この章では Sun WBEM SDK の概要と、このソフトウェアのインストールとアンインストールの方法を説明します。内容は次のとおりです。
Sun WBEM SDK は、ソフトウェア開発者用のツールキットで、WBEM 環境で実行できるアプリケーションの開発に使用できます。このツールキットを使用すると、WBEM に対応した任意の環境の Java プラットフォーム上で動作するプロバイダ (WBEM コンポーネントと CIM Object Manager 間で通信を行うプログラム) も開発できます。
プロバイダは、CIM Object Manager が動作しているコンピュータで起動する必要があります。SUN WBEM バージョン 1.0 は、Windows 環境では CIM Object Manager をサポートしていません。そのため、Microsoft Windows 32 ビットオペレーティングシステム用のプロバイダを開発する場合に Sun WBEM SDK を使用することはお勧めできません。
Sun WBEM SDK には、次のコンポーネントが含まれます。
CIM WorkShop
クライアント API
プロバイダ API
MOF コンパイラ
クライアントプログラムの例
プロバイダプログラムの例
『Sun WBEM 開発ガイド』
『Javadoc for Client and Provider API』
CIM WorkShop は、CIM のクラスとインスタンスの表示、CIM の新しいサブクラスとインスタンスの作成、サブクラスの新しいプロパティ、メソッド、および修飾子の追加と削除が行えるソフトウェアアプリケーションです。CIM WorkShop の使用方法については、第 4 章「CIM WorkShop」を参照してください。
クライアント Application Programming Interface (API) は、Java アプリケーションが CIM Object Manager に操作を要求するために使用する公開 API です。クライアント API の一覧と説明は、第 5 章「アプリケーションプログラミングインタフェース」を参照してください。
プロバイダ API は、CIM Object Manager とオブジェクトプロバイダが相互通信のために使用するインタフェースです。プロバイダは、これらのインタフェースを使用して、CIM Object Manager に特定の種類の動的データを提供できます。アプリケーションが CIM Object Manager に動的データを要求する場合、CIM Object Manager はこれらのインタフェースを使用して、登録されているプロバイダにその要求を引き渡します。プロバイダ API の詳細は、第 5 章「アプリケーションプログラミングインタフェース」を参照してください。
Managed Object Format (MOF) は、CIM データを表現する標準のテキスト形式です。CIM 仕様に従って開発された製品は、MOF 形式で情報交換が行える必要があります。
Sun WBEM SDK ソフトウェアは、MOF コンパイラ (mofcomp) を使用して MOF テキストファイルを Java クラスに変換します。Sun WBEM SDK は、内部的には Java クラスを使用して CIM データを記述します。
MOF 言語は、CIM のクラスとインスタンスを定義する構文を記述します。MOF を使用すると、開発者や管理者は CIM Object Manager Repository を簡単に手早く変更できます。
Sun WBEM SDK には、クライアント API を使用した Java プログラムの例が付いています。これらのプログラムは、/opt/SUNWconn/wbem/demo にインストールされます。これらのプログラムは、そのまま実行することも、独自のアプリケーションを構築するために利用することもできます。クライアントプログラム例の詳細は、第 8 章「Sun WBEM SDK サンプルの使用」の 「クライアント例の使用」を参照してください。
プロバイダプログラムの例では、プロバイダ API を使用しています。これらのプログラムを利用して、CIM の機能を特定の技術に展開するプロバイダ (管理対象オブジェクトと CIM Object Manager との通信を可能にするプロバイダなど) を開発できます。プロバイダプログラム例の詳細は、第 8 章「Sun WBEM SDK サンプルの使用」の 「プロバイダ例の使用」を参照してください。
Sun WBEM SDK には、『Sun WBEM 開発ガイド』と 『Javadoc for Client and Provider API』のマニュアルが付属しています。
Sun WBEM SDK キットをインストールするには、あらかじめ Java Development Kit (JDK) バージョン 1.1.7_05 または互換バージョンがインストールされている必要があります。
Sun WBEM SDK を単独で使用する製品としてインストールすることができます。また、Sun WBEM SDK と Solaris WBEM Services とを対話的に使用するようにインストールすることもできます。どちらの製品をインストールする場合でも、製品パッケージのインストールが必要です。パッケージには、各製品のファイル、インタフェース、およびコンポーネントが含まれます。
Sun WBEM SDK と Solaris WBEM Services は一部のパッケージを共有します。たとえば、これら 2 つのアプリケーションには クライアント API を含むパッケージ SUNWwbapi が必要です。
Sun WBEM SDK パッケージとそのインストール手順の詳細は、「Sun WBEM SDK のインストール」を参照してください。Solaris WBEM Services パッケージとそのインストール手順の詳細は、第 10 章「Solaris WBEM Services のインストール」、「Solaris WBEM Services のインストール」を参照してください。
