Oracle Financialsインプリメンテーション・ガイド リリース12 E05604-01 | ![]() 目次 | ![]() 前へ | ![]() 次へ |
この章の内容は、次のとおりです。
この章では、会計設定マネージャを使用して、1つ以上の会計設定内に複数の法的エンティティおよび会社を構成する方法を説明します。
会計設定では、1つ以上の法的エンティティまたはビジネス・ニーズ(法的エンティティが関係していない場合)に対する会計コンテキストを定義します。
参照: 「会計設定」
会計設定の定義は、次のような複数の要素に基づきます。
法的環境
同じ主要元帳で保持されている法的エンティティの数
ビジネス・ニーズ
取引処理ニーズ
取引に対する法的エンティティ・コンテキストを保守し、法的エンティティ・コンテキストを必要とするOracleの財務補助元帳を使用するには、法的エンティティを会計設定に割り当てる必要があります。法的エンティティ・コンテキストを必要としないビジネス・ニーズの場合、法的エンティティを会計設定に割り当てる必要はありません。
法的エンティティが関係している場合、一般的なルールでは、独自の主要元帳を必要とする各法的エンティティまたは法的エンティティのグループに対して別々の会計設定を定義します。つまり、法的エンティティで、次の属性のいずれかが他の法的エンティティと異なる必要がある場合は、異なる主要元帳が必要であるため、異なる会計設定が必要です。
勘定体系: ある法的エンティティには6セグメントの勘定体系が必要であり、別の法的エンティティには4セグメントの勘定体系が必要な場合があります。
会計カレンダ: ある法的エンティティでは4-4-5カレンダを使用し、別の法的エンティティでは月次カレンダを使用する場合があります。または、ある法的エンティティの会計年度末が別の法的エンティティと異なる場合があります。
主要通貨: 法的エンティティが様々な国で事業を展開し、独自の現地通貨を使用する必要がある場合があります。
補助元帳会計処理基準: 法的エンティティが様々な国または業界で事業を展開し、会計基準が異なる場合があります。
元帳処理オプション: 法的エンティティは、小売や金融サービスなど、様々な業界で事業を展開し、金融サービス業の法的エンティティに対する日次平均残高の保守など、異なる元帳処理オプションが必要な場合があります。
元帳処理オプションは元帳レベルで定義されます。次のオプションがあり、その元帳に対する仕訳や取引の処理方法が管理されます。
最初のオープン期間
先日付入力可能期間数
留保利益勘定
補助元帳会計オプション(例: 補助元帳会計処理基準、仕訳摘要言語、入力通貨貸借一致勘定、現金主義会計、元帳通貨貸借一致勘定)
副セグメントを使用して残高を追跡するオプション
仮勘定
端数処理差異追跡勘定
会社内貸借一致
仕訳承認
仕訳税金
逆仕訳基準セット
デフォルト期間終了レート・タイプ
デフォルト期間平均レート・タイプ
累積換算調整勘定
仕訳消込
予算管理
予算引当勘定
平均残高処理
平均残高連結
純利益勘定
取引カレンダ
これらの元帳処理オプションのいずれかに異なる設定が必要な法的エンティティが存在する場合は、各法的エンティティに対して別々の主要元帳(結果として新規会計設定)を定義します。
参照: 「元帳オプション」
Globalオペレーションという米国を拠点にしたグローバル企業に4つの法的エンティティが存在するとします。2つは米国、1つは英国、もう1つはフランスにあります。次の表で、各法的エンティティに必要な元帳属性を説明します。
元帳属性 | 米国東部オペレーション | 米国西部オペレーション | 英国オペレーション | フランス・オペレーション |
---|---|---|---|---|
勘定体系 | 社内 | 社内 | 社内 | フランス法定 |
会計カレンダ/期間タイプ | 月次/月 | 月次/月 | 月次/月 | 会計/会計 |
通貨 | USD | USD | GBP | EUR |
補助元帳会計処理基準 | 標準見越 | 標準見越 | 標準見越 | フランスのGAAP |
元帳オプション |
| 平均残高または仕訳承認使用不可 | 平均残高または仕訳承認使用不可 | 平均残高または仕訳承認使用不可 |
各法的エンティティに独自の主要元帳が必要であるため、この情報に基づいて、4つの異なる会計設定を作成します。
注意: 米国の2つの法的エンティティ米国東部と米国西部で同じ元帳処理オプションを共有したとすると、同じ主要元帳を共有し、同じ会計設定に組み込むことができます。
必要に応じて、副元帳という追加の元帳を会計設定に割り当てると、同じ法的エンティティに対して複数の会計表示を保守できます。
参照: 「副元帳」
