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Oracle Solaris Studio 12.2: dbx コマンドによるデバッグ
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ドキュメントの情報

はじめに

1.  dbx の概要

2.  dbx の起動

3.  dbx のカスタマイズ

4.  コードの表示とコードへの移動

5.  プログラムの実行制御

6.  ブレークポイントとトレースの設定

7.  呼び出しスタックの使用

8.  データの評価と表示

9.  実行時検査

概要

RTC を使用する場合

RTC の必要条件

実行時検査

メモリー使用状況とメモリーリーク検査を有効化

メモリーアクセス検査を有効化

すべての RTC を有効化

RTC を無効化

プログラムを実行

アクセス検査の使用

メモリーアクセスエラーの報告

メモリーアクセスエラー

メモリーリークの検査

メモリーリーク検査の使用

リークの可能性

リークの検査

メモリーリークの報告を理解する

リークレポートの生成

リークレポート

メモリーリークの修正

メモリー使用状況検査の使用

エラーの抑止

抑止のタイプ

スコープと種類による抑制

最新エラーの抑止

エラー報告回数の制限

エラー抑止の例

デフォルトの抑止

抑止によるエラーの制御

子プロセスにおける RTC の実行

接続されたプロセスへの RTC の使用

RTC での修正継続機能の使用

実行時検査アプリケーションプログラミングインタフェース

バッチモードでの RTC の使用

bcheck 構文

bcheck の例

dbx からバッチモードを直接有効化

トラブルシューティングのヒント

実行時検査の制限

より高い効果を得るにはより多くのシンボルおよびデバッグ情報が必要になる

x86 プラットフォームでは SIGSEGV シグナルと SIGALTSTACK シグナルが制限される

より高い効果を得るには、十分なパッチ領域を設け、すべての既存コードを含めて 8M バイト以内にする (SPARC プラットフォームのみ)

RTC エラー

アクセスエラー

不正解放 (baf) エラー

重複解放 (duf) エラー

境界整列を誤った解放 (maf) エラー

境界整列を誤った読み取り (mar) エラー

境界整列を誤った書き込み (maw) エラー

メモリー不足 (oom) エラー

配列範囲外からの読み込み (rob) エラー

非割り当てメモリーからの読み取り (rua) エラー

非初期化メモリーからの読み取り (rui) エラー

配列範囲外メモリーへの書き込み (wob) エラー

読み取り専用メモリーへの書き込み (wro) エラー

非割り当てメモリーへの書き込み (wua) エラー

メモリーリークエラー

ブロック中のアドレス (aib)

レジスタ中のアドレス (air)

メモリーリーク (mel) エラー

10.  修正継続機能 (fix と cont)

11.  マルチスレッドアプリケーションのデバッグ

12.  子プロセスのデバッグ

13.  OpenMP プログラムのデバッグ

14.  シグナルの処理

15.  dbx を使用してプログラムをデバッグする

16.  dbx を使用した Fortran のデバッグ

17.  dbx による Java アプリケーションのデバッグ

18.  機械命令レベルでのデバッグ

19.  dbx の Korn シェル機能

20.  共有ライブラリのデバッグ

A.  プログラム状態の変更

B.  イベント管理

C.  コマンドリファレンス

索引

メモリーリークの検査

メモリーリークとは、プログラムで使用するために割り当てられているが、プログラムのデータ領域中のいずれも指していないポインタを持つ、動的に割り当てられたメモリーブロックを言います。そのようなブロックは、メモリーのどこに存在しているかプログラムにわからないため、プログラムに割り当てられていても使用することも解放することもできません。RTC はこのようなブロックを検知し、報告します。

メモリーリークは仮想メモリーの使用を増やし、一般的にメモリーの断片化を招きます。その結果、プログラムやシステム全体のパフォーマンスが低下する可能性があります。

メモリーリークは、通常、割り当てメモリーを解放しないで、割り当てブロックへのポインタを失うと発生します。メモリーリークの例を次に示します。

void
foo()
{
    char *s;
    s = (char *) malloc(32);

    strcpy(s, "hello world");

    return; /* no free of s. Once foo returns, there is no     */
            /* pointer pointing to the malloc’ed block,         */
            /* so that block is leaked.                         */
}

