1 概要

この章では、ACSLS の概要について説明します。

ACSLS について

Automated Cartridge System Library Software (ACSLS) は、StorageTek テープライブラリを制御する Oracle の StorageTek サーバーソフトウェアです。ACS (Automated Cartridge System) は、PTP (Pass-Thru-Port) 経由で接続されたテープライブラリのグループです。ACSLS はネットワーク経由のコマンド処理を介して、1 つ以上の ACS に保存された情報にアクセスし管理します。このソフトウェアには、システム管理コンポーネント、クライアントシステムのアプリケーションへのインタフェース、およびライブラリ管理機能が備わっています。

ACSLS HA について

ACSLS HA は、コンポーネントやサブシステムに障害が発生した場合に、中断なしのテープライブラリの制御サービスを保証するためにデュアル冗長性、自動回復、および自動フェイルオーバー回復を提供するハードウェア構成およびソフトウェア構成です。

ZFS ファイルシステムを持つ Solaris 11 で ACSLS 8.4 を実行するための詳細については、ACSLS-HA インストール、構成、および運用のガイドを参照してください。このバージョンでは、ユーザー定義のファイルシステムへの ACSLS ソフトウェアのインストールがサポートされます。

acssa および acsss ユーザー ID

このセクションでは、acssa および acsss ユーザー ID について説明します。

  • acssa ログインは、cmd_proc へのアクセス、ライブラリ制御操作のコンソールユーザーインタフェース、および限定された一連の ACSLS ユーティリティーを提供します。

    acssa の一般的なシェル環境には、cmd_proc を実行している 1 つまたは複数のウィンドウおよび ACSLS イベントログの実行中の末尾をモニタリングするウィンドウが含まれています。acssa ログイン環境は、これらの両方のリソースへのアクセスを提供します。

    $ cmd_proc
    $ acs_tail $LOG_PATH/acsss_event.log
    
  • acsss ログインは、これらと一般的な保守、構成、データベースのバックアップと復元、シェルユーティリティー、および一般的な診断のためのほかのすべての管理ユーティリティーへのアクセスを提供します。

acsss マクロ

acsss コマンドは、ACSLS アプリケーションに関連付けられている複数のサービスを操作する起動、停止、およびステータスのマクロです。セクションACSLS の起動およびモニタリングおよびacsss マクロを参照してください。

cmd_proc の使用

このセクションでは、cmd_proc について説明します。

cmd_proc ウィンドウ

次の例は、acssa としてログインしたときに表示される cmd_proc ウィンドウを示しています。カースモードでは、cmd_proc ウィンドウは、上部のセクションがメッセージ領域、および下部のセクションがコマンド領域である分割された画面です。ACSLS コマンドはプロンプトに入力します。

コマンドを受け入れるには、ACSLS が実行されている必要があります。「-q」オプションを指定して cmd_proc を起動すると、この最初の query server リクエストが抑制されます。

cmd_proc -q  
--------------------------ACSLS x.x.x--------------------------- 
ACSSA>query server 
2008-01-23 15:41:42 

Server Status 
Identifier    State   Free Cell Audit Mount Dismount Enter Eject 
                       Count    C/P   C/P    C/P      C/P   C/P 
               run      234     0/0   0/0    0/0      0/0   0/0 

cmd_proc の使用: 行モードと比較した場合のカースモード

ACSLS の cmd_proc は簡単に使用できるインタフェースであり、リクエストの処理中も一般的なサーバーステータス情報を通知し続けます。cmd_proc のデフォルトモードはカースです。これは、ほとんどの端末タイプで適切に機能する汎用インタフェースであり、標準の 24 行、80 文字のウィンドウを使用します。カースインタフェースは、画面が 2 つのセクションに分割されており、STDERR に送られたメッセージがウィンドウの上半分に表示され、STDOUT に送られたメッセージが下半分に表示されます。

ACSLS の cmd_proc をデフォルトのカースモードで使用すると、一般的なサーバーステータスメッセージがウィンドウの上部に表示され、ユーザー固有のやり取りが下部に表示されます。

カースモードで保持される制限された履歴

カースの 1 つの短所は、ユーザーと ACSLS サーバーのやり取りの履歴を保持する機能が制限されていることです。それらのやり取りの領域は、24 行のウィンドウの下半分に制限されます。

