35基本給

この章の内容は次のとおりです。

基本給は個人の給与額です。マネージャおよびHR担当者は、組織における個人の在職期間中に、この金額またはコンポーネントの金額または割合を表示および調整します。管理対象の各給与レコードには、給与ベースが関連付けられています。給与ベース構成と、給与レコードおよび給与処理との連携の仕組みを次に示します。

  • 給与ベースの周期および年換算係数は、給与レコードに表示される年間給与の計算に使用されます。これらの給与ベースの設定と、雇用レコードの常勤換算値を使用して、年間フルタイム給与を計算します。

  • 給与ベースで構成された給与コンポーネントは、功績や事業所など、レポートの給与調整を項目化するために給与レコードで使用されます。

  • 給与ベースに関連付けられた給与エレメントには、給与レコードに入力された給与額が保持されます。ベースによって、その金額が給与に渡されて処理されます。

  • 給与ベースに関連付けられた等級レートと差分プロファイルにより、給与レコードに表示される給与メトリックと検証メッセージが決まります。これらを給与ベースに関連付けることはオプションであるため、各給与ベースで構成されることはありません。

給与ベース構成から個人の給与レコードへのフロー、給与処理へのフローを要約した図

「設定および保守」または「報酬」作業領域の「基本給」タスク・リストを使用して、等級レート、等級ラダー、レート定義、給与エレメントを構成します。参照、処理および処理事由を管理することもできます。

就業者の基本給に関連付けられている次の特性の一意の組合せごとに、個別の給与ベースを作成する必要があります。組織で多くの給与ベースが必要な場合、わかりやすい名前を使用することをお薦めします。たとえば、CA Hourly Wages、UK Annual Salary with Components、Adjunct Pay 3 Credit Coursesのような名前を付けます。

国別仕様データ・グループ(LDG)

企業内にLDGはいくつありますか。特定のLDG内に給与ベースを作成できます。LDG間で給与ベースを共有することはできません。各給与ベース名と各給与ベース・コードは、国別仕様データ・グループ(LDG)内で一意である必要があります。

周期および年換算係数

基本給の見積に、いくつの異なる周期が使用されていますか。異なる給与周期に複数のアサイメントがある個人は、アサイメントごとに異なる給与ベースを関連付ける必要があります。

いずれかの周期で、基本給に対して複数の年換算係数が設定されていますか。給与ベースの数は、各LDG内の年換算係数が増えるたびに1ずつ増加します。

給与エレメントおよび通貨

異なる給与ベースに同じ給与エレメントを使用しますか。これは、エレメントに次の構成がある場合に実行できます。

  • 固定処理支給項目エレメントである

  • 同一期間の複数の入力が許可されている

1つのLDG内でいくつの通貨で個人に支払をしますか。LDG内の通貨ごとに1つの給与エレメントが必要です。また、給与エレメントごとに異なる給与ベースが必要です。

コンポーネント

給与を項目化しますか。コンポーネントの一意の集合ごとに、追加の給与ベースが1つ必要です。

等級レートと差分プロファイル

使用している等級レートはいくつありますか。給与ベースの数は、使用される等級レートが増えるたびに1ずつ増加します。差分プロファイルを使用して等級レートの数を減らすことができます。プロファイルにより、次のいずれかの基準に従って等級レートに乗数が適用されます。

  • 事業所

  • ビジネス・ユニット

  • 事業所およびビジネス・ユニット

  • 報酬ゾーン

  • 報酬ゾーンおよびビジネス・ユニット

報酬ゾーンまたは報酬ゾーンおよびビジネス・ユニットの基準が指定されたプロファイルには、乗数のかわりに等級レートを構成できます。給与ベースの数は、使用中の追加の差分プロファイルごとに1ずつ増加します。

端数処理ルールおよび小数点精度

使用する給与額端数処理ルールはいくつありますか。給与ベースの数は、使用中の追加の端数処理ルールごとに1ずつ増加します。

小数点以下の桁数はいくつ表示しますか。給与ベースの数は、使用中の追加の小数点精度ごとに1ずつ増加します。

給与ベースには、給与レコードからの総合給与額が保持されます。各給与期間の給与処理のエレメント・エントリに金額を渡します。

国別仕様データ・グループ(LDG)