リークは、API の不正な使用が原因で起こる可能性があります。

void
printcwd()
{

    printf("cwd = %s\n", getcwd(NULL, MAXPATHLEN));

    return; /* libc function getcwd() returns a pointer to     */
            /* malloc’ed area when the first argument is NULL, */
            /* program should remember to free this. In this   */
            /* case the block is not freed and results in leak.*/
}

メモリーリークを防ぐには、必要のないメモリーは必ず解放します。また、メモリーを確保するライブラリ関数を使用する場合は、メモリーを解放することを忘れないでください。

解放されていないブロックを「メモリーリーク」と呼ぶこともあります。ただし、この定義はあまり使用されません。プログラムが短時間で終了する場合でも、通常のプログラミングではメモリーを解放しないからです。プログラムにそのブロックに対するポインタがある場合、RTC はそのようなブロックはメモリーリークとして報告しません。

メモリーリーク検査の使用

RTC では、次のメモリーリークエラーを検出します。

リークの可能性

RTC が「リークの可能性」として報告するエラーには 2 種類あります。1 つは、ブロックの先頭を指すポインタが検知されず、ブロックの内部を指しているポインタが見つかった場合です。これは、ブロック中のアドレス (aib) エラーとして報告されます。このようなブロック内部を指すポインタが見つかった場合は、プログラムに実際にメモリーリークが発生しています。ただし、プログラムによってはポインタに対して故意にそのような動作をさせている場合があり、これは当然メモリーリークではありません。RTC はこの違いを判別できないため、本当にリークが発生しているかどうかはユーザー自身の判断で行う必要があります。

もう 1 つのリークの種類は、ブロックを指すポインタがデータ空間に見つからず、ポインタがレジスタ内に見つかった場合に起こります。このケースは、「レジスタ中のアドレス (air)」エラーとして報告されます。レジスタがブロックを不正に指していたり、古いメモリーポインタが残っている場合には、実際にメモリーリークが発生しています。ただし、コンパイラが最適化のために、ポインタをメモリーに書き込むことなく、レジスタのブロックに対して参照させることがありますが、この場合はメモリーリークではありません。プログラムが最適化され、showleaks コマンドでエラーが報告された場合のみ、リークでない可能性があります。詳細については、showleaks コマンド」を参照してください。


注 - RTC リーク検査では、標準の libc malloc/free/realloc 関数またはこれらの関数に基づいたアロケータを使用する必要があります。ほかのアロケータについては、「実行時検査アプリケーションプログラミングインタフェース」を参照してください。


リークの検査

メモリーリーク検査がオンの場合、メモリーリークの走査は、テスト中のプログラムが終了する直前に自動的に実行されます。検出されたリークはすべて報告されます。プログラムを、kill コマンドによって強制的に終了しないでください。次に、典型的なメモリーリークエラーによるメッセージを示します。

Memory leak (mel):
Found leaked block of size 6 at address 0x21718
At time of allocation, the call stack was:
    [1] foo() at line 63 in test.c
    [2] main() at line 47 in test.c

UNIX プログラムには通常 main 手続き (FORTRAN 77 では MAIN) が存在します。これは、プログラムに対するトップレベルのユーザー関数です。プログラムは exit(3) が呼び出されるか、main から返った時点で終了します。いずれの場合でも、main のすべての局所変数はプログラムが停止するまでスコープから出ず、それらを指す特定のヒープブロックはすべてメモリーリークとして報告されます。

main 内の局所変数に割り当てられているヒープブロックはプログラムでは解放しないのが一般的です。なぜなら、プログラムは終了しようとしており、exit() を呼び出すことなく main から復帰するためです。これらのブロックがメモリーリークとして報告されないようにするには、main 内の最後の実行可能なソース行にブレークポイントを設定することによって、main から復帰する直前でプログラムを停止します。プログラムがそこで停止したとき、RTC の showleaks コマンドを実行すれば、main() とそこで呼び出されるすべての手続きで参照されなくなったヒープブロックのすべてが表示されます。

詳細については、showleaks コマンド」を参照してください。

メモリーリークの報告を理解する

リーク検査を有効にすると、プログラムの終了時にリークレポートが自動的に生成されます。kill コマンドでプログラムを終了した場合を除き、リークの可能性がすべて報告されます。レポートの詳細レベルは、dbx 環境変数 rtc_mel_at_exit (dbx 環境変数の設定」を参照) で制御します。デフォルトで、非冗長リークレポートが生成されます。

