Solaris for ISPs 管理ガイド

第 3 章 設定のガイドライン

Solaris for ISPs は、Solaris 基本環境に一連の ISP 向けのプラットフォーム拡張機能各種サービスを付加するものです。この章では、ネットワークホストに Solaris for ISPs のプラットフォーム拡張機能と各種サービスをインストールするときのホスト構成のガイドラインを示します。構成情報は Solaris for ISPs のインストールの成否を決定するものなので、この章は注意深くお読みください。

インストールシナリオ

Solaris for ISPs をインストールする前に、ネットワーク計画を作成する必要があります。この節では、テスト済みの Solaris for ISPs ネットワークホストの設定例を 2 つ示します。使用環境に近い設定例を参考にして、実際のネットワークホストを設定してください。

ネットワークの設定

この節では、基本設定拡張設定の 2 つの例を示し、それぞれのハードウェア構成における要件と推奨設定を示します。


注 -

この設定例では、ネットワーク中にファイアウォールは存在しないものとします。インターネットのファイアウォール製品を使用して、Solaris for ISPs ホストとのネットワークトラフィックを制御する場合は、セキュリティ設定をチェックして、Solaris for ISPs ホストが必要とするタイプの通信が可能になっていることを確認してください。このマニュアルでは、ファイアウォール製品を使用する場合の設定方法については説明しません。


基本設定

基本設定の例を次の図に示します。

図 3-1 基本構成

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基本設定のハードウェア要件

基本設定のホスト構成

この例の 3 つのホストをホスト A、ホスト B、ホスト C とします。たとえば、各ホストサーバーを次のように構成します。

拡張設定

拡張設定の例を図 3-2 に示します。

図 3-2 拡張構成

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拡張設定のハードウェア要件

拡張設定のホスト構成

この例の 4 つのホストをホスト A、ホスト B、ホスト C、ホスト D とします。たとえば、各ホストサーバーを次のように構成します。


注 -

ネットワークホストの設定計画が完了したら、Solaris for ISPs のインストールのために各ホストを準備します。設定計画に合わせてホストを準備する方法については、Solaris for ISPs のプラットフォーム拡張機能を参照してください。


セキュリティ問題

インターネットへのアクセスが可能なネットワークには、必ずセキュリティ上のリスクが伴います。また、Solaris for ISPs の導入によってもリスクが生じます。いずれにしても、ネットワークを保護するためのセキュリティ対策が必要になります。以降の項では、そのためのシステム管理方法と、ネットワークのセキュリティ強化のための Solaris for ISPs 機能について説明します。

インターネットの一般的なセキュリティ問題

ネットワーク同士をインターネットで接続すると、サービスの中断、不正ユーザーの侵入、重大な損害が発生する可能性があります。この項では、インターネットで知られている注意すべきセキュリティ問題について説明します。それらのセキュリティ対策については、「セキュリティ強化策」を参照してください。

Solaris for ISPs のセキュリティ問題

この項では、Solaris for ISPs の機能のうち、ソフトウェアをセキュリティリスクにさらす可能性があるものについて説明します。それらの対策については、「セキュリティ強化策」を参照してください。

セキュリティ強化策

システムへの不正なアクセス、データの破壊や変更を防ぎ、また正規ユーザーのネットワークの利用が妨げられないようにするためのセキュリティ強化策を次に示します。

設定時の注意事項

この節では、ホスト構成時に注意しなければならない Solaris for ISPs のデフォルト機能について説明します。この節で取り上げるトピックは次のとおりです。

Solaris 基本環境の変更

ホスト構成中に加えられる Solaris サービスへの変更には、一度限りの設定と再構成可能な設定があります。インストールに関するデフォルト設定をそのまま使用すると、Solaris for ISPs をインストールするホストの基本環境がデフォルト設定に従って変更されます。


注 -

ホスト構成時には、必ず Solaris 基本環境への変更事項を確認し、必要に応じて変更してください。これらの変更は Solaris for ISPs の将来のバージョンに組み込まれない可能性があります。


一度限りの設定

Solaris for ISPs には、基本環境を構成するスクリプトがあり、パスワードのセキュリティを強化しファイルへのアクセスをファイル所有者に限定するために一度だけ実行されます。このスクリプトは、最初のインストール作業の一環として、一連のデフォルト変更を行います。このスクリプトの内容は、ftp://ftp.wins.uva.nl:/pub/solaris/fix-modes.tar.gz に入っているスクリプトと同様です。一度限りの変更を元に戻す方法については、「Solaris 基本環境の復元」を参照してください。

この項では、Solaris for ISPs を最初にインストールするときに、基本環境に対して自動的に加えられる変更について詳しく説明します。Solaris for ISPs をインストールする前に、必ずこの項を読んでください。