指定したLDGについて、各給与ベースを構成します。組織に複数のLDGがある場合は、各LDGに適用可能な一意の特性セットごとに、一意の名前付き給与ベースを作成する必要があります。LDGでは、給与ベースに関連付けることができる給与エレメントが制限されます。

給与エレメント

総合給与額を保持するために、単一の給与エレメントを各給与ベースに添付します。選択できる要素は次のとおりです。

  • 選択したLDGに対して有効である

  • 固定処理エレメントである

  • 支給情報のいずれかとして分類されている

  • 適格定義を含んでいる

    必須エレメント適格定義には適格基準を含めることができますが、基準は必須ではありません。給与エレメントに対して適格性をオープンのままにして、適格プロファイルを使用して適格性を決定することをお薦めします。

制限事項

次の条件を満たす場合にのみ、固定処理エレメントを複数の給与ベースにリンクできます。

  • 本社ベースの等級の基本給はXです

  • それ以外のすべての事業所の等級の基本給は、X - 2パーセントです

入力値

支給項目給与エレメントには、個人のエレメント・エントリの総合給与額を保持する入力値があります。給与と時給のどちらの場合も、エレメント入力値は金額です。給与額を入力または変更すると、そのエレメント・エントリが自動的に変更されます。

エレメント・エントリに格納される金額は、個人のアサイメントの給与情報の給与額です。その給与額は、年単位または時間単位など、個人の給与ベースの周期の範囲内です。

Oracle Fusion Global Payrollを使用しない場合、情報給与エレメントを使用して給与額を格納できます。

  • エレメントに「周期性」入力値が含まれる場合、エレメント・エントリには年俸額が格納されます。

  • 「周期性」入力値がエレメントに含まれていない場合、エレメント・エントリは給与ベースと同じ周期で給与額を格納します。

給与ベースの周期で受け取ったエレメント・エントリの入力値を給与計算Formulaがどのように処理するかを次に示します。

給与ベース周期 給与に渡される金額 給与処理

年次

年間金額

年間金額を適切な給与期間金額に変換します。

1時間毎

時給レート

時給レートに、給与期間についてレポートされた時間数を掛けます。

結果の基本給支給は、給与ベースに関連付けられた給与エレメントの給与明細に表示されます。

通貨

エレメント通貨によって、個人に支払われる給与ベース通貨が自動的に決定されます。

ホワイト・ペーパー

『Oracle Fusion Compensationで使用するための給与エレメントの構成』ホワイト・ペーパーでは、報酬で給与エレメントがどのように使用されるかを説明します。また、特定の用途のエレメントを構成する方法についても説明します。ホワイト・ペーパー(文書ID 1589502.1)は、My Oracle Support (https://support.oracle.com.)を参照してください。

周期性換算

レート換算Formulaは、給与計算で、金額を異なる周期に変換します。次の計算ではレート換算Formulaが使用されます。

  • 按分

  • エレメント実行結果のレート計算で乗算した時間

  • レート定義に基づくレート

事前定義済の期間

周期を設定するときは、次の事前定義済の期間を使用します。

これらの値が要件に合わない場合は、事前定義済のレート換算Formulaをコピーし、周期値を編集します。

周期 給与期間に有効 1年当たりの期間数

年次

はい

1

隔月

はい

6

隔週

はい

26

カレンダ月

はい

12

日次

いいえ

365

1時間毎

いいえ

2920(8時間×365日)

太陰月

はい

13

定期

いいえ

レート換算で使用される期間数は、給与周期によって異なります。

四半期

はい

4

年2回

はい

2

月2回

はい

24

稼働日

いいえ

260

週次

はい

52

勤務時間

いいえ

2080(8時間×260日)

