30 RMANクラウド・バックアップの永続設定

Oracle Database Cloud Backup Moduleをインストールしたら、RMANのCONFIGUREコマンドを使用して、クラウドのバックアップおよびリストア操作のための永続的なRMAN構成を作成します。

30.1 SBTチャネルの構成について

RMANでは、クラウド・バックアップおよびリカバリ操作を実行するには、テープへのシステム・バックアップ(SBT)チャネルが必要です。

クラウド・バックアップの保存先に対応する自動SBTチャネルを作成するには、CONFIGUREコマンドを使用します。

SBTチャネルの構成でのネイティブSBTライブラリの使用

RMAN SBTチャネルの構成時に、SBT_LIBRARYパラメータを使用して、RMANがクラウド・バックアップ・モジュールと通信できるようにするメディア・ライブラリを指定します。

チャネルの構成時に、SBT_LIBRARYパラメータを使用して、RMANがクラウド・バックアップ・モジュールと通信できるようにするメディア・ライブラリを指定します。オラクルは、Oracle Cloud (OCI)、Amazon S3 CloudおよびAzure Blob Storageを使用したRMAN操作用のネイティブSBTライブラリを提供しています。ネイティブなSBTライブラリ・ファイルは、ターゲット・データベースのインストールの一部としてOracleホーム・ディレクトリで使用可能になります。SBTライブラリの別名を指定するか、Oracleホーム・ディレクトリにあるライブラリ・ファイルへの絶対パスを指定できます。

SBT_LIBRARYパラメータを定義する場合、ネイティブSBTライブラリの別名(推奨)を指定するか、Oracleホーム・ディレクトリにあるライブラリ・ファイルへの絶対パスを指定できます。各クラウド・バックアップ・モジュールに対応するSBTライブラリの別名については、「Oracle Database Cloud BackupモジュールおよびRMAN SBTライブラリ」を参照してください。

SBTチャネル操作に必要なバックアップ・モジュール構成ファイルの指定

バックアップ・モジュール・インストーラは、選択したクラウド・サービスでRMAN操作を認証するために必要なパラメータを含む構成ファイルを作成します。

構成ファイル名の形式は、<backup module prefix><ORACLE_SID>.oraです。ここで、ORACLE_SIDは、クラウド・ストレージにバックアップされるOracle Databaseのシステム識別子です。たとえば、osbwsHRDB.oraという構成ファイル名の場合、osbwsはOracle Secure Backup Cloud Moduleの接頭辞で、HRDBはターゲット・データベースの一意の識別子です。

この例は、Oracle Secure Backup Cloud Moduleによって作成されたサンプル構成ファイルosbwsHRDB.oraの内容を示しています
OSB_WS_HOST=www-proxy.example.com, 
OSB_WS_PROXY=www-proxy.example.com:80, 
OSB_WS_WALLET='location=file:/myfiles/osbws_wallet', 
CREDENTIAL_ALIAS=example-a_aws, 
OSB_WS_BUCKET=HRDBBackups

構成ファイルのデフォルトの場所は、UNIXおよびLinuxシステムの場合は$ORACLE_HOME/dbs、Windowsシステムの場合は%ORACLE_HOME%\databaseです。

SBTチャネルを構成する場合は、ENVパラメータ(UNIXおよびLinuxの場合)またはSBT_PARMSパラメータ(Windowsの場合)を使用して、バックアップ・モジュール構成ファイルの場所を指定します。
RMAN> CONFIGURE CHANNEL DEVICE TYPE 'SBT'
PARMS 'SBT_LIBRARY=<SBT library alias>,
ENV=(<backup module prefix>_PFILE=<absolute path of configuration file>)';
この例では、SBT_PARMSパラメータで構成ファイル(osbwsHRDB.ora)の場所を指定しています。
RMAN> CONFIGURE CHANNEL DEVICE TYPE 'SBT'
PARMS 'SBT_LIBRARY=oracle.osbws, 
ENV=(OSB_WS_PFILE=/myfiles/osbswsHRDB.ora)';

ノート:

構成ファイルのバックアップを回避するには、次の例に示すように、ファイルの場所を指定するかわりに、構成ファイルの内容をコピーして貼り付けることをお薦めします。

RMAN> CONFIGURE CHANNEL DEVICE TYPE 'SBT'
PARMS 'SBT_LIBRARY=oracle.osbws, 
SBT_PARMS=(OSB_WS_HOST=www-proxy.example.com, 
OSB_WS_PROXY=www-proxy.example.com:80, 
OSB_WS_WALLET='location=file:/myfiles/osbws_wallet', 
CREDENTIAL_ALIAS=example-a_aws, 
OSB_WS_BUCKET=DBbackups)';