この短所は、cmd_proc を行モードで使用すると克服できます。

cmd_proc -l 

行モードでは、ユーザーはスクロールウィンドウのすべての利点を活用でき、やり取りの履歴はスクロール可能な端末バッファーにロールアップされ、バッファーのサイズにのみ制限されます。

行モードでのコマンドと混在したステータスメッセージ

行モードの動作の主な短所は、STDOUT および STDERR を個別の領域に分割できないことです。両方のソースの出力テキストは、画面上の同じスポット (リクエストを入力しようとしている端末の単一のカーソル行) に送信されます。

実行している cmd_proc セッションがシステム上の唯一のセッションである場合は、これは問題ではない可能性があります。ただし、アクティブな操作が ACSLS で進行中の忙しい本番環境では、ACSLS リクエストを入力している行と同じ行にステータス情報が出力されるウィンドウで作業することは、不満を感じないとしても困難である場合があります。

入力している行に表示されるシステムステータス情報は無視しても安全ですが、その情報をほかにリダイレクトできます。システムメッセージを別の出力先にリダイレクトするには、次のように行モードの cmd_proc を実行できます。

cmd_proc -l 2> /tmp/SysChatter.out 
The expression 2> instructs the shell to redirect STDERR to another location. In this example, the status messages are sent to a file in the /tmp directory. 

作業中にシステムステータス情報を表示するには、2 番目のシェルウィンドウを開いて、ステータスメッセージを送信したファイルの実行中の末尾を表示します。

tail -f /tmp/SysChatter.out 

意図した cmd_proc 操作を実行するには、STDERR/dev/null にリダイレクトします。

cmd_proc -l 2> /dev/null 

カースモードの cmd_proc では 80 文字より長い行を表示できません

カースモードの cmd_proc コマンドは 80 文字より長い行を表示できず、80 文字より長い行を表示しようとすると、cmd_proc ウィンドウがハングします。

この状況が発生した場合は、Ctrl+c および Ctrl+d を使用すると cmd_proc ウィンドウを解放できます。

すべての query およびその他のコマンドの出力は 1 行あたり 80 文字未満であり、表示コマンドによってすべてのレコードについて報告されるデフォルトのフィールドは 80 文字未満である必要があります。ただし、多くのオプションのフィールドを表示すると、行が 80 文字より長くなることがあります。

多くのオプションのフィールドを表示する場合は、cmd_proc を (–l オプションを使用して) 行モードで起動することをお勧めします。たとえば、cmd_proccmd_proc –l として起動して、display drive * -f volume type state serial_num wwn を実行します。

cmd_proc を中断および再開する方法

UNIX コマンドを実行するために cmd_proc を中断して、cmd_proc を再開できます。cmd_proc を手動で起動する必要があります。cmd_proc で開始した進行中のリクエストは、cmd_proc が中断されている間も完了するまで続行されます。

cmd_proc を中断および再開するには、次の手順に従います。

  1. cmd_proc の実行中に、Ctrl+z を押します。

  2. UNIX のシェルプロンプトが表示されます。

    目的の UNIX 操作を実行します。

  3. cmd_proc を再開するには、UNIX の fg コマンドを入力します。

cmd_proc の終了

  1. cmd_proc を実行しているときは、進行中のすべてのアクティビティーが完了して、ACSSA> プロンプトが返されるまで待ちます。

  2. cmd_proc を終了するには、logoff コマンドを入力します。

    logoff 
    
  3. cmd_proc セッションが終了します。

cmd_proc の起動

cmd_proc/etc/termcap に定義されている任意の端末タイプから起動できます。カースモードで実行している場合、端末の表示サイズは 24x80 以上である必要があります。

cmd_proc セッションは ACSLS から独立したモードで実行されます。ACSLS の起動せずに cmd_proc セッションを開始すると、コマンドに応答はありません。ACSLS が実行されていないときに cmd_proc がコマンドを実行しようとして、ソケット通信エラーが表示されることがあります。

リモートログイン

ACSLS サーバーへのリモートアクセスは、SSH クライアントを持つシステムから使用できます。ssh クライアントは、Solaris、Linux、および MacOS を含むほとんどの POSIX 準拠のオペレーティングシステムのシェルの標準機能です。Windows 環境では、SSH クライアントソフトウェア (PuTTY、WinSCP、同様の商用アプリケーションなど) をインストールする必要があります。

