1 Oracle Machine Learning for Rのインストールの概要

この章ではOML4Rのインストール・プロセスについて説明します。この章のトピックは、次のとおりです:

1.1 Oracle Databaseの場合のOracle Machine Learning for Rのアーキテクチャ

OML4Rは、Oracle DatabaseおよびOracle Clientに基づくクライアント/サーバー型アーキテクチャを採用しています。

Rエンジンは、サーバー・コンピュータおよび各クライアント・コンピュータ上で動作します。OML4Rは、次の3つの主要機能をサポートしています。

  • Rの透過性

    OML4Rのクライアント・パッケージでRの透過性がサポートされていることにより、Oracle表が、ネイティブRオブジェクトであるかのように「透過的に」表示されます。OML4Rパッケージは、Oracle Database表およびビューへの透過的なアクセスを提供します。これにより、データベース内で実行するためにユーザーに透過的にSQLに翻訳される標準R関数が起動されます。

  • 予測分析と機械学習

    OML4Rは、予測分析および機械学習をサポートする広範囲な並列アルゴリズムおよび分散アルゴリズムをサポートしています。これにより、スケーラビリティおよびパフォーマンスの向上が可能になり、インデータベース・アルゴリズムおよびデータベース・サーバー側アルゴリズムに対するRインタフェースの使いやすさも向上します。

  • 埋込みRの実行

    サーバー上のOML4Rのパッケージ、ライブラリとRおよびSQLのAPIでは、SQL問合せおよびPL/SQL文内でのユーザー定義のR関数の実行がサポートされています。埋込みRの実行により、データ・パラレル実行およびタスク・パラレル実行のためにパラレルで実行できるRエンジンが生成されます。埋込みRの実行では、ユーザー定義のR関数を実行できます(サード・パーティのパッケージを利用する場合があります)。DBMS_SCHEDULERデータベース・パッケージなどの機能を使用すると、完全自動処理のための、ユーザー定義のR関数の実行をスケジュールできます。

図1-1 OML4Rのクライアント/サーバー型アーキテクチャ



1.2 オンプレミス・データベースの場合のOracle Machine Learning for Rのクライアントおよびサーバー・コンポーネント

オンプレミス・データベースの場合のOML4Rのクライアント・コンポーネントとサーバー・コンポーネントをリストします。

  • OML4Rのクライアント・コンポーネント:

    • Oracle Database Client

    • OML4RパッケージおよびSupporting Packages

  • OML4Rのサーバー・コンポーネント:

    • OML4Rクライアントをサポートするスキーマ・オブジェクトおよび共有ライブラリを備えたOracle Database

    • OML4RパッケージおよびSupporting Packages

1.3 Oracle Machine Learning for Rのインストール・ステップ

これらのステップおよびこのロードマップは、一般的なOML4Rインストールを示します。

Oracle Database 19c以降の場合は、rqcfg.sqlスクリプトを使用してOML4Rサーバーをインストールします(「Oracle Database 19c以降のOracle Machine Learning for Rサーバーのインストール」を参照)。

ノート:

Oracle DatabaseをホストするコンピュータでOML4Rのクライアントとサーバーの両方のコンポーネントを使用する場合は、クライアント・インストールを個別に実行する必要はありません。Oracle Database Clientのローカル・インストールは、自動的にOracle Databaseのインストールに組み込まれます。

インストール・ステップの図

図1-2 OML4Rクライアントおよびサーバーのインストール・ステップ

この図は、OML4Rクライアントおよびサーバーのインストール・ステップを示しています。

図1-2の説明が続きます
「図1-2 OML4Rクライアントおよびサーバーのインストール・ステップ」の説明

OML4Rのインストールのロードマップ

このロードマップでは、OML4R環境の一般的なインストールおよび構成に必要なステップを説明します。OML4Rをインストールするには、次の手順を実行します。

  1. ご使用のシステムが、基本的な要件を満たしていることの確認

  2. 適切なインストール・ソフトウェアの入手

  3. インストールの実行と確認

表1-1 OML4Rのインストールのタスク

タスク 説明 ドキュメント

1. OML4Rサンプル・インストールをレビューします。

OML4RをLinuxサーバーおよびWindowsクライアントにインストールするための一般的なステップをレビューします。

ノート: サポートされているすべての構成は、「オンプレミス・データベースの場合Oracle Machine Learning for Rのシステム要件」でリストされています。

