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Oracle Solaris 管理: ネットワークインタフェースとネットワーク仮想化 Oracle Solaris 11 Information Library (日本語) |
この Oracle Solaris リリースでのネットワーク構成
7. プロファイルでのデータリンクおよびインタフェース構成コマンドの使用
10. Oracle Solaris 上での無線インタフェース通信の構成
Oracle Solaris では、リンク集約へのネットワークインタフェースの編成をサポートしています。「リンク集約」は、単一の論理的なユニットとして構成されるシステム上の複数のインタフェースで構成されます。リンク集約は「Trunking」とも呼ばれ、IEEE 802.3ad Link Aggregation Standard で定義されています。
IEEE 802.3ad Link Aggregation Standard には、複数の全二重 Ethernet リンクの伝送容量を単一の論理リンクに統合する方法が記載されています。このリンク集約グループは、事実上単一のリンクであるかのように扱われます。
帯域幅の増加 – 複数のリンクの伝送容量が 1 つの論理的なリンクに統合されます。
自動フェイルオーバーまたは自動フェイルバック – 障害が発生したリンクのトラフィックが集約内の正常なリンクにフェイルオーバーされます。
負荷分散 – 受信と送信の両方のトラフィックが、発信元と着信先の MAC アドレスまたは IP アドレスなどのユーザーが選択した負荷分散ポリシーに従って分散されます。
冗長性のサポート – 並列集約を使用して 2 つのシステムを構成できます。
管理効率の向上 – すべてのインタフェースが単一のユニットとして管理されます。
ネットワークアドレスプールのアドレスの節約 – 集約全体に 1 つの IP アドレスを割り当てることができます。
基本的なリンク集約のトポロジには、一連の物理インタフェースで構成された単一の集約が含まれます。基本的なリンク集約は、次のような状況で使用します。
分散された多くのトラフィックを処理するアプリケーションを実行するシステムの場合、集約をそのアプリケーションのトラフィック専用で使用できます。
IP アドレス空間が制限されていながら大容量の帯域幅が必要なサイトの場合、大規模なインタフェースの集約でも 1 つの IP アドレスのみで済みます。
内部インタフェースの存在を隠す必要があるサイトの場合、集約の IP アドレスによって、内部インタフェースを外部アプリケーションから隠します。
図 12-1 に、有名な Web サイトをホストするサーバーの集約を示します。このサイトでは、インターネット顧客とサイトのデータベースサーバーの間の照会トラフィックのために帯域幅を増やす必要があります。セキュリティー上の理由で、サーバー上の各インタフェースの存在を外部アプリケーションから隠す必要があります。解決策として、IP アドレス 192.168.50.32 で集約 aggr1 を使用します。この集約は、bge0 - bge2 の 3 つのインタフェースで構成されます。これらのインタフェースは、顧客の照会に答えるためのトラフィックの送信専用で使用されます。すべてのインタフェースからのパケットトラフィック上の送信アドレスは、aggr1 の IP アドレスである 192.168.50.32 です。
図 12-1 基本的なリンク集約トポロジ
図 12-2 は、それぞれに集約が構成された 2 つのシステムを含むローカルネットワークを示しています。2 つのシステムはスイッチによって接続されています。スイッチ経由で集約を実行する必要がある場合は、そのスイッチが集約テクノロジをサポートしている必要があります。このタイプの構成は、高可用性と冗長性を持つシステムを実現するために特に有効です。
図では、システム A が bge0 と bge1 という 2 つのインタフェースで構成される集約を使用しています。これらのインタフェースは、集約に入れられたポートを介してスイッチに接続されています。システム B は、e1000g0 - e1000g3 という 4 つのインタフェースの集約を使用しています。これらのインタフェースもスイッチの集約に入れられたポートに接続されています。
図 12-2 スイッチを使用したリンク集約のトポロジ
バックツーバックリンク集約のトポロジには、次の図に示すように、相互に直接ケーブル接続された 2 台の別個のシステムが含まれます。これらのシステムでは並列集約が実行されます。
図 12-3 基本的なバックツーバック集約のトポロジ
この図では、システム A 上のデバイス bge0 が、システム B 上の bge0 に直接リンクされ、ほかのデバイスも同様にリンクされています。この方法では、システム A とシステム B は、冗長性と高可用性を提供し、さらに両方のシステム間での高速通信をサポートできます。各システムではさらに、ローカルネットワーク内のトラフィックフロー用の ce0 インタフェースも構成されています。
バックツーバックリンク集約のもっとも一般的なアプリケーションはミラー化されたデータベースサーバーです。両方のサーバーを同時に更新する必要があるため、大きな帯域幅、高速のトラフィックフロー、および信頼性が必要になります。バックツーバックリンク集約のもっとも一般的な使用場所としてデータセンターがあります。
リンク集約を使用する予定の場合は、送信トラフィック用のポリシーを定義することを検討してください。このポリシーでは、使用可能な集約のリンク全体にパケットを分散する方法を指定し、負荷分散を確立することができます。次に、使用可能な層指定子と集約ポリシーに対するそれらの意味について説明します。
L2 – 各パケットの MAC (L2) ヘッダーをハッシュすることで送信リンクを決定します
L3 – 各パケットの IP (L3) ヘッダーをハッシュすることで送信リンクを決定します
L4 – 各パケットの TCP、UDP、またはほかの ULP (L4) ヘッダーをハッシュすることで送信リンクを決定します
これらのポリシーを任意に組み合わせて使用することもできます。デフォルトのポリシーは L4 です。詳細は、dladm(1M) のマニュアルページを参照してください。
