概念とアーキテクチャ

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はじめに

この節では、現在注目されているサービス駆動型の IT 戦略、サービス指向アーキテクチャ (SOA) イニシアティブの主要なビジネス ドライバ、および Enterprise Service Bus (ESB) コンポーネントの戦略面での重要性について簡単に説明します。Oracle Service Bus のインフラストラクチャ ソリューションと SOA を達成する要因として特徴付ける機能について概念的な概要を説明します。この説明は、SOA イニシアティブを担当する管理部門の関係者、統合を目的とする IT 設計者、サービス モデル作成者または設計者、およびシステム管理者を対象としています。

この節の内容は以下のとおりです。

 


サービス指向の IT トレンド

今日の競争の激しいグローバル マーケットでは、ビジネスは非常に流動的な環境で展開され、そこでは情報が最も戦略的な意味を持つ資産になります。競争やマーケットの動向、規制の定めなどの変化に対して時宜を得た情報によって迅速に対応することは、ビジネスが効率的に機能し、全体的な成功をもたらすための鍵となっています。急速に変化するマーケットの要求を満たすために、ビジネスは顧客やパートナとやり取りする方法と、IT インフラストラクチャの設計および構築方法の両方において、サービス駆動型にシフトしてきています。

ROI の達成に努めるためにビジネスが機敏性と鋭敏性を高めていくにつれて、組織では新しいコスト効率のよい手段を発見し、新しいサービスを提供し、組織内の情報とビジネス プロセスの自由な流れを促進するために、企業の IT グループへの依存を深めてきました。次に示すビジネス ドライバは、サービス指向の IT アーキテクチャを今日の企業において経済的に現実性のあるものにしています。

サービス指向アーキテクチャ

サービス指向アーキテクチャ (SOA) は、サービスの提供を最適化し効率的なビジネス プロセス管理を確実にするためのインフラストラクチャ改革の IT における主要な課題として出現してきました。SOA によるパラダイム シフトの一部は IT インフラストラクチャの設計方法に根本的な変化をもたらし、アプリケーション インフラストラクチャから集中したサービス インフラストラクチャへと移行しました。サービス指向アーキテクチャではエンタープライズ アプリケーションに含まれる個別の機能を、相互運用性のある、標準に基づいた共有「サービス」のレイヤとして編成することにより、複合アプリケーションおよびプロセスとしての組み合わせや再使用が可能になります。

さらに、このアーキテクチャによるアプローチでは、外部サービス プロバイダによって提供されたサービスをエンタープライズ IT アーキテクチャに取り込むことができます。その結果、企業は異なる場所に格納された主要なビジネス情報をコスト効率のよい方法で解放することができます。エンタープライズ IT をアプリケーションではなくサービスを中心として編成することで、SOA はサービスが可能になるまでの時間を短縮し、急ピッチで進むビジネス要件の変化により柔軟に対応できます。

近年では、多くの企業でパイロット プロジェクトによる暫定的な SOA への適応から進展して、企業全体での最適化された SOA のデプロイメントを実現する、定義済みの繰り返し可能なアプローチへと拡大しています。プレゼンテーション サービス、ビジネス プロセス、ビジネス サービス、データ サービス、および共有サービスからなる IT SOA アーキテクチャのすべてのレイヤがサービスに対応しています。

図 1-1 SOA の概念アーキテクチャ

SOA の概念アーキテクチャ

サービス仲介の課題

SOA イニシアティブに関する主な課題は、多くの企業で種類の異なる複数ベンダが存在する IT のランドスケープと、その結果としてビジネス情報が個々の場所に格納されることに起因しています。レガシー インフラストラクチャの異なるコンポーネントの置き換えに手間とコストをかけるよりも、企業では既存のビジネス アプリケーションをサービスとして拡張して、他のビジネス プロセスやアプリケーションでの使用を選択することがよくあります。

Web サービス インタフェースの既存のパッケージ アプリケーションへの流入によって、確立済みのサービスや準拠するガイドラインに忠実でないサービスが導入されることが少なくありません。これは、サービスが CRM、データ ウェアハウス、ERP などのエンタープライズ システムの中核からパブリッシュされたサービスで顕著です。