ユーザー acssa としてリモートから ACSLS サーバーにアクセスするには、次のコマンドを入力します。

$ ssh acssa@hostname

ここで、hostname は ACSLS サーバーのホスト ID です。

acssa の一般的な削除環境には、cmd_proc を実行している 1 つ以上の SSH ログインシェル、および ACSLS イベントログの実行中の末尾をモニタリングする別のシェルが含まれています。

$ acs_tail $LOG_PATH/acsss_event.log

cmd_proc のキーボードショートカット

次の表は、cmd_proc のキーボードショートカット (<CTRL>+ キーストロークの組み合わせ) について説明しています。

表1-1 cmd_proc のキーボードショートカット

キーの組み合わせ アクション
注記

Ctrl+c

最後の cmd_proc コマンドを取り消します。

Ctrl+c は、cancel コマンドのキーボードショートカットです。cancel コマンドの詳細については、cancelを参照してください。

Ctrl+d

cmd_proc プロンプトに戻ります。

現在のコマンドが完了している場合は、Ctrl+d に効果はありません。現在のコマンドが処理されている場合、それは完了しますが cmd_proc は応答メッセージを表示しません。ACSSS プロンプトで現在のコマンドを入力し終わっていない場合、Ctrl+d を押すとコマンドが削除されます。

Ctrl+h

コマンド行の前の文字を削除します。

ほとんどのキーボードでは、Enter キーまたは backspace キーも使用できます。

Ctrl+i

cmd_proc の表示をリフレッシュします。

この機能は、現在の cmd_proc の表示が通信回線上のノイズによって崩れている場合に役立ちます。

Ctrl+r

現在のコマンド行をリフレッシュします。

この機能は、現在のコマンド行の表示が通信回線上のノイズによって崩れている場合に役立ちます。

Ctrl+r

現在のコマンド行を削除します。

なし

Ctrl+z

cmd_proc を中断して、シェル環境にエスケープします。

cmd_proc を再開するには、C シェルfg コマンドを入力します。


cmd_proc の入力および出力のリダイレクト

入力ファイルを使用すると、cmd_proc を起動するときに、コマンドを自動的に入力 (enter) できます。たとえば、次の入力ファイルはカートリッジをマウントおよびマウント解除することによって ACSLS を検証します。

query drive 0,0,0,0 
query volume JB1400 
mount JB1400 0,0,0,0 
dismount JPB1400 0,0,0,0 force 
logoff 

追加の cmd_proc ウィンドウでの入力ファイルの指定

cmd_proc を起動するには、次のコマンドを入力します。

cmd_proc -q < filename

また、cmd_proc を起動し、入力ファイルを指定して、出力を別のファイルにリダイレクトすることもできます。入力ファイルおよび出力ファイルを使用すると、cmd_proc の起動時に一連のコマンドを実行し、結果を参照できます。たとえば、次のファイルは、1 つの入力ファイルのみを使用した cmd_proc を示す前の例で実行されたコマンドの結果を示しています。

ACSSA> query drive 0,0,0,0 
1998-06-30 18:23:08 
Identifier State   Status     Cartridge Type 
0,0,0,0    online  available  9840 
ACSSA> query volume JPL1400 
1998-06-30 18:23:09 
Identifier Status Current location 
JB1400     home   0,0,3,0,0 
ACSSA> mount JPL1400 0,0,0,0 
ACSSA> Mount: JB1400 mounted on 0,0,0,0 
ACSSA> dismount JPL1400 0,0,0,0 force 
ACSSA> Dismount: Forced dismount of JB1400 from 0,0,0,0 
ACSSA> logoff 
ACSSA 

追加の cmd_proc ウィンドウへの出力のリダイレクト:

