが、端末ウィンドウのコマンド行で 1 行ごとに応答が求められます。
サイレントモード: 入力を指定するために生成した状態ファイルを使用して、複数のホスト上でインストーラを実行する機能を提供します。
ソフトウェアをインストールせずにインストーラを実行することができます。これは、既存のホスト上の Communications Suite ソフトウェアを調査する場合に便利です。
対話式インストーラは、ホストのオペレーティングシステムのロケール設定で指定されている言語で実行されます。次の言語を利用できます。
英語
フランス語
ドイツ語
日本語
韓国語
スペイン語
簡体字中国語
繁体字中国語
オペレーティングシステムの言語がこのリストに含まれていない場合、インストーラは英語で実行されます。
インストーラにより、英語版のコンポーネントがすべて自動的にインストールされます。また、インストールするコンポーネントを選択するときに多言語パッケージを選択して、すべての言語用にローカライズされたパッケージをインストールすることもできます。
以前にインストールしたコンポーネントに対し、インストーラを使用して追加言語パッケージをインストールすることはできません。ただし、pkgadd、rpm、または swinstall ユーティリティーを使用することで、いつでも言語パッケージをインストールできます。言語パッケージの一覧は、『Sun Java Enterprise System 5 インストールリファレンス (UNIX 版)』の第 5 章「インストール可能なパッケージの一覧」にあります。
インストール時に、インストーラは、インストールするホスト上にすでにインストールされているソフトウェアを調べ、次のコンポーネントを識別します。
インストールされている、互換性のある製品コンポーネント。
互換性のある製品コンポーネントは再インストールの必要がなく、またインストーラでは選択できません。
インストールされている、互換性のない製品コンポーネント。
インストーラが選択した製品コンポーネントとすでにローカルにインストールされている製品コンポーネントとで互換性がないことを確認した場合、すでにインストールされている互換性のない製品コンポーネントを削除またはアップグレードするよう求められます。これらの互換性のないコンポーネントが処理されるまで、インストーラを続けて実行することはできません。コンポーネントの選択時に、コンポーネントがアップグレード可能と表示される場合は、インストーラの最初のページに戻り、「インストール」ではなく「アップグレード」を選択することができます。互換性のない製品コンポーネントのアップグレードについて詳しくは、「アップグレードのしくみ」を参照してください。
インストールされている、互換性のない共有コンポーネント。
J2SE や NSS などのさまざまなバージョンの共有コンポーネントが、既存のホストにすでに存在している場合があります。インストーラがインストールしようとする Communications Suite のバージョンと互換性のない共有コンポーネントのバージョンを検出した場合、これらの共有コンポーネントがリスト表示されます。インストールを続行すると、インストーラにより共有コンポーネントが互換性のあるバージョンに自動的にアップグレードされます。
製品コンポーネントの多くは、主要な機能を提供するために、ほかのコンポーネントの存在に依存しています。インストール時に選択した製品コンポーネントが共同して正常に機能するように、インストーラは製品コンポーネント間のチェックを広範囲に行います。このため、インストーラは、ユーザーの選択に応じて、特定の製品コンポーネントをインストールに含めるよう求められます。
通常、インストーラは、次の規則を使用して製品コンポーネント間の依存性を処理します。
製品コンポーネントの選択: インストールする製品コンポーネントを選択すると、ほとんどの場合、インストーラはすべてのサブコンポーネントを自動的に選択します。
また、インストーラは、選択した製品コンポーネントが依存するコンポーネントとサブコンポーネントも選択します。たとえば、Application Server を選択すると、インストーラは Message Queue を自動的に選択します。
製品コンポーネントの選択の解除: 製品コンポーネントの選択を解除すると、ほとんどの場合、インストーラはすべてのサブコンポーネントの選択を自動的に解除します。
選択している別の製品コンポーネントがローカルまたはリモートに必要とする製品コンポーネントの選択を解除すると、インストール手順を進めるときに、インストーラはさまざまな警告メッセージを表示します。
サブコンポーネントの選択: サブコンポーネントを選択すると、インストーラはそのサブコンポーネントが属する製品コンポーネントを自動的に選択しますが、必ずしもその他のサブコンポーネントは選択しません。
選択したサブコンポーネントがほかのコンポーネントまたはサブコンポーネントに依存する場合、依存関係にあるこれらのコンポーネントは自動的に選択されます。
サブコンポーネントの選択の解除: サブコンポーネントの選択を解除すると、インストーラはそのサブコンポーネントの選択のみを解除します。その他のサブコンポーネントの選択は解除しません。