堅牢で包括的なサービス インフラストラクチャ ソリューションがない場合、開発者は、オブジェクト リクエスト ブローカ (ORB)、メッセージ指向ミドルウェア (MOM)、リモート プロシージャ コール (RPC) などのプログラム間の通信をサポートする各種の「ミドルウェア」テクノロジを使用していました。最近では、IT インフラストラクチャ開発者は、種類の異なるアプリケーションとプロセスを統合するために、Web サービスへのポイントツーポイント接続を複雑な統合ロジックとしてハード コーディングしています。これは当然の結果としてサービスがエンタープライズ IT 環境内で複雑および無秩序に広がっていきます。次の図に、静的なサービス統合のシナリオの典型例を示します。

図 1-2 サービスの無秩序化の課題

サービスの無秩序化の課題

種類の異なる IT アーキテクチャに起因するこれ以外のサービス関連の課題には次のものがあります。

IT インフラストラクチャの効率化を目指す企業のアーキテクチャ設計者と Web サービス作成者は、次の IT のニーズに応えるエンタープライズ サービス機能を現在必要としています。

複合アプリケーションとサービスのレイヤ化

SOA イニシアティブでは、構成は高位の機能にある既存の資産を利用してビジネスの柔軟性を達成するための統合の一部です。成熟した SOA 環境では、ビジネスのニーズを迅速に満たすために既存のサービスを使用してすべてのビジネス アプリケーションが構成されます。サービス プロビジョニング プロセスの柔軟性は、サービスの実装においてロジックのコーディングを避けることによって達成されます。

多くの組織では、サービスを非常に細かいレベルで開発しており、多数の小さな固有サービスが増殖すると、幅広い論理サービスへの構成が難しくなります。サービスのレイヤ化は、一体化されたアプリケーションの制限を破り、開発、リリース、およびテスト サイクルの短縮化を行うための方法の 1 つです。サービスの定義と作成にレイヤ化されたアプローチを取ることにより、サービス インフラストラクチャ チームは、現在および将来のビジネス要求に対して必要なきめ細かさに調整したサービスを達成できます。

サービス レイヤは通常、次のサービスからなります。

SOA のサービス バス コンポーネント

SOA の成功の鍵を握るのは、ビジネス プロセスの対話機能の動的な相乗効果および調整、既存のサービスの継続的な進化と新しいサービスの迅速な追加をサポートする Enterprise Service Bus (ESB) です。SOA の利点を実現化するには、今日の企業で多く見られる種類の異なる IT 環境におけるサービス統合の複雑性を隠すために抽象的なレイヤを提供する堅牢でインテリジェントなサービスの仲介機能が IT 組織に含まれていることが絶対に必要です。中間的な抽象化レイヤは、以前はエンタープライズ アプリケーションのカスタマイズのためのプラットフォームであることを意味していましたが、現在ではサービス カスタマイズのためのツールキットであり、サービスの仲介に着目して疎結合されたサービスの対話機能をサポートするためのスケーラブルなインフラストラクチャであることを意味しています。

図 1-3 Enterprise Service Bus

Enterprise Service Bus

ESB は、従来のテクノロジによる機能に、メッセージ検証やトランスフォーメーション、コンテンツ ベースのルーティング、セキュリティ、ロード バランシングといった新しいサービスを組み合わせることによって、統合化されたミドルウェア インフラストラクチャ テクノロジが進化するための手段です。ESB は提供するサービスの大半で業界の標準を使用しているため、プラットフォーム間の相互運用性を推進し、SOA の実装を検討中の会社にとって論理的な選択の 1 つになっています。

ESB はエンタープライズ SOA を構築してデプロイするための効率的な方法を提供します。ESB は、SOA に共通するサービスの編成、アプリケーション データの同期、およびビジネス アクティビティ モニタリングに関する障害を乗り越える効果的なアプローチを提供するため、設計者や開発者の注目を集めつつある概念です。多くの基本的な形式の場合、ESB では次の主要機能が提供されます。

堅牢な SOA スイートは以下を提供します。

ESB を使用すると、不安定で常にメンテナンスを必要とするポイントツーポイント接続の必要性がなくなるため、企業は種類の異なるリソースを接続する上でより大きな柔軟性を得ることができます。サービス コンシューマとサービス プロバイダの間に ESB の仲介機能を追加することによって、下位にあるサービス エンドポイント インタフェースの実装の詳細が両者から隠され、再開発や再デプロイメントが与える影響をサービス コンシューマ レベルで削減またはなくすことができます。