追加の cmd_proc を起動するには、入力ファイルを指定して出力をリダイレクトします。

  1. acssa または acsss としてログインして、UNIX 端末ウィンドウを開きます。

  2. cmd_proc を起動するには、次のコマンドを入力します。

    cmd_proc -q < file1 > file2

    ここで、file1 は入力ファイルであり、file2 は出力が送信されるファイルです。

    デフォルトでは、cmd_proc の表示領域メッセージは stderr に書き込まれますが、これらのメッセージをリダイレクトすることもできます。次に例を示します。

    cmd_proc -q < file1 > file2 2>> file2

アイドル状態への ACSLS の移行

この手順は、ACSLS をアイドル状態にすることによってリクエストの処理を中断する場合に使用します。通常、この手順は ACSLS を停止する前に使用されますが、それを使用して ACSLS のリクエストの処理を一時的に停止することもできます。

ACSLS をアイドル状態に移行するには、次の手順に従います。

cmd_proc から idle コマンドを入力します。

ACSLS は現在のすべてのリクエストを処理し、新しいすべてのリクエストを拒否して、アイドル状態になります。

ACSLS の再起動

この手順は、ACSLS を実行状態にすることによってリクエストの処理を再開する場合に使用します。通常、アイドル状態から ACSLS を削除するには ACSLS を再起動します。

ACSLS を再起動するには、次の手順を実行します。

cmd_proc から次のコマンドを入力します。

start 

ACSLS がリクエスト処理を再開します。

ACSLS のディレクトリ構造

次の表は、ディレクトリ、サブディレクトリ、および ACSLS ディレクトリ構造内でもっともよく使用されるファイルおよびシェルスクリプトのリストを示しています。

ACSLS パスには 3 つの変数が使用されます。それらの機能を次に示します。

  • $installDir

    これは、ベースインストールディレクトリであり、デフォルトでは /export/home/ です。

  • $ACS_HOME

    $installDir/ACSSS/ にあり、これは acsss ユーザー ID のホームディレクトリであり、ACSLS 製品がインストールされています。

    $ACS_HOME はデフォルトでは /export/home/ACSSS です。

  • $ACSDB_BKUP

    これは、ACSLS バックアップが保存されるディレクトリです。

表1-2 ACSLS のディレクトリ構造

ディレクトリ 内容

$installDir (デフォルトでは /export/home/)

ベースインストールディレクトリ。

$installDir/SSLM

ACSLS の java コンポーネント (ACSLS GUI および SMCE (論理ライブラリの操作) を含む) のホーム

$installDir/SSLM/AcslsDomain

ACSLS の Web ベースの GUI アプリケーションのホームディレクトリ。

$installDir/wlinstall

バンドルされている WebLogic アプリケーションサーバーパッケージおよび関連するインストールスクリプト。

$installDir/Oracle

バンドルされていない WebLogic のホームディレクトリ。

$installDir/acsls_thirdPartySoftware

サードパーティーのライセンス情報および関連する再発行されたソースコードのコレクション。

$ACS_HOME ($installDir/ACSSS)

(デフォルトでは /export/home/ACSSS/)

acsss ユーザー ID のホームディレクトリ。ACSLS のホームディレクトリでもあります。(ACS_HOME 環境変数はこのディレクトリを指しています。)

$ACSDB_BKUP

(デフォルトでは /export/backup/)

データベースのバックアップ

$ACS_HOME/config/

ACSLS 構成ファイルが含まれています。

$ACS_HOME/data/external/

アクセス制御、混在したメディア、およびカートリッジのレポートで使用されるカスタマイズされたファイルが含まれています。

$ACS_HOME/data/external/access_control/

アクセス制御のサンプルおよびカスタマイズされたファイルが含まれています。

$ACS_HOME/data/internal/

ACSLS 内部構成ファイル。変更しないでください。

$ACS_HOME/diag/bin

診断ファイルおよびシェルスクリプトが含まれています。

$ACS_HOME/lib/

実行時に必要な ACSLS のインストール済みの共有ライブラリが含まれています。

$ACS_HOME/log/

ACSLS のイベントログおよびユーティリティーのイベントログファイルが含まれています。

$ACS_HOME ($installDir/ACSSA/)

(デフォルトでは /export/home/ACSSA/)

acssa のホームディレクトリ。

$installDir/ascdb/

(デフォルトでは /export/home/acsdb/)

データベースのホームディレクトリ。

$LOG_PATH

これは $ACS_HOME/log と同等です。このディレクトリには、acsss_event.log および ACSLS 操作に関連するその他の役立つログが含まれています。