このマニュアルは、Sun WBEM SDK と SolarisTM WBEM Services について説明しています。Sun WBEM SDK は、ソフトウェア開発者向けのツールキットで、WBEM 対応オブジェクトを管理する標準ベースのアプリケーションを作成できます。このソフトウェアは、プロバイダ (データにアクセスするために管理対象オブジェクトと通信を行うプログラム) の作成にも使用できます。
Solaris WBEM Services ソフトウェアは、 Solaris オペレーティング環境に Sun が WBEM を実装したものです。このソフトウェアには、WBEM 対応管理アプリケーションと主要なコンポーネントが含まれます。
このマニュアルは、次のような開発者を対象としています。
システムとネットワークアプリケーションの開発者
このマニュアルは、CIM のクラスとインスタンスに格納される情報を管理するアプリケーションを開発するプログラマに役立ちます。アプリケーションプログラマは、通常、Sun WBEM API を使用して定義済み CIM クラスおよび CIM インスタンスのプロパティの取得や設定を行います。
システム設計技術者
リソース (プロセッサ、メモリー、ルーターなどの管理可能デバイス) を提供する設計技術者は、標準の CIM 形式のデバイス情報を CIM Object Manager に伝える必要があります。この伝達は、一般にプロバイダと呼ばれるソフトウェアによって行われます。システム設計技術者は、WBEM API を使用してクラス、インスタンス、およびプロパティを作成します。
システム設計技術者は、管理対象リソースの新しいグループ (CIM クラス) を記述するクラス設計者、および CIM クラスの集まり (スキーマ) を記述するスキーマ設計者と共同で作業を行う場合もあります。スキーマは、Microsoft Windows 32 ビットオペレーティング環境や Solaris オペレーティング環境のような特定のシステム環境における管理対象オブジェクトを記述します。
このマニュアルは、管理アプリケーションを作成する場合に Sun WBEM のアプリケーションとツールをどのように使用するかについて説明しています。
このマニュアルは、読者に次の知識があることを前提としています。
オブジェクト指向プログラミングの概念
Java プログラミング
Common Information Model (CIM) 概念についての十分な知識
知識が不十分な場合には、次の書籍を参考にすることをお勧めします。
『JavaTM How to Program』
H. M. Deitel、P. J. Deitel 著、Prentice Hall 発行、ISBN 0-13-263401-5
『The Java Class Libraries』第 2 版、第 1 巻、Patrick Chan、Rosanna Lee、Douglas Kramer、Addison-Wesley 著、ISBN 0-201-31002-3
『CIM Tutorial』、Distributed Management Task Force 提供
次に、WBEM 技術に携わる場合に有用な Web サイトを示します。
Distributed Management Task Force (DMTF)
このサイト (http://www.dmtf.org) には、CIM の最新の開発情報、各種の作業グループについての情報、CIM スキーマの拡張についての問い合わせ方法などが掲載されています。
Rational Software
このサイト (http://www.rational.com/uml) では、Unified Modeling Language (UML) と Rose CASE ツールの関連文書を入手できます。
パート I では、Sun WBEM SDK 製品と Solaris WBEM Services 製品について紹介しています。
第 1 章「WBEM の概要」では、Web-Based Enterprise Management (WBEM)、Common Information Model (CIM)、Sun WBEM SDK、および Solaris WBEM Services について紹介しています。
パート II では、Sun WBEM SDK のコンポーネントのインストール方法と使用方法について説明しています。
第 2 章「Sun WBEM SDK のインストール」では、pkgadd コマンドを使用して Sun WBEM SDK をインストールする方法と、pkgrm コマンドを使用して Sun WBEM SDK を削除する方法について説明しています。
第 3 章「MOF コンパイラ」では、mofcomp コマンドのコマンド構文と、.mof ファイルのコンパイル方法について説明しています。
第 4 章「CIM WorkShop」では、CIM WorkShop を使用して CIM のクラス、インスタンス、メソッド、およびプロパティを処理する方法について説明しています。
第 5 章「アプリケーションプログラミングインタフェース」では、クライアント API の概要を述べるとともに、クライアント API を使用して CIM オブジェクトの作成と処理を行う例を示しています。
第 6 章「クライアントアプリケーションの作成」では、クライアント API を使用してクライアントアプリケーションを作成する方法について説明しています。
第 7 章「プロバイダプログラムの作成」では、プロバイダ API の概要を述べるとともに、プロバイダ (管理対象オブジェクトと CIM Object Manager 間の仲介となるクラス) の作成方法について説明しています。
第 8 章「Sun WBEM SDK サンプルの使用」では、Sun WBEM SDK に付属しているコード例を実行する方法について説明しています。
第 9 章「エラーメッセージ」では、Sun WBEM SDK API のエラーメッセージについて説明しています。
パート III では、Solaris WBEM Services (Solaris オペレーティング環境における Sun の WBEM の実装) のインストール方法と使用方法について説明しています。
第 10 章「Solaris WBEM Services のインストール」では、pkgadd コマンドを使用して Solaris WBEM Services をインストールする方法と、pkgrm コマンドを使用して削除する方法について説明しています。
第 11 章「CIM Object Manager」では、cimom コマンドの構文、および CIM Object Manager の起動と停止について説明しています。
第 12 章「セキュリティの管理」では、セキュリティ機能、およびネームスペースとユーザーに対するアクセス権の設定方法について説明しています。
第 13 章「イベントのロギング」では、ロギング機能について説明しています。
付録 A 「Common Information Model (CIM) の用語と概念」 では、CIM の用語と概念について説明しています。
用語集では、このマニュアルで使用されている用語の意味について説明しています。
SunTM Software Shop プログラムを利用して、米国 Sun MicrosystemsTM, Inc. (以降、Sun とします) のマニュアルまたは AnswerBook2 CD をご注文いただけます。
マニュアルのリストと注文方法については、http://www.sun.com/software/shop/ を参照してください。
http://docs.sun.com では、Sun が提供しているオンラインマニュアルを参照することができます。docs.sun.com にあるマニュアルタイトルや、特定の主題などをキーワードとして検索することもできます。
このマニュアルでは、次のような字体や記号を特別な意味を持つものとして使用します。
表 P-1 表記上の規則
字体または記号 |
意味 |
例 |
---|---|---|
AaBbCc123 |
コマンド名、ファイル名、ディレクトリ名、画面上のコンピュータ出力、またはコード例を示します。 |
.login ファイルを編集します。 ls -a を使用してすべてのファイルを表示します。 system% |
AaBbCc123 |
ユーザーが入力する文字を、画面上のコンピュータ出力とは区別して示します。 |
system% su password: |
AaBbCc123 |
変数を示します。実際に使用する特定の名前または値で置き換えます。 |
ファイルを削除するには、rm filename と入力します。 |
『 』 |
参照する書名を示します。 |
『コードマネージャ・ユーザーズガイド』を参照してください。 |
「 」 |
参照する章、節、ボタンやメニュー名、または強調する単語を示します。 |
第 5 章「衝突の回避」を参照してください。 この操作ができるのは、「スーパーユーザー」だけです。 |
¥ |
枠で囲まれたコード例で、テキストがページ行幅を越える場合、バックスラッシュは継続を示します。 |
sun% grep `^#define ¥ XV_VERSION_STRING' |
ただし AnswerBook2TM では、ユーザーが入力する文字と画面上のコンピュータ出力は区別して表示されません。
コード例は次のように表示されます。
[ ] は省略可能な項目を示します。上記の場合、filename は省略してもよいことを示します。
| は区切り文字 (セパレータ) です。この文字で分割されている引数のうち 1 つだけを指定します。
キーボードのキー名は英文で、頭文字を大文字で示します (例: Shift キーを押します)。ただし、キーボードによっては Enter キーが Return キーの動作をします。
ダッシュ (-) は 2 つのキーを同時に押すことを示します。たとえば、Ctrl-D は Control キーを押したまま D キーを押すことを意味します。
このマニュアルでは、英語環境での画面イメージを使っています。このため、実際に日本語環境で表示される画面イメージとこのマニュアルで使っている画面イメージが異なる場合があります。本文中で画面イメージを説明する場合には、日本語のメニュー、ボタン名などの項目名と英語の項目名が適宜、併記されています。
「x86」という用語は、一般に Intel 8086 ファミリに属するマイクロプロセッサを意味します。これには、Pentium、Pentium Pro の各プロセッサ、および AMD と Cyrix が提供する互換マイクロプロセッサチップが含まれます。このマニュアルでは、このプラットフォームのアーキテクチャ全体を指すときに「x86」という用語を使用し、製品名では「Intel 版」という表記で統一しています。