業界でもトップの企業では、サービス仲介機能とビジネス プロセスの管理機能を戦略的に統合する、企業に対応した高速の ESB 仲介機能を利用することで SOA の成功を達成しています。サービスの操作管理の重要性が SOA の成功要因として決定的であることを認識することで、これらの企業はエンタープライズ クラスのサービス スケーラビリティ、カスタマイズ、およびセキュリティを提供するソリューションを実装しました。SOA サービスのライフサイクルの管理とガバナンスのために特に構築されたこのようなソリューションを採用することで、これらの企業は次のようなビジネス上の利点を手にしました。

 


Oracle 製品スイート

Oracle は、サービス指向アーキテクチャとして一から作成された最初のサービス インフラストラクチャ製品ファミリであり、SOA の組織全体へのデプロイと、ビジネスの機敏性と IT の効率性の達成を成功するために統一された製品のセットを IT にもたらします。

図 1-6 Oracle Service Bus 共有サービス製品アーキテクチャ

Oracle Service Bus 共有サービス製品アーキテクチャ

Oracle 製品ファミリでは、次の製品ラインを使用できます。

 


Oracle Service Bus

Oracle Service Bus は、SOA ライフサイクル管理のために一から作られた、実績を持ちマーケットをリードする Enterprise Service Bus (ESB) であり、サービス検出と仲介、迅速なサービス プロビジョニングとデプロイメント、およびガバナンスのための基礎的な機能を提供します。

このサービス インフラストラクチャ ソフトウェアは、大まかで緩やかに結合された標準ベースのサービスの構築と、ビジネス機能をサービス コンシューマとバックエンド ビジネス サービスに接続できる中立コンテナの作成を、基盤となるインフラストラクチャとは無関係に行うという SOA の原則に基づいています。次の図にエンタープライズ IT SOA ランドスケープにおける Oracle Service Bus のサービス仲介者としての役割を示します。

図 1-7 Oracle Service Bus による仲介

Oracle Service Bus による仲介

信頼性、可用性、スケーラビリティ、およびパフォーマンスの厳格な基準を満たすように作成された Oracle Service Bus は、Enterprise Service Bus の統合機能を操作サービス管理とユニークに組み合わせた、レイヤ化された機能アーキテクチャを持つ単一のエンタープライズ クラスのソフトウェア製品です。

図 1-8 Oracle Service Bus の機能

Oracle Service Bus の機能

Oracle Service Bus の機能は、次の機能レイヤに分類することができます。

SOA ランドスケープの重要性

Oracle Service Bus は Oracle の総合的なビジネス統合ソリューションの中心であり、Oracle Messaging 製品ラインに属しています。Oracle Service Bus は異なる種類のサービスを管理することを主要な目的としており、従来型のメッセージ ブローカリングが種類の異なる IT 環境全体にわたって行われていることを前提としています。

Oracle Service Bus と集中的なインテリジェントなメッセージ仲介およびサービスのライフサイクル管理機能のアーキテクチャは動作が軽くステートレスで高パフォーマンスであるため、分散サービス ネットワークの中核となるコンポーネントとして理想的なものになっています。

IT の幅広いサービス指向アーキテクチャ (SOA) ランドスケープに分散サービス管理の仲介機能として適合するように設計されており、種類の異なる分散デプロイメントにおいて Oracle の他のビジネス プロセス管理ソリューションと統合することができます。

図 1-9 Oracle Service Bus の SOA アーキテクチャにおける重要性

Oracle Service Bus の SOA アーキテクチャにおける重要性

Oracle Service Bus の使用例

Oracle Service Bus は強力で動作が軽くコスト効率の高いテクノロジであり、次のような場合にサービス開発者や設計者が使用できます。

Oracle Service Bus とサービス ライフサイクル

サービスのライフサイクルは、次の 2 つの段階で構成されます。

Oracle Service Bus はサービス ライフサイクルの実行時段階で統合的な役割を果たします。これにより、サービス ライフサイクルの次の重要な機能を支援します。

サービス サイクルでの Oracle Service Bus の役割

Oracle Service Bus の設計方針のポイントは、管理機能とサービス実装を物理的に分離することにあります。Oracle Service Bus は、会社のメッセージング構成の一部として、多くのアプリケーションおよびシステムで共用でき、異なるチームによって構築されたサービス実装を異なる部署で統合して適用することも可能です。