会計設定の各主要元帳に対して、必要な数の副元帳を割り当てます。各副元帳は、次のいずれかのデータ変換レベルで保守できます。
補助元帳レベルの副元帳では、補助元帳仕訳、総勘定元帳仕訳および残高が追加の会計表示で保守されます。
このデータ変換レベルでは、主要元帳と副元帳の両方で必要な仕訳を同時に作成するために、Subledger AccountingとGL転記プログラムの両方が使用されます。補助元帳がSubledger Accountingと統合されている場合は、Subledger Accountingによって補助元帳取引から仕訳が作成されます。手動仕訳など、Subledger Accountingと統合されていない他のすべての取引については、GL転記によって仕訳が作成されます。
仕訳レベルの副元帳では、主要元帳仕訳および残高が追加の会計表示で保守されます。
このタイプの副元帳は、GL転記プログラムを使用して保守されます。仕訳が主要元帳に転記されるたびに、この動作用に設定されている仕訳ソースとカテゴリについて、同じ仕訳が副元帳に自動的に複製され、保守されます。
残高レベルの副元帳では、主要元帳勘定残高が別の会計表示で保守されます。
このタイプの副元帳では、主要元帳の残高をこの副元帳に転送するためにOracle General Ledgerの連結が必要です。
修正のみの副元帳レベルは、修正のみが保持される不完全な会計表示です。
修正は、手動修正の場合、またはSubledger Accountingからの自動修正の場合があります。このタイプの元帳は、関連付けられた主要元帳と同じ勘定体系、会計カレンダと期間タイプの組合せおよび通貨を共有する必要があります。取引データと修正の両方が含まれる完全な副会計表示を取得するには、元帳セットを使用して、レポートの実行時に、修正のみの副元帳を主要元帳と組み合せます。
注意: 仕訳は、どのタイプの副元帳にも直接入力できます。
参照: 「データ変換レベル」
副元帳は、法定報告、修正、連結など、様々な目的で使用されます。
たとえば、法的エンティティの取引に法定会計表示と社内会計表示の両方が必要である場合は、同じ法的エンティティに対して、社内表示用に主要元帳と法定表示用に副元帳の2つの元帳を使用できます。
参照: 「副元帳」
主要元帳または副元帳の異なる通貨表示のみが必要である場合は、これらの元帳に報告通貨を割り当てます。副元帳とは異なり、報告通貨は、そのソース元帳と同じ勘定体系、会計カレンダと期間タイプの組合せ、補助元帳会計処理基準および元帳処理オプションを共有する必要があります。
通常は、通貨のみが異なる会計表示を保守する必要がある場合は、必ず副元帳のかわりに報告通貨を使用してください。
報告通貨は、主要元帳と副元帳の両方に割り当てることができます。また、次のいずれかの通貨換算レベルで保守されます。
補助元帳レベル報告通貨では、補助元帳仕訳、総勘定元帳仕訳および残高の完全な通貨表示が保守されます。
補助元帳レベル報告通貨を使用する場合は、通貨換算ルールを定義します。このルールによって、補助元帳および総勘定元帳のデータを1つ以上の補助元帳レベル報告通貨に変換する方法が指定されます。
補助元帳レベル報告通貨は、主要元帳と副元帳の両方で必要な補助元帳仕訳と総勘定元帳仕訳を同時に作成するために、Subledger AccountingとGL転記プログラムの両方を使用して保守されます。補助元帳がSubledger Accountingと統合されている場合は、Subledger Accountingによって補助元帳取引から仕訳が作成されます。手動仕訳など、Subledger Accountingと統合されていない他のすべての取引については、GL転記によって仕訳が作成されます。
注意: 補助元帳レベル報告通貨は、主要元帳にのみ割り当てることができます。
仕訳レベル報告通貨では、総勘定元帳仕訳および残高が別の通貨表示で保守されます。
仕訳レベル報告通貨は、GL転記プログラムを使用して保守されます。仕訳がソース元帳(主要元帳または副元帳など)に転記されるたびに、仕訳レベル報告通貨のそれぞれの通貨に仕訳が自動的に換算されます。
残高レベル報告通貨では、残高のみが別の通貨で保守されます。
残高レベル報告通貨では、ソース元帳の換算済残高が保守されます。ソース元帳(主要元帳または副元帳など)で総勘定元帳換算が実行されるたびに、換算済残高が残高レベル報告通貨で反映されます。
注意: 仕訳は、補助元帳レベル報告通貨および仕訳レベル報告通貨に直接入力できます。
会計設定を作成する前に、各会計設定に割り当てる法的エンティティの数を慎重に検討します。
各会計設定を次のいずれかの会計環境タイプと関連付けます。
注意: 様々な会計環境タイプの詳細な使用例は、「会計設定の例」の「概要」を参照してください。
関連項目