周期の定義

周期を定義するいくつかの方法を次に示します。

オブジェクト タスク 説明

エレメント

エレメントの管理

「周期」入力パラメータは、エレメント値の周期を表します。

たとえば、年棒値を保持している給与エレメント・エントリの周期は年次です。

給与

給与定義の管理

「期間タイプ」は、給与期間の数を表します。

たとえば、「月次(太陰)」の期間タイプには13個の給与期間が含まれます。

レート

レート定義の管理

「レート」定義では、次の周期を指定できます。

  • レートのリターン周期

  • 各レート・コントリビュータの周期

  • レート・コントリビュータの合計の周期

レート換算Formula

レート換算Formulaを使用して額の周期を変更できます。

たとえば、「年間標準レート」換算Formulaを使用すると、年俸の額を1週間当たりの額に換算できます。

次の表に、金額の周期を変更するための事前定義済レート換算Formulaを示します。

レート換算ルール 説明

年間標準レート

入力周期を使用して年間レートを計算し、その金額を出力周期およびレートに換算します。

このルールでは、デフォルト値(2080時間や260勤務日数など)を使用して年間レートを計算します。エレメントの定義時に日数ベースか時間ベースかを選択します。

1週間当たりの金額を月2回の周期に変換する手順は、次のとおりです。

1. 1週間当たりの金額を52倍します。

2. 結果を24で割ります。

日次標準レート

入力周期を使用して日次レートを計算し、その金額を出力周期およびレートに換算します。

このルールでは、デフォルト値(年間260勤務日数など)を使用して日次レートを計算します。

年額を月2回の周期に変換するには、次の操作を実行します。

1. 年額を365で割ります。

2. その結果に、給与期間の日数を掛けます。

年間標準勤務時間レート

従業員の標準勤務時間を使用して、通貨額および勤務時間を年間値に換算してからレートを計算します。

月給1000の従業員が1週間に40時間勤務する場合:

((1000*12)/(40.00*52) = 5.77 (時間給)

年間アサイメント勤務時間レート

従業員の勤務時間を使用して、通貨額および勤務時間を年間値に換算してからレートを計算します。

1週間に40時間勤務する従業員の1週間の標準勤務時間が37.5時間で、月給1000の場合:

((1000*12)/(37.50*52) = 6.15 (時間給)

年間定期勤務スケジュール・レート

従業員の給与期間の勤務スケジュールを使用して、日次および時間換算を実行します。

次の従業員について考えます。

  • 月給1000

  • 月次給与制

Formulaでは月の勤務スケジュール詳細をチェックします。

日次換算の場合:

1000 (月給)/20 (該当月の日数) = 50

注意: 従業員に給与が割り当てられていない状況での報酬計算の場合は、週次レート計算を使用してレートが計算されます。金額は年次の数字に換算され、勤務スケジュールに基づいて該当週の日数または時間で除算されます。

レート換算ルールの影響は、次のように要約されます。

周期: 周期の換算ルールは、「定数」、「時間数 x レート」および「日数 x レート」の各計算ルールに適用されます。エレメント定義のデフォルトとして使用されている周期は、エレメント・エントリ・レベルで上書きできます。

作業ユニット: 作業ユニット換算ルールは、標準および補足支給項目エレメントの定数計算ルールに対してのみ適用されます。レポートおよび給与明細で使用する作業ユニットを選択することによって、換算計算が決定されます。アプリケーションでは、レート換算Formulaのデフォルト値を使用して、エレメントの入力パラメータが作成されます。

例として、次の表に、特定の給与期間の標準作業ユニットが給与プロセスでどのように決定されるかを示します。

選択した作業ユニット

時間

2080/24 = 86.67

日数

260/24 = 10.83

なし

入力パラメータは作成されません。

按分: エレメント・テンプレートには、按分ユニットに関する新規質問が含まれています。按分レート換算ルールによって、エレメント・テンプレートの以前の按分方法が置換されます。たとえば、換算用の作業ユニットを使用する場合は、カレンダ日数を按分の基準にすると高い柔軟性が得られます。

注意: 換算ルールが要件を満たさない場合は、「給与計算」作業領域の「FastFormulaの管理」タスクを使用してルールをコピーし、編集できます。

功績や事業所など、給与変更の様々な事由をHR担当者およびマネージャが反映できるように項目化を有効にできます。「報酬」作業領域で「給与ベース」タスクを使用します。

コンポーネント構成

次に、項目化の給与コンポーネントを含めることができる給与ベースの主な設定を示します。

フィールド

給与ベース・タイプ

給与調整額はコンポーネントによって決定されます

給与調整時に表示するコンポーネント

次のいずれかを行います。

  • 割付時に表示する特定のコンポーネントを選択します

  • 割付時のコンポーネント選択を有効にします

給与コンポーネントを追加するか、CMP_SALARY_COMPONENTS参照タイプを編集することで、使用可能なコンポーネントを変更できます。「報酬」作業領域で「共通参照の管理」タスクを使用します。

