TotalNET Advanced Server 5.2 の管理

第 6 章 トランスポートの構成

この章では、LM-NT-OS/2、NetWare、AppleTalk の各レルムにおけるトランスポートとインタフェースの管理方法について説明します。

TAS のトランスポート (システムレベルで定義され、全レルムから参照可能な低レベルのネットワークプロトコル) は次の要素で構成されます。

この章で示す構成および管理の画面には、1 つのオブジェクトに対して、リストからの選択とテキストフィールドへの入力の両方が可能なものがあります。1 つのオブジェクトまたは属性に対して両方を指定した場合、入力した値の方がリストから選択した値よりも優先されます。

この章の構成を次に示します。

6.1 TCP/IP 構成の変更

NetBIOS-over-TCP/IP インタフェースはルーターを介した複数のサブネットをサポートできるので、LAN Manager、Windows NT、Windows for Workgroups、Windows 95、OS/2 のクライアントは、NetBIOS ブロードキャストを使用して通信できます。

そのためには、組み込みの ENS (Enterprise Name Service) を使用します。ENS には、各ブロードキャストサブネット上に最低 1 つの ENSA (UNIX ENS Agent) と、NetBIOS 名を IP アドレス にマッピングするディレクトリとして機能する NDA (NetBIOS Directory Agent) が必要です。ENS を構成するには、NDA を実行するホストの IP アドレスとポート番号を定義します (デフォルトと異なる場合のみ)。

ENS クライアントとしてマルチホームホストを設定できます。これは、それぞれが NetBIOS-over-TCP/IP を実行する複数のネットワークインタフェースを持つホストです。このようなホストは、各ネットワークインタフェース上で同じ NetBIOS 名を宣言しても、 ENS から名前照会の否定応答を返されることはありません。このネットワークセグメント内では、どのホストも同じ ENS クライアントポートを使用しなければなりません。また、上記の設定を、関連するすべての NetBIOS ノードで一貫して行った場合は、NetBIOS 名の有効範囲も定義できます。

TCP/IP 構成を変更する手順を次に示します。

  1. 次のリンクをたどります。

    • 「Transports」->「TCP/IP NetBIOS Configuration」

      次のような「TCP/IP NetBIOS Configuration」画面が表示されます。

      Graphic
  2. 必要に応じて次の属性値を選択または入力します。

    • 「Enables ENS Client」- マルチホームホスト (それぞれが NetBIOS-over-TCP/IP を実行する複数のインタフェースを持つホスト) が、ENS エージェントから名前照会の否定応答を返されることなく、各ネットワークインタフェース上で同じ NetBIOS 名を宣言できるようにするオプション。このオプションは、アクティブな ENS を持たないシステム、またはインタフェースを 1 つしか持たないシステムでは無効です。

    • 「ENS Client port」- TAS が ENS クライアントブロードキャストを送信するポート番号。このブロードキャストにより、ホスト側の重複した NetBIOS 名宣言に関する ENS エージェントからの否定応答を回避できます。このフィールドには、1 〜 65535 の値を入力します。

    • 「ENS NDA IP address」- NDA (Network Directory Agent) として機能するホストの IP アドレス。このフィールドにアドレスを入力することにより、このホストを ENS エージェントとして設定できます。

    • 「ENS NDA port」- NDA にデータを送信するときの送信先 IP ポート番号。ネットワーク上に ENS が存在し、デフォルトポート番号の 227 を使用できないシステムの場合は、ネットワーク上のすべての ENSA 上でこのオプションを指定します。このオプションは、「ENS NDA IP address」を指定した場合にのみ使用します。このフィールドには、1 〜 65535 の値を入力します。

    • 「Run NDA server」- このシステムで NDA (Network Directory Agent) を実行するためのオプション。ネットワーク上で NDA インスタンスを 1 つだけ実行し、他のシステムの NetBIOS 構成では「ENS NDA IP address」にこのシステムの IP アドレスを指定します。一般に、NDA はシステムの初期化時に起動します。

    • 「NetBIOS Name scope」- すべての NetBIOS 名の最後に追加される不可視文字列で、LM-NT-OS/2 レルム内のサービスが使用します。このフィールドには、256 文字までの印字可能な ASCII 文字列を入力します。LM-NT-OS/2 レルム内の TAS サービスとサービスクライアントは、同じ有効範囲名を持たないと正しく通信できません。