法的エンティティが次のいずれかの基準を満たす場合は、会計設定タイプに割り当てる法的エンティティを1つのみにする必要があります。
法的エンティティが厳しい法的要件のある国で事業を展開していて、他の法的エンティティとは別に会計データを保守することが要求される場合
特定の法定ルールがあり、法的エンティティに対して別個の元帳が要求される場合
他の法的エンティティと異なる主要元帳属性が必要な場合
たとえば、法的エンティティで、次の元帳属性のいずれかが他の法的エンティティと異なる必要がある場合です。
勘定体系: ある法的エンティティには10セグメントの勘定体系が必要であり、別の法的エンティティには6セグメントの勘定体系が必要な場合があります。
会計カレンダ: ある法的エンティティには週次カレンダが必要であり、別の法的エンティティには月次カレンダが必要な場合があります。
主要通貨: 主要な記録管理通貨として機能する異なる主要通貨を必要とする法的エンティティや会社が複数存在する場合があります。
注意: 各法的エンティティのビジネス活動および報告要件を考慮してください。別の国および通貨で財務諸表を提出する必要がある場合は、遵守する必要がある会計原則を考慮します。このような考慮事項に基づいて、各法的エンティティに対して適切な主要通貨を選択してください。
補助元帳会計処理基準: ある法的エンティティでは発生主義会計が使用され、別の法的エンティティでは現金主義会計が使用される場合があります。
元帳処理オプション: ある法的エンティティでは収益勘定と費用勘定を期末残高を使用して換算するのに対して、別の法的エンティティでは、年累計残高を使用する場合があります。
参照: 「元帳処理オプション」
法的エンティティごとに取引および仕訳の文書自動連番が必要な場合
法的エンティティごとに独自に期間をオープンおよびクローズする必要がある場合
法的エンティティに固有の税金要件がある場合
会計設定に複数の法的エンティティが割り当てられている場合は、複数の法的エンティティが、同じ主要元帳属性(同じ勘定体系、会計カレンダと期間タイプの組合せ、通貨、補助元帳会計処理基準、元帳処理オプションなど)を共有できることを意味します。
会計設定に割り当てるすべての法的エンティティが次の基準をすべて満たす場合は、複数の法的エンティティを同じ会計設定に割り当てます。
複数の法的エンティティが同じ主要元帳属性および元帳属性(同じ勘定体系、会計カレンダ、主要通貨、補助元帳会計処理基準、文書連番、会計オプションなど)を共有できる国で事業を展開している場合
各法的エンティティに異なる元帳処理オプションを設定する必要がない場合
たとえば、法的エンティティで、残高の換算に同じ総勘定元帳換算ルールと累積換算調整勘定を使用できる場合です。
参照: 「元帳処理オプション」
法的エンティティごとに独自に期間をオープンおよびクローズする必要がない場合
法的エンティティに文書自動連番が必要ない場合
法的エンティティに固有の税金要件がない場合
法的エンティティが割り当てられていない会計設定は、ビジネス・ニーズに基づいて様々な目的で使用できます。たとえば、取引処理に法的エンティティ・コンテキストが必要ない場合に定義します。また、法的エンティティが割り当てられている他の会計設定に含まれている会計を補足するために使用します。
法的エンティティが割り当てられていない会計設定は、次のようなビジネス・ニーズを満たすために使用できます。
法的エンティティ・コンテキストを使用して取引を保守する必要がない場合
General Ledgerの独立したインスタンスをスタンドアロン・アプリケーションとして使用していて、法的エンティティ・コンテキストを必要とするOracleの財務補助元帳と統合する計画がない場合
Oracleの財務補助元帳と統合していないが、Oracle General LedgerをOracle以外のシステムと統合するためにSubledger Accountingを使用している場合
管理報告目的または連結目的で追加の会計設定を保守する場合
組織で法的エンティティを使用していて、法的エンティティが割り当てられている会計設定がある場合は、法的エンティティが割り当てられていない別の会計設定を管理目的で使用できます。たとえば、その主要元帳を使用すると、異なる複数の会計設定の元帳にまたがる内部管理修正を記帳できます。管理修正は、各事業分野、コスト・センター、部門、または管理責任のある他のセグメントなど、管理エンティティに対して実行できます。
たとえば、勘定体系の部門セグメントが管理エンティティを表し、財務、営業、人事の3つの部門があるとします。次の図は、CEOに報告する部門が3つある部門セグメントの管理階層を表しています。
次の表で説明されている会計設定を使用して、日常の会計を実行します。