コンポーネント処理

給与コンポーネントの値が変更されると、給与ベースに関連付けられた給与エレメントに、コンポーネント調整から計算された新規給与額が保持されます。給与は、処理対象の個々のコンポーネント値を受け取りません。

個人の現在の給与は50,000 USDです。マネージャはコンポーネント調整率を入力し、次に示すように、給与計算によって金額が決定されます。次に、その金額と元の給与額が合計され、新しい給与額60,000 USDが決定されます。式は次のとおりです。

(5,000 + 3,000 + 2,000 + 50,000)

給与コンポーネント 調整率 計算されたUSD

功績

10

5,000

昇格・昇進

6

3,000

調整

4

2,000

年間給与および年間フルタイム給与の計算の例

これらの例では、給与レコードに表示される年俸および年間フルタイム給与の計算方法を示します。雇用主の標準勤務時間、個人の勤務時間およびFTEは、個人の雇用レコードから取得されます。これは、「個人管理」作業領域の「雇用」タスクを使用して表示できます。給与の年換算係数および周期は、個人の給与レコードに関連付けられた給与ベースから取得されます。

前提

FTEの計算に使用される式と、時給レートの年換算係数を次に示します。

  • FTE = 1週当たりの個人の勤務時間 / 1週当たりの雇用主の標準勤務時間

  • 時給レートの年換算係数 = 1週当たりの雇用主の標準勤務時間 x 1年当たりの週数

これらの例の変数「1週当たりの雇用主の標準勤務時間」40に設定されています。

個人の勤務時間 = 標準勤務時間

個人の勤務時間が標準勤務時間と同じ場合の時給レート入力を次に示します。

計算への入力

個人の勤務時間

40

FTE

1

年換算係数

2080

給与額

15 USD

対応する給与計算と結果を次に示します。

給与 計算 結果

年次

15 x 2080

31,200 USD

年間フルタイム

15 x (2080/1)

31,200 USD

個人の勤務時間 < 標準勤務時間

個人の勤務時間が標準勤務時間より少ない場合のレート入力を次に示します。通常、これはパートタイムの人々に適用されます。

計算への入力 時給レート値 月次レート値 年次レート値

個人の勤務時間

20

20

20

FTE

0.5

0.5

0.5

年換算係数

2080

12

1

給与額

15 USD

5,000 USD

50,000 USD

対応する給与計算と結果を次に示します。

給与 年俸 年間フルタイム給与

 

計算

結果

計算

結果

1時間毎

15 x 2080 x 0.5

15,600 USD

15 x (2080/1)

31,200 USD

月次

5,000 x 12

60,000 USD

5,000 x (12/0.5)

120,000 USD

年次

50,000 x 1

50,000 USD

50,000 x (1/0.5)

100,000 USD

個人の勤務時間 > 標準勤務時間

個人の勤務時間が標準勤務時間より多い場合の年間レート入力は次のとおりです。これは、ジョブにオン・コールのコンポーネントがあるユーザーに適用されます。

計算への入力

個人の勤務時間

48

FTE

1.25

年換算係数

1

給与額

20,000 USD

対応する給与計算と結果を次に示します。

給与 計算 結果

年次

20,000 x 1

20,000 USD

年間フルタイム

20,000 x (1/1.25)

16,000 USD

ホワイト・ペーパー

『給与とFTEの連携の仕組み』ホワイト・ペーパーでは、FTEが給与にどのような影響を与えるかについて詳述し、給与管理のベスト・プラクティス例も示します。ホワイト・ペーパー(文書ID 2168552.1)は、My Oracle Support (https://support.oracle.com.)を参照してください。

FAQ

個人のアサイメントにリンクされた給与の期間タイプによって、1年の給与期間数が決まります。これらの給与期間は年換算係数です。

はい。支給項目エレメントとして分類され、同一期間の複数の入力が有効になるように構成されている固定処理エレメントであれば、使用できます。

いいえ。給与ベースを誰かに関連付けた後で特性を削除または変更することはできません。

はい。マネージャが給与割付を入力したページでパーソナライズを使用して、マネージャの編集機能を表示または非表示にすることができます。