サービスが作成されると、後でその他のサービスまたはプロセスが使用できるように、登録およびエクスポーズされます。サービスは、ローカル サービス レジストリで Oracle Service Bus に直接登録することも、または Oracle Service Registry などのエンタープライズ サービス レジストリからインポートすることもできます。サービスが登録されると、Oracle Service Bus は、それらのサービスと通信するためのメッセージ フローを定義するプロキシ インタフェースをコンフィグレーションします。

このフローには、適用すべきトランスフォーメーションとセキュリティに関する要件、およびメッセージのサービスへのルーティングについての仕様が含まれます。サービスが Oracle Service Bus に登録されると、Oracle WebLogic Integration を使用して作成されたビジネス プロセスなどが、それらのサービスを使用したり、それらを連携させてさまざまなビジネス コンテキストをサポートできるようになります。これらの連携されたプロセスは、サービスが使用される方法やビジネス要件に適用される方法、およびより詳細なビジネス プロセスを定義します。その後、これらのビジネス プロセスは、ユーザ インタフェース (GUI) を介してエンド ユーザが使用できるようにエクスポーズされます。ユーザ インタフェース (GUI) には、Oracle WebLogic Portal などのトランザクション ポータル、または Oracle Interaction などのコラボレーティブ ポータルがあります。

Oracle Service Bus はメッセージ フロー、システム ヘルス、およびサービスとエンドポイント間の可用性をモニタして管理するライフサイクルに再び入ります。この情報は、動作のパターンを分析して改善を行う場所を指摘する、ビジネスおよび運用のアナリストに報告されることがあります。ライフサイクルは時間の経過に伴って進化するサービスとして再び開始され、新しいバージョンがリリースされます。

機能の特徴と利点

Oracle Service Bus の主要な機能は、次の機能レイヤに分類することができます。

適応性があるサービス メッセージング レイヤ

Oracle Service Bus では、前例のないレベルでの種類の相違をサポートしており、標準を使用して任意のサービスに信頼性のある接続を行えます。既存のミドルウェア、アプリケーション、およびデータ ソースは SOA イニシアティブで最上級の扱いを受け、既存の IT への投資を保護し、種類の異なるエンドポイント、フォーマット、およびプロトコルを使用して、IT によるサービスの接続、仲介、および管理を行えるようにします。

図 1-11 適応性があるサービス メッセージング レイヤ

適応性があるサービス メッセージング レイヤ

Oracle Service Busは、次の多様な Web サービス転送で動作します。

Oracle Service Bus は SOAP 1.1 メッセージを受信し、SOAP 1.2 ビジネス サービスを呼び出すために必要になったときに、SOAP 1.2 メッセージに変換することができます。または、その逆の場合の変換もできます。

Oracle Service Bus では従来のメッセージング プロトコルとメッセージング パラダイムで動作することにより、メッセージの効率のよい編成を促進します。サポートされるプロトコルと通信パラダイムの詳細な一覧については、「サービス統合」のトピック「転送プロトコル」および「メッセージング モデル」を参照してください。

業界でも最先端の Web サービスのサポートに加えて、Oracle Service Bus では、MQ Series、CICS、.NET、C/C++ アプリケーションへのネイティブの接続性が用意されています。これにより、カスタム転送ソフトウェア開発キット (SDK) と Oracle Data Service Integrator のネイティブ転送を使用した企業に固有のカスタム転送の作成とコンフィグレーションが可能になります。汎用のプロキシ サービス テンプレートを使用して、任意の SOAP または XML メッセージを受け入れることができる汎用のプロキシ サービスを作成する機能があります。

Oracle Service Bus では、高いパフォーマンスと信頼性を実現するために、SOA 全体に対する最適化されたデータベースのクエリをサポートしています。.NET、Tibco EMS、IBM MQ、IBM WebSphere、Apache Axis、Cyclone B2B Interchange、および iWay アダプタを含む Web サービス統合テクノロジと相互運用性があります。

Oracle Service Bus の相互運用性については、「Oracle Service Bus 製品サポート情報」および「Oracle Service Bus の相互運用性と転送を参照してください。

プラグイン可能な最適化されたセキュリティ レイヤ

Oracle Service Bus ではサービスのセキュリティをすべてのレベルで保証しています。組み込みセキュリティに対応する包括的な一連のコンポーネントにより、顧客は大きな柔軟性と選択の幅を与えられています。ユーザは自社開発またはサードパーティ製のセキュリティ コンポーネントをプラグインすることもできます。組み込み機能によって、セキュリティを次のレベルで有効にすることにより、実装における柔軟性が確保されています。

