手動によるOracle Databaseのアップグレード後にのみ行う作業

DBUAを使用せずに手動でデータベースをアップグレードした場合、アップグレードの完了後に、ここに記載されている作業を実行する必要があります。

Oracle付属アカウントのパスワードの変更

これらの作業を実行して、新しいOracleユーザー・アカウントを保護することをお薦めします。

アップグレード元のリリースによっては、データベースに新しいOracleユーザー・アカウントが含まれる場合があります。SYSおよびSYSTEM以外のすべてのOracle付属アカウントは、ロックしてパスワードを期限切れにし、アカウントのロックを解除したときに新しいパスワードが要求されるようにすることをお薦めします。

注意:

Oracle Database 12cのデフォルトのセキュリティ設定が適用されている場合、パスワードは8文字以上にする必要があり、welcomeoracleなどのパスワードは使用できません。

参照:

パスワード要件については、『Oracle Databaseセキュリティ・ガイド』を参照してください

次のSQL文を発行して、すべてのアカウントの状態を確認できます。

SQL> SELECT username, account_status
         FROM dba_users
         ORDER BY username;

次のSQL文を発行して、パスワードをロックまたは期限切れにします。

SQL> ALTER USER username PASSWORD EXPIRE ACCOUNT LOCK;

ORAPWDを使用したパスワード・ファイルの作成または移行

REMOTE_LOGIN_PASSWORDFILEが設定されている場合に参照してください。

REMOTE_LOGIN_PASSWORDFILE初期化パラメータがEXCLUSIVEに設定されている場合、ORAPWDを使用してパスワード・ファイルを作成または移行します。Oracle Database 12cでは、既存のデータベースからパスワード・ファイルを移行するために、ORAPWDに新しいオプションが提供されています。

Oracle Database 12cリリース2 (12.2)では、REMOTE_LOGIN_PASSWORDFILESHAREDに設定されている場合、アップグレード前チェックの検証で警告が出ます。次のいずれかのオプションを選択して、この問題を修正します。

  • REMOTE_LOGIN_PASSWORDFILE = NONEを設定して、パスワード・ファイル・ベースの認証を完全に無効にします

  • REMOTE_LOGIN_PASSWORD = EXCLUSIVEを設定して、パスワード・ファイル・ベースの認証を制限します

参照:

パスワード・ファイルの作成および移行の詳細は、『Oracle Database管理者ガイド』を参照してください。

サーバー・パラメータ・ファイルへの初期化パラメータ・ファイルの移行

現在、従来の初期化パラメータ・ファイルを使用している場合、この手順を使用して、サーバー・パラメータ・ファイルに移行します。

  1. 初期化パラメータ・ファイルがクライアント・コンピュータ上にある場合は、クライアント・コンピュータからサーバー・コンピュータに転送します。

  2. CREATE SPFILE文を使用して、サーバー・パラメータ・ファイルを作成します。この文は、初期化パラメータ・ファイルを読み取り、サーバー・パラメータ・ファイルを作成します。CREATE SPFILE文を発行するために、データベースを起動する必要はありません。

  3. 新しく作成されたサーバー・パラメータ・ファイルを使用して、インスタンスを起動します。

注意:

Oracle RACを使用している場合は、すべてのインスタンス固有の初期化パラメータ・ファイルを単一の初期化パラメータ・ファイルに結合する必要があります。クラスタ・データベースでサーバー・パラメータ・ファイルを使用するために必要な各手順を完了してください。

参照:

Oracle Textファイルを識別し、新しいOracleホームにコピーする

Oracle Textをアップグレードするには、この手順を使用して必要なファイルを特定し、それを既存のOracleホームから新しいリリースのOracleホームにコピーします。このタスクはOracle Databaseをアップグレードした後で実行します。

一部のOracle Text機能は、ユーザーが構成したOracleホーム下のファイルを使用します。新しいリリースへの手動アップグレードの後、または、Oracleホームを変更する他の処理の後に、これらのファイルを手動で特定し、移動する必要があります。これらのファイルにはユーザー・フィルタ、メール・フィルタ構成ファイルおよびナレッジ・ベース拡張ファイルなどがあります。これらのファイルを特定したら、既存のOracleホームから新しいOracleホームにコピーします。

既存のOracleホームからコピーする必要があるファイルのリストを特定するには、SQLスクリプト/ctx/admin/ctx_oh_files.sqlを実行することをお薦めします。
  1. 以前のリリースのデータベースのSYSSYSTEMまたはCTXSYSシステム権限を使用してログインします。
  2. 前のリリースのデータベースのOracleホーム下の$ORACLE_HOME/ctx/admin/ctx_oh.sqlを実行します。