Oracle Machine Learning for Rのサンプル・インストール

2. サポートされているプラットフォームおよびシステム要件を確認します。

プラットフォーム要件表およびサーバー・サポート・マトリクスを使用して、ご使用の環境がインストールの要件を満たしていることを確認します。

オンプレミス・データベースの場合のOracle Machine Learning for Rのシステム要件

3. Oracle R DistributionおよびOML4Rのインストール・ユーザーを特定します。

システム上でインストールと構成を実行するユーザーは、十分な権限を持っている必要があります。

Oracle R Distributionでは、インストール・ユーザーは、root(Unix/Linux)またはAdministrator(Windows)です。

OML4Rサーバーのユーザー要件

4. 製品インストーラをダウンロードします。

Oracle R Distributionは、OracleのパブリックyumまたはOracleダウンロード・サイトから入手できます。Oracle DatabaseおよびOracle Machine Learning for Rは、Oracleダウンロード・サイトで入手できます。

Oracle Database 18c以降の場合、OML4RのインストーラはOracle Databaseに付属しています。

Oracle Databaseのソフトウェア・ダウンロード

Oracle R Distributionのダウンロード

Oracle Machine Learning for Rのダウンロード

5. Oracle Databaseをインストールおよび構成します。

OML4Rには、64ビット・バージョンのOracle Database Enterprise Editionが必要です。

Oracle Machine Learning for R向けデータベースのインストールおよび構成

6. Rをインストールおよび構成します。

OML4Rを使用するには、サーバーの各ノードおよびサーバーと対話する各クライアント・コンピュータにRがインストールされている必要があります。Oracle R Distributionをお薦めします。

OML4Rサーバー・コンポーネントは、データベース・サーバーにインストールする必要があります。

Oracle Machine Learning for R向けのRのインストール

7. OML4Rサーバーをインストールおよび構成します。

OML4Rでは、サーバーに複数のコンポーネントが組み込まれます。これらのコンポーネントを組み合せることで、OML4RクライアントがOML4Rサーバーと相互作用できるようになります。

Oracle Machine Learning for Rサーバーのインストール

ExadataへのOracle Machine Learning for Rのインストール

8. OML4RサーバーにOpen Source Rパッケージをインストールします。

OML4Rを使用する埋込みRの実行では、Oracle Databaseサーバーで実行されるユーザー定義のR関数で、CRANまたは他のサード・パーティのRパッケージを使用できます。

Oracle Machine Learning for R向けのRパッケージのインストールについて

9. OML4Rクライアントをインストールおよび構成します。

物理クライアントが構成されている場合、各クライアント・コンピュータに、次のOML4Rコンポーネントを個別にインストールする必要があります。

  • R

  • Oracle Instant Client

  • OML4Rクライアント・パッケージ

  • OML4RクライアントのSupporting Packages

OML4RクライアントをWebブラウザで実行するには、RStudio Serverをデータベース・サーバーにインストールします(Linuxのみ)。

Oracle Machine Learning for Rクライアントのインストール

RStudioのインストール

10. OML4RクライアントにOpen Source Rパッケージをインストールします。

OML4RサーバーにインストールしたRパッケージは、OML4Rクライアントにもインストールする必要があります。

Rパッケージのインストールの基本

11. OML4Rのインストールを検証します。

OML4Rクライアントからサーバーに接続し、OML4R関数をいくつか実行して、OML4Rインストールをテストします。

OML4Rサーバーのインストールの検証

1.4 オンプレミス・データベースの場合のOracle Machine Learning for Rのシステム要件

OML4Rは、64ビットのプラットフォームでのみ動作します。

クライアントおよびサーバー・コンポーネントの両方が、このトピックに示されている各プラットフォームでサポートされています。

表1-2 Oracle R Distributionのプラットフォーム要件

オペレーティング・システム ハードウェア・プラットフォーム 説明

Linux x86-64

IntelおよびAMD

  • 64ビットOracle Linuxリリース6、7および8

  • 64ビットRed Hat Enterprise Linuxリリース7

表1-3 Oracle Machine Learning for Rのプラットフォーム要件

オペレーティング・システム ハードウェア・プラットフォーム 説明

Linux x86-64

IntelおよびAMD

  • 64ビットOracle Linuxリリース6および7

  • 64ビットRed Hat Enterprise Linuxリリース7

Oracle LinuxはOracle Exadata Database Machine上で稼働している場合があります。

Oracle Solaris on x86-64(64-Bit)