Oracle Service Bus のセキュリティ機能の詳細については、『Oracle Service Bus のセキュリティ ガイド』を参照してください。

Oracle Service Bus でサポートされる標準については、Oracle Service Bus の『セキュリティ ガイド』の「サポートされる標準とセキュリティ プロバイダ」を参照してください。

機能が充実したサービス構成レイヤ

Oracle Service Bus には、サービス コンフィグレーション、モデリング、検出とメッセージ検証について機能の充実した環境があります。また、メッセージ トランスフォーメーション、外部サービス プロバイダへのサービス コールアウト、ブラウザのテストもサポートされています。

図 1-13 サービス構成レイヤ

サービス構成レイヤ

Workshop for WebLogic と Oracle Service Bus Console を使用する Oracle Service Bus のコンフィグレーション駆動型の構成環境は、コーディング不要のアプローチを使用して設計されており、多様なグラフィカル モデリング ツールを使用してメッセージ フローを作成できます。このモデリング機能により、動的なコンテンツ ベースのルーティング、メッセージ検証、および例外処理のコンフィグレーションが可能になります。動的なルーティングの詳細については、「サービス構成」のトピック「動的なコンテンツ ベースのルーティング」を参照してください。

構成環境には、UDDI レジストリを使用するサービスの自動的なインポートと同期を行うためのサービス検出と検証機能が含まれています。この機能ではサービスの整合性を確認し、デプロイメントを行う前に衝突を調停するための検証を行うことができます。UDDI レジストリの詳細については、「サービス コンフィグレーション」のトピック「UDDI レジストリ」を参照してください。

Oracle Service Bus ではソースと送り先のサービスで共有される種類の異なるデータ型において XML と非 XML のトランスフォーメーションをサポートしています。XQuery と eXtensible Stylesheet Language Transformation (XSLT) の標準を使用したデータ マッピングがサポートされます。これらは外部で作成され、Oracle Service Bus にインポートされるか、または Oracle Service Bus Console の XQuery を使用してスクリプトが作成されます。メッセージ コンテンツの再フォーマットは、XQuery または XSLT を使用するか、または選択された要素を追加、削除、置換してメッセージ コンテンツを操作することで行えます。トランスフォーメーションの詳細については、「サービス構成」のトピック「トランスフォーメーション」を参照してください。

Oracle Service Bus では、サービス コールアウト機能による動的なルーティングをサポートしており、より柔軟で洗練されたメッセージ フローの作成が行えます。メッセージ フロー内でのサービス コールアウトは、Oracle Service Bus に登録されている他のサービスを呼び出すために使用されます。Java の終了 (通常の従来型 Java オブジェクトの場合) または Web サービスのコールアウトになることもあります。構成環境には、サービスのトレースやトラブルシューティングを行うためのテスト コンソールも備わっています。サービス コールアウトの詳細については、Oracle Service Bus の『ユーザーズ ガイド』の「サービス コールアウトの作成」を参照してください。

埋め込まれたサービス管理レイヤ

Oracle Service Bus にはサービス管理機能が埋め込まれており、すべてのメッセージングに対して最適化されたガバナンスを提供します。この機能の先進的なサポートにより、ビジネスに対する要求、要件、および作業量が変化した場合でも、ミッションクリティカルなビジネス プロセスの顧客ニーズへの対応が継続されることが保証されます。

図 1-14 Oracle Service Bus に埋め込まれたサービス管理

Oracle Service Bus に埋め込まれたサービス管理

Oracle Service Bus ダッシュボードには、すべてのアプリケーションの開発と管理、サービスのモニタと管理に対して統一されたデータ サービス インタフェースが提供されており、操作面でのサポートが向上しました。ダッシュボードでは、エラーおよびパフォーマンス メトリックのモニタ、集約された ESB の概要の表示が行えます。ルーティングの関係、トランスフォーメーション、およびポリシーの動的な定義と管理が行えます。ダッシュボードの詳細については、「サービス管理」のトピック「ダッシュボード」を参照してください。

Oracle Service Bus にはパフォーマンスとモニタ用に組み込まれた最適化機能があり、単一ノードまたはサーバ全体のアラート モニタ、およびメッセージについてのコンフィグレーション可能なサービス レベル アグリーメント (SLA) によってサービスの品質を保証しています。また、操作メトリックとメッセージ パイプラインの SLA アラートの表示と管理もサポートしています。SLA コンフィグレーションの詳細については、「サービス管理」のトピック「アラート経由の SLA の適用」を参照してください。