クラウドのバックアップおよびリストアのための永続的なRMAN構成

RMANのデフォルトのデバイス・タイプをSBTに変更するには、CONFIGUREコマンドを使用します。これにより、RMAN環境は、デフォルトでクラウドにすべてのバックアップを作成するように構成されます。バックアップの保存先は、現在使用されているSBTチャネルによって決まります。

このコマンドは、SBTライブラリの別名を使用して自動SBTチャネルを構成します。ENV環境変数は、構成ファイルの場所を示すバックアップ・モジュール固有のパラメータ(OCIの場合はOPC_PFILE、Azureの場合はAZ_PFILEなど)を定義します。
RMAN> CONFIGURE CHANNEL DEVICE TYPE 'SBT'
PARMS 'SBT_LIBRARY=<SBT library alias>,
ENV=(<backup module prefix>_PFILE=absolute path of configuration file)';
次のコマンドは、Oracleホーム・ディレクトリにあるSBTライブラリ・ファイルの絶対パスを使用して、SBTチャネルを構成します。ENVパラメータで構成ファイルを定義します。
RMAN> CONFIGURE CHANNEL DEVICE TYPE 'SBT'
PARMS 'SBT_LIBRARY=<SBT library file pathname>,
ENV=(<backup module prefix>_PFILE=absolute path of configuration file)';

ノート:

構成ファイルがバックアップ・モジュール・インストーラによって選択されたデフォルト・ディレクトリに作成されている場合は、ENVパラメータまたはSBT_PARMSパラメータをスキップできます。

RMAN> CONFIGURE CHANNEL DEVICE TYPE 'SBT'
PARMS 'SBT_LIBRARY=<SBT library file alias/pathname>';
次のコマンドは、RMANのデフォルト・デバイス・タイプを「SBT」に変更します。
RMAN> CONFIGURE DEFAULT DEVICE TYPE TO sbt;

複数のSBTチャネルを構成できます。デフォルトのクラウド・バックアップの保存先は、現在使用されているRMANのSBTデバイス構成によって決まります。たとえば、SBTデバイス・タイプがoracle.ociライブラリを使用するように構成されている場合、RMANはOracle Cloud Infrastructure Object Storageにバックアップを作成します。Microsoft Azure Blob Storageなどの別の場所にバックアップするには、oracle.azure SBTライブラリに対応する別のSBTチャネルを構成できます。

ノート:

自動SBTチャネルは、すべてのバックアップおよびリカバリ操作に適用される永続的なデフォルトのSBTデバイス設定を作成します。または、ALLOCATE CHANNELコマンドを使用して、各バックアップまたはリストア操作の前に、1回かぎりのSBTチャネルを手動で割り当てることもできます。次のコマンドは、Oracle Cloudにバックアップを作成するために手動で割り当てられたSBTチャネル(UNIXおよびLinuxシステム)を表示します。
RMAN> RUN
{
ALLOCATE CHANNEL c1 DEVICE TYPE sbt
PARMS 'SBT_LIBRARY=oracle.oci,
ENV=(OPC_PFILE=/myfiles/opc<ORACLE_SID>.ora)';
BACKUP DATABASE;
}

RMANチャネルの詳細は、「チャネルの構成」を参照してください。

Oracle Cloud (OCI)用の自動SBTチャネルの構成

RMAN> CONFIGURE CHANNEL DEVICE TYPE 'SBT'
PARMS 'SBT_LIBRARY=oracle.oci, 
ENV=(OPC_PFILE=/myfiles/opc<ORACLE_SID>.ora)';

次に示すように、ライブラリ別名のかわりにネイティブSBTライブラリ・パスをオプションで指定できます。

RMAN> CONFIGURE CHANNEL DEVICE TYPE 'SBT'
PARMS 'SBT_LIBRARY=$ORACLE_HOME/lib/libopc.so, 
ENV=(OPC_PFILE=/myfiles/opc<ORACLE_SID>.ora)';
RMAN> CONFIGURE CHANNEL DEVICE TYPE 'SBT'
PARMS 'SBT_LIBRARY=oracle.oci, 
SBT_PARMS=(OPC_PFILE=C:\myfiles\opc<ORACLE_SID>.ora)';

次に示すように、ライブラリ別名のかわりにネイティブSBTライブラリ・パスをオプションで指定できます。

RMAN> CONFIGURE CHANNEL DEVICE TYPE 'SBT'
PARMS 'SBT_LIBRARY=%ORACLE_HOME%\bin\oraopc.dll, 
SBT_PARMS=(OPC_PFILE=C:\myfiles\opc<ORACLE_SID>.ora)';