    • 「Disable TCP Keepalives」- このオプションを選択すると、すべての TCP セッションのキープアライブが無効になります。

  3. 「Submit」をクリックします。

    「TCP/IP NetBIOS Configuration」画面が表示されます。

  4. 「OK」をクリックします。

    UNIX コマンドラインから TCP/IP 構成を変更するには、tntransport コマンドを使用します。

6.2 TCP/IP インタフェースの管理

この項では、TAS に TCP/IP ネットワークインタフェースを追加する手順について説明します。インタフェースの IP アドレスは、あらかじめ TAS ホストに登録されていなければなりません。登録済みの IP アドレスは IP アドレスリストに入れるだけで、TAS プロセスで使用可能になります。TAS の IP アドレスは、ピリオドで区切られたインターネット形式で表現されます。

LM-NT-OS/2 レルムで TCP/IP インタフェースを作成または削除する手順を次に示します。

  1. 次のリンクをたどります。

    「Transports」->「TCP/IP Addresses」

    「List of TCP/IP Addresses」画面が表示されます。

  2. 削除する TCP/IP アドレスをリストから選択するか、作成する TCP/IP アドレス名をテキストフィールドに入力します。TCP/IP アドレスが存在しない場合、「Delete」ボタンは表示されません。

  3. 「Create」または「Delete」をクリックします。

    「Create」をクリックすると、次のような「TCP/IP Address tcpipaddress」画面が表示されます。「OK」をクリックします。

    「Delete」をクリックすると、「Confirmation」画面が表示されるので、「OK」をクリックします。「TCP/IP Addresses」画面が表示されます。「OK」をクリックします。

    UNIX コマンドラインから TCP/IP インタフェースを管理するには、tniface コマンドを使用します。

6.3 NetBIOS 名の静的マッピングの管理

UDP ブロードキャストデータグラムは、一般にリモートサーバーとリモートワークステーションが持つ NetBIOS 名を動的に解決します。NetBIOS 名から IP アドレスへの静的マッピングを定義することにより、この動的解決機能を強化できます。

NetBIOS 名の静的マッピングでは、1 〜 15 文字の NetBIOS 名、0 〜 255 の名前タイプ、対応する IP アドレスを指定します。TAS で NetBIOS 名を解決するには、最初に静的な NetBIOS 名のリストを検索し、見つからなければ、その名前の照会を伝送します。ルーターを介した名前解決を可能にするには、ENS (Enterprise Name Service) を使用する (「6.1 TCP/IP 構成の変更」を参照) か、WINS (Windows Internet Naming Service) を使用します。

静的 NetBIOS 名を作成、変更、削除する手順を次に示します。

  1. 次のリンクをたどります。

    「Transports」->「Static NetBIOS Name mappings」

    「Static NetBIOS Name mappings」画面が表示されます。

  2. 変更または削除する NetBIOS 名をリストから選択するか、作成する NetBIOS 名をテキストフィールドに入力します。削除する場合は、複数の NetBIOS 名を選択できます。NetBIOS 名を指定するときは、有効なサービス名にタイプコード (通常は :20) を付けて入力しなければなりません。NetBIOS 名マッピングが存在しない場合、リストは空になっています。

  3. 「Create」、「Modify」、「Delete」のいずれかをクリックします。NetBIOS 名の静的マッピングが存在しない場合、「Modify」と「Delete」ボタンは表示されません。

    「Create」または「Modify」をクリックすると、次のような「Static NetBIOS Name Mapping servicename」画面が表示されます。ステップ 4 に進みます。

    「Delete」をクリックすると、「Confirmation」画面が表示されるので、「OK」をクリックします。「Static NetBIOS Names」画面が表示されます。「OK」をクリックします。ステップ 4 には進みません。

    Graphic
  4. 次の属性値を入力します。

    • 「Name」- NetBIOS 名。「Modify」をクリックした場合、この属性は表示されません。

    • 「IP Address」-「Name」で指定した名前をマッピングする IP アドレス。

  5. 「Submit」をクリックします。

    「Static NetBIOS Name Mapping servicename」画面が表示されます。

  6. 「OK」をクリックします。

    UNIX コマンドラインから NetBIOS 名の静的マッピングを管理するには、tnsname コマンドを使用します。

6.4 NetBEUI インタフェースの管理

Solaris および AIX のプラットフォーム上で、NetBEUI インタフェースを作成または削除する手順を次に示します。

  1. 次のリンクをたどります。

    「Transports」->「NetBEUI Interfaces」

    「List of NetBEUI Interfaces」画面が表示されます。

  2. 削除する NetBEUI インタフェースをリストから選択するか、作成する NetBEUI インタフェース名をテキストフィールドに入力します。

  3. NetBEUI インタフェースを作成する場合は「Create」をクリックし、削除する場合は「Delete」をクリックします。NetBEUI インタフェースが存在しない場合、「Delete」ボタンは表示されません。

    「Create」をクリックすると、「NetBEUI interface creation successful」画面が表示されます。「OK」をクリックします。

    「Delete」をクリックすると、「Confirmation」画面が表示されるので、「OK」をクリックします。「NetBEUI Interface」画面が表示されます。「OK」をクリックします。