注 -

基本環境を変更するスクリプトが実行されますが、変更が加えられるのは、ファイルに対して矛盾した変更がユーザーによって設定されていない場合に限ります。


再構成可能な設定

Solaris for ISPs のプラットフォーム拡張機能と各種サービスをデフォルト構成でインストールすると、そのホストのデフォルトのサービス動作が変わります。つまり、Solaris for ISPs ソフトウェアをインストールしたシステムにおいて、あまり重要でない Solaris ネットワークユーティリティを無効にして、サーバーのセキュリティを強化します。


注 -

ホスト構成時には必ずデフォルト構成を確認し、必要に応じて変更してください。


デフォルト構成を使用すると、特に指定しなければあまり重要でない Solaris サービスが無効になります。これは必須ではありませんが、セキュリティホールの可能性を排除資源を保護するために、そのようなサービスを無効にすることをお勧めします。特に指定がなければ、サービスの有効または無効を変更するために inetd.conf が変更されます。この変更を元に戻す方法については、「Solaris 基本環境の復元」を参照してください。

セキュリティホールの可能性の排除

パスワードの流出と不正ユーザーによるアクセスを防ぐために、次の各サービスを無効にすることをお勧めします。


注 -

デフォルト設定を使用してインストールした場合、無効になった 「r」 コマンドを使用してホストにアクセスすることはできません。


システム情報を不正ユーザーから保護するために、次の各サービスを無効にすることをお勧めします。次の各サービスを無効にすると、サービスからのネットワーク要求に対してホストからの応答を拒否することにより、システム情報へのアクセスが制限されてシステムセキュリティが向上します。

資源の保護

次の CDE と OpenWindowsTM サービスは、特に必要でない限り無効にすることをお勧めします。次の各サービスを無効にすることで、システムパフォーマンスが向上します。

次のネットワーク (inetd) サービスは、特に必要でない限り無効にすることをお勧めします。次の各サービスを無効にすると、資源が解放されてシステムパフォーマンスが向上します。次に示すネットワークユーティリティが必要な場合は、デフォルト構成を変更してください。

次の各サービスは、絶対に必要な場合を除いて無効にすることをお勧めします。次の各サービスを無効にすると、システムパフォーマンスが向上します。次に示すサービスが必要な場合は、デフォルト構成を変更してください。


注 -

ホスト構成中に Solaris サービスの有効または無効に関するオンラインヘルプを表示できます。


Solaris 基本環境の復元

ホスト構成中に行われるシステムのセキュリティ強化やパフォーマンス向上のための調整は、Solaris for ISPs の次のバージョンには組み込まれない可能性があります。この項では、ホスト構成中に加えた変更を元に戻して、Solaris 基本環境を復元する手順について説明します。

元の環境に戻すマシンにログインして、スーパーユーザーのアクセス権を取得します。どの変更を元に戻すかを決定し、次のリストからそれに対応する手順を実行します。

ログファイルの管理

この項では、ログファイル管理を行う常駐デーモン (hclfmd) について説明します。この常駐デーモンはスーパーユーザーの権限で実行されます。ブート時に起動され、次の作業を行います。

ユーザー定義スクリプトの作成

Solaris for ISPs のインストールの最後にユーザー定義スクリプトを実行して、インストールや構成方法を変更できます。変更パラメータはシェルスクリプト形式で記述します。たとえば、次のようなコマンドを記述できます。 echo "foo" >> /etc/ftpusers

Solaris for ISPs をインストールするときのホスト構成 (「Post-Configuration」コマンド画面) で、作成しておいたユーザー定義スクリプトへのパスを指定するか、各コマンドを入力します。ユーザー定義スクリプトは、Solaris for ISPs のバッチインストールの最後に実行されます。


注 -

ユーザー定義スクリプトはオプションなので、必要がなければ作成しなくてもかまいません。


インストールの最後に実行されるユーザー定義スクリプトでは、たとえば次のようなプログラムを実行します。

管理 Web サーバーのデフォルト設定の復元

Sun Internet Administrator は、Web サーバーのユーザーインタフェースを使用して管理機能を実行します。この Web サーバーを管理 Web サーバー (AWS) といいます。管理 Web サーバーは必要に応じて構成できます。構成方法については、オンラインヘルプを参照してください。この項では、デフォルト構成を保存しておいていつでも復元できるように、管理 Web サーバーのデフォルト構成ファイルが入っている場所とその復元方法について説明します。

管理 Web サーバーのデフォルト構成ファイルは、 /etc/opt/SUNWixamc/awsconf/default/*/var/opt/SUNWixamc/awsconf にあります。管理 Web サーバーを再構成するときは、/var/opt/SUNWixamc/awsconf だけを変更します。

デフォルト設定を復元するには、/etc/opt/SUNWixamc/awsconf/default/*/var/opt/SUNWixamc/awsconf にコピーします。


注 -

Sun Internet Administrator コンソールを効率よく使用するには、 aws.confsite.confmap.confrealms.conf、および access.acl 内のデフォルト設定を変更してはいけません。