Microsoft Azure Blob Storage用の自動SBTチャネルの構成

RMAN> CONFIGURE CHANNEL DEVICE TYPE 'SBT'
PARMS 'SBT_LIBRARY=oracle.azure, 
ENV=(AZ_PFILE=/myfiles/az<ORACLE_SID>.ora)';

次に示すように、ライブラリ別名のかわりにネイティブSBTライブラリ・パスをオプションで指定できます。

RMAN> CONFIGURE CHANNEL DEVICE TYPE 'SBT'
PARMS 'SBT_LIBRARY=$ORACLE_HOME/lib/libaz.so,
ENV=(AZ_PFILE=/myfiles/az<ORACLE_SID>.ora)';
RMAN> CONFIGURE CHANNEL DEVICE TYPE 'SBT'
PARMS 'SBT_LIBRARY=oracle.azure, 
SBT_PARMS=(AZ_PFILE=C:\myfiles\az<ORACLE_SID>.ora)';

次に示すように、ライブラリ別名のかわりにネイティブSBTライブラリ・パスをオプションで指定できます。

RMAN> CONFIGURE CHANNEL DEVICE TYPE 'SBT'
PARMS 'SBT_LIBRARY=%ORACLE_HOME%\bin\oraaz.dll, 
SBT_PARMS=(AZ_PFILE=C:\myfiles\az<ORACLE_SID>.ora)';

Amazon S3 Cloud (AWS)用の自動SBTチャネルの構成

RMAN> CONFIGURE CHANNEL DEVICE TYPE 'SBT'
PARMS 'SBT_LIBRARY=oracle.osbws, 
ENV=(OSB_WS_PFILE=/myfiles/osbsws<ORACLE_SID>.ora)';

次に示すように、ライブラリ別名のかわりにネイティブSBTライブラリ・パスをオプションで指定できます。

RMAN> CONFIGURE CHANNEL DEVICE TYPE 'SBT'
PARMS 'SBT_LIBRARY=$ORACLE_HOME/lib/libosbws.so, 
ENV=(OSB_WS_PFILE=/myfiles/osbsws<ORACLE_SID>.ora)';
RMAN> CONFIGURE CHANNEL DEVICE TYPE 'SBT'
PARMS 'SBT_LIBRARY=oracle.osbws, 
SBT_PARMS=(OSB_WS_PFILE=C:\myfiles\osbsws<ORACLE_SID>.ora)';

次に示すように、ライブラリ別名のかわりにネイティブSBTライブラリ・パスをオプションで指定できます。

RMAN> CONFIGURE CHANNEL DEVICE TYPE 'SBT'
PARMS 'SBT_LIBRARY=%ORACLE_HOME%\bin\oraosbws.dll, 
SBT_PARMS=(OSB_WS_PFILE=C:\myfiles\osbsws<ORACLE_SID>.ora)';

30.2 クラウド・バックアップの保護について

バックアップおよびデータが適切に保護されるように、RMANのバックアップ暗号化を標準バックアップ・プロセスに含めることをお薦めします。

RMANバックアップ暗号化は、特に重要なバックアップ・データをクラウド・ストレージの場所に格納する場合、データベース・バックアップのセキュリティが強化されます。RMANバックアップを暗号化すると、組織のデータの主要な監査および規制コンプライアンス要件を満たすのにも役立ちます。

RMANバックアップの永続暗号化設定を作成するには、CONFIGUREコマンドを使用できます。

ノート:

バックアップは、Oracle Database Backup Cloud Serviceを使用してOracle Cloudに送信する前に暗号化する必要があります。バックアップが暗号化されていない場合、RMANは次のような説明のエラー・メッセージとともにORA-19511を報告します。
RMAN-03009: failure of backup command on ORA_SBT_TAPE_1 channel at 08/15/2014 14:00:43
ORA-27030: skgfwrt: sbtwrite2 returned error
ORA-19511: non RMAN, but media manager or vendor specific failure, error text:
   KBHS-01602: backup piece 14p0jso8_1_1 is not encrypted

暗号化の方法および暗号化アルゴリズムの選択の詳細は、「バックアップ暗号化の構成」を参照してください。

30.3 クラウド・バックアップの圧縮の構成

オプションで、Oracle Databaseをクラウドにバックアップするときに圧縮を使用できます。圧縮を使用すると、クラウドに送信する前にバックアップのサイズが小さくなり、帯域幅が節約されます。バックアップを実行するときに、圧縮を指定できます。

