Oracle Managed File Transfer (MFT)は、エンド・ツー・エンドで高いパフォーマンスで動作する標準ベースの管理対象ファイル・ゲートウェイです。その特徴は、軽量のWebベースの設計時コンソールを使用したファイル転送の設計、デプロイメントおよび監視です。MFTコンソールには、転送の優先度付け、ファイルの暗号化、スケジュールおよび埋込みFTPサーバーと埋込みsFTPサーバーが含まれます。セキュリティは、OWSMなどのセキュリティ・ポリシーによって管理されます。この章では、Oracle Managed File Transferの基本概念について説明します。
この章の内容は次のとおりです。
注意:
使用しているスキンによっては、このガイドで示される画面は実装状態と異なる場合があります。相違点は軽微なものです。Oracle Managed File Transferを使用することによって、スケジュール、ファイルの暗号化、転送の再発行、データのパージなどの様々な操作や多数の類似した操作を実行できます。
Oracle Managed File Transferを使用して、転送プロセスで次の操作を実行できます。
スケジュール
再送信
インラインで添付または参照
圧縮と解凍
暗号化と復号
アーカイブ、名前の変更および削除
転送インスタンスとファイルのパージ
一時停止と再開
OWSMポリシーによる保護
転送の再送信の詳細は、「転送の再送信」を参照してください。他の操作の詳細は、「アーティファクト(転送、ソースおよびターゲット)の設計」を参照してください。
Oracle Managed File Transferでは、次の情報に基づいて、ファイル配信(転送インスタンス)を追跡およびトラブルシューティングできます。
正常終了、頻度および失敗の統計
メトリック、最新のエラー、ファイル・ファインダおよびアクティブな配信
エラー情報表
アクティブ配信進行状況表
個々の配信のレポート
詳細は、「Oracle Managed File Transferの監視」を参照してください。
Oracle Managed File Transferでは、次に示す様々なエンドポイント・タイプとの間でファイルを転送できます。
FileベースおよびFTPベースのエンドポイント:
File: Oracle Managed File Transferサーバーがアクセス可能なディレクトリとの間でファイルを転送します。
FTP埋込み: 埋込みMFT FTP (File Transfer Protocol)サーバーまたはFTPS (FTP with Secure Socket Layer)サーバーがファイルを埋込みサーバー・ディレクトリにコピーすることによってファイルを転送します。
sFTP埋込み: 埋込みsFTP (Secure Shell FTPまたはSSH-FTP)サーバーがファイルを埋込みサーバー・ディレクトリにコピーすることによってファイルを転送します。
FTPリモート: リモートのFTPサーバーまたはFTPSサーバーとの間でファイルを転送します。
sFTPリモート: リモートのsFTPサーバーとの間でファイルを転送します。
SOAP Webサービス・ベースのエンドポイント:
SOAP: インラインで、またはフォルダの場所への参照を使用して、Simple Object Access Protocol Webサービス・エンドポイントとの間でファイルを転送します。
SOA: Oracle SOA (Service-Oriented Architecture) Webサービス・エンドポイントとの間でファイルを転送します。
Service Bus (OSB): Oracle Service Bus Webサービス・エンドポイントとの間でファイルを転送します。
ODI: Oracle Data Integrator Webサービス・エンドポイントとの間でファイルを転送します。
B2Bベースのエンドポイント:
B2B: Oracle B2B (Business to Business)取引パートナとの間でファイルを転送します。
Healthcare: Oracle B2B for Healthcareエンドポイントとの間でファイルを転送します。
クラウド・エンドポイント:
Oracle Cloud Service: Oracle Cloud Serviceとの間でファイルを転送します。
Oracle WebCenter Content: Oracle WebCenter Contentとの間でファイルを転送します。
これらの転送をコンテキストで使用する例は、「Oracle Managed File Transferの機能的なユース・ケース・パターン」を参照してください。これらの転送の作成方法の詳細は、「アーティファクト(転送、ソースおよびターゲット)の設計」を参照してください。
Oracle Managed File Transfer、Oracle SOA SuiteおよびB2Bの機能は重複していますが、それぞれ最適なファイル転送シナリオは異なります。
次のシナリオでは、Oracle Managed File Transferが最も適しています。
オペレーティング・システムおよびファイル・システムの容量によってのみサイズが制限される大容量ファイルの転送。
1つのソースから多数のターゲットへのファンアウト式の転送。
すべての転送の詳細な監査と記録
高度なセキュリティによる転送
再起動、一時停止/再開などの高度な転送管理
埋込みFTPサーバーまたは埋込みsFTPサーバーの使用
次のシナリオでは、Oracle SOA Suiteが最も適しています。