集約トポロジにスイッチ経由の接続が含まれている場合は、スイッチが「LACP (Link Aggregation Control Protocol)」をサポートするかどうかに注意する必要があります。スイッチが LACP をサポートしている場合は、スイッチと集約の LACP を構成する必要があります。ただし、次のいずれかの LACP の動作「モード」を定義できます。
オフモード – 集約のデフォルトのモード。「LACPDU」と呼ばれる LACP パケットは生成されません。
アクティブモード – ユーザーが指定可能な間隔でシステムによって LACPDU が定期的に生成されます。
受動モード – システムは、スイッチから LACPDU を受け取った場合のみ LACPDU を生成します。集約とスイッチの両方が受動モードで構成されている場合、それらの間で LACPDU を交換することはできません。
構文については、dladm(1M) のマニュアルページとスイッチの製造元のマニュアルを参照してください。
リンク集約の構成には次のような要件があります。
dladm コマンドを使用して集約を構成する必要があります。
すでに作成されているインタフェースを集約のメンバーにすることはできません。
集約内のすべてのインタフェースは、同じ速度かつ全二重モードで実行されている必要があります。
EEPROM パラメータ local-mac-address? 内で、MAC アドレスの値を「true」に設定する必要があります。手順の詳細は、インタフェースの MAC アドレスが一意であることを確認する方法を参照してください。
一部のデバイスは、リンク状態通知をサポートするための IEEE 802.3ad Link Aggregation Standard の要件を満たしていません。ポートを集約に接続したり、集約から切り離したりするには、このサポートが存在する必要があります。リンク状態通知をサポートしていないデバイスは、dladm create-aggr コマンドの -f オプションを使用してのみ集約できます。このようなデバイスの場合、リンク状態は常に UP として報告されます。-f オプションの使用については、「リンク集約を作成する方法」を参照してください。
リンク集約には、柔軟な名前を割り当てることができます。任意のわかりやすい名前をリンク集約に割り当てることができます。柔軟な名前またはカスタマイズされた名前についての詳細は、「ネットワークデバイスとデータリンク名」を参照してください。以前の Oracle Solaris リリースでは、集約に割り当てられた「キー」の値によってリンク集約が識別されます。この方法については、リンク集約の概要を参照してください。この方法は引き続き有効ですが、カスタマイズされた名前を使用してリンク集約を識別するようにしてください。
ほかのすべてのデータリンク構成と同様に、リンク集約は dladm コマンドで管理されます。
次の表は、リンク集約を管理するための手順へのリンクを示しています。
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始める前に
注 - リンク集約は、同一の速度で稼働する全二重のポイントツーポイントリンク上でのみ機能します。集約内のインタフェースがこの要件を満たしていることを確認してください。
集約トポロジ内でスイッチを使用している場合は、スイッチ上で次の操作を行なったことを確認してください。
集約として使用されるようにポートを構成します。
スイッチが LACP をサポートしている場合は、LACP をアクティブモードまたは受動モードで構成します。
詳細は、『Oracle Solaris の管理: セキュリティーサービス』の「管理権限を取得する方法」を参照してください。
# dladm show-link
たとえば、リンク上に IP インタフェースが作成されている場合は、そのインタフェースを削除します。
データリンクが使用されている場合は、dladm show-link の出力にある STATE フィールドでそのリンクが up であることが示されます。したがって、
# dladm show-link LINK CLASS MTU STATE BRIDGE OVER qfe3 phys 1500 up -- --
データリンクが使用されている場合は、そのリンク上の IP インタフェースが ipadm show-if 構文の出力に含まれます。したがって、
# ipadm show-if IFNAME CLASS STATE ACTIVE OVER lo0 loopback ok yes -- qfe3 ip ok no --
注 - 出力に offline ステータスが表示された場合でも、そのリンク上に IP インタフェースが存在するため、そのデータリンクは引き続き使用されています。
# ipadm delete-ip interface
各情報の意味は次のとおりです。
そのリンク上で作成されている IP インタフェースを指定します。
# dladm create-aggr [-f] -l link1 -l link2 [...] aggr
集約を強制的に作成します。このオプションは、リンク状態通知をサポートしていないデバイスを集約しようとする場合に使用します。
集約するデータリンクを指定します。
集約に割り当てる名前を指定します。
# ipadm create-ip interface
# ipadm create-addr interface -T static -a IP-address addrobj
ここで、interface には集約の名前を指定し、addrobj は interface/user-defined-string の命名規則を使用します。
集約の状態は UP である必要があります。
# dladm show-aggr
例 12-1 リンク集約の作成
この例は、2 つのデータリンク subvideo0 と subvideo1 を含むリンク集約を作成するために使用されるコマンドを示しています。この構成は、システムのリブートのあとも永続します。