    次に例を示します。

    sqlplus / as sysdba
    connected
    SQL> @?/ctx/admin/ctx_oh_files
  3. ctx_oh_files.sqlコマンドの出力を確認し、それらのファイルを新しいOracleホームにコピーします。

Oracle Clusterware構成のアップグレード

Oracle Clusterwareを使用している場合は、データベースのOracle Clusterwareキーをアップグレードする必要があります。

Oracle Database 12csrvctlを実行してデータベースをアップグレードします。次に例を示します。

ORACLE_HOME/bin/srvctl upgrade database -db name -o ORACLE_HOME

新しいリリース用の初期化パラメータ・ファイルの調整

アップグレード後に初期化パラメータをチェックするには、これらのトピックを参照してください。

Oracle Databaseの新しいリリースごとに新しい初期化パラメータが導入され、非推奨となったり、サポートが終了した初期化パラメータもあります。ご使用のシステムに有効な新しい初期化パラメータを使用するために、これらの変更に対してパラメータ・ファイルを調整する必要があります。また、DBUAを使用しないで手動アップグレードを実行した場合、tnsnames.oraファイルには新しい構成情報と設定が自動的に移入されません。したがって、手動でtnsnames.oraを更新し、local_listenerおよびremote_listenerパラメータ参照を調節する必要があります(これらを解決する必要がある場合)。

参照:

  • Oracle Database 12cの新しい初期化パラメータのリストおよび各パラメータの詳細は、『Oracle Databaseリファレンス』のこのリリースでの変更点に関する説明を参照してください

  • Oracle Database 12cでサポートが終了した初期化パラメータと非推奨となった初期化パラメータ

アップグレード後のCOMPATIBLE初期化パラメータの設定

テストの後に、COMPATIBLE初期化パラメータを、新しいデータベースに必要な互換性レベルに設定できます。

COMPATIBLE初期化パラメータは、ご使用のデータベースの互換レベルを制御します。使用しているデータベースをダウングレードする機能をもう必要としないことが確実な場合にのみ、COMPATIBLE初期化パラメータをより高い値に設定してください。

  1. COMPATIBLE初期化パラメータ値を増やす前に、データベースのバックアップを取ります(オプション)。

    COMPATIBLE初期化パラメータを高くすると、現在のデータベースが以前のリリースのOracle Databaseとの互換性を失う可能性があります。バックアップによって、必要時に以前のリリースに確実に戻ることができます。

  2. サーバー・パラメータ・ファイルを使用している場合は、次のステップを実行します。

    1. COMPATIBLE初期化パラメータの値を設定または変更するには、サーバーのパラメータ・ファイルを更新します。

      たとえば、COMPATIBLE初期化パラメータを12.2.0に設定するには、次の文を入力します。

      SQL> ALTER SYSTEM SET COMPATIBLE = '12.2.0' SCOPE=SPFILE;
      
    2. インスタンスを停止し、再起動します。

  3. 初期化パラメータ・ファイルを使用している場合は、次のステップを実行します。

    1. インスタンスが実行中の場合は、停止します。

      次に例を示します。

      SQL> SHUTDOWN IMMEDIATE
      
    2. COMPATIBLE初期化パラメータの値を設定または変更するには、初期化パラメータ・ファイルを編集します。

      たとえば、COMPATIBLE初期化パラメータをfor Oracle Database release 12.2に設定するには、初期化パラメータ・ファイルに次を入力します。

      COMPATIBLE = 12.2.0
      
    3. STARTUPを使用してインスタンスを起動します。

注意:

ASMディスク・グループを使用している場合、ディスク・グループの互換性属性は、init.oraのデータベース互換性パラメータの値以下である必要があります。

参照:

バックアップの実行の詳細は、『Oracle Databaseバックアップおよびリカバリ・ユーザーズ・ガイド』を参照してください。

アップグレード後のTNSNAMES.ORAおよびLISTENERパラメータの調整

手動アップグレードの実行後、tnsnames.oralocal_listenerおよびremote_listenerを解決する必要がある場合、それらのパラメータを手動で調整する必要があります。

DBUAでは、自動アップグレード中にネットワーク・ネーミングやリスナーの変更が処理されます。ただし、手動アップグレードでは、tnsnames.oraもリスナーも変更されません。

アップグレード後のOracle RACでのCLUSTER_DATABASE初期化パラメータの設定

Oracle RACデータベースのアップグレードでは、クラスタ・データベースをアップグレードする前にCLUSTER_DATABASE初期化パラメータをfalseに設定します。

アップグレードの完了後に、このパラメータをtrueに設定する必要があります。