オーケストレーションまたは複雑な統合(複数のソースからのファンインなど)
メッセージングやERPなどの企業システムとの統合
手動タスク、コンテンツ・ベース・ルーティングまたは変換の実行
次のシナリオでは、B2Bが最も適しています。
関連するドキュメント形式(HL7、EDIなど)を対象とするシナリオ
AS2などのセマンティクスを追加する必要があるシナリオ
Oracle Managed File Transferは、複雑なユース・ケース・パターンで複数のアプリケーション間でファイルを転送することによって、それらの統合を実現します。様々な共通のユース・ケースがあり、その一部をこの項で説明します。
Oracle Managed File Transferを他のアプリケーションと統合する詳細な方法は、「Oracle Managed File Transferと他の製品の統合」を参照してください。
図1-1は、Oracle Managed File Transferがそのローカル・ファイルを、埋込みFTPサーバー、埋込みsFTPサーバーおよびアクセス可能なファイル・システムを使用して転送する方法を示します。
1回のファイル転送で1つ以上のターゲットを指定できます。複数ターゲットのユース・ケース・パターンをファンアウトと呼びます。ある転送のターゲットのエンドポイントを別の転送のソースとして使用して、チェーンを作成することもできます。
図1-2は、Oracle Managed File TransferをSOAアプリケーションのWebサービス・インタフェースと統合する方法を示します。
SOAアプリケーションは、転送のソースとターゲットのどちらにも使用できます。また、SOAアプリケーションを、ある転送のターゲットと別の転送のソースで共通のエンドポイントとして使用することもできます。
図1-3は、Oracle Managed File TransferをB2B取引パートナと統合する方法を示します。
B2Bアプリケーションは、転送のソースとターゲットのどちらにも使用できます。また、B2Bアプリケーションを、ある転送のターゲットと別の転送のソースで共通のエンドポイントとして使用することもできます。
図1-4は、Oracle Managed File TransferをHealthcareエンドポイントと統合する方法を示します。
Healthcareアプリケーションは、転送のソースとターゲットのどちらにも使用できます。また、Healthcareアプリケーションを、ある転送のターゲットと別の転送のソースで共通のエンドポイントとして使用することもできます。
図1-5は、Oracle Managed File TransferをOracle Service BusのWebサービス・インタフェースと統合する方法を示します。
Oracle Service Busインタフェースは、転送のソースとターゲットのどちらにも使用できます。また、Oracle Service Busインタフェースを、ある転送のターゲットと別の転送のソースで共通のエンドポイントとして使用することもできます。
図1-6は、Oracle Managed File Transferを複数のアプリケーションと統合する方法を示します。
Oracle Managed File Transferは、複数のアプリケーション・タイプで構成されるデータ転送ネットワークの参加者として使用できます。
Oracle Managed File Transferの主要コンポーネントには、構成データ、ユーザー・インタフェース・コンソール、埋込みFTPサーバーと埋込みsFTPサーバー、セキュリティ、および様々なタイプのファイル転送エンドポイントに対するインタフェースなどがあります。Oracle Managed File Transferは、高可用性を提供する複数の管理対象サーバーで構成できます。
コンソールの詳細は、「Oracle Managed File Transferの画面移動」を参照してください。他のコンポーネントの詳細は、「Oracle Managed File Transferのコンポーネント」を参照してください。
Oracle Managed File Transferのコンポーネントは、アーティファクト、サーバー、監視用ツール、WLSTコマンド行ユーティリティ、メタデータ・リポジトリ、およびソースとターゲット・エンドポイントと通信するための様々な標準インタフェースから構成されます。
Oracle Managed File Transferコンソールの「デザイナ」ページでファイル配信構造を作成する際、次の3つのタイプのアーティファクトを作成します。
ソース。ファイルの送信元を定義します。
ターゲット。ファイルの宛先を定義します。
転送。1つのソースを1つ以上のターゲットに関連付けます。
アーティファクトは、ファイル配信構造の様々な部分の構成を定義します。これとは異なり、この構造に従う個々のファイル転送は、ファイル配信インスタンスです。
ソースとターゲットは、複数の転送で再使用できます。複数の転送で1つのソースを使用することは、転送ファンアウトと呼びます。1つの転送で複数のターゲットを使用することは、ターゲット・ファンアウトと呼びます。1つのソースとそれに関連付けられているすべての転送とターゲットをまとめてフローと呼びます。
アーティファクトの様々なプロパティを使用して、次に示すファイル配信動作を詳細に定義できます。
フィルタ: 名前と拡張子が特定のパターンに一致するファイルを対象にしたり、除外したりできます。
スケジュール: 転送を特定の時刻または時間枠に制限できます。