選択している別の製品コンポーネントがローカルまたはリモートに必要とするサブコンポーネントの選択を解除すると、インストール手順を進めるときに、インストーラはさまざまな警告メッセージを表示します。
選択したコンポーネントがインストール可能であると確認されたら、そのインストール先ディレクトリを指定すると、インストーラでシステムチェックが実行され、選択したコンポーネントに必要な条件をホストが満たしているかどうかが確認されます。
ディスク容量、メモリー、スワップ空間、オペレーティングシステム、そのコンポーネントのパッチとオペレーティングシステムリソース、および指定したインストールディレクトリが確認され、次のメッセージを使用してシステムの状態が通知されます。
インストールの準備ができました。このメッセージが表示されたときは、インストーラの処理を続けることができます。
インストールの準備ができました。メモリーが推奨レベルに対して不足しています。このメッセージが表示されたときは、インストーラの処理を続けることができますが、リソースを追加することを検討するべきです。
システムはインストールの準備ができていません: このメッセージが表示された場合は、インストーラで処理を続行することはできません。不足しているパッチをインストールするなどの対処が必要になります。
製品コンポーネントの多くは、インストール時にある程度の設定を行う必要があります。インストール時に実行する必要のある設定の範囲は、選択した製品コンポーネントおよびインストールタイプによって異なります。
インストーラで、次の設定タイプを使用できます。
あとで設定:インストール時は、インストールに必要な最小限の値だけを入力し、インストール後に詳細な設定を行います。
今すぐ設定:インストール時に、インストール中の設定が可能な製品コンポーネントを設定できます。指定する情報は、いくつかの共通パラメータだけの場合もあれば (共通サーバー設定)、コンポーネントに固有の詳細なパラメータを含む場合もあります (製品コンポーネント設定)。
インストール時の設定やインストール後の設定を行うときは、設定情報の値を記録しておくことが重要になります。多くの製品コンポーネントが正しく機能するかどうかは、ほかのコンポーネントの設定パラメータの値によって決まります。「今すぐ設定」インストールの終わりに表示される「インストールの要約」を見れば、指定した設定パラメータを確認できます。
「共通サーバー設定」は、複数の製品コンポーネントが使用するパラメータを設定します。たとえば、ほとんどの製品コンポーネントでは、管理 ID およびパスワードを指定する必要があります。これらの共通の値を設定することで、すべての製品コンポーネントの管理 ID のデフォルト値とパスワードのデフォルト値を設定できます。
製品コンポーネント設定は、特定の製品コンポーネントに適用するパラメータを設定します。これらの設定は、インストール時に「今すぐ設定」タイプを選択した場合にのみ要求されます。これらの設定の一部は、共通サーバー設定から取り込まれます。
グラフィカルインストーラを使用して、共有コンポーネントおよび一部の製品コンポーネントをアップグレードすることができます。グラフィカルインストールセッションでは、アップグレード可能な製品コンポーネントがホスト上に検出された場合、「アップグレードまたはインストールの選択」ページが表示されます。次の表は、インストーラでアップグレードできるコンポーネントの一覧です。該当する場合は、Solaris ゾーンの問題も説明しています。
表 1–1 Communications Suite インストーラ内でのアップグレードのサポート
製品コンポーネント |
インストーラでアップグレード可能な状況 |
Solaris ゾーンの問題 |
---|---|---|
Application Server |
Solaris 9 にバンドルされた Application Server 7.0 Solaris 10 にバンドルされた Application Server 8.0 Java ES 2005Q1 (リリース 3) とともにインストールされた Application Server 8.1.0 Java ES 2005Q4 (リリース 4) とともにインストールされた Application Server 8.1.2 |
Application Server を非大域疎ルートゾーンにインストールするには、その前に大域ゾーンから、バンドルされたバージョンを削除しておく必要があります。 |
HADB |
Java ES 2005Q1 (リリース 3) とともにインストールされた HADB Java ES 2005Q4 (リリース 4) とともにインストールされた HADB | |
Message Queue |
Solaris 9 にバンドルされた Message Queue Solaris 10 にバンドルされた Message Queue Java ES 2005Q1 (リリース 3) とともにインストールされた Message Queue Java ES 2005Q4 (リリース 4) とともにインストールされた Message Queue |