6.5 IPX/SPX 構成の変更

一般に、IPX/SPX 構成はデフォルト値のまま使用できます。デフォルト値を変更するのは、Syntax テクニカルサポートから指示された場合と、特定の問題を解決する場合だけにしてください。IPX/SPX 構成では、ルーティング通知に関する設定を行います。具体的には、IPX RIP (Routing Information Protocol) パケット間ギャップと最大エントリの指定、IPX SAP 応答パケット間ギャップ、最大エントリ、および最大パケットサイズの指定、そして最大 SPX パケットサイズの指定を行います。

UNIX コマンドラインから IPX/SPX 構成を変更するには、tntransport コマンドを使用します。

6.6 IPX/SPX インタフェースの管理

IPX/SPX トランスポートインタフェースを作成、変更、削除する手順を次に示します。たいていの UNIX ホストシステムでは、UNIX コマンドラインから netstat -i コマンドを実行して、有効なデバイス名を調べることができます。

  1. 次のリンクをたどります。

    「Transports」->「IPX/SPX Interfaces」

    「IPX/SPX Interface List」画面が表示されます。

  2. 「Create」、「Modify」、「Delete」のいずれかをクリックします。IPX/SPX インタフェースが存在しない場合、「Modify」と「Delete」ボタンは表示されません。

    「Create」をクリックすると、次のような「IPX/SPX configuration」画面が表示されます。ステップ 3 に進みます。

    「Modify」をクリックすると、次の「IPX/SPX configuration」画面に類似した「IPX/SPX configuration on ipxspxinterface」画面が表示されます。ステップ 3 に進みます。

    「Delete」をクリックすると、「Confirmation」画面が表示されるので、「OK」をクリックします。「IPX/SPX Interface」画面が表示されます。「OK」をクリックします。ステップ 3 には進みません。

    Graphic
  3. 必要に応じて次の属性値を選択または入力します。

    • 「Device」- ネットワークインタフェースのデバイス名。Solaris 2.x のように DLPI を使用するシステムでは、devicename:ppa-number 形式で指定するか、特別な内部デバイス値で指定します。インタフェースを作成する場合は、このフィールドに必ず値を入力しなければなりません。「Modify」をクリックした場合、この属性は表示されません。

    • 「Frame Type」- このインタフェースで使用するフレームタイプを次の中から選択します。

      • ethernet_ii

      • ethernet_802.2

      • ethernet_802.3

      • ethernet_snap

      • token-ring

      • token-ring_snap

      • internal

      デフォルト値は、Ethernet DLPI デバイスの場合は ethernet_ii、トークンリング DLPI デバイスの場合は tokenring、特殊な内部ネットワークの場合は internal になります。「Modify」をクリックした場合、この属性は表示されません。

    • 「IPX Net Number」- このインタフェースの IPX ネットワーク番号 (16 進表現)。

    • 「Maximum Transfer Unit」- IPX/SPX ネットワークインタフェースの最大転送ユニットサイズ。デフォルト値は、DLPI サービスの場合は DLPI ドライバが返す値、内部デバイスの場合は 8192 になります。

  4. 「Submit」をクリックします。

    「IPX/SPX Interfaces ipxspxinterface」画面が表示されます。

  5. 「OK」をクリックします。

    UNIX コマンドラインから IPX/SPX インタフェースを管理するには、tniface コマンドを使用します。

6.7 SAP の管理

SAP (Service Advertisement Protocol) を使用すると、ネットワークサーバーやルーターなどのネットワークデバイス同士が、使用可能なネットワークサービスに関する情報を交換できます。

ワークステーションは、必要なサービスを提供するサーバーのネットワークアドレスを SAP で得られた情報から取り出します。インストール済みサービスの IPX SAP テーブルにエントリを追加できます。SAP の詳細については、Novell マニュアルを参照してください。

SAP を作成、変更、削除する手順を次に示します。

  1. 次のリンクをたどります。

    「Transports」->「Service Advertisement Protocol Configuration」

    「Service Advertisement Protocol List」画面が表示されます。

  2. 変更または削除する SAP をリストから選択するか、作成する SAP をテキストフィールドに入力します。削除する場合は、複数の SAP を選択できます。SAP を指定するときは、有効なサービス名にタイプコード (通常は :20) を付けて入力しなければなりません。SAP が存在しない場合、リストは空になっています。