前処理アクション: ファイルを圧縮、圧縮解除、暗号化または復号化できます。
後処理アクション: ファイルを圧縮解除できます。
ファイル操作: ファイルをアーカイブ、名前変更、移動または削除できます。
アーティファクトの作成の詳細は、「アーティファクト(転送、ソースおよびターゲット)の設計」を参照してください。
Oracle Managed File Transferには、FTPとsFTPの2つのサーバーが埋め込まれています。これらの2つの埋込みサーバーをソース・アーティファクトとして使用できます。ポート、セキュリティ、およびディレクトリへのユーザー・アクセスなど、埋込みサーバーの様々なプロパティを構成できます。これらのサーバーは、WebLogic Server Oracle Managed File Transferのデプロイメントの過程で自動的にデプロイされます。詳細は、「Oracle Managed File Transfer埋込みサーバーの管理」を参照してください。
Oracle Managed File Transferの監視ダッシュボードには、次に示す様々なツールが用意されています。
メトリック: 転送ステータスのリアルタイム表示。失敗率、ペイロード・ファイル・サイズ、転送スピード、転送合計時間などが表示されます。
ファイル・ファインダ: 検索タイプに基づいてソース・インスタンスまたはターゲット・インスタンスのどちらかが表示される表。
最新のエラー: 転送中に発生したエラーが表示される検索機能付きの表。
アクティブな配信: 進行中および最近完了したファイル配信が表示される表。
レポート: ソース、転送またはターゲットのそれぞれの観点による、個々のファイル配信の詳細情報。
詳細は、「Oracle Managed File Transferの監視」を参照してください。
Oracle Managed File Transferのセキュリティは、次の方法で提供します。
Oracle Managed File Transferコンソールへのユーザー・アクセスの制限
埋込みFTPサーバーと埋込みsFTPサーバーのディレクトリへのユーザー・アクセスの制限
特定の転送インスタンス内のファイルへのユーザー・アクセスの制限
Webサービス・ソース・タイプに応じたHTTPエンドポイント・アクセスの保護
キーベースの認証
FTP over SSLおよびsFTPによるトランスポート
ファイルの暗号化
Oracle Web Services Manager (OWSM)ポリシー
FIPS準拠
詳細は、「Oracle Managed File Transferのセキュリティ」を参照してください。
Oracle Managed File Transferの機能の多くは、付属のWLSTコマンド行ユーティリティで実行できます。次のコマンド・カテゴリがあります。
アーティファクト管理
メタデータ管理
キー管理
デプロイメント履歴表示
転送管理
埋込みサーバー管理
コールアウト管理
イベント通知管理
ランタイム・インスタンスと転送されたファイルのアーカイブ
ランタイム・インスタンスと転送されたファイルのパージ
転送の優先度
クラウド・サービス
詳細は、「Oracle Managed File Transferのユーティリティ」を参照してください。
Oracle Managed File Transferの構成データは、Oracle Metadata Repositoryに格納されます。この構成データを編集、バックアップおよび復元できます。詳細は、「Oracle Managed File Transferの管理」を参照してください。
Oracle Managed File Transferには、ファイル・ハンドラ、デザイナ、モニターおよび管理者の4つのユーザー・ロールがあります。これらのロールのそれぞれが様々なタスクを実行できます。
これらのロールのユーザーの作成方法の詳細は、ユーザーの認証および認可を参照してください。
ファイル・ハンドラは、次のタスクを実行します。
ファイルをファイル転送ステージング領域(ソース)にコピーします。
ファイルをファイル転送宛先(ターゲット)から取得します。
ファイル・ハンドラには、Oracle Managed File Transferに直接アクセスする権限はありません。ソースとターゲットのディレクトリとエンドポイントにアクセスするために必要な権限を持っています。
デザイナは、次のタスクを実行します。
ファイル転送ソースの作成、読取り、更新および削除を実行します。
ファイル転送ターゲットの作成、読取り、更新および削除を実行します。
転送の作成、読取り、更新および削除を実行します。完成したファイル配信フローでは、転送によってソースとターゲットがリンクされます。
転送をデプロイおよびテストします。
モニタは、次のタスクを実行します。
ダッシュボードとレポートを使用して、転送インスタンスが正常終了することを確認します。
長時間にわたる転送の一時停止と再開を実行します。
エラーをトラブルシューティングして転送を再送信します。
アーティファクトのデプロイメントと履歴を表示します。
アーティファクトの依存関係を表示します。
ソース、ターゲットおよび転送を有効化および無効化します。
ソース、ターゲットおよび転送をアンデプロイします。
埋込みFTPサーバーと埋込みsFTPサーバーの起動と停止を実行します。
管理者は次のタスクを実行します。
ファイル・ハンドラのすべてのタスク
デザイナのすべてのタスク
モニターのすべてのタスク
他のユーザーの追加とそのロールの決定
ユーザー・ディレクトリ権限の構成
Oracle Managed File Transferサーバーの構成