法的エンティティ | Visionクレジット・グループ法的エンティティ | VisionサービスおよびVisionコンサルティング法的エンティティ | Visionオペレーション法的エンティティ |
---|---|---|---|
法的エンティティ数 | 1つ | 複数 | 1つ |
主要元帳 | Visionクレジット・グループ | Visionサービス | Visionオペレーション |
勘定体系 | 社内 | 社内 | 社内 |
カレンダ | 月次 | 月次 | 月次 |
通貨 | USD | USD | USD |
取引は、ビジネスの通常の過程で、3部門すべてに対して3つの元帳すべてに入力されます。たとえば、各部門に対して費用を入力します。
3つの元帳すべてに対する管理エンティティにまたがる管理修正を入力するには、次の図と表に示すように、法的エンティティが割り当てられていない別の会計設定を定義します。
設定 | 説明 |
---|---|
主要元帳 | Vision管理 |
勘定体系 | 社内 |
カレンダ | 月次 |
通貨 | USD |
単独では、この管理元帳は会計の全体像を表すことはできません。保持できるのは管理修正のみです。管理修正は、日常の取引から完全に分離できます。管理報告や分析に使用する管理の全体像を取得するには、元帳セットを使用して、日常の取引を保持する他の元帳と管理元帳の結果を組み合せます。元帳セットに関する報告時に、会社の完全な管理ビューを取得できます。
注意: 元帳セットを使用すると、(同じ勘定体系および会計カレンダと期間タイプの組合せを共有する)複数の元帳をグループ化できるため、期間の同時オープンやクローズ、複数の元帳にわたるレポート作成の同時実行など、処理効率が向上します。
参照: 「元帳セット」
注意: 元帳セット内の元帳の組合せで意味のある結果を得るためには、管理報告目的で使用される元帳が、別の会計設定に含まれている関連元帳と同じ勘定体系、会計カレンダと期間タイプの組合せおよび通貨を共有していることを確認してください。
注意: データ・アクセス・セットは、General Ledgerのセキュリティ機能であり、元帳および元帳セット内のデータに対する読取り専用アクセス権と読取りおよび書込みアクセス権を管理します。また、元帳または元帳セットに割り当てられている指定貸借一致セグメント値または管理セグメント値に対するアクセス権も制限します。
参照: 「Oracle General Ledgerのセキュリティ」
会計設定全体で様々な元帳属性があり、勘定体系、カレンダおよび通貨が統一されていない場合は、完全な連結元帳として機能するように、法的エンティティが割り当てられていない別の会計設定の主要元帳を使用できます。異なる会計設定内のそれぞれの元帳からこの連結元帳に残高転送連結を実行して、この元帳に連結の修正を直接入力します。
「会計設定の例」の「概要」
会社で法的エンティティを使用していて、取引処理時に法的エンティティを識別する機能が必要である場合は、勘定体系の貸借一致セグメントを法的エンティティまたは会社セグメントとして指定します。これによって、法的エンティティごとに取引を識別でき、会社間会計など、使用可能な法的エンティティ会計機能を最大限利用できます。
異なる勘定体系を使用する複数の法的エンティティがある場合は、貸借一致セグメントに定義する値セットの数を制限することをお薦めします。この結果、同じ値セットを複数の勘定体系で共有でき、各法的エンティティに対して、勘定体系全体で一貫性のある一意の貸借一致セグメント値を割り当てることができます。
会計設定に割り当てる法的エンティティの数は、E-Business Suiteで使用できる様々な主要機能に影響を与えます。次の表で機能を確認して、各機能がどのような影響を受けるかを理解してください。
機能 | 1つの法的エンティティを割り当てる場合 | 複数の法的エンティティを割り当てる場合 | 法的エンティティを割り当てない場合 |
---|---|---|---|
GL会計期間のオープン/クローズ | 各法的エンティティは、異なる時期に期間をオープン/クローズできます。 | 元帳内のすべての法的エンティティが同時に期間をオープン/クローズする必要があります。 | 単独の元帳は、独自に期間をオープン/クローズできます。 |
文書連番 | 各法的エンティティに文書自動連番ルールを設定できます。 | 元帳内のすべての法的エンティティが同じ文書連番ルールを共有する必要があります。 | 元帳に文書自動連番ルールを設定できます。 |
複数の法的エンティティ仕訳 | 不可。 | 複数の法的エンティティにまたがる仕訳を作成できます。 | N/A 法的エンティティは存在しません。 |