Oracle Service Bus では、カスタムのエンタープライズ システム管理フレームワークに加えて、サードパーティ製のすぐに使用できるレポート ツールに幅広く対応しています。さらに、操作とデプロイメントのカスタマイズのために、JMX モニタリング インタフェースや SNMP アラートなどのオープン インタフェースもサポートしています。レポート機能の詳細については、「サービス管理」のトピック「メッセージ レポート」を参照してください。

機能の利点

次の表に、Oracle Service Bus の機能の特徴と、各機能で対処するビジネス要件のポイントについてまとめます。

表 1-1 Oracle Service Bus の特徴と利点

機能
機能の特徴
ビジネス上の利点
メッセージ ルーティング
コンフィグレーション駆動型のインテリジェントでコンテンツ ベースおよび ID ベースのルーティングです。
ビジネス ルールや既存の IT システムに対する変更に基づいて、コーディングを行わずに素早くルーティング ルールをコンフィグレーションすることで、ビジネスのニーズに迅速に対応します。
メッセージ トランスフォーメーション
XQuery または XSLT に基づく、複数のメッセージ フォーマットをサポートする動的なメッセージ トランスフォーメーションです。
簡単または複雑なルーティング ルールやメッセージ ペイロードを使用してサービスを動的に変換およびルーティングすることによって、進化し続ける SOAと統合プロジェクトのシナリオに柔軟に対応します。
サービス レジストリ
サービスのパブリッシュと再使用を行うための、自動化された、または管理者駆動型の UDDI V3 レジストリによる相互運用性です。
自動的に既存のサービスを検出し、新しいサービスをサービス レジストリにエクスポートすることで、再使用の扱いがより簡単になっています。
サービス プロビジョニング
簡素化されたサービス プロビジョニングです。
ビルドテスト開発サイクルを廃止したことにより、サービスの複数バージョン管理がより容易になり、デプロイメントをより簡単に素早く行えます。
メッセージ セキュリティ
最適化されプラグイン可能な、ポリシー駆動型の転送レベルおよびメッセージ レベル セキュリティです。
セキュリティ インフラストラクチャへの既存の投資を活用して、複数のセキュリティ フレームワーク間をシームレスにブローカリングします。
サービス エンドポイントの相互運用性
エンドポイントがサポートする拡張性と拡張されたサービスです。
複数の標準、プロトコル、およびベンダでの相互運用性を保証するインフラストラクチャを使用してユニークな IT 要件に対応するためにソリューションを拡張します。
サービス レベル アグリーメント
ルール駆動型のコンフィグレーション可能なサービス レベル アグリーメント (SLA) を実施します。
SLA が満たされていない場合に、多数の要因とアラートに基づく SLA をユーザが設定できることにより、可視性とコントロールが増します。
メッセージ転送
カスタム転送 SDK によるカスタム転送も含めて、サービス エンドポイント間の種類の異なる転送のサポートを拡張します。
種類の異なるシステムに対する既存の投資を利用し、旧システムから新システムへのスムーズな移行を保証するための柔軟性があります。
メッセージ ブローカリング
複数の転送タイプとメッセージ フォーマットをサポートする WS-I 準拠のインテリジェントなメッセージング ブローカリングです。
システムやスタイルを変更せずに種類の異なるメッセージング プロトコルを持つ既存の IT システムからサービスを編成する機能によって既存のインフラストラクチャを活用して投資を保護します。
サービスの可用性
JMX および SNMP による積極的なインフラストラクチャ ヘルスと可用性のモニタです。
機能が充実した組み込みのダッシュボード、またはサードパーティ製のパフォーマンス管理システムを使用して、パフォーマンス メトリックと SLA のサポートを簡単にコンフィグレーションすることによって SOA のヘルスと可用性を維持します。
サービスのモニタのダッシュボード
柔軟性がありグラフィカルな埋め込み式の管理とモニタのダッシュボードです。
機能が充実した組み込みのダッシュボード、またはサードパーティ製のパフォーマンス管理システムを使用して、パフォーマンス メトリックと SLA の状態を自動でモニタおよび管理します。アラートに基づいて対応策を積極的に実行します。
サービス デプロイメント
使いやすく、カスタマイズ可能なプログラムによる、またはコンソール駆動によるデプロイメントです。
ガバナンスの実施と迅速なデプロイメントを行う機能があります。

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