レポートは、リークのサイズによってソートされます。実際のメモリーリークが最初に報告され、次に可能性のあるリークが報告されます。詳細レポートには、スタックトレース情報の詳細が示されます。行番号とソースファイルが使用可能であれば、これらも必ず含まれます。

次のメモリーリークエラー情報が、2 種類の報告のどちらにも含まれます。

情報
内容の説明
サイズ
リークしたブロックのサイズ
場所
リークしたブロックが割り当てられた場所
アドレス
リークしたブロックのアドレス
スタック
割り当て時の呼び出しスタック。次によって制約される。check -frames

次に、対応する簡易メモリーリークレポートを示します。

Actual leaks report    (actual leaks:    3 total size:    2427 bytes)

 Total      Num of  Leaked      Allocation call stack
 Size       Blocks  Block
                    Address
==========  ====== ==========  =======================================
      1852       2      -      true_leak < true_leak
       575       1    0x22150  true_leak < main

Possible leaks report  (possible leaks:  1  total size:       8 bytes)

 Total      Num of  Leaked      Allocation call stack
 Size       Blocks  Block
                    Address
==========  ====== ==========  =======================================
         8       1    0x219b0  in_block < main

次に、典型的な詳細リークレポートを示します。

Actual leaks report    (actual leaks:         3  total size:    2427 bytes)

Memory Leak (mel):
Found 2 leaked blocks with total size 1852 bytes
At time of each allocation, the call stack was:
    [1] true_leak() at line 220 in "leaks.c"
    [2] true_leak() at line 224 in "leaks.c"

Memory Leak (mel):
Found leaked block of size 575 bytes at address 0x22150
At time of allocation, the call stack was:
    [1] true_leak() at line 220 in "leaks.c"
    [2] main() at line 87 in "leaks.c"

Possible leaks report  (possible leaks:       1  total size:       8 bytes)

Possible memory leak -- address in block (aib):
Found leaked block of size 8 bytes at address 0x219b0
At time of allocation, the call stack was:
    [1] in_block() at line 177 in "leaks.c"
    [2] main() at line 100 in "leaks.c"
リークレポートの生成

showleaks コマンドを使用すると、いつでもリークレポートを要求することができます。このコマンドは、前回の showleaks コマンド以降の新しいメモリーリークを報告するものです。詳細については、showleaks コマンド」を参照してください。

リークレポート

リークレポートの数が多くなるのを避けるため、RTC は同じ場所で割り当てられたリークを自動的に 1 つにまとめて報告します。1 つにまとめるか、それぞれ各リークごとに報告するかは、number-of-frames-to-match パラメータによって決まります。このパラメータは、-match m オプション (check -leaks コマンドを実行する場合)、または -m オプション (showleaks コマンドを実行する場合) で指定します。呼び出しスタックが 2 つ以上のリークを割り当てる際に m 個のフレームと一致した場合は、リークは 1 つにまとめて報告されます。

次の 3 つの呼び出しシーケンスを考えてみます。

ブロック 1
ブロック 2
ブロック 3
[1] malloc
[1] malloc
[1] malloc
[2] d() at 0x20000
[2] d() at 0x20000
[2] d() at 0x20000
[3] c() at 0x30000
[3] c() at 0x30000
[3] c() at 0x31000
[4] b() at 0x40000
[4] b() at 0x41000
[4] b() at 0x40000
[5] a() at 0x50000
[5] a() at 0x50000
[5] a() at 0x50000

これらのブロックがすべてメモリーリークを起こす場合、m の値によって、これらのリークを別々に報告するか、1 つのリークが繰り返されたものとして報告するかが決まります。m が 2 のとき、ブロック 1 とブロック 2 のリークは 1 つのリークが繰り返されたものとして報告されます。これは、malloc() の上にある 2 つのフレームが共通しているためです。ブロック 3 のリークは、c() のトレースがほかのブロックと一致しないので別々に報告されます。m が 2 よりも大きい場合、RTC はすべてのリークを別々に報告します (malloc はリークレポートでは表示されません)。

一般に、m の値が小さければリークのレポートもまとめられ、m の値が大きければまとめられたリークレポートが減り、別々のリークレポートが生成されます。

メモリーリークの修正

RTC からメモリーリーク報告を受けた場合にメモリーリークを修正する方法についてのガイドラインを次に示します。

詳細については、showleaks コマンド」を参照してください。