# dladm show-link LINK CLASS MTU STATE BRIDGE OVER subvideo0 phys 1500 up -- ---- subvideo1 phys 1500 up46 -- ---- # ipadm delete-ip subvideo0 # ipadm delete-ip subvideo1 # dladm create-aggr -l subvideo0 -l subvideo1 video0 # ipadm create-ip video0 # ipadm create-addr -T static -a 10.8.57.50/24 video/v4 # dladm show-aggr LINK POLICY ADDRPOLICY LACPACTIVITY LACPTIMER FLAGS video0 L4 auto off short -----
リンク情報を表示すると、このリンク集約がリストに含まれています。
# dladm show-link LINK CLASS MTU STATE BRIDGE OVER subvideo0 phys 1500 up -- ---- subvideo1 phys 1500 up -- ---- video0 aggr 1500 up -- subvideo0, subvideo1
この手順では、集約の定義に次の変更を加える方法を示します。
集約のポリシーの変更
集約のモードの変更
詳細は、『Oracle Solaris の管理: セキュリティーサービス』の「管理権限を取得する方法」を参照してください。
# dladm modify-aggr -P policy-key aggr
「ポリシーと負荷分散」で説明されているように 1 つ以上のポリシー L2、L3、および L4 を表します。
ポリシーを変更する集約を指定します。
# dladm modify-aggr -L LACP-mode -T timer-value aggr
集約が実行される LACP モードを示します。値は、active、passive、および off です。スイッチ上で受動モードで LACP が実行されている場合は、集約用にアクティブモードに構成したことを確認してください。
LACP タイマー値を示します。値は、short または long です。
例 12-2 リンク集約の変更
この例は、集約 video0 のポリシーを L2 に変更したあと、LACP モードをアクティブにする方法を示しています。
# dladm modify-aggr -P L2 video0 # dladm modify-aggr -L active -T short video0 # dladm show-aggr LINK POLICY ADDRPOLICY LACPACTIVITY LACPTIMER FLAGS video0 L2 auto active short -----
詳細は、『Oracle Solaris の管理: セキュリティーサービス』の「管理権限を取得する方法」を参照してください。
# ipadm delete-ip interface
# dladm add-aggr -l link [-l link] [...] aggr
ここで、link は集約に追加しているデータリンクを表します。
たとえば、図 12-3に示されている構成の場合は、ケーブル接続を追加または変更したり、追加のデータリンクを収容できるようにスイッチを再構成したりすることが必要になる場合があります。スイッチに対して何らかの再構成タスクを実行するには、スイッチのマニュアルを参照してください。
例 12-3 集約へのリンクの追加
この例は、集約 video0 にリンクを追加する方法を示しています。
# dladm show-link LINK CLASS MTU STATE BRODGE OVER subvideo0 phys 1500 up -- ---- subvideo1 phys 1500 up -- ---- video0 aggr 1500 up -- subvideo0, subvideo1 net3 phys 1500 unknown -- ---- # ipadm delete-ip video0 # dladm add-aggr -l net3 video0 # dladm show-link LINK CLASS MTU STATE BRIDGE OVER subvideo0 phys 1500 up -- ---- subvideo1 phys 1500 up -- ---- video0 aggr 1500 up -- subvideo0, subvideo1, net3 net3 phys 1500 up -- ----
詳細は、『Oracle Solaris の管理: セキュリティーサービス』の「管理権限を取得する方法」を参照してください。
# dladm remove-aggr -l link aggr-link
例 12-4 集約からのリンクの削除
この例は、集約 video0 からリンクを削除する方法を示しています。
dladm show-link LINK CLASS MTU STATE OVER subvideo0 phys 1500 up -- ---- subvideo1 phys 1500 up -- ---- video0 aggr 1500 up -- subvideo0, subvideo1, net3 net3 phys 1500 up -- ---- # dladm remove-aggr -l net3 video0 # dladm show-link LINK CLASS MTU STATE BRIDGE OVER subvideo0 phys 1500 up -- ---- subvideo1 phys 1500 up -- ---- video0 aggr 1500 up -- subvideo0, subvideo1 net3 phys 1500 unknown -- ----
詳細は、『Oracle Solaris の管理: セキュリティーサービス』の「管理権限を取得する方法」を参照してください。
# ipadm delete-ip IP-aggr
ここで、IP-aggr はリンク集約上の IP インタフェースです。
# dladm delete-aggr aggr
例 12-5 集約の削除
この例では、集約 video0 を削除します。この削除は永続します。
# ipadm delete-ip video0 # dladm delete-aggr video0