埋込みFTPサーバーと埋込みsFTPサーバーの構成(セキュリティを含む)
B2BとHealthcareのドメインの構成
Oracle Managed File Transfer構成のバックアップと復元
転送されたファイルとインスタンス・データのパージ
インスタンス・データとペイロードのアーカイブと復元
メタデータのインポートとエクスポート
Oracle Managed File Transferは、単独でインストールすることも、Oracle WebLogic Serverドメイン内にOracle SOA Suiteとしてインストールすることもできます。
詳細は、『Oracle Managed File Transferのインストールと構成』のOracle Managed File Transferインストールおよび構成の準備に関する項を参照してください。
サポート対象システム構成は、Oracle Technology Network Webサイト(http://www.oracle.com/technetwork/middleware/ias/downloads/fusion-certification-100350.html
)を参照してください。
Oracle Managed File Transferコンソールでは、特定のタスクに集中できるように、領域を開く、閉じる、非表示にするなどの操作が可能です。画面移動セクションで、コンソールの基本操作について説明します。
コンソールのトップ・バナーに、トップレベル・ページへのリンクがあります。どのページにアクセスできるかは、ユーザー・ロールによります。詳細は、「Oracle Managed File Transferのユーザー・ロール」を参照してください。トップレベル・ページの内容は、次のとおりです。
デザイナ: このページを使用して、ソース、ターゲットおよび転送を作成、変更、削除、名前変更およびデプロイします。
監視: このページを使用して、転送の統計、進行状況およびエラーを監視します。また、転送デプロイメントを無効化、有効化およびアンデプロイしたり、インスタンスを一時停止、再開および再送信したりできます。
管理: このページを使用して、埋込みサーバー構成などのOracle Managed File Transfer構成を管理します。
各トップレベル・ページの左側のパネルのナビゲーション・ツリーには、実行できるタスクが表示されており、そのほとんどはタブが開きます。名前の左側に右矢印がある場合、サブタスクが隠されていることを示します。この矢印をクリックすると、矢印が右下を向いて、サブタスクが表示されます。
たとえば、「デザイナ」ページには、「転送」、「ソース」および「ターゲット」の3つの主要タスクがあります。「転送」の左にある矢印は、少なくとも1つの転送が作成されていることを示します。「ソース」と「ターゲット」の場合も同様です。「転送」の横の矢印をクリックして、転送の名前を表示します。
ナビゲーション・ツリーのタスクをタブで開くには、タスクをクリックします。タスクを選択して「開く」アイコンを選択する方法もあります。トップレベル・ページのそれぞれについて、最大15個のタブを同時に開くことができます。
たとえば、「デザイナ」ページでは、新しいソースを作成するには、「ソース」をクリックします。「転送」と「ターゲット」の場合も同様です。既存のソース、転送またはターゲットを編集するには、その名前をクリックします。
アクティブなタブを閉じるには、トップ・バナーの右側にある「閉じる」アイコンをクリックします。アクティブなタブを除くすべてのタブを閉じるには、「閉じる」アイコンの右側のドロップダウン・メニューから「その他を閉じる」を選択します。すべてのタブを閉じるには、同じメニューから「すべて閉じる」を選択します。
転送を作成してそのタブを開くと、「ソースの追加」オプションと「ターゲットの追加」が表示されます。1つのソース・アイコンと1つ以上のターゲット・アイコンを、それぞれターゲット・ページの該当する領域にドラッグ・アンド・ドロップできます。アイコンをドラッグ・アンド・ドロップする必要があります。名前をドラッグ・アンド・ドロップしても動作しません。
「監視」ページのメイン・タブでは、ダッシュボードが常に開かれています。ダッシュボードには、「メトリック」、「ファイル・ファインダ」、「最新のエラー」および「アクティブな配信」の4つの領域があります。各領域の右上隅に「開く」アイコンがあります。このアイコンをクリックすると、その領域がコンソール全体に拡大し、追加詳細が表示されます。ダッシュボードに戻るには、拡大されている領域の右上隅の「閉じる」アイコンをクリックします。
このプロセスの手順は次のとおりです。
Oracle Managed File Transferを監視および管理するページのアクセシビリティ・オプションは、Oracle Enterprise Manager Fusion Middleware Controlによって提供されます。Fusion Middleware Controlは、スクリーン・リーダーをサポートしており、キーボード・ナビゲーションをサポートするための標準のショートカット・キーを提供しています。読みやすくするために、コンソール・ページを高コントラストで表示したり、大きなフォントで表示したりすることもできます。Fusion Middleware Controlにおけるアクセシビリティの構成の詳細と手順は、Oracle Fusion Middlewareの管理のOracle Fusion Middlewareのアクセシビリティ・オプションの使用を参照してください。