1 Workspace Managerの概要
Oracle Workspace Manager(Workspace Managerとも呼ばれる)は、作業領域を作成し、バージョンが異なる表の行の値を、異なる作業領域にグループ化できるインフラストラクチャを提供します。
ユーザーは、古いデータのコピーを保持しながら、更新するデータの新しいバージョンを作成することができます。アクティビティの結果が永続的に格納され、同時実行性および一貫性が保証されます。
Workspace Managerは、通常、次の操作を実行するアプリケーションに有効です。
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更新および挿入を本番データに取り込む前に、これらの集合を1単位として管理する。
変更を公開する前に、変更内容を確認し、適切でない変更をロールバックできます。変更が公開されるまで、データベースの他のユーザー(通常の本番データのみにアクセスするユーザー)に対してはこの変更は表示されません。変更は、単純な一連の作業領域または複雑な作業領域階層に編成できます。一般的な例としては、ライフサイエンス・アプリケーションなどがあります。このようなアプリケーションでは、更新が本番データにマージされる前にWorkspace Managerが更新の集合を管理することで、検出プロセスおよび品質保証(QA)プロセスをサポートします。
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共同開発作業をサポートする。
チームは、共同プロジェクトでの更新および挿入の集合へのアクセスを共有できます。作業領域権限により、作業領域および作業領域での操作へのアクセスが制御されます。また、作業領域へのアクセスを、単一ライター、読取り専用またはアクセス不可に制限できます。作業領域のロックによって、別々の作業領域内でのプロジェクト間の更新の競合が回避されます。一般的な例としては、複数のサブプロジェクトが別々の作業領域で同時に作成されるような、エンジニアリング・プロジェクトの設計アプリケーションなどがあります。
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共通のデータ・セットを使用して、what-if分析用の使用例または公開するデータのエディションを複数作成する。
作業領域内の変更を編成して、データベース全体のコンテキストに表示できますが、データを実際に表の間でコピーする必要はありません。複数のユーザーが、同時に同一行に変更を加えた場合でも、競合を検出し解消できます。たとえば、通信アプリケーションでは、携帯電話のサービス区域のシナリオを複数作成し、最適な設計を判断できます。
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データの変更履歴を保存する。
作業領域および行バージョンをナビゲートして、特定のマイルストンまたは時点におけるデータベースを表示できます。作業領域内の行または表に加えられた変更は、あるマイルストンまでロールバックできます。一般的な例としては、土地情報管理アプリケーションなどがあります。このようなアプリケーションでは、Workspace Managerは土地区画に加えられたすべての変更の履歴を保持することで、規制要件の遵守をサポートします。
Workspace Managerは、ロング・トランザクションの使用例を管理する場合にも有効です。複雑で継続時間の長いデータベース・トランザクションは完了するまでに数日かかることがあり、複数のユーザーが同一データベースにアクセスする必要があります。
この章では、Workspace Managerを使用するために理解しておく必要がある概念および操作について説明します。Workspace Managerの完全な例については、「Workspace Managerを使用した簡単な例」を参照してください。ただし、その例が示す概念を理解するには、まず、この章のこれ以降の説明を読む必要があります。
ノート:
デフォルトでは、Workspace Managerは、Oracleシード・データベース、およびDatabase Configuration Assistant(DBCA)を使用して作成された任意のデータベースにインストールされます。その他のOracleデータベースでWorkspace Managerを使用するには、まず「カスタム・データベースでのWorkspace Managerのインストール」に示すインストール手順を実行してください。
- Workspace Managerの概要
Workspace Managerでは、データベース内の1つ以上のユーザー表をバージョン対応にできます。バージョン対応表では、表内のすべての行で複数バージョンのデータをサポートできます。 - Workspace Managerのセッション・コンテキスト情報
ユーザーは標準のOracleセッション内でWorkspace Manager操作を実行します。 - Workspace Managerでのロック管理
- Workspace Managerでの権限管理
Workspace Managerには、標準のOracle AI Databaseの権限とは別の一連の権限が用意されています。 - Workspace Managerのシステム・パラメータ
Workspace Managerには、WM_ADMINシステム権限を持つユーザーがデータベースに対してWorkspace Manager固有のグローバル設定を適用できるようにする一連のシステム・パラメータがあります。 - インポートおよびエクスポートの考慮点
Workspace Managerでは、完全なデータベースのインポートおよびエクスポート、Workspace Managerで必要なスキーマのみのインポートおよびエクスポート、Workspace Managerのプロシージャによる作業領域レベルのインポートおよびエクスポートのいずれかで、バージョン対応表をインポートおよびエクスポートできます。 - バージョン対応表へのバルク・ロード
SQL*Loaderを使用するとバージョン対応表へのバルク・ロードを実行できますが、特別なWorkspace Managerプロシージャもいくつかコールする必要があり、ある程度の制限が適用されます。 - バージョン対応表と関連するDDL操作
バージョン対応表に対してデータ定義言語(DDL)操作を実行するには、DDL操作の前後に特別なWorkspace Managerプロシージャを使用し、Workspace Managerによって作成される特別な表の名前を指定する必要があります。 - Workspace Managerによる制約のサポート
この項では、データベース制約の使用に関連するWorkspace Managerの考慮事項について説明します。 - バージョン対応表に対するトリガー
バージョン対応表には、トリガーを定義できます。ただし、次の考慮点および制限事項が適用されます。 - Virtual Private Databaseの考慮事項
Workspace ManagerはOracle Virtual Private Database(VPD)テクノロジと併用できます。 - 表のシノニムのサポート
Workspace Managerプロシージャまたは表名をコールするファンクションの入力パラメータの場合、表名のかわりにシノニムを指定できます。 - マテリアライズド・ビューのサポート
この項では、Workspace Managerとマテリアライズド・ビューを併用する場合の考慮事項について説明します。 - Spatial and Graphトポロジ・サポート
この項では、Oracle Spatial and Graphトポロジの表でWorkspace Managerを使用する際の特別な考慮事項と手法について説明します。 - Workspace Managerの予約語および予約文字
Workspace Managerは内部オブジェクトの作成に固有の命名規則を使用するため、ある種のオブジェクトの名前では、避ける必要のある語や文字があります。 - DBMS_WMサブプログラムのカテゴリ
Workspace ManagerのApplication Program Interface(API)は、単一のPL/SQLパッケージDBMS_WMにあるPL/SQLサブプログラム(プロシージャおよびファンクション)で構成されています。 - Workspace Managerを使用した簡単な例
このトピックでは、Workspace Managerを使用していくつかの使用例を試行し、その1つを選択するための簡単な例を2つ示します。
親トピック: 概要および使用情報