  3. 「Create」、「Modify」、「Delete」のいずれかをクリックします。SAP が存在しない場合、「Modify」と「Delete」ボタンは表示されません。

    「Create」または「Modify」をクリックすると、次のような「SAP Information for servicename」画面が表示されます。ステップ 4 に進みます。

    「Delete」をクリックすると、「Confirmation」画面が表示されるので、「OK」をクリックします。「Service Advertisement Protocol」画面が表示されます。「OK」をクリックします。ステップ 4 には進みません。

    Graphic
  4. 必要に応じて次の属性値を入力します。

    • 「Name」- SAP サービス名。「Modify」をクリックした場合、この属性は表示されません。

    • 「Fixed Socket」- このサービスの固定ソケット番号。固定ソケット番号は、16 進で 4 桁までの値で指定します。

  5. 「Submit」をクリックします。

    「Service Advertisement Protocol sapname」画面が表示されます。

  6. 「OK」をクリックします。

    UNIX コマンドラインから SAP を管理するには、tnadvert コマンドを使用します。

6.8 AppleTalk 構成の変更

AppleTalk トランスポート属性を変更する手順を次に示します。

  1. 次のリンクをたどります。

    「Transports」->「AppleTalk Configuration」

    「AppleTalk Configuration」画面が表示されます。

    Graphic
  2. 必要に応じて次の属性値を入力または選択します。

    • 「Local Zone」- このシステムの AppleTalk ローカルゾーン。

    • 「AppleTalk Router」- AppleTalk プロトコルスタックが複数のネットワークインタフェース間でパケットのルーティングを行うようにするオプション。このオプションは、すべての AppleTalk インタフェースをシードルーターとして設定するときに選択します。

  3. 「Submit」をクリックします。

    再び「AppleTalk Configuration」画面が表示されますが、今回は Update Successful と表示されます。

  4. 「OK」をクリックします。

    UNIX コマンドラインから AppleTalk 構成を管理するには、tntransport コマンドを使用します。

6.9 AppleTalk インタフェースの管理

AppleTalk インタフェースを作成、変更、削除する手順を次に示します。

  1. 次のリンクをたどります。

    「Transports」->「AppleTalk Interfaces」

    「AppleTalk Interface List」画面が表示されます。

  2. 変更または削除するインタフェースをリストから選択するか、作成するインタフェース名をテキストフィールドに入力します。削除する場合は、複数のインタフェースを選択できます。AppleTalk インタフェースが存在しない場合、リストは空になっています。

  3. 「Create」、「Modify」、「Delete」のいずれかをクリックします。AppleTalk インタフェースが存在しない場合、「Modify」と「Delete」ボタンは表示されません。

    「Create」または「Modify」をクリックすると、次のような「AppleTalk configuration on interfacename」画面が表示されます。ステップ 4 に進みます。

    「Delete」をクリックすると、「Confirmation」画面が表示されるので、「OK」をクリックします。「AppleTalk Interface」画面が表示されます。「OK」をクリックします。ステップ 4 には進みません。

    Graphic
  4. 必要に応じて次の属性値を入力または選択します。

    • 「Name」- インタフェース名。「Modify」をクリックした場合、この属性は表示されません。

    • 「Use DDP Checksum」- TAS が AppleTalk パケット内の DDP チェックサムの使用を制御するようにするオプション。

    • 「Zone List」- ローカルセグメントで使用可能な AppleTalk ゾーン名をコンマで区切ってリストします。AppleTalk 環境では、ゾーンはクライアントの論理グループを構成します。ゾーンを使用すると、ドメインの場合と同様にネットワークから資源 (サーバーやプリンタ) を簡単に探し出せるようになります。このオプションを使用する場合は、「Default Zone」と「Net Range」も指定する必要があります。この 3 つの属性を組み合わせることにより、このインタフェースをシードルーターとして設定できます。

    • 「Default Zone」-「Zone List」に指定されているゾーン名の 1 つ。このオプションを使用する場合は、「Zone List」と「Net Range」も指定する必要があります。この 3 つの属性を組み合わせることにより、このインタフェースをシードルーターとして設定できます。

    • 「Net Range」- ネットワーク番号、またはネットワーク番号の範囲 (範囲を指定するときは、番号 - 番号の形式で指定)。このオプションを使用する場合は、「Zone List」と「Default Zone」も指定する必要があります。この 3 つの属性を組み合わせることにより、このインタフェースをシードルーターとして設定できます。

  5. 「Submit」をクリックします。

    「AppleTalk Interface interfacename」画面が表示されます。

  6. 「OK」をクリックします。

    UNIX コマンドラインから AppleTalk インタフェースを管理するには、tniface コマンドを使用します。