Recovery Manager (RMAN)では、次のいずれかの圧縮レベルを使用したバイナリ圧縮がサポートされます: HIGHMEDIUMBASICおよびLOW。クラウド・バックアップで推奨されるレベルは、MEDIUMです。

たとえば、次のRMANコマンドではMEDIUMアルゴリズムを使用して圧縮が構成されます:

RMAN> CONFIGURE COMPRESSION ALGORITHM 'MEDIUM';
RMAN> CONFIGURE DEVICE TYPE sbt BACKUP TYPE TO COMPRESSED BACKUPSET;

バックアップは、イメージ・コピーではなくバックアップ・セットの形式である必要があります。バックアップの圧縮の構成の詳細は、「圧縮オプションの構成」を参照してください。

30.4 自動バックアップの構成

データベース制御ファイルおよびサーバー・パラメータ・ファイルを自動的にバックアップするようにRMANを構成することをお薦めします。

制御ファイルの自動バックアップによって、RMANは、現行の制御ファイル、リカバリ・カタログおよびサーバー・パラメータ・ファイルにアクセスできない場合でも、データベースをリカバリできます。

自動バックアップ機能は、デフォルトでは無効になっています。自動バックアップを有効にするには、CONFIGUREコマンドを使用します。

RMAN> CONFIGURE CONTROLFILE AUTOBACKUP ON;

自動バックアップの詳細は、「制御ファイルおよびサーバー・パラメータ・ファイルの自動バックアップの構成」を参照してください。

30.5 クラウドのバックアップ速度を最適化するためのベスト・プラクティス

クラウド・バックアップはパブリック・インターネットを通じて送信されるため、バックアップ・パフォーマンスはネットワークの帯域幅の制限に影響されます。RMANの並列化および圧縮を使用すると、クラウド・バックアップおよびリストアの処理速度を上げることができます。

パフォーマンスを最適化するには:

  • 複数のRMANチャネルを使用して並列化を高くすると、ネットワークを最大限に活用できます。RMANチャネルは必要な数だけ構成できます。たとえば、次の構成では8個のチャネルを使用してクラウドを並列でバックアップしています:
    RMAN> CONFIGURE DEVICE TYPE sbt PARALLELISM 8;

    最適な転送速度になるまで、並列度を増やしてみてください。

  • RMAN圧縮レベルにMEDIUMを使用します。

  • マルチセクション・バックアップを使用します。これにより、複数のRMANチャネルが並列で使用されるため、大規模なデータファイルを個別のセクションでバックアップできます。

    マルチセクション・バックアップを作成するには、SECTION SIZEパラメータをBACKUPコマンドで指定します。たとえば、次のコマンドでは1 GBのサイズのバックアップ・セクションを指定します:
    RMAN> BACKUP DEVICE TYPE sbt DATABASE SECTION SIZE 1g;
  • 週次完全バックアップ計画および日次増分バックアップ計画を使用します。これにより、バックアップの処理速度が速くなり、大幅なネットワーク帯域幅を節約できます。日次増分バックアップのパフォーマンスを最適化するには、RMANの高速増分バックアップ機能(ブロック・チェンジ・トラッキングに基づく)を使用します。

  • また、各バックアップ・ピースの一意性を確保するには、RMANの書式文字列(%dおよび%U)を含めることをお薦めします。

  • 長期のバックアップの格納にはリカバリ・カタログを使用します。リカバリ・カタログの詳細は、「リカバリ・カタログの管理」を参照してください。

ノート:

スループット測定ツールを使用して、ネットワーク・スループットをテストできます。Oracle Cloudの管理および監視ネットワーク・スループットのテストを参照してください。

30.6 クラウド・リストアのベスト・プラクティス

リカバリのベスト・プラクティスにより、障害発生時にOracle Databaseのリカバリに必要なクラウド・バックアップが確保され、使用可能であることが保証されます。

次のリカバリのベスト・プラクティスを使用します:

  • クラウド・バックアップがリストア可能であることを確認します。

    新しいクラウド・バックアップを作成する前に、RESTORE DATABASE PREVIEW VALIDATE HEADERコマンドを実行して、古いバックアップが使用可能でリストアできることを確認します。

  • バックアップを検証して、物理的および論理的な破損をチェックします。

    データファイルに物理的な破損がないかどうかを確認するには、RMANのRESTORE DATABASE VALIDATEコマンドを使用します。論理的な破損を確認するには、RESTORE DATABASE VALIDATE CHECK LOGICALコマンドを実行します。

  • バックアップを定期的にクロスチェックします。

    クラウド・バックアップにRMAN以外の手法を使用する場合は、リストアする前に、RMANのCROSSCHECK BACKUPコマンドを実行してバックアップをクロスチェックします。

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