Message Queue は、大域ゾーンまたは完全ルート非大域ゾーンにのみインストールできます。 Message Queue は、常に大域ゾーンから非大域ゾーンに伝達されます。 |
Communications Express |
インストーラを使用し、ローカルの非大域疎ルートゾーンに UWC をインストールできません。代わりに、pkgadd を使用して UWC および Access Manager パッケージを手動で追加する必要があります。 |
これらの製品コンポーネントをどれもインストールしない場合は、「新しいソフトウェアのインストール」を選択できます。これらのコンポーネントのいずれかをインストールする場合は、「既存のソフトウェアのアップグレード」を選択してアップグレードセッションを開始します。アップグレードセッションの終了後に、新しいインストールセッションを開始できます。この機能は、テキストベースのインストール用にはサポートされていません。
インストール中に、互換性のないバージョンの製品コンポーネントがインストーラで検出され、それらをインストーラではアップグレードできない場合、上記以外のアップグレードの状況が発生することがあります。この場合、インストールを続行するにはまず特定の製品コンポーネントを削除するか手動でアップグレードする必要がある、というメッセージが表示されます。このようなアップグレードについて、Communications Suite 製品コンポーネントの場合は、『Sun Java Communications Suite 5 アップグレードガイド』、Java ES 製品コンポーネントの場合は、『Sun Java Enterprise System 5 アップグレードガイド (UNIX 版)』で詳しく説明されています。
共有コンポーネントは、選択された製品コンポーネントとともにインストーラによってアップグレードされます。共有コンポーネントは、専用のインストールセッションでアップグレードすることもできます。この場合、共有コンポーネントだけをインストールし、現在のリリースに一致させることができます。「共有コンポーネント」項目をインストールするように選択すると、Communications Suite に必要なすべての共有コンポーネントがインストールまたはアップグレードされます。
疎ルートファイルシステムを持つ Solaris 非大域ゾーンでインストーラを実行する場合、「共有コンポーネント」項目は選択できません。
インストールまたはアンインストールの実行中に、実行される処理のログレコードが生成されます。これらのレコードは、1 つのファイルに ULF (Unified Logging Format) 形式で保存されます。インストーラのログビューア (viewlog コマンド) は、これらのログレコードを調べるための使いやすいインタフェースを提供します。
インストールの完了後、ログビューアはインストーラとともに次の場所に置かれています。
Solaris SPARC の場合: /var/sadm/prod/SUNWcomm-entsys5i/Solaris_sparc
Solaris x86 の場合: /var/sadm/prod/SUNWcomm-entsys5i/Solaris_x86
Linux の場合: /var/sadm/prod/sun-comm-entsys5i/Linux_x86
アンインストール後は、ログビューアはインストールおよびアンインストールのユーティリティーとともに削除されます。詳細については、「アンインストールのしくみ」を参照してください。
ログとログビューアの使用手順については、「インストールログファイルの検証」を参照してください。
Communications Suite には、インストーラを使用してローカルホストにインストールしたコンポーネント製品を消去するためのアンインストールユーティリティーが用意されています。アンインストーラは、アンインストーラが稼働しているホストで製品の依存関係をチェックし、他の製品への依存が検出された場合は警告メッセージを出力します。
アンインストーラは、グラフィカル、テキストベース、またはサイレントの各モードで実行できます。インストールの完了後、アンインストーラは次の場所に置かれています。
Solaris OS の場合: /var/sadm/prod/SUNWcomm-entsys5
Linux の場合: /var/sadm/prod/sun-comm-entsys5
アンインストール後は、ログビューアはインストールおよびアンインストールのユーティリティーとともに削除されます。ULF ログ自体は削除されず、次の場所に残ります。
Solaris OS の場合: /var/sadm/install/logs
Linux の場合: /var/opt/sun/install/logs
アンインストーラの使用手順については、第 9 章「Communications Suite 製品コンポーネントのアンインストール」を参照してください。