Oracle Solaris on SPARC-64 (64ビット)

IntelおよびSPARC

  • 64ビット版Oracle Solaris 10 Update 11からOracle Solaris 11(SPARCとx86-64 (Intel)の両プラットフォーム)

  • Oracle SPARC SuperCluster

  • Oracle Solaris Studio (旧Sun Studio) 12u3以上

Oracle SolarisはOracle Exadata Database Machine上で稼働している場合があります。

IBM AIX on POWER Systems (64ビット)

IBM

64ビット版IBM AIX 5.3から7.2

Microsoft Windows x64 (64ビット)

Intel

64ビット版Microsoft Windows Professional

次の表では、OML4R Serverコンポーネントの、サポートされている構成を示します。OML4Rは、オラクル社のRの無償版ディストリビューションであるOracle R Distributionと組み合せて使用することをお薦めします。OML4Rをインストールする前に、Oracle R Distributionをインストールする必要があります。

表1-4 Oracle Machine Learning for Rの構成要件およびサーバー・サポート・マトリクス

OML4Rのバージョン オープン・ソースRまたはOracle R Distribution Oracle Databaseのリリース
1.5.1 3.6.1 12.2.0.1、18c、19c、21c
1.5.1 3.3.0 11.2.0.4, 12.1.0.1, 12.1.0.2, 12.2.0.1
1.5 3.2.0 11.2.0.4, 12.1.0.1, 12.1.0.2
1.4.1 3.0.1, 3.1.1 11.2.0.3, 11.2.0.4, 12.1.0.1, 12.1.0.2
1.4 2.15.2, 2.15.3, 3.0.1 11.2.0.3, 11.2.0.4, 12.1.0.1
1.3.1 2.15.1, 2.15.2, 2.15.3 11.2.0.3, 11.2.0.4, 12.1.0.1
1.3 2.15.1 11.2.0.3, 11.2.0.4, 12.1.0.1
1.2 2.15.1 11.2.0.3, 11.2.0.4, 12.1.0.1
1.1 2.13.2 11.2.0.3, 11.2.0.4, 12.1.0.1
1.0 2.13.2 11.2.0.3, 11.2.0.4, 12.1.0.1

ノート:

Rのバージョンは、サーバーと各クライアント・コンピュータで同じである必要があります。また、OML4Rのバージョンは、サーバーと各クライアント・コンピュータで同じである必要があります。

ノート:

Oracle R Distribution (ORD)の各バージョンは、その特定のRバージョンで構築されたOML4Rバイナリと互換性があります。たとえば、ORD 4.0.5にはR-4.0.5で構築された1.5.1バイナリがあり、R-3.6.1またはR-3.3.0で構築されたOML4R 1.5.1バイナリとは互換性がありません。

ノート:

Oracle Database 18c以降では、OML4Rをインストールするには、データベースに付属しているインストール・スクリプトを使用する必要があります。「Oracle Database 19c以降の場合のOracle Machine Learning for Rサーバーのインストール」を参照してください。

ノート:

Oracle Database Release 12.1.0.2では、一部の埋込みRの操作を成功させるには、Oracle R Enterpriseリリース1.4.1以降で、データベース・パッチ(20173897 EXTPROCによって返された表からのグループ化の結果が間違っています(パッチ))が必要です。

Microsoft Windowsでの64ビット・アーキテクチャの確認

OML4Rは、64ビットのオペレーティング・システムでのみ実行されます。ご使用のWindowsシステムが64ビットかどうかを判断するには、次のステップを実行します

  • Windows 10の場合:
    • Windowsキーを押したまま、[I]キーを押します。
    • 「設定」ウィンドウの「デバイスの仕様」で、「システムの種類」を見つけます。このエントリは、システムが64ビットかどうかを示します。
  • その他のバージョンのWindowsでは、Windowsのドキュメントでオペレーティング・システムのビット・バージョンを表示する方法を確認してください。