Sun WBEM SDK のインストールの際に必要なパッケージを以下の表に示します。
表 2-1 Sun WBEM SDK パッケージ
必須パッケージ |
||
パッケージ名 |
項目名 |
説明 |
SUNWwbapi |
Sun WBEM SDK - API |
クライアント API, とプロバイダ API、および Sun WBEM SDK と Solaris WBEM Services を実行するのに必要な追加機能を含む。このパッケージは Sun WBEM SDK で提供される。このパッケージは両方の製品に必要である |
SUNWwbdev |
Sun WBEM Software Development Kit (SDK) |
CIM Workshop、CIM Workshop で使用するコンテキストヘルプ、および Sun WBEM SDK のグラフィックスファイルが含まれている |
オプションのパッケージ |
||
パッケージ名 |
項目名 |
説明 |
SUNWwbdoc |
Solaris WBEM Services - ドキュメント |
Sun WBEM SDK と Solaris WBEM Services をサポートするこのマニュアルが含まれている。このパッケージは Solaris WBEM Services で提供されるが、一方の製品をサポートするためにオプションでインストールすることもできる |
ローカライズされたパッケージ |
||
パッケージ名 |
項目名 |
説明 |
SUNWjwbd |
Sun WBEM SDK 日本語版 |
Sun WBEM SDK の日本語化されたバージョン |
SUNWjewbi |
Solaris WBEM Service Documentation 日本語版 |
Sun WBEM SDK と Solaris WBEM Service をサポートするこのマニュアルの日本語版 |
次のコマンドを入力して、システム上でスーパーユーザーになります。
% su |
メッセージに従い、スーパーユーザーのパスワードを入力します。
作業環境内で、パッケージが入っている位置にディレクトリを変更します。
システムプロンプトで、次のコマンドを入力してパッケージリストを表示します。
# pkgadd -d . |
パッケージリストが表示され、1 つまたはすべてのパッケージを選択するように指示するメッセージが表示されます。
インストールするパッケージ番号を入力します。
ほかのパッケージは Sun WBEM API に依存するため、最初に SUNWwbapi パッケージ (Sun WBEM API) をインストールしてください。
各パッケージのインストールが進行している間、その内容が表示されます。各パッケージのインストールが完了すると、次のメッセージが表示されます。 Installation of package_name was successful.
すべてのパッケージのインストールが終了した時点で、q と入力してパッケージのインストールルーチンを閉じます。
システムプロンプトで exit と入力して、スーパーユーザーとしてのログインを終了します。
Sun WBEM SDK のインストールが終わると、各製品コンポーネントを使用できます。次に、日常よく行う作業を示します。
コンピュータから Sun WBEM SDK のアンインストールを行うには、パッケージの削除を行います。 Sun WBEM SDK パッケージを削除しても、インストールされているすべてのファイルが削除されるわけではありません。たとえば、Solaris WBEM Services がインストールされている場合、この製品の関連パッケージは削除されません。Solaris WBEM Services のアンインストールについては、第 10 章「Solaris WBEM Services のインストール」を参照してください。
Sun WBEM SDK と Solaris WBEM Services の両方を削除しても、LDAP スキーマとデータファイルはインストールされたまま残ります。これらのファイルとファイルを含んでいるサブディレクトリは、パス /opt/SUNWconn/ldap から削除できます。しかし、LDAP データを削除すると、LDAP データを必要とするほかのアプリケーションでエラーが発生する可能性があります。LDAP データを削除したあとで Sun WBEM SDK または Solaris WBEM Services を再度インストールする場合は、LDAP データをインストールし直す必要があります。
次のコマンドを入力して、システム上でスーパーユーザーになります。
% su |
パスワードのプロンプトで、スーパーユーザーのパスワードを入力します。
システムプロンプトで、次のコマンドを入力してパッケージを削除します。
# pkgrm package_name |
package_name には、削除したいパッケージの名前を入力します。
次に示す確認メッセージが表示されたら、y と入力します。 "Do you want to remove this package?"
SUNWwbdev
SUNWwbdoc
SUNWwbapi パッケージは必ず最後に削除してください。これは、ほかのパッケージが SUNWwbapi パッケージに依存しているためです。
パッケージの削除が正常に行われると、次のメッセージが表示されます。
Removal of package_name was successful |
システムプロンプトで pkgrm コマンドを入力して各パッケージを削除します。
パッケージの削除が終了したら、exit と入力してスーパーユーザーを終了し、